2015年12月16日水曜日

2015.12.13 第8回栃木県楽友協会「第九」演奏会

栃木県総合文化センター メインホール

● 今年で8回目になるこの第九演奏会。ぼくは第2回から聴いている。第4回は聴けなかったので,今回が6回目になる。
 ぼく的には年中行事になった感がある。この時期は第九。演奏するほうもそうでしょうね。この時期には第九を演奏するもんだって。8年間続いているんだからね。

● 今回もメインホールがほぼ埋まった。「第九」は間違いなくお客さんを呼べる鉄板なんだけど,それでも年々わずかずつ,空席が増えているようにも思われる。すべての催事には飽きが忍びよるものだってか。
 ということより,問題はもっと具体的で,新規参入者がいないのだろうな。高齢で外に出れなくなった人がいるはずだ。その分を補うだけの新規参入者がいない。そういうことなのだと思う。

● が,それはぼくが考えたところで,どうなるものでもない。ぼくは自分が楽しむことだけを考えればいいのだ。
 そう。楽しめばいい。休日の午後,カフェでもなくレストランでもなく,デパートでもなく遊園地でもなく,コンサートホールに来るのは楽しめると思うからだ。

● 管弦楽は栃木県交響楽団。厳密には違うらしいのだが,まぁ栃響と言ってしまっていいのだろう。指揮は荻町修さん。
 ソリストは,高島敦子さん(ソプラノ),栁田明美さん(メゾ・ソプラノ),上野尚徳さん(テノール),村山哲也さん(バリトン)。
 合唱団は栃木県楽友協会合唱団。第1回からずっと皆勤している団員もいるのではないかと思う。

● 「第九」の前に,ワーグナーの楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲。
 毎年,同じ曲を演奏していても,年によって出来不出来ができることは避けられないはずだ。演奏開始後早々に,今回の演奏がどのくらいの出来になるか,奏者側は見当がつくんだろうな。
 なぜかというに,客席にいてもわかるんだから。

● 今回の演奏は第1楽章が始まってすぐに,けっこうすごいことになるんじゃないかと思わせた。
 ぼくは第1楽章が最も高揚する。第1楽章が終わると,あぁ第九を聴いたな,と思う。
 今回は聴きごたえのある第1楽章になった。第1楽章が終わったあと,客席から拍手が起きてしまったけれども,拍手したくなる気持ちには共感できた。

● 第1にオーボエの功績であり,第2にフルートの功績であり,第3にクラリネットの功績であり,第4にホルンの功績である,と単純化したくなるんだけれど,そういうものではないよねぇ。
 木管やホルンから引き継いだあとの弦の豊かさ。艶やかにうねって,密やかに沈んでいく。

● 「第九」は毎年一度ならず聴くものだから,ぼくとしては一番ポピュラーなクラシック楽曲になっている。ぼくに限らず,そういう人は多いのではないかと思う。
 で,馴染みがあるものだからつい,奏者に求められる技術の高さのことを忘れてしまう。この曲をここまで演奏してもらって,それを1,500円で聴かせてもらえれば,聴衆はもって瞑すべし,かもしれないよね。

● 途