2018年1月30日火曜日

2018.01.27 東京大学音楽部管弦楽団 第103回定期演奏会

ミューザ川崎 シンフォニーホール

● 一昨年の第101回以来,2年ぶりの東大オケ。この楽団の演奏を初めて聴いたのは8年前。東大生って勉強だけじゃないんだなぁと,わりと強烈に感じたことを記憶している。
 ほかに特徴が2つあって,ひとつは男子比率が高いこと。もうひとつは,女子団員の美人度が高いことだ。育ちの良さそうなおっとりした感じの美女なのだ。君たち,色々と持ち過ぎなんじゃないのかい,と思うんだけどね。

● 開演は午後1時30分。チケットはSとAの2種。今回は当日券もあったようだけれども,この楽団の演奏会に関しては,チケットは前もって購入しておくのが吉。じつは,ぼく自身,当日券頼みで聴きに行ったところ,チケット完売を知らされる憂き目にあったことがある。
 というわけで,“チケットぴあ”を通して2,000円のS席を買っておいた。楽団に直接申しこむこともできるんだけど,前にちょっとした行き違いがあって(ほんのちょっとした行き違い),今回は“ぴあ”を通すことにした。

● 普通,定演といえば,1回だけの演奏だろう。が,この定演は同じ内容で二度開催。14日に東京芸術劇場でもやっているのだ。
 いつからそうなったのかは知らないけれども,おそらくチケットを買えなかったお客さんから,何とかしてくれという要望があったのだろう。あるいは,団員から出た意見かもしれないが。
 とにかく,人気があるということ。で,その人気の淵源は東大というネームバリューではない(と思う)。自分も東大にあやかりたいからとか,自分の子どもを東大に入れたいから子どもと一緒に来たとか,そういうことではない(と思う)。演奏そのものにある。

● 曲目は次のとおり。指揮は松元宏康さん。彼の指揮に接するのは,今回が初めてだ。
 レスピーギ 交響詩「ローマの噴水」
 リスト 交響詩「レ・プレリュード」
 ブラームス 交響曲第4番 ホ短調

● 「ローマの噴水」はピアノやハープのほかにオルガンまで加わるわけだから,オーケストラを超えると言いたくなるほどの大編隊になる。さすがにオルガンやハープは賛助を仰いでいる。が,この編成で求心点が揺らいでいない。
 それって普通じゃない? そこが揺らぐようじゃこの曲を取りあげちゃダメでしょ,と言われれば,それはそうなのかもしれないけれど,この安定感はただ事ではない。

● リストの「レ・プレリュード」も,ぼくのイメージでは取扱いの難しい曲に属する。ヘタに扱うと散らかりやすい。
 そうさせないためには,アンサンブルが緻密であって,その緻密さに狂いがないことがまず必要だ。ただし,それだけならさほど遠くない将来に,コンピュータがそういう演奏をやってのけてくれるかもしれない。

● 正確さに生気を吹きこまなければいけない。その生気を吹きこむもの。奏者の思いというのか集中というのか,本番までにやってきたこと,上手くいかなくて苦しんだこと,その他の一切合切がそうなのかもしれないけれど,技術ではないところの何ものか。
 それが演奏に乗らないと,演奏に生気が宿らないということがあるのかないのか。ぼくはあると思っているんだけども,東大オケは,その“吹きこむもの”を昇華させるのが巧いという印象がある。それも,図抜けて巧い。

● もっとも,この点に関しては,あまり巧くてはいけないのかもしれない。生気を吹きこむところまで,コンピュータができるようになるのかもしれない。というか,たぶんなるのだろう。
 しかし,囲碁や将棋で,プロ棋士がコンピュータに敵わなくなっても,人間同士の対局が魅力を失うことはないのと同様,生身の人間が演奏するのでなければ聴衆は納得しない。

● メインはブラームスの4番。第3楽章,第4楽章はほぼ完璧で,文句のつけようがない。力が漲っているのに,走り過ぎがみじんもない。音大の演奏ではないことが,にわかには信じがたいほどだ。
 第1楽章と第3楽章が終わったあとに,何ごとかを叫んだ人がいた。外国人だった。It's so cool と言ったように聞こえた。感に堪えたという趣があった。
 ぼくらは楽章間に拍手をしてはいけないというルールに縛られているけれども,この奇声(?)は悪い感じはしなかった。アリだな,これ,と思った。奏者にも力になったかもしれない。気がこもっていたから。

● この楽団のもうひとつの特徴。プログラム冊子の曲目解説だ。3つの解説が,それぞれ論文仕立てになっているところは,さすが東大というべきだろうか。
 これに食いついていける人はそんなに多くないと思われる。ひとつには格調が高すぎるからだ。
 が,無理に食いつこうとしなくてもいいかもね。演奏する側はここまで勉強しているのだ,と知っておくだけでよいのではないか。

0 件のコメント:

コメントを投稿