2013年11月24日日曜日

2013.11.23 第4回音楽大学オーケストラ・フェスティバル-武蔵野音楽大学・昭和音楽大学

東京芸術劇場 コンサートホール

● 栃木の鬼怒川温泉は東京の奥座敷と言われたりするんだけど,こういうのって相対的なものでさ。ぼく的には東京が栃木の奥座敷だと思ってるわけね。東京を後背地として持っているのが栃木の強みだな,と。
 奥に座敷があるんだから,必要に応じて使えばいいんだよね。奥にあるものを全部,自分のリビングに持ってこようとしちゃいけない。散らかるだけだから。こちらから奥に出向くのが効率的。
 東京っていう奥座敷は,じつにどうも使いでがあってね。便利なものだ。

● ともあれ。音楽大学オーケストラ・フェスティバルの2回目。今回は武蔵野音楽大学と昭和音楽大学。開演は午後3時。

● まずは武蔵野音楽大学。演奏するのはショスタコーヴィチの交響曲第10番。
 生で聴くのは初めて。っていうか,恥ずかしながら,CDでも聴いたことがなかった。ショスタコーヴィチの15曲の交響曲の中でも,かなり評価が高いものであることは承知しているけれども,ほんとにぼくが聴いてるのは真砂のひと握りにすぎない。
 でも,初めて聴いたのが,今回の生演奏だったことは,むしろラッキーだったかも。

● さすがは音大で粒が揃っている。この粒が揃ってることの心地よさを味わえた。
 フルート,ピッコロ,オーボエ,クラリネット,ファゴットの木管陣とホルン。何気に出番が多いんだけど,すぐに安心して聴いていられることがわかった。ホルンに不安がないことが大きい。

● 指揮は北原幸男さん。指揮者って体力も要るし,運動神経,特に反射神経,が優れていなくちゃいけない。音楽や楽曲の勉強だけしてたって,ダメなんでしょうね。カラヤンもクライバーもスピード狂だったってのを思いだした。それくらいじゃないと務まらないのかも。
 というようなことを,彼の指揮を見ていて感じました。北原さんもたぶん,身体の鍛錬を怠っていないんでしょうね。

● 演奏が終わると20分の休憩。この間に,交代の準備をする。終わった武蔵野音大は撤退。楽譜や打楽器を片づける。当然,学生がやる。
 女子学生が上体を反らしてコントラバスを運んでいく。そんな様子がなんだかいじらしくてねぇ。

● 昭和音楽大学はチャイコフスキー。交響曲第4番。
 第2楽章冒頭のソロをはじめ,オーボエが重要な役割を担う。その2楽章のソロにしても,単純に息継ぎをどうしてるんだろうと思った。循環呼吸? ではないと思えたけど。
 で,このオーボエが際だっていた。重責を担うに充分。
 ファゴットの茶髪の女子も存在感を放っていた。彼女,一緒に酒を呑んだらとても楽しい子じゃないかと思えたんだけど,外見で判断するなと叱られるかなぁ。

● 指揮はマッシミリアーノ・マテシッチ氏。若く見えた。実際の年齢は40代の半ば。
 これなら文句なしに女性にもてるだろうと思わせる風貌ってありますよね。たとえば,ベッカムとかさ。マテシッチ氏はそうした風貌の持ち主。

● 清新で熱いチャイコフスキー。熱いだけでいいなら,たいていのアマチュアオーケストラはやってのけると思う。そこに確かな技術の裏打ち。
 これ,プロのオーケストラにやってみろといっても,たぶんできないんじゃないか。若い彼らにしかできない演奏だ
 2階席で,至福ってこういうことかもなぁ,と思いながら聴いていた。750円の至福。

2013年11月18日月曜日

2013.11.17 宇都宮短期大学管弦楽団&栃木県地域オーケストラ合同演奏会

宇都宮短期大学 須賀友正記念ホール

● 宇都宮短期大学管弦楽団って,その存在を知らなかった。年に1回か2回の定期演奏会を開催しているわけではない。常時活動しているわけではないようだ。
 今回は文化庁の助成を受けてのコンサート。併せて,「創立50周年プレイベント」であり,学園祭である彩音祭の行事でもある(らしい)。

