2025年6月10日火曜日

2025.06.08 栃木県交響楽団 第117回定期演奏会

宇都宮市文化会館 大ホール

● 開場前から長蛇の列。幾重にも折れ曲がって延々と続いている。チケットはあらかじめ買ってあるが,入れるのかと思ってしまう。
 ダラダラと延びた列というのは,視覚に過大に映る。ホールのきっちり詰まった座席に座らせると,何だこんなものだったのか,となるのは経験則でわかっているのだが,それでもこれだけ長い列を見るとね。

● 今回は栃響創立50周年記念。本来ならとっくにやっているはずのものだったが,コロナで開催中止。5年遅れで,しかし,仕上げて,公開に漕ぎつけた,と。
 ちなみに,今回は50周年記念の1st.ステージ。2nd.もあって,マーラーの2番を演るらしい。時期は来年の今頃か。

● というわけで,今回は曲目が凄い。ドヴォルザークの9番とストラヴィンスキーの「春の祭典」。
 開演は14時。指揮は三原明人さん。

● ドヴォルザークの9番。ひょっとして,この楽曲には普段聴いているのとは違う,別版の楽譜があったのか,と思った。???と思ったところが数ヶ所あった。
 ???には単なるミスも含まれるけれども,ミスは仕方がない。人間が演奏しているのだ。プロでもやる。
 そうではなくて,緩急というか,テンポというか。指揮者のいわゆる解釈の範疇だろうか。異物感があった。
 だからダメと言うのではもちろんない。今まで聴いて来たのとは違う,と感じただけのことだ。

● 「春の祭典」は当然にして大編隊。この曲をなぜ演奏できてしまうのか。そこがまず不思議だ。
 音源があって,実際の演奏を何度でも聴くことができるからだ,というのがひとつの解答ではあろうけれども,縦の線を揃えるだけでも大変でしょ,これ。しかも,これだけの大人数なのだ。

● さすがは栃響。特に,弦の水準が全体を盛り上げていた感じ。
 盛り上げるというより,演奏の大枠を形作っていた。この弦があったから「春の祭典」が成立したんじゃないか,と思わせるっていうかね。
 急いで付け加えておくが,他がダメと言ってるのではない。そんなことは1ミリもない。ダメなパートがあったら,そもそも演奏にならないのでね。

● 打楽器のセンターに久しぶりの田村さん。賛助になるんだけれども,やっぱりここは彼女じゃなきゃって感じですか。
 終演後に指揮者に立たされたときにも,彼女への拍手がひときわ大きかった。ティンパニへの拍手が大きいのは演奏会の常ではある。目立つところにいるし,音も目立つ。けれども,今日の拍手は見事だったという客席側の意思表示でしょう。

● 唯一,残念だったのは,終演の1秒前,最後の一音がこれから鳴るというときに,ブラボーを叫んだバカがいたことだ。
 ブラボー屋って,若者が多いのかと思いきや,たいていは皮膚のひったるんだ中高年のオヤジであるのは,経験則の教えるところ。どうしようもない年代なんだな。

● あと,客席の照明を明るくするタイミングをひょっとしたら間違えたか。もう少し余韻を引いてもよかったかもしれない。

2025年6月2日月曜日

2025.06.01 慶應義塾ワグネル・ソサィエティー・オーケストラ 第244回定期演奏会

ミューザ川崎 シンフォニーホール

● 開演は13:30。チケットは TEKET で。曲目は次のとおり。指揮は原田慶太楼さん。豪勢なものだ。
 伊福部昭 SF交響ファンタジー第1番
 ニールセン 交響曲第1番
 ドヴォルザーク 交響曲第7番

● どうです? これは聴いておきたいと思うでしょう。北関東の田んぼの村からでも川崎まで行きますよ。
 というか,ミューザは北関東からだと一番行きやすいホールだったりする。宇都宮から乗り換えなしで一本で行けるし,駅から至近だしね。

● この演奏会を聴きに行くか行かないかを決める理由は,色々ある。演奏するオケがどこなのか,何を演奏するのか,というのがまずあるけれども,どこで演奏するのかもわりと大きな理由かな,と。
 なおかつ,チケットの入手が容易であること。つまり,TEKET に対応していること。こういう些末なことがけっこうモノを言う。場所がミューザで,チケットが TEKET で買えるなら,行ってみるかとなったりする。

● ミューザの音響はサントリーホールをしのぐのではないかと思っている。国内屈指の名ホールのはずだ。
 が,欠点もあって,座席が窮屈なこと。もうひとつ。座席の配置は斬新でいいと思うのだが,その配置ゆえ仕方がないことながら,自分の席を見つけにくい。
 今回のぼくの席は1C-11列-27。北関東の田んぼの村から出向くのだから,奮発してS席を取ったのだけど,パッとわかったわけでもない。慣れるしかない。だいぶ慣れてはきたのだけどね。

● 指揮の原田慶太楼さんは,何というのか,客を呼べる指揮者だ。日本では数少ない存在ではなかろうか。和製バーンスタインと言いたくなるパフォーマンス。
 一見,奔放に見えるけれども,とてつもなく緻密。入念に譜読みを重ねているに違いない。それを指揮という身体動作と表情作りに翻案する。その翻案の仕方が原田流を形作っているのだが,ではその「仕方」を言語化してみろと言われると,本人にもできないだろう。長嶋や落合やイチローにどうしてそのバッティングフォームなのかと訊ねても,長嶋も落合もイチローも答えられないだろう。それと同じ。

● 慶應ワグネルといえば,大学オケの中では超絶有名。実力も伴っている。原田さんを引っ張って来れるのも,その実力ゆえでしょ。
 弦の奏者に男性が多い。1st.Vn の第1プルトが2人とも男性というのはアマオケでは珍しいんじゃないですか。
 ま,これはSF交響ファンタジーのときのことで,ニールセンになると,あれっ,男,減っちゃったよ,ってなったんだけどね。

● SF交響ファンタジー第1番は,ひょっとして原田さんの提案だろうか。ノリノリで力のこもった立派な演奏で,この1曲で田んぼの村から出張ってきてよかったと思いましたよ。
 この楽団は海外公演もやるらしい。このプログラムでデンマークとチェコに殴り込めばいいんじゃないですかね。

● 他の2曲,特にドヴォルザーク7番も聴き応えがあった。音大に行こうとすれば楽々行けた学生が相当いる。
 美形で頭が良くて楽器もセミプロ級。どれかひとつ,ぼくにも分けてくれないか。