2011年12月31日土曜日

2011.12.31 ベートーヴェンは凄い! 全交響曲連続演奏会2011

東京文化会館大ホール

● 大晦日の「ベートーヴェンは凄い! 全交響曲連続演奏会2011」に行ってきた。
 午後1時の開演だったのだが,9時前に家を出た。余裕を見過ぎるというか,慎重過ぎるのがぼくの通弊。わかっているんだけれども,ここは治らない。
 ヨメが「青春18きっぷ」を用意しておいてくれた。普通に切符を買った方がちょっと安いんだけれども,ありがたく使わせてもらうことにして,11時に上野に着いた。

● 昼食を入れておこうと思ってウロウロしてみたのだが,立喰い蕎麦スタンド以外の店には入れなくなっている自分を発見。もともと,知らない店にブラッと入っていくのはあまり得意な方ではなかったけれども,年とともにその傾向が増している。
 外食もほとんどヨメと行くようになっていて,しかもぼくは彼女のあとをついて行くというスタイルだから,自立度が落ちているのだと解釈している。ヨメへの依存度が高くなっているといっても同じことだ。
 結局,改札を出て,駅前の立喰い蕎麦スタンドでカレーとかけ蕎麦のセットを食べた。あぁぁ,ですね。

● 東京文化会館に入るのは初めて。栃木の総合文化センターや那須野が原ハーモニーホールも素晴らしいホールだと思うけど,東京文化会館はさすが老舗のドッシリ感があった。昔からステージの音や客席の拍手,ロビーのざわめきを吸い込んできたのだなぁと思わせる。殿堂といった趣がある。日本の音楽文化を担ってきたのだっていう。
 ぼくは地元沈潜を目指してきたけれども,こうして都会のホールの空気に触れてみると,時々は東京に出なきゃダメだよなぁとも思ってしまうねぇ。

● さて,「ベートーヴェンは凄い! 全交響曲連続演奏2011」。その名のとおり,ベートーヴェンの交響曲を1番から順に演奏していくもの。
 座席はC席(5千円)。ヤフーオークションで9千円で落とした。2万円のS席はまだ空席があったのに,お金を惜しんでそのようにしたわけだが・・・・・。
 これは失敗だったことにすぐに気がついた。指定された席は4階の左翼。ステージから遠すぎた。奏者の表情や細かい動きがわからないのだった。したがって,奏者が音を紡ぎだす様子が窺えない。目を閉じて音だけ聴いているのとあまり変わらない。かくもあるかと思ったので,オペラグラスを持ってくるつもりでいたのだが,見事に忘れてしまった。
 指揮者の小林研一郎さんの後ろ姿が,骸骨の操り人形のように見えた。糸で吊されていて,カクカクと動かされているといった印象になる。しかも,ステージのすべてが視界に入るわけでもない。左側の一部が切れてしまう。これはけっこうなストレスになる。

● ここは大枚をはたいてS席を取るべきだった。演奏する「岩城宏之メモリアル・オーケストラ」は全日本選抜チーム,あるいはオールスターチームだ。国内で望みうる最高水準の演奏であるはずだ。
 であれば,S席で聴いてこそ。その方が格安感を味わえるはずだ。でなければ一番安いD席(2千円)でいい。中間のA,B,Cは選択肢に入れないことだ。

● 当日はすべてのチケットが完売になったらしく,当日券はなかった。しかし,S席にもけっこう空きがあった。チケットは買ったものの,都合が悪くて来られなかった人がこんなにいるのか,大晦日だものなぁ,にしてももったいないなぁ。2万円をパーにするんだからねぇ。
 が,時間の経過とともに,空席が減ってきた。5番,6番の演奏が始まる頃には空席はグッと少なくなっていた。マイナーな初期作品はパスして5番が始まる頃にやってくるのだろう。その辺の勝手がわかっているんだから,リピーターなんでしょうね。そうだとしてももったいないと思うけど。
 それでも最後まで空いたままの席もあった。あぁ,あそこに移りたい。ダメだけどね。

● 男女を問わず,ひとりで来ている人が多かった。ぼくの両隣もひとりで来ていた男性。さらにその隣も。若者も多かった。
 文字どおりの半日のコンサート,しかも大晦日に開催されるコンサートにわざわざ足を運ぶのは,究極のクラシックファンなのかもしれない。
 のだが。居眠りしているのもいるんですよ,けっこうね。これも空席と同じで,時間の経過とともに減ってきたけれどもね。

● プログラムは別売で2千円。迷った末に購入(迷うってのが情けない)。A4で75ページの堂々たるプログラム。
 この演奏会にはトヨタをはじめ12社がスポンサーになっている。それでも,これだけの演奏会をやるには資金不足なのだろう。チケットを値上げするのが本筋だと思うが,それをやって観客が減ってしまっては困る。主催者は色々と考えを巡らせているはずだ。プログラムも収益をあげる手段のひとつ。
 休憩時間にプロデューサーのひとりである三枝成彰さんのトークや奏者の苦労話なども披露された。これもプログラムの販促のためといっては嫌味が過ぎるだろうか。ぼくも半ばは寄付のつもりで購入した。

● とにかく,ベートーヴェンの交響曲を全曲演奏するのだから,演奏する側も途中で人の入替えがあるのだろうと思っていた。が,ないんですね。楽器にもよるが,ほとんどの奏者はずっと出ずっぱりで演奏する。とんでもないスタミナ。

● 演奏は素晴らしいに違いない。のだが,困ったことに,演奏が上書き保存されてしまうんですよ。2番を聴くと,それが1番の上に上書き保存される。1番は消去されてしまう。3番を聴くと2番が消去される。
 というわけで,最後に聴いた9番しか憶えていないことになる。ま,これは極端に言っているわけだけれども,9つ聴いて,9つの記憶が脳内に並列することはない。
 もちろん,だからダメというのではない。2番にしろ3番にしろ,それを聴いている時間は間違いなく至福を味わっているわけで。

● 再び次回はS席にしようと思った。これだけの演奏を聴きながら,心が飛んでいかないのだ。ずっと客席に張りついたままなのだ。ステージとの距離がありすぎるからだと思う。ステージの臨場感をたっぷり感じられる席がいいと何度も思った。

● 休憩時のトークについて上に書いたけれども,そこで誰かが言っていたこと。この長丁場を演奏できるのは,奏者もベートーヴェンから元気をもらっているからだ,と。なるほど。そういうことはあるに違いない。
 それと,ナマは静かな場面が印象に残るということ。これも言葉にされるとその通りと頷きたくなる。CDとナマの違いはまずはここにあるのだろう。CDで聴くと,静かなところ(たとえば6番の出だし)はたんに静かなだけだが,生演奏だとその静かさがくっきりとした味わいになる。

● すべての演奏が終わって上野駅に向かう途中で日付が変わった。静かなものでしたねぇ,新年を迎えたときの上野界隈。閑散としていた。歩いているのは東洋系の外人。寛永寺に初詣に向かう人の流れができているかと思いきや,そんな気配は微塵もなかった。上野公園にある清水観音堂もまた然り。

● 日が経つごとに,この「ベートーヴェンは凄い! 全交響曲連続演奏会」はほんとに凄かったなと思えてくる。今年の暮れもぜひ行きたい。何度も書いたが,今度は2万円を払ってS席で。
 大晦日の夜は教育テレビでN響の「第九」が放送される。その後はこの1年間の音楽界のニュースも。ベルリンフィルの定期演奏会を指揮した佐渡さんのインタビュー放送もあるようだった。
 正直言うと,わざわざ東京まで出かけるよりこのテレビ番組を見ている方が利口なのじゃないかとも思った。今のテレビは大画面だし。
 けれども,実際に行ってみれば,テレビなど吹っ飛ぶ。途方もないコンサートなのだった。

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