● 開演は午後1時。もちろん,チラシにもチケット(1,500円)にもそう書かれていたんだけど,どういうわけか2時開演と思いこんでいて。
 早めに着く習慣なので1時を回ったあたりに会場に入ったんだけど,当然,演奏が始まっていて,ひと区切りつくまで待つことになった。この種のチョンボ,これが2回目。

● プログラムの特徴はピアノ協奏曲が2つあったこと。モーツァルトの23番とグリーグ。上記の次第で,ぼくが着席したのはモーツァルトの第1楽章が終わったあとになった。
 ソリストは,附属高校音楽科の生徒さんが楽章ごとに交替して務めた。吉原麻美さん,川口真由さん,長野美帆子さん。
 川口さんは栃木県ジュニアピアノコンクールで大勝を取った人。2年前だったか,総合文化センターで開催されたガラ・コンサートで彼女の演奏を聴いた。まったくこの時期の2年というのは,刮目して待たなければならない期間であって,すっかり素敵なレディになってたんでした。
 ピアノの腕前も進歩してるんだろうけど,これはぼくの把握力を超える。望めば芸大も楽勝だろうけど(芸大って,英語だの算数だのの成績も良くないと入れないんだったっけ),さてどうされるのか。

● 23番って,モーツァルトのピアノ協奏曲のなかでも特に知られているもののひとつ。なんだけど,ぼくはあんがい聴いてない。交響曲の40番とか「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」に比べると,ぜんぜん聴いてない。生で演奏される機会もさほど多くないようだし。
 加えて,遅刻の咎があって,ステージになかなか集中できなかった。遅刻すると大損こくことになるね。

● 落ち着けたのは,次のグリーグから。こちらは短大の学生が交替で。高橋奈々美さん,清水周さん,小堺香菜子さん。
 この曲はCDで何度も聴いている。ライヴでも4回。印象的なのはやっぱり出だし。これで忘れられなくなりますね。
 CDで聴くのはもっぱら横山幸雄さんの演奏。必死こいてないサラッとした感じがいいですな。もちろん,実際にサラッと演奏したのかどうかはわかりませんが。

● 休憩後は,チャイコフスキーの5番。鉄板のひとつですよね。右側手前がヴィオラという,わりと珍しい配置(これを通常配置っていうんですか)。
 この楽団,現役の生徒・学生に教員,OB・OG。それとエキストラで構成されている(栃木県地域オーケストラとの合同だから,エキストラという位置づけではないんだと思うけど)。
 主力はOB・OG。どこかのホールでお見かけした顔も。栃響にもここのOB・OGがけっこういるっぽい。当然っちゃ当然。

● 寄せ集めの難しさはあったんだと思うけど,結果としてオケとしての一体感は確保されていた感じ。個々の技量はさすがで,聴かせどころはきちんと聴かせてくれた。
 ぼく的にはファゴットに注目。OGでした。音程が安定してて音のかすれがないのは当然として,輝度が高いっていうか。きめが細かいという印象。

● 第2楽章冒頭のホルンのソロ。現役生がいたようなんだけど,どうして彼女にやらせなかったのかねぇ。またとない勉強の機会なんだから,きっちり勉強させればいいのに。
 このコンサートをコンサートとして成功させることを優先したんでしょうけどね。無責任な部外者としては,なんだかもったいないなと思った。

● 最後に「彩音祭讃歌」というのを歌った。指揮者を務めた星野和夫さんが作曲。当然,お付き合いしたけれども,若干の抵抗があったのも事実。なんで来場者にも強制するんだよ,っていう。
 ま,小さい話で申しわけないんだけど。

2013年11月15日金曜日

2013.11.14 タマーシュ・ヴァルガ チェロリサイタル-宇都宮音楽芸術財団第1回演奏会

栃木県総合文化センター メインホール

● ウィーン・フィルが来日中。サントリーホールでの公演は,S席が35,000円。D席で13,000円。ぼくには無縁の天上界のできごとだ。
 昔に比べればだいぶ安くなってはいるんだと思うんだけどね。世の中にお金持ちはいるもので,サントリーホールはおそらく連日満席だろう。
 やっかみ混じりにいえば,普段はまったく音楽なんて聴かないよっていう人たちが,何割かは紛れこんでいるだろうと推測する。普段は聴かないけど,ウィーン・フィルだったら聴く。それがいけないことかと問われれば,ぜんぜんまったく悪くないと答える。
 むしろ,その物見高さ,野次馬根性の旺盛さは,称賛されてしかるべきだ。人間,それを失ったらおしまいだからね。

