宇都宮市文化会館 大ホール
● 開演は午後6時。指揮は清水宏之さん。曲目は次のとおり。
シベリウス 交響詩「フィンランディア」
ブルッフ ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調
ブラームス 交響曲第2番 ニ長調
● 「フィンランディア」を聴くのは,最近の2ヶ月でこれが3回目。続くときは続くものだ。
2階席でステージを見下ろす位置だった。眼下にオーケストラの演奏を眺めて思うのは,音大ではない一般の大学の学生が繰り広げるパフォーマンスの水準の高さだ。
まったくの想像で言うんだけど,発足当時の栃響よりも今の宇大管弦楽団の方が,おそらく技術は上だろう。この分野に関する限り,昔はよかったはあり得ない。年々,裾野が切りあがっている。理由はわからない。
● ミスがなかったわけではない。ミスれば,トランペットやホルンに限らず,どんな楽器でも目立つ。目立つから,誰が聴いてもミスはミスとわかる。聴き手の水準が低くても,ミスはわかる。巧いのはなかなかわからないけど。
ミスはどうしたってある。切り換えてるようでは間を取りすぎる。スッと戻る感じですかね。ミスを意識しないところまで行ければ理想的だろうけど。
● しかし,ミスがない演奏がいい演奏だろうか。いい演奏とはミスのない演奏だろうか。ミスらないように守りに入った内向きの演奏なんて,客席に何も届かないだろう。
そういうことを考えさせる演奏だった。ミスが致命傷になることはまずないものだと思わせる演奏だったといいますか。
● ブルッフのヴァイオリン協奏曲,ソリストは会田莉凡さん。彼女のヴァイオリンは,昨年,那須野が原ハーモニーホールで聴いている。
まだ20代の半ば。この国の演奏界を牽引していく一人になるのだろう。っていうか,すでに牽引しているのだろう。
● 協奏曲は,基本,バックの管弦楽で決まる。聴き終えたあとの印象を決めるのは,管弦楽の方だと思っている。これが一定の水準に達していないと,そもそも協奏曲にならないわけで。
とはいえ,ブルッフのこの曲はソリストの見せ場が多い。ふんだんにある。彼女が創りだす音を聴き,演奏ぶりを見ていればいい。
まったくの素人感想なんだけど,弦で指を切ったりしないんだろうか。しないんだろうね。するわけないんだけどさ。アクロバティックな動きが頻出するじゃないですか。ヒヤッとするわけですよ。
● ブラームスの2番の印象も「フィンランディア」と同じ。
要所要所にOB・OGの俊英(と思われる)を配しているのが効いているのかもしれないんだけど,弦の安定感がまず印象的。不安を感じさせない。
● 次回は12月13日。真岡市民交響楽団の「第九」と重なる。時間帯も同じ。これは困る。どちらに行くか,かなり悩ましい。
約2時間のコンサートが終了した直後の満足感は,他のものでは代替できません。この世に音楽というものが存在すること。演奏の才に恵まれた人たちが,時間と費用を惜しまずに技を磨いていること。その鍛錬の成果をぼくたちの前で惜しみなく披露してくれること。そうしたことが重なって,ぼくの2時間が存在します。ありがたい世の中に生きていると痛感します。 主には,ぼくの地元である栃木県で開催される,クラシック音楽コンサートの記録になります。
2014年7月6日日曜日
2013年6月15日土曜日
2013.06.15 サマー・フレッシュ・コンサート
那須野が原ハーモニーホール 小ホール
● 那須野が原ハーモニーホール(那須野が原文化振興財団)が主催する「クラシック・サマーシリーズ」の第1弾。第81回日本音楽コンクールのファイナリストによる協演。
開演は午後3時。全席指定で料金は3,000円。当日,チケットを購入。後ろの方の席しか残っていなかったけれども,何の問題もなし。
