2018年1月31日水曜日

2018.01.28 フレッシュアーティスト ガラ・コンサート

栃木県総合文化センター サブホール

● このコンサートは,毎年この時期に「とちぎ未来づくり財団」が主催しているもの。「栃木県ジュニアピアノコンクール」と「コンセール・マロニエ21」の優勝者の披露演奏会。
 以前は毎年開催していたが,コンセール・マロニエ21が1回2部門実施から1部門に減らしたのにあわせて,2年に1回の開催に変えたようだ。

● というわけで,今回は昨年度と今年度のコンセール・マロニエ21の優勝者を迎えて実施。開演は午後2時。
 入場無料。事前に「とちぎ未来づくり財団」に申しこんで,整理券をもらっておく方式。

● 昨年度は声楽部門だった。第1位だった山下裕賀さん(メゾ・ソプラノ)が,声楽家は誰でもそうだけれども,にこやかな笑顔をふりまきながら登場。伴奏ピアノは鴇田恵利花さん。
 演しものは次のとおり。
 瀧廉太郎 花
 山田耕筰 あわて床屋
 中田喜直 霧と話した
 平井康三郎 うぬぼれ鏡
 チャイコフスキー 歌劇「オルレアンの女」より“さらば森よ”

● コミカルな「あわて床屋」の後に,実らなかった過ぎた恋をしっとりと思いだす乙女を演じて,再びピョンピョンと跳ねるような「うぬぼれ鏡」。
 この選曲はどんな理由によるものか。第一には客席サービスなのだろうけれども,自分で楽しむというか試してみるというか,そうした気味合いもあったのだろうと推測する。
 圧倒的な声量,どこまであるんだと思わせる音域,表情や仕草による表現力。異能の持ち主としか思えない。

● 今年度はピアノ部門。そこで圧倒的な存在感を見せた田母神夕南さんの,今回の曲目は次のとおり。
 ショパン エチュード
 ショパン 子犬のワルツ
 ショパン=リスト 「6つのポーランドの歌」より“5.私のいとしい人”
 ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第29番(第1楽章のみ)

● この選曲も客席サービスを意識したものかもしれない。栃木県ジュニアピアノコンクールの入賞者も一緒に演奏することは当然聞かされていたろうから,特にそれを意識したかなと思うんだけど,まるで当たっていないかも。
 この人の持ち味は何か。ぼくにはわからない。わからないなりに感じたのは,力感というか力強さだ。グイグイと押してくる。
 できうれば,「ハンマークラヴィーア」と称されるベートーヴェンのソナタをぜんぶ聴いてみたかったけれども,諸般の事情でそうもいかない。

● ひょっとすると,田母神さん,グレン・グールドの心境を味わっていたかも。つまり,聴衆がいなければもっといい演奏になったのに,と。ちょっと聴衆が残念だったかも。
 これはね,栃木県ジュニアピアノコンクールの入賞者と一緒にするのがいけない。彼ら彼女らの父兄や親戚が来るわけだから,どうしてもね。自分のお目当ての演奏が終わると,ゾロゾロと途中で帰っていくし。

2018年1月30日火曜日

2018.01.27 東京大学音楽部管弦楽団 第103回定期演奏会

ミューザ川崎 シンフォニーホール

● 一昨年の第101回以来,2年ぶりの東大オケ。この楽団の演奏を初めて聴いたのは8年前。東大生って勉強だけじゃないんだなぁと,わりと強烈に感じたことを記憶している。
 ほかに特徴が2つあって,ひとつは男子比率が高いこと。もうひとつは,女子団員の美人度が高いことだ。育ちの良さそうなおっとりした感じの美女なのだ。君たち,色々と持ち過ぎなんじゃないのかい,と思うんだけどね。

● 開演は午後1時30分。チケットはSとAの2種。今回は当日券もあったようだけれども,この楽団の演奏会に関しては,チケットは前もって購入しておくのが吉。じつは,ぼく自身,当日券頼みで聴きに行ったところ,チケット完売を知らされる憂き目にあったことがある。
 というわけで,“チケットぴあ”を通して2,000円のS席を買っておいた。楽団に直接申しこむこともできるんだけど,前にちょっとした行き違いがあって(ほんのちょっとした行き違い),今回は“ぴあ”を通すことにした。

● 普通,定演といえば,1回だけの演奏だろう。が,この定演は同じ内容で二度開催。14日に東京芸術劇場でもやっているのだ。
 いつからそうなったのかは知らないけれども,おそらくチケットを買えなかったお客さんから,何とかしてくれという要望があったのだろう。あるいは,団員から出た意見かもしれないが。
 とにかく,人気があるということ。で,その人気の淵源は東大というネームバリューではない(と思う)。自分も東大にあやかりたいからとか,自分の子どもを東大に入れたいから子どもと一緒に来たとか,そういうことではない(と思う)。演奏そのものにある。