● というわけで,ウィーン・フィルの演奏は聴きにいけないけれども,ウィーン・フィルの首席チェロ奏者が宇都宮に来るというので,聴いてみることにした。
 といっても,じつのところ,ちょっと迷った。理由は二つある。
 演奏は文句のつけようがないに決まっている。問題は,どうしたってこちらの鑑賞水準ってことになる。演奏の良さが自分にわかるのかっていう不安ですね。
 リサイタルの類は客を選ぶ。オーケストラの規模になれば,とっかかりはいくらでもあるけれども,演奏規模が小さいほど,そのとっかかりが少なくなる。単楽器の演奏(ピアノの伴奏はあるけど)となると,間口が狭くなる分,深く味わえないと退屈なだけになる。ま,通じゃないとなかなか,ね。
 で,自分が通じゃないってことは,自分でよくわかっているわけでしてね。

● 理由の二番目は会場が1,600人収容の大ホールだったこと。これでもし後ろの方の席だったら,少し以上に辛すぎるでしょ。リサイタルはできれば近くで聴きたいからさ。
 でも,自由席。早めに行って並べばいいか。
 というわけで,行ってきましたよ,と。

● 主催者は宇都宮音楽芸術財団。最近できた法人。
 活動の趣旨は,音楽大学を卒業しても演奏で身を立てられる人はわずかしかいないという厳しい状況の中で,それでも技術を磨くべく精進している人たちがいるから,そうした人たちを助けよう,ということ。具体的にはきちんとした経済的見返りの保証がある演奏の場を提供しよう,と。
 その原資は,聴く側に負担を求める。会員になってもらって,会費を負担してもらう。それだけでは足りないだろうから,企業にも協賛してもらう。今回は足利銀行が共催している。

● その初回の演奏会。今回は財団のお披露目のためでしょうかね。
 開演は午後7時半。非会員はチケットを購入。3,000円。

● 使用されたのは1階席のみだった。非会員にあてられたのは左右のサイド席。あとは会員席になっていて,その会員席がそれなりに埋まっていたのは,正直,意外。
 新幹線で来たと話しているグループもいた。自分でもチェロを弾く人たちが勉強のために聴きに来てたんでしょう。東京の音大の学生もいたようだ。

● プログラムは次のとおり。
 シューマン アダージョとアレグロ
 グリーグ チェロソナタ
 ポッパー ハンガリー狂詩曲
 リゲティ 無伴奏チェロソナタ
 ブラームス ソナタ ホ短調
 アンコール:ラフマニノフ ヴォカリーズ

● 休憩時間にお客さんのひとりが,深いねぇと言っているのが聞こえた。深い,かぁ。
 今まで何人かの日本人チェリストの演奏を聴いたことがあるけれど,それらと比べて違うのか違わないのか,違うとすればどこがどんなふうに違うのか。
 違うような気もする。だけど,違わないかもしれない。わからない。
 音色に透明感があって,音に伸びやふくよかさを感じたってことは言えるんだけど,それって何も言っていないに等しい。

● で,そんなことに気を取られていると,一番肝腎な,演奏で遊ぶっていう観客の特権を置きざりにする結果になる。

● いやいや,素晴らしい演奏でしたよ。アンコール曲なんか,溶けてしまいそうな感覚を味わった。
 話になんない。いったい,どんだけの表情を持ってんだよ,っていいますかね。千変万化。微妙なビブラートの効果。微差が大差。
 どうしたらここまでになれるのか。ちょっと想像がつかない。技術を極めるとこうなるのか,それともプラスαが要るのか。プラスα込みで技術なのか。
 こういうのって,ほとんど言葉の遊びでしょうね。そういうものは才能だよってことにしておくのが,一番穏当なんでしょ。

● 曲のアラを探さない人なのかもしれない。練習の仕方ひとつにしても,細かい工夫を重ねているに違いない。ブルドーザーよろしく力業で勝負するようなことはしないよね,たぶん。
 クールで頭がいい。そんな印象の人でした。

● ピアノ伴奏は浅野真弓さん。ブラームスのソナタなんか,ひょっとして主役はピアノかと思いたくなる。浅野さん,気持ち遠慮があったかもしれないけど,それを含めて芸なんでしょうねぇ。
 それと,譜めくりの女の子。以前も見たことがあるような。姿がよくて,彼女も演奏に花を添えていた。