栃木県で最もいいホールをあげろと言われれば,この那須野が原ハーモニーの小ホールを推す。多少の誇張を加えていえば,このホールに悪い席は存在しない。
左右のゆとりがもうちょっとあるといいと思うけど,まぁ,これで不満を言ったら申しわけないだろう。
● トップバッターはピアノの江沢茂敏さん。日音コンクールこそ3位だったものの,受賞歴は華々しい。桐朋学園の3年生。田舎紳士的風貌なんだけど,東京都の出身。
演奏したのはスクリャービン「幻想曲ロ短調」。堂々たるもんですな。押しだしの良さは,上手に共通した特徴ですな。
出場者のそれぞれが,プログラム曲のあとにアンコール曲を演奏して,次の奏者に替わるという方式だった。江沢さんが演奏したアンコール曲は,同じスクリャービンで「左手のための小品」より「ノクターン」。左手一本でここまでできちゃうよ,と。かっこいい。こういう曲ってエチュードにちょうどいいものなんですか。
● この種の演奏会は,ぼくには難易度が高い。ほぼオーケストラしか聴いていないし,CDで聴くのもオーケストラ曲がメインになっているからで,そこから外れた曲(膨大にあるわけだが)にはとんと馴染みがないってのが,第一の理由。
作曲家や奏者にとっても,小回りのきく小さな曲の方が,思いを乗せやすいってことはあるんだろうか。あるいは,遊べるっていうか。とんがらせやすいっていうか。
こちらがその思いにピッタリとはまればいいんだけど,そういうことはたぶんめったにないと思うので,そのあたりも難易度が高くなる理由かもしれない。
● ヴァイオリンの会田莉凡さん。桐朋学園の4年生。会田さんもまた華々しい受賞歴。コンクールで測れる部分がどの程度なのかぼくには見当もつかないんだけど(コンクール用の傾向と対策があって,それがけっこう有効性を持ってしまってるんじゃないかと,密かに邪推もしてるんだけど),キラキラとまばゆい才能をまとっていることは間違いないんでしょうね。
演奏したのは,ショーソン「詩曲」。諏訪内晶子さんのCDでたぶん一度は聴いてるんじゃないかと思うけど,記憶にはとどまっていない。
アンコールはヴィエニャフスキ「華麗なるポロネーズ1番」。たっぷりと聴かせてもらった感じ。ピアノ伴奏は田中麻紀さん。
● 次は声楽。テノールの松原友さん。関西二期会の会員で,すでにプロとして活躍中。声楽の人って,ステージ袖から登場したとたんに聴衆の気持ちを掴むのが巧いですな。オペラの舞台でその訓練も積んでしょうね。
山田耕筰「からたちの花」とシューベルトの「漁師の歌」「鱒」「春に」「ミューズの子」。アンコールもシューベルトで「音楽に寄せて」。
なんでこういう声がでるのかね。誰でもきちんと訓練すれば,ある程度のところまでは出せるようになるのか。
ピアノ伴奏は佐野まり子さん。ちなみに,今回の見所のひとつは,ピアノ伴奏の女性陣の競演。皆さん,美形でね。見るなと言われても見ちゃいますよ,どうしてもね。
● クラリネットの川上一道さん。ウェーバーの「グランド・デュオ・コンチェルタンテ」を演奏。山形交響楽団の団員。すでにプロ。精密な演奏。クラリネットを構えたとたんに,クラリネットの先端まで神経が通うみたいな。
石橋尚子さんのピアノにも注目。見事な伴奏ぶりで,こういうところにもプロっているんだなぁ,と。
● 川上さんは沖縄出身で,大学も沖縄県立芸術大学。地元の秀才が地元の大学に行ったって感じね。猫も杓子も東大を目指すんじゃつまらないものなぁ。
才能あふれる俊才が芸大や桐朋に蝟集するって面白くないよねぇ。あの先生に師事したいからっていう理由で中央を目指すって,ありふれてるっていうか,あたりまえすぎるっていうか。そんなの吹っ飛ばしてみせろよって思うことがあって(無責任だな),その実例を見るとオオッと思う。
というわけで,アンコールは沖縄の曲。普久原恒男「芭蕉布」。
● 最後は,トランペットの篠崎孝さん。彼もすでに大阪フィルのトランペット奏者を務めている。プログラムのプロフィール紹介によれば,大学を卒業してすぐに大阪フィルに入団したようだ。