● 曲目は次のとおり。指揮は松元宏康さん。彼の指揮に接するのは,今回が初めてだ。
 レスピーギ 交響詩「ローマの噴水」
 リスト 交響詩「レ・プレリュード」
 ブラームス 交響曲第4番 ホ短調

● 「ローマの噴水」はピアノやハープのほかにオルガンまで加わるわけだから,オーケストラを超えると言いたくなるほどの大編隊になる。さすがにオルガンやハープは賛助を仰いでいる。が,この編成で求心点が揺らいでいない。
 それって普通じゃない? そこが揺らぐようじゃこの曲を取りあげちゃダメでしょ,と言われれば,それはそうなのかもしれないけれど,この安定感はただ事ではない。

● リストの「レ・プレリュード」も,ぼくのイメージでは取扱いの難しい曲に属する。ヘタに扱うと散らかりやすい。
 そうさせないためには,アンサンブルが緻密であって,その緻密さに狂いがないことがまず必要だ。ただし,それだけならさほど遠くない将来に,コンピュータがそういう演奏をやってのけてくれるかもしれない。

● 正確さに生気を吹きこまなければいけない。その生気を吹きこむもの。奏者の思いというのか集中というのか,本番までにやってきたこと,上手くいかなくて苦しんだこと,その他の一切合切がそうなのかもしれないけれど,技術ではないところの何ものか。
 それが演奏に乗らないと,演奏に生気が宿らないということがあるのかないのか。ぼくはあると思っているんだけども,東大オケは,その“吹きこむもの”を昇華させるのが巧いという印象がある。それも,図抜けて巧い。

● もっとも,この点に関しては,あまり巧くてはいけないのかもしれない。生気を吹きこむところまで,コンピュータができるようになるのかもしれない。というか,たぶんなるのだろう。
 しかし,囲碁や将棋で,プロ棋士がコンピュータに敵わなくなっても,人間同士の対局が魅力を失うことはないのと同様,生身の人間が演奏するのでなければ聴衆は納得しない。

● メインはブラームスの4番。第3楽章,第4楽章はほぼ完璧で,文句のつけようがない。力が漲っているのに,走り過ぎがみじんもない。音大の演奏ではないことが,にわかには信じがたいほどだ。
 第1楽章と第3楽章が終わったあとに,何ごとかを叫んだ人がいた。外国人だった。It's so cool と言ったように聞こえた。感に堪えたという趣があった。
 ぼくらは楽章間に拍手をしてはいけないというルールに縛られているけれども,この奇声(?)は悪い感じはしなかった。アリだな,これ,と思った。奏者にも力になったかもしれない。気がこもっていたから。

● この楽団のもうひとつの特徴。プログラム冊子の曲目解説だ。3つの解説が,それぞれ論文仕立てになっているところは,さすが東大というべきだろうか。
 これに食いついていける人はそんなに多くないと思われる。ひとつには格調が高すぎるからだ。
 が,無理に食いつこうとしなくてもいいかもね。演奏する側はここまで勉強しているのだ,と知っておくだけでよいのではないか。

2018年1月20日土曜日

2018.01.14 足利カンマーオーケスター ニューイヤーコンサート

那須野が原ハーモニーホール 大ホール

● 今年の聴き初め。足利カンマーオーケスターのニューイヤーコンサートで幕開けだ。

● 足利はこと音楽に関しては,相当活発に動いている印象がある。2013年に「足利オペラ・リリカ」が発足した。これがどういうものなのか,イマイチぼくにはわからない。プロ歌手を育成するところなのか,最初からプロを集めてオペラを催行するところなのか。はっきりしているのは,足利市民会館の専属団体だということ。
 足利カンマーオーケスターも「足利市民会館の専属プロフェッショナル室内オーケストラとして発足」したらしい。ここまでやっているところは,県内の他市町にはないでしょ。うまくいくとは限らないと言われたろうけれど,もう5年が経過する。
 他に,毎年,N響が足利で演奏会を開催している。市からの働きかけがあってのことだろう。

● しかし,問題がひとつある。足利市側の問題ではなく,こちら側の。つまり,19時開演だと最終の黒磯行きに間に合わないのだ。その日のうちに家に帰り着くことができない。
 いくら北関東道路ができたとはいえ,ぼく的には車で足利まで行く気にはならない。車で走るのは片道50㎞が限度かなぁと思っている。車を運転してると,時間を捨てているような気がしてね。
 というわけだから,なかなか足利まで聴きに行くということにはならない。

● ところが,今回は,向こうから那須に来てくれる。なら,これは行くしかないでしょ,というわけで,出かけてみたわけなんでした。
 どんな演奏をするのか興味があったし。どんな人たちなのかも興味があったね。

● 開演は午後2時。チケットは2,000円。当日券を購入。
 曲目は次のとおり。指揮は大井剛史さん。
 モーツァルト 交響曲第36番「リンツ」
 ヴォーン=ウィリアムズ チューバ協奏曲
 J.シュトラウス ワルツ「春の声」
 J.シュトラウス 喜歌劇「インディゴと40人の盗賊」序曲
 J.シュトラウス シャンペン・ポルカ
 ヨーゼフ・シュトラウス ワルツ「オーストリアの村つばめ」
 J.シュトラウス ポルカ「観光列車」
 J.シュトラウス 皇帝円舞曲
 ちなみに,ヨーゼフ・シュトラウスとはJ.シュトラウスの弟。こういうふうに書き分ける習わしなんですかね。

● 前半が「リンツ」とチューバ協奏曲。チューバは田村優弥さん。田村さん,作新学院の(英進部というよりは)吹奏楽部を卒業して,藝大に進んだ。2015年のコンセール・マロニエ金管部門で第1位。
 その田村さんの軽快な捌きはお見事だと思うんだけど,どうも大井さんの指揮とオケが噛み合っていないように思えたんだが。何とはなしにノリが悪いような。指揮者もオケも。気のせいか。ひょっとして,大井さん,疲れている?

● それが解消されたのは,後半のニューイヤーコンサートに入ってから。こちらは,どの曲も流れるように過ぎていく。演奏する側も気持ちいいに違いない。
 Wikipediaによれば,ウィーン・フィルによるニューイヤーコンサートが始まったのは,「ナチス・ドイツのオーストリア併合によるオーストリア人の不満をためないよう」にするためだったらしい。当然,オーストリア人に馴染みがある曲で,コアなクラシック音楽ファンでなくても楽しめるものに仕立てられたわけだろう。
 胃もたれのしない,軽快な曲が続く。結果的に,新年早々のコンサートにはピッタリというかね。世界中にテレビ中継されるのも,同じ理由によるだろう。

● 下世話な推測なんだけど,放送料だけでも莫大な金額がウィーン・フィルに転がりこむんだろうな。年間収入の何割かをこれだけで稼ぐんじゃないか。
 だからこれはやめられないよね。ずっと続いていくだろうね。

● 昨日は足利で定演だった。ブルッフのヴァイオリン協奏曲があった。これは聴きたかったなと思う。だったら足利まで出て来いや,ってことだよなぁ。
 このオケのメンバーの中で一人だけ知っている人がいる。いや,知り合いだという意味ではなくて,演奏を聴いたことがあるという意味ね。コントラバスの廣永瞬さん。2012年のコンセール・マロニエ本選に出ていた。

● アンコールはお約束(?)のラデツキー行進曲。YouTubeでカラヤンが指揮している演奏を見る(聴く)のは,日々の小さな楽しみ。生で聴けるのは大きな楽しみか。

2018年1月12日金曜日

2018.01.12 間奏57:WALKMANをずっと使っていない

● ということは,コンサート以外に音楽を聴いていないということだ。ダメじゃん,ぜんぜん。
 128GBのmicroSDカードを入れているのに,パソコンから転送した楽曲はいたって少ない。もっとガンガン入れて,ガンガン聴かなきゃなぁ。

● なぜWALKMANから遠ざかってしまうかというと,プレイリストを整理していないからだ。なぜプレイリストを整理していないかというと,SONY謹製の転送ソフトウェア「Media Go」がどうも使いづらい(と思っている)からだ。
 iTunesを使えるようにしてくれるとありがたいんだけど,そうはならないだろうな。敵に塩どころか,小判を送るようなものだものな。

● iTunesの解説本は“500円シリーズ”にもあったと思う。が,「Media Go」の解説書なんて見たことがない。ネットで解決するから,紙の解説本はなくてもいいんだけどね。
 で,ネットの解説ページを見て,やってみるんだけど,どうもうまくいかなくてね。どんだけアホなんだ,おまえは,と言われますな。

● といってもですよ,楽曲データを入れている外付けのハードディスクを「Media Go」が認識しないんですよ。
 だものだから,その先に行けないんですよ。

● ので,WALKMANのmicroSDに直接,データをコピーしてるんですけどね。それでもって,聴きたい曲を引っぱってきて聴く,と。
 これではあまりたくさんは入れられない。わけがわからなくなるから。というわけで,今のところは,ぼくのWALKMANはどうにも機動力に欠ける状態なんですよ。
 この週末にもう一度,「Media Go」に挑戦してみよう。このままじゃ半分以上,宝の持ち腐れだから。

● 今さら,iPod touch なんか買う気がしないでしょ。使ったことがないままに言っちゃ申しわけないんだけど,音質はWALKMANの方が優れていると思う。ハイレゾ級にして再生してくれるんだし。この機能,ぼくはけっこうバカにしてたんだけど,とんでもなかった。
 何とか,WALKMANの機能を十全に引きだして,音楽を聴く時間を紡ぎだしたいものです。