2013年11月12日火曜日

2013.11.11 第4回音楽大学オーケストラ・フェスティバル-洗足学園音楽大学&桐朋学園大学

ミューザ川崎 シンフォニーホール

● 首都圏にある音大の夢の競演とでもいいますか。今日,11月11日を皮切りに,11月23日,12月1日,12月8日と,4日間で8つの音大オーケストラがそれぞれの腕前を披露する。
 3月には8大学の混成チームの演奏もある。

● 会場は東京芸術劇場とミューザ川崎。わが家からはけっして近いとは言い難いんだけど,チケットが発売された夏場に通し券を買っていた。
 1回あたり1,000円のところ,通し券だと750円になる。予想される演奏水準に照らせば,何とも格安。なんだけど,電車賃こみだと5,000円。宇都宮でだったら,プロのオーケストラの演奏が聴けますな。
 うーん,ちょっと微妙。ではあるんだけど,やっぱ,これ,聴きたくなるわけで。

● リニューアル後のミューザ川崎は初めて。いいホールですよね。日本を代表するホールのひとつなんでしょうね。地の利も文句ない。スタッフのホスピタリティも素晴らしい。
 全席指定になっている。ぼくの席は2階。ファーストヴァイオリンのメンバーを正面から見る位置だった。このアングルでオーケストラを見るのも,もちろん初めて。
 開演は午後6時半。

● まず,洗足学園音楽大学。ブルックナーの7番。指揮は秋山和慶さん。端正かつ流麗というんでしょうね。熟練した職人の匠の技。
 4日に宇都宮シンフォニーオーケストラの演奏で4番を聴いたばかりだけど,7番もまた弦のトレモロで始まる。
 何ものかの誕生を予感させる。それは大きな(というか,根源的な)何かだと思えるんだけど,結局それは誕生したのかしなかったのか。そこがわからない。

● けれども,ブルックナーがとてつもない作曲家で,この交響曲がとんでもない質量を備えた大曲であることはよくわかった。今はそれだけで充分だ。
 それすら,CDを何度聴いても,わからなかったんだから。音大生の真摯な演奏を聴いて,そのところだけは理解できた。わざわざ来た甲斐があったというものだ。

● 音大も女子が圧倒的に多い。楽器を始める時点で,ほとんどが女子なんだから,これはもう当然のことなんだけど,こうしてながめてみると,どこかで落ち着きが悪い。演奏がという意味ではなくね。
 男が多けりゃいいってことではぜんぜんないんですけどね。どうも落ち着きが悪い。どういう按配のものでしょうね,これは。

● 次は,桐朋。芸大と並ぶ(あるいは芸大をしのぐ)実力派。ステージにスタンバイしたところで,若きプロ集団といった趣を感じさせた。
 演奏したのは,ストラヴィンスキーの「カルタ遊び」と「春の祭典」。指揮は高関健さん。秋山さんといい高関さんといい,こういう指揮者が登場して,チケットが750円なんだからねぇ。

● いかな桐朋でも「春の祭典」は強敵だったに違いない。予定調和は通用しないし,ストップ&ゴーが過激だし,ちょっとでも手を抜けば印象が散らかってしまう。よくもまぁこんな曲を作った作曲家がいたものだと思うもんね。
 そこをいささかの破綻もなく,ここまで仕上げてくるというのは,本当にすごいと思う。脱帽。ほんと,脱帽。
 奏者のひとりひとりが費やしてきた時間の長さと密度に,思いを致させる。何万時間を費やしてきたんだろう,ってね。

● 妙なことも頭に浮かんだ。それぞれが才能あふれた俊才なわけだけれども,他の学生と比較して,自分はこの程度だなと見きわめがついてしまうことがあるだろう。
 高度な水準に到達しているからこそ,自分の才能の限界が見えてしまう,っていうか。あいつにはかなわないとか,プロに行くのは厳しいなとか。
 子供の頃からそれ一本に賭けてきた若者が,自分の上限を見ざるを得ない気持ちって,どんなものなんだろうなぁ,っていうね,そんなことを思ったんですけどね。
 それとも,そんなに深刻になってもいないのか。まぁ別にいいよ,音楽だけが人生じゃないし,って割り切っているんだろうか。

2013年11月10日日曜日

2013.11.10 第67回栃木県芸術祭 バレエ合同公演

栃木県総合文化センター メインホール

● 開演は午後2時。入場無料。昨年に続いて,お邪魔するのは今回が二度目。

● 踊る側にとってバレエとは何なのか? ぼくにはわからない。けれども,観る側にとってバレエとは何かと問われれば,上質なファンタジーだと答える。今のところは,だけど。
 男性のダンサーもいるので何なんだけど,バレエって優雅に表現された女性美を愛でるものだというのが,目下の結論。

● 優雅な女性美っていったって,生身の女性は優雅じゃないわけですよ。少なくともぼくは,リアルの世界で優雅な女性に出合ったことなんて,ただの一度もないからね。優雅なんかやってたんじゃ,女商売張ってけないだろうしさ。
 だから,バレエってファンタジーだよね。長くレッスンを続けて,初めて表現できるものですよね。自然界には存在しないものを表現するわけだから。

● まずは,「MK.School of Ballet」の生徒さん。
 まったく個人的な好みなんだけど,観ていて一番面白いのは,小学校高学年から中学生にかけての女の子が踊るダンス。少女から大人への移行期にある乙女たちの踊り。ちょっと背伸びしている感じがとてもいい。化粧映えもするしね。
 「くるみ割り人形」第3幕の世界各地の踊りの場面は,そういう意味で大いに満喫。かわいいもんですな。

● 2番目の「安達千恵バレエ研究所」はシンデレラ。
 プロコフィエフ作曲のこの楽曲のCDは持っているんだけど,聴いたことはない。バレエ音楽って音楽だけ聴いても,なんだかねぇ。チャイコフスキーだって,組曲の方は数えきれないほど聴いてるけど,本体?はまだ聴いたことがない。
 ともあれ。ぼく的には,ポワントで立って安定を保っていられるってだけで,なんだか信じられないわけですよ。支点は極小で重心があがるんだから,指先でちょっとつつかれたらぐらつくはずだよねぇ。力学的にそうなるよねぇ。
 この不自然さは何事か。ただ,それがきれいなことは確かで,美を身体的に表現するには,過酷な負荷をかけなければならないんですね。

● 3番目は「ヒロコ ダンス スタジオ」の生徒さん。
 バレエの華は群舞だと思っている。「コッペリア」のマズルカは軽快なダンス。「パキータ」は見応えがあった。一切の反論を許さない説得力。
 踊り手はとんでもない緊張と集中を要求されながら,一方でその緊張と集中を客席に見せてはいけない。軽々とにこやかにやっているように見えなければならない。緊張と集中を生で出してしまっては,優雅さから遠ざかるからね。
 そのためのレッスンは相当に泥臭いものにならざるを得ないでしょうね。

● 次は,「タカハシ ワカコ バレエ スタヂオ」の生徒さん。
 「海賊」の「花の庭」は絵的には最もきれいだったと思う。衣装の色とかにも気を配るんだろうな。

● 5番目は「橋本陽子エコール ドゥ バレエ」の生徒さん。
 クラシックヴァリエーションに登場したダンサーたちは,バレエをやるために生まれてきたような体型の持ち主たち。手足が長い。
 そして上手い。ぼくにもわかるくらい上手い。

● 最後は「クラシカルバレエアカデミーS.O.U」の皆さん。ここまではクラシックが多かったけれども,ここはコンテンポラリーを持ってきた。
 「Progress」はラインの変化の妙とキレのある動きを堪能すればいいものでしょうか。迫力充分。踊ってる子たち,ダンスが好きなんだろうなぁ。
 「ジャルダン・ドゥ・フルール」は,一転して,明るく軽やかな舞。
 「Concert symphonique」は,衝突事故が起きないのが不思議なほどに,ラインが大きく素早く変化する。バレエダンスのほとんどすべてが盛り込まれている。運動量がハンパない。これもインパクトが大きかった。

● 最後に全国バレエコンクール入賞者によるエキシビションがあって,3人が踊った。最後は男性ダンサーだった。
 何だかねぇ,ほんとに今の女の子たちのパワーはすごいものだと感じいった。

2013年11月9日土曜日

2013.11.08 パリ・ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団特別演奏会

栃木県総合文化センター メインホール

● 気をつけなければいけないことがある。コンサートに出かけるのが過多になっていることだ。生のオーケストラを聴くのが日常に組み込まれている。
 もちろん,自分でそうしているんだけど,悪い意味で狎れが出てしまいがちだ。そこを自分でわかっていれば,まぁいいけれども,そのうちその注意すら消えてしまうかもしれない。そうなったらおしまいだ。
 プロは小さい頃から時間のほとんどを費やして今があるんだろうし,アマチュアは年に1回か2回の演奏会のために練習を重ねてくる。そのステージを狎れで聴いてたんでは,演奏者に対して無礼千万という以前に,自分が哀れすぎる。

● 今回はパリ・ギャルド・レピュブリケーヌ吹奏楽団の来日公演。Wikipediaによれば,「フランス国家憲兵隊の共和国親衛隊(Garde républicaine)に所属している軍楽隊」で,「演奏隊員のほとんどはパリ音楽院の卒業者であり,民間との兼職が認められている。現在,22名が民間オーケストラのメンバーを兼務,49名が私立音楽学校教授を兼務している」とある。
 開演は午後7時。チケットはSとAの2種。このホールでは,1階左翼席を自分の定位置にしている。今回もその席を取った。A席だった。3,000円。

● ぼくらは,白人っていうか欧米人に対して卑屈になってしまいがちだ。若い人はそうでもないのかもしれないけど,ぼくの年代だと多くの人がそうだと思う。
 欧米じたいが長く続けてきた人種差別に洗脳されているのかもしれないし,太平洋戦争に負けたことが効いているのかもしれない。
 欧米を憧れの対象にしてしまう。これがなかなか抜けなくて。困ったもんだ。
 クラシック音楽は向こうが本場だから,なおのこと。

● まずは,シャブリエの狂詩曲「スペイン」でご挨拶。
 指揮はフランソワ・ブーランジェ氏。几帳面な人。ていねいにタクトを入れていく。でも,そこはかとなく優雅さをただよわせる。なかなかいい感じ。っていうか,かなりすごくないですか,この指揮者。
 演奏についていうと,メロディーを奏でるのがとてもうまいと思った。楽器に歌わせるのに長けているっていうか。四角い演奏をしていないんですよ。

● 次は,ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」。ピアノの三舩優子さんが登場。彼女のピアノを聴くのは,これが2回目。
 彼女には欧米コンプレックスなんてのはないでしょうね。場数も踏んできてるし,実力も折紙つきだし。
 演奏後の客席に対するショーマンシップの表現もほぼ完璧。やりすぎず,品を落とさず。この部分も含めて,楽団との齟齬がない。楽員のリズムに干渉しない。
 でさ,指揮者のエスコートがまた堂に入っていてね。さすがはフランス野郎だな。

● 15分間の休憩後,ガーシュウィン「ラプソディー・イン・ブルー」。再び,三舩さんが登場。この曲は彼女のためのもの。黙って聴きなさいね,あんたたち,ってなものでしょうね。
 このあたりから,この楽団のすごさがぼくにもわかりだしてきた。メロディーを奏でるのがうまいだけじゃないや,ハーモニーも完璧じゃん,みたいな。

● ボロディンの歌劇「イーゴリ公」より“ダッタン人の踊り”と,最後はベルリオーズの「幻想交響曲」から第4楽章と第5楽章。シャブリエで始まってベルリオーズで終わる。オープニングとエンディングはフランス。
 ここではもう,ひたすら謹聴。ぼく的にはオーボエのオッサンとフルートのメガネが印象に残ったけど,どの奏者がどうのこうのではなくて,まったく破綻のないアンサンブルだし,その,何というのか,艶があった。色気っていうか。
 これがフランスかっていうのは雑駁すぎる話で,フランスじゃなくてもこういう演奏はあると思う。要するに,圧倒的な実力のある楽団ですね,っていうこと。

● アンコールは「アルルの女」の前奏曲。レベルの高さをわかりやすく見せつけてくれた。さらに,「カルメン」の前奏曲でとどめを刺した感じ。
 これじゃ盛りあがらないわけがない。んだけど,ビゼーのこのふたつを並べられると,おい,オレをなめてんのか,っていう気分がきざしてくるところもあってさ。われながら,ちっちゃい男だな,オレ。
 でも,もうひとつあった。ヨハン・シュトラウス「ラデツキー行進曲」。ここまでやられると溶けちゃいますな。サービスのだめ押しって効くね。
 いや,大満足で帰途につくことができました。

● 中高生が団体で来ていた。小学生の集団もいた。当然,それぞれの学校で吹奏楽部に属している生徒たちだろう。
 客席のメインは彼ら彼女らだった。その結果どうなるかというと,客席全体の鑑賞マナーが格段に向上する。不思議だけど,そうなる。
 いや,不思議だけどと言ったのは言葉の流れであって,べつに不思議でも何でもないやね。熱心さが違う。熱心な分だけ,スタミナの持続が問題になることはあるかもしれないけれども。

● 彼ら彼女らは,遠足に来たかのようにはしゃいでいる風があって,それが他のお客さんにも感染するという効果もあったかもしれない。
 休憩時間には,舞台の下に集まって,懸命に舞台をながめている一群もいた。どんな楽器を使ってるのか,気になったんでしょうかねぇ。
 こんなことを大人がやったら,通行の邪魔だよ,ボケッ,そんなとこに突っ立ってんじゃねーよ,ってなるんだけど,彼女たちだとまぁほほえましいこと。
 奏者の入退場の際にも彼らに手をふる。これも大人はできない。中学生は躊躇なくやる。奏者の方もにこやかに応対。こういう光景っていいもんだよね。

2013年11月4日月曜日

2013.11.04 宇都宮シンフォニーオーケストラ秋季演奏会

栃木県総合文化センター メインホール

● 宇都宮シンフォニーオーケストラ,今回の秋季演奏会にはブルックナーを持ってきた。ブルックナーを取りあげただけで偉い,とまで持ちあげるつもりはないけれど,それなりの勝算がなければ,舞台にはかけないものだろう。
 ともかく,メインはブルックナーの交響曲第4番 変ホ長調「ロマンティック」。露払いはブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」。
 開演は午後2時。チケットは1,000円。当日券を購入。

● ブルックナーって,生では聴いたことがないと思ってたんだけど,2年前の4月に,当時の古河フィルの演奏で7番を聴いていた。忘れていたくらいだから,まともな聴き方ができてなかったのだろう。
 8月の末に2日間で交響曲のすべてを一気聴きしてみたんだけど,ぼくの耳ではすべて同じ曲に聴こえた。ブルックナーは5番から音楽的に深みが出てくる,っていう話も聞くことがあるんだけども,ぼくにはぜんぜんわからず。
 その後,何度か聴き直してみたんだけど,やっぱり印象は変わらないまま,今日になった。

● 弦のトレモロがやはり印象的でしたね。ブルックナーの「原始霧」と呼ばれたりするんですってね。
 森林の暗い霧の中を連想させるというわけだけど,このトレモロから連想するのは,森林の霧とは限らないでしょうね。
 生命の誕生を思う人もいるかもしれない。初めて生命が誕生する前のかすかなゆらぎ。母親の胎内にいたときの,何の悩みもない安らぎを想像する人もいるかも。ゆりかごに揺られてたゆたっているような。

● ただ,「原始」というのはすこぶる言い得て妙。このトレモロに限らず,曲のそちこちに,始原的なものを感じさせる仕掛けが施されているような印象あり。
 宇宙の始まり。地球の誕生。水ができて酸素ができて。かすかな芽吹きの気配。目を醒ましそうな赤ん坊。そういう始原的なもの。

● でね,そういう感じって,睡眠中枢をけっこう深い部分で刺激するっていいますかね,要するによく眠れそうなんですよ。
 大音量で盛りあがっていくところがあるわけだけど,そんなものではとても目が醒めないほどに深い眠りに誘ってくれるっていうかさ。

● 冒頭のホルンのソロ。これがその後の演奏の質を決めますか。いや,そんなことはぜんぜんないんだと思うんですけどね。ただ,客席に届く印象はこのホルンが決めてしまうかもね。
 お客さんってだいたい気短かだからさ,今日はこれくらいの水準だなってサッサと決めつけて,安心したがるところがあるような気がするんでね。
 ホルン吹きにとっちゃ,けっこう以上の重圧だね,ここ。

● フルートの1番,オーボエの1番,クラリネットの1番も,それぞれかかってくる圧をはねのけないといけない。
 っていうか,ヴァイオリンもヴィオラも,ひと晩寝たら右腕が筋肉痛になってないかっていうくらいのものだなぁ。労働量の多い曲ですねぇ。体は鍛えとかなくちゃいけないんですねぇ。

● アンコールは「Stand Alone」。森麻季さんの役はクラリネットが務めた。
 何はともあれ,ブルックナーを生で聴けたわけで,これを機にブルックナーに対するぼくの耳が,もうちょっと良くなってくれるといいんだけど。

2013年11月3日日曜日

2013.11.03 東京フィルハーモニー交響楽団演奏会 vol.4

宇都宮市文化会館 大ホール

● 宇都宮で年1回開催されている東京フィルハーモニー交響楽団演奏会の,今年は4回目。前回に続いて,今回もオール・チャイコフスキー。スラブ行進曲,ピアノ協奏曲第1番,交響曲第5番。
 開演は午後3時半。指揮も前回と同じ大井剛史さん。チケットはS,A,B,Cで,ぼくはB席。2,000円。

● このホールでは2階の右翼席に座ることが多い。そこがお気に入り。今回はその席を取った。そしたらそこはB席だったということ。
 ということは,ぼくはずっとBに分類される席を好んできたのだねぇ。そんなことはどうでもいいんだけど,ともかくお気に入りの席が2,000円。それで東京フィルの演奏を聴けるって,何だか得した感じ。
 早めに買えば以後もこの席を取れると思うんで,当然,そうさせていただこうと思ってる。

● まず,スラブ行進曲。スラブというかロシア讃歌ってことになるんでしょうね。
 ところでさ,太平洋戦争の末期から戦後にかけて,当時のソ連が日本人に対して行った仕打ちはちょっと度が過ぎてるよね。捕虜のシベリア抑留が代表的だけれども,それ以外にもあるぞ。『もういちど読む山川日本近代史』で著者の鳥海靖さんがさりげなく書きこんでいるんだけど,それを読んだら,モスクワに原爆を落としてやりたくなったぞ。
 まぁね,日本軍だって朝鮮半島や中国大陸では,人が人に対してやっちゃいけないことをいろいろとやってるんだから,それが戦争というものだよと言われれば,ああそうですかと言って,引きさがるしかないんですけどね。
 さらに,そんなこととチャイコフスキーの音楽との間に,何の関係があるのかといえば,まったく何も関係はないわけですけどね。

● ピアノ協奏曲のソリストは仲道郁代さん。日本を代表するビッグネームで,知名度も抜群。彼女のピアノを聴きにきたというお客さんも多かったんじゃないかと思う。終演後の拍手も凄かった。アイドル状態。
 彼女のピアノは過去に二度聴いたことがあるんだけど,オーケストラとの共演は初めて聴く。
 あふれるほどの才能をまとった人の,熟練の技というべきなんでしょうね。メリハリがきいて躍動感もあるしね。

● 交響曲5番。前回は4番で次回は6番「悲愴」。後期交響曲を順番にということですな。
 演奏はもうお任せしましたよってことですねぇ。楽しませていただきますよ,よろしくね,っていう。

● 三枝成彰さんが『クラシック再入門 名曲の履歴書』でお書きになっているように,チャイコフスキーって「人間の感情に訴えかけるキャッチーなメロディで,グイグイと快感のツボを押し,ここぞという時には,全楽器で同じメロディを奏すユニゾン(斉奏)で大胆に盛り上げる」。三枝さんはこれを「あざとさ」と言われる。
 わかっていても,「聴いているうちにぐいぐい引き込まれ,ついつい気持ちよくなってしまうのだ。まるでお涙頂戴の芝居を観て,不覚にも涙を流してしまうかのように」。ほんと,そのとおり。さすがにプロは上手いこと書くなぁ。

● 1stヴァイオリンの2番奏者に注目。彼女の弾き方になぜだか惹かれた。彼女の音だけを抽出しようと試みたんだけど,さすがにプロのオーケストラはそれを許してくれなかった。
 パート全体でひとつの音なんですな。ぼくの耳では分割不可能だった。

● アンコールは「弦楽セレナーデ」から第2楽章「ワルツ」。
 次回(来年の今日)も大井さんの指揮でオール・チャイコフスキーになるらしい。ソリストには宮田大さんが来るらしいから,曲目のひとつは「ロココの主題による変奏曲」になるのだろう。

● ぼくの前に小さな子ども二人を含む家族連れが座った。子どもたち,最後までおとなしく聴いていた。偉いなぁ。ほんとに偉いと思うな,こういうの。
 両親とお出かけできるだけで嬉しいんだろうかね。大人の世界に紛れ込んだのが新鮮だったのか。どっちにしてもたいしたものだと思った。