2014年8月11日月曜日

2014.08.10 鹿沼市立東中学校オーケストラ部第15回定期演奏会

鹿沼市民文化センター 大ホール

● 昨年に続いて拝聴させていただくことにした。昨年は驚きの連続だった。驚きでもあったし,発見でもあった。中学生がここまでやれるのかっていう。
 が,今回はそうではない。昨年の驚きは今年の驚きにはならない。すでに知ってしまったわけだから。たいていのことは想定の範囲内になってしまう。
 そこがなぁ。毎回,同じことに驚けたらいいのになぁ。

● ぼくにも中学生だった時期が,当然だけど,あった。部活の経験も多少ながらある。そのわずかな経験から思うに,部風の伝承というのは,順繰りではないような気がしている。3年生の薫陶は,2年生ではなく,1年生に受け継がれる。
 1コ上はけっこう話しづらいものだが,2コ離れているとスムーズに話ができる。1コ上とは反目しがちだ。ぼくはそうだった。可愛いのも1コ下より2コ下の後輩たちだったような。
 だから何なんだっていわれると,べつに何でもないんだけど。

● ところで。この日は台風11号が西日本を縦断。ちょうど鹿沼駅に着いた頃に,雨足が強烈になった。傘をさしても5メートルも歩けば,びしょぬれになりそうだ。
 どうしようか。タクシーで向かおうか。それとも,引き返そうか。
 第一,この天気で催行するのかよ。ネットで確認した。のだが,中止とか延期とかっていうのは出ていない。ボーッと空を見ながら思案投首。

● そのうち,雨が弱くなった。よし今のうちに行ってやれ。スマホでベートーヴェンの「第九」を鳴らして,イヤホンで聴きながら歩きだした。
 あとで知ったのだが,このときたぶん竜巻が発生したのだろう,鹿沼市内でも人家の屋根が持っていかれるという被害が発生していた。

● JR駅から鹿沼市民文化センターまではいつだって歩いて往復している。坂を下り,黒川を渡って市街に入り,今度はけやき坂をのぼっていく。約30分。
 これほど変化のある散歩コースってちょっとないかもしれないと思うほど。

● ともあれ。着いてみれば,予定通りの催行。そりゃそうだ。開演は午後2時。入場無料。
 ただ,そうはいっても天気は客足に影響する。前回に比べると,会場はだいぶ空いていた。
 開演前にプログラムをザッと読む。3年連続で文部科学大臣奨励賞を受賞したことや,部員が80名もいることを知った。公立の中学校で80名の部員を擁しているってのはただ事じゃないように思える。この大本を支えているのは何なんだ。

● まずは金管アンサンブル。宇宙戦艦ヤマト,笑点のテーマ,ドラえもんメドレー,ルパン三世のテーマと続いて,最後はラングフォード「ロンドンの小景」から第5楽章と第6楽章。
 ぼくはオーケストラをメインに聴いているので,金管もオーケストラにおける金管のイメージが強い。自分が主役になることはなく,もっぱら裏にまわって強弱をつけたりメリハリをつけたりという役回りに従事してるっていうイメージ。
 金管に限らず管楽器は,吹奏楽の方がやってて面白いんじゃないかと思う。

● であればこそ,こうしたアンサンブルでは期するところがあるものなんでしょうね。ホルン,トランペット,トロンボーン,チューバとある中で,どれが主でどれが従ということはない。どの楽器が転けても全体が転ける。
 そこを敢えていうと,トランペットのクリアな斬りこみが必須だと思っている。トランペットがクリアじゃなかったら,全体が切れない刀になる。
 で,そのトランペットをはじめ,すべての楽器が役割を果たして,特に最後の「ロンドンの小景」は,これがアンサンブルだっていう見本のようなもの。お互いの音も充分に聴きあっていた。たぶん,彼らが一番演奏したかったのもこの曲なのだろう。

● 次は木管アンサンブル。まず,モーツァルト「木管五重奏曲 ハ短調」の第1楽章。ゆらゆらとモーツァルトが立ちあがってくる。たしかに今,モーツァルトを聴いているっていう,ね。
 低音で合いの手をいれるファゴットが印象に残った。

● メンバーが交替して,次の4曲を演奏。
 ミューラー 木管五重奏曲 ハ短調(抜粋)
 久石 譲 海の見える街 君をのせて
 ヘンデル 水上の音楽(抜粋)
 最後の「水上の音楽」が特に記憶に残っている。とろけるような,と形容しておきたい。ゾクゾクした。セクシーさを感じた。
 捌きが巧い。楽器の捌き。特にフルート。

● 弦楽合奏。ヴィヴァルディの「四季」から「夏」の第3楽章。各パートの精鋭を揃えたんだろうか。最低限の人数に抑えての小合奏。完成度が恐ろしく高い。さらに良くするために,どこをどう直せばいいのか。ぼくにはわからなかった。
 人数が増えて,チャイコフスキー「弦楽セレナーデ」第4楽章。この学校の弦の水準の高さは,昨年聴いてよくわかったつもり。つもりなんだけれども,これだけの人数でここまで音が揃っているとは,やはり驚くしかない。
 音が揃っているから濁らない。濁らないから聴きあきない。ずっと聴いていたいと思わせる。

● 休憩のあと,オーケストラ演奏。
 チャイコフスキー 組曲「眠れる森の美女」よりワルツ
 ワーグナー 歌劇「ローエングリン」より第3幕への前奏曲
 ヨハン・シュトラウス 喜歌劇「こうもり」序曲
 ストラヴィンスキー 組曲「火の鳥」より「カスチェイ王の踊り」「終曲」
 チャイコフスキー 幻想序曲「ロミオとジュリエット」

● これだけ曲調が違うものを演奏しわけて,しかもそれぞれの世界がバーッとステージに立ちあがってくる。楽譜を機械的に音に翻訳してるんじゃなくて,解釈してるんでしょうね。楽譜を読み込んでいる(という気がした)。
 おっかなびっくり音を出していないのがいい。正面から斬りこんでいく。それができるのは,それぞれ,腕に覚えがあるからなんだろう。
 早い話が,並みじゃない。指揮者である顧問の先生の功績はもちろんあるのだと思うんだけどね。

● どの曲もCDでも生でも聴いている。でも,これほどストレートに届いてくる「ロミオとジュリエット」を聴いたことがあったかどうか。
 出だしの,これから起こる悲劇を予告するかのような,クラリネットとファゴットによる暗鬱な調べ。そこからスッとステージに引きこまれた。
 中学生が演奏しているとわかって聴いているから,そうなるのかもしれない。これが大人がやっていたら,まったく同じ演奏であったとしても,聴いているこちら側が同じ印象を持つかどうかはわからない。そこは踏まえておいた方がいいぞと,自分に言い聞かせながら聴いていた。

● 客席に届くもの。それを決めるのは技術じゃない。いや,そういうと演奏者に失礼だ。技術は充分に持ち合わせていると思えたから。しかし,何なんだろ。技術だけではない。
 その「だけではない」部分を解明できるといいんだけど,どうもぼくには手に余る作業のようだ。

● 願わくば,メンデルスゾーンの3番でもドヴォルザークの8番でも,もちろんベートーヴェンでもブラームスでもチャイコフスキーでもいいんだけど,ひとつの交響曲を1楽章から4楽章まで通して聴かせてもらいたいと思った。
 技術的には充分可能だろう。心配なのはスタミナだけか。でも,おそらく,この生徒たちならやってのけるだろう。やってのけたうえで,魅せてくれるだろう。

4 件のコメント:

  1. 今年、オーボエを吹いている三年です。
    この記事の時は二年でしたが....。
    毎年6月に、東中、西中、それぞれの学校の卒業生、客演の方などが勢揃いで、ジュニアフィルと称し交響曲を全楽章と二、三曲演奏します。
    今年はチャイコフスキー第五番と、フィンランディア、ペールギュントを演奏しました。
    また、毎年11月には同じメンバーで第九を演奏します。
    今年は四楽章のみですが、来年は全楽章演奏するそうです。
    私は1stを吹かせてもらいます。
    今年の第九は11月23日です。
    ご都合よろしければ、是非お越し下さい。
    場所は、鹿沼市民センターです。

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    1. ありがとうございます。

      今年の定演は平日でしたね。行けなくて残念でした。
      もう少し注意を払って工夫をすれば行けたはずなのですが。
      けっこう以上に残念感が残ります。

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  2. そうですね。会場もすかすかでした…。
    来年、休日にやるようでしたらおいでください。

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    1. はい。

      鹿沼市民文化センターのサイトの催しもの案内は,チェックしてたんですよ。
      でも,見逃してしまってて。

      その日が過ぎてから気がついて,しまったと思ったわけでした。
      ひょっとすると,サイトに載ったのが直前だったのかもしれない。

      ともあれ。
      来年はちゃんとチェックして,たとえ平日でも行くつもりでいます。
      貴女のオーボエが聴けないのが,少々以上に残念ではありますが。

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