演奏したのは,ピルスの「トランペットのためのソナタ」。この曲は正真正銘,CDでも聴いたことがない。今回初めて聴いた。ピアノ伴奏は小松祥子さん。
トランペットの音色って,勇壮だったり哀愁をおびていたり。表情を幅広くつけることができる楽器なんですね。ジャズで多用されるのも納得という,ちょっと無難にまとめすぎの結論。
アンコールはアンダーソン「トランペット吹きの子守唄」。さすがにこれは何度か聴いたことがある。
● 15分間の休憩のあと,第2部。第2部は「那須野が原ハーモニーホール・ゆかりのアーティストコーナー」と題して,那須塩原市出身の金子鈴太郎(チェロ)さんが登場。
大阪シンフォニカーのチェロ奏者を務めて,現在は長岡京室内アンサンブルをはじめ,種々のステージで活躍中,と。大晦日に東京文化会館で催行される「ベートーヴェンは凄い! 全交響曲連続演奏会」のステージでお見かけしたこともある。
● 演奏したのは,バッハの「無伴奏チェロ組曲」の4番と3番。玄人受けする楽曲でしょうね。ぼくを含めて大方のお客さんには相当な難物だったと思われる。
こういうものを自然にいいと感じて味わえるようになりたいものだ。しかし,そこに至るには,相当に道遠しという感じがする。
● 今回は,この演奏会に合わせて,ロビーで「那須塩原市の洋画家 星功(ほしいさお)展」も開催されていた。
ピエロの絵とトスカーナの風景画。けれども,ぼくには猫に小判。どうも絵はわからない(いや,絵もわからない,と言い直した方が正確か)。頭でわかろうとしてるんだろうか。
● 那須野が原ハーモニーホール(那須野が原文化振興財団)が主催する「クラシック・サマーシリーズ」の第1弾。第81回日本音楽コンクールのファイナリストによる協演。
開演は午後3時。全席指定で料金は3,000円。当日,チケットを購入。後ろの方の席しか残っていなかったけれども,何の問題もなし。
栃木県で最もいいホールをあげろと言われれば,この那須野が原ハーモニーの小ホールを推す。多少の誇張を加えていえば,このホールに悪い席は存在しない。
左右のゆとりがもうちょっとあるといいと思うけど,まぁ,これで不満を言ったら申しわけないだろう。
● トップバッターはピアノの江沢茂敏さん。日音コンクールこそ3位だったものの,受賞歴は華々しい。桐朋学園の3年生。田舎紳士的風貌なんだけど,東京都の出身。
演奏したのはスクリャービン「幻想曲ロ短調」。堂々たるもんですな。押しだしの良さは,上手に共通した特徴ですな。
出場者のそれぞれが,プログラム曲のあとにアンコール曲を演奏して,次の奏者に替わるという方式だった。江沢さんが演奏したアンコール曲は,同じスクリャービンで「左手のための小品」より「ノクターン」。左手一本でここまでできちゃうよ,と。かっこいい。こういう曲ってエチュードにちょうどいいものなんですか。
● この種の演奏会は,ぼくには難易度が高い。ほぼオーケストラしか聴いていないし,CDで聴くのもオーケストラ曲がメインになっているからで,そこから外れた曲(膨大にあるわけだが)にはとんと馴染みがないってのが,第一の理由。
作曲家や奏者にとっても,小回りのきく小さな曲の方が,思いを乗せやすいってことはあるんだろうか。あるいは,遊べるっていうか。とんがらせやすいっていうか。
こちらがその思いにピッタリとはまればいいんだけど,そういうことはたぶんめったにないと思うので,そのあたりも難易度が高くなる理由かもしれない。
● ヴァイオリンの会田莉凡さん。桐朋学園の4年生。会田さんもまた華々しい受賞歴。コンクールで測れる部分がどの程度なのかぼくには見当もつかないんだけど(コンクール用の傾向と対策があって,それがけっこう有効性を持ってしまってるんじゃないかと,密かに邪推もしてるんだけど),キラキラとまばゆい才能をまとっていることは間違いないんでしょうね。
演奏したのは,ショーソン「詩曲」。諏訪内晶子さんのCDでたぶん一度は聴いてるんじゃないかと思うけど,記憶にはとどまっていない。
アンコールはヴィエニャフスキ「華麗なるポロネーズ1番」。たっぷりと聴かせてもらった感じ。ピアノ伴奏は田中麻紀さん。
● 次は声楽。テノールの松原友さん。関西二期会の会員で,すでにプロとして活躍中。声楽の人って,ステージ袖から登場したとたんに聴衆の気持ちを掴むのが巧いですな。オペラの舞台でその訓練も積んでしょうね。
山田耕筰「からたちの花」とシューベルトの「漁師の歌」「鱒」「春に」「ミューズの子」。アンコールもシューベルトで「音楽に寄せて」。
なんでこういう声がでるのかね。誰でもきちんと訓練すれば,ある程度のところまでは出せるようになるのか。
ピアノ伴奏は佐野まり子さん。ちなみに,今回の見所のひとつは,ピアノ伴奏の女性陣の競演。皆さん,美形でね。見るなと言われても見ちゃいますよ,どうしてもね。
● クラリネットの川上一道さん。ウェーバーの「グランド・デュオ・コンチェルタンテ」を演奏。山形交響楽団の団員。すでにプロ。精密な演奏。クラリネットを構えたとたんに,クラリネットの先端まで神経が通うみたいな。
石橋尚子さんのピアノにも注目。見事な伴奏ぶりで,こういうところにもプロっているんだなぁ,と。
● 川上さんは沖縄出身で,大学も沖縄県立芸術大学。地元の秀才が地元の大学に行ったって感じね。猫も杓子も東大を目指すんじゃつまらないものなぁ。
才能あふれる俊才が芸大や桐朋に蝟集するって面白くないよねぇ。あの先生に師事したいからっていう理由で中央を目指すって,ありふれてるっていうか,あたりまえすぎるっていうか。そんなの吹っ飛ばしてみせろよって思うことがあって(無責任だな),その実例を見るとオオッと思う。
というわけで,アンコールは沖縄の曲。普久原恒男「芭蕉布」。
● 最後は,トランペットの篠崎孝さん。彼もすでに大阪フィルのトランペット奏者を務めている。プログラムのプロフィール紹介によれば,大学を卒業してすぐに大阪フィルに入団したようだ。
演奏したのは,ピルスの「トランペットのためのソナタ」。この曲は正真正銘,CDでも聴いたことがない。今回初めて聴いた。ピアノ伴奏は小松祥子さん。
トランペットの音色って,勇壮だったり哀愁をおびていたり。表情を幅広くつけることができる楽器なんですね。ジャズで多用されるのも納得という,ちょっと無難にまとめすぎの結論。
アンコールはアンダーソン「トランペット吹きの子守唄」。さすがにこれは何度か聴いたことがある。
● 15分間の休憩のあと,第2部。第2部は「那須野が原ハーモニーホール・ゆかりのアーティストコーナー」と題して,那須塩原市出身の金子鈴太郎(チェロ)さんが登場。
大阪シンフォニカーのチェロ奏者を務めて,現在は長岡京室内アンサンブルをはじめ,種々のステージで活躍中,と。大晦日に東京文化会館で催行される「ベートーヴェンは凄い! 全交響曲連続演奏会」のステージでお見かけしたこともある。
● 演奏したのは,バッハの「無伴奏チェロ組曲」の4番と3番。玄人受けする楽曲でしょうね。ぼくを含めて大方のお客さんには相当な難物だったと思われる。
こういうものを自然にいいと感じて味わえるようになりたいものだ。しかし,そこに至るには,相当に道遠しという感じがする。
● 今回は,この演奏会に合わせて,ロビーで「那須塩原市の洋画家 星功(ほしいさお)展」も開催されていた。
ピエロの絵とトスカーナの風景画。けれども,ぼくには猫に小判。どうも絵はわからない(いや,絵もわからない,と言い直した方が正確か)。頭でわかろうとしてるんだろうか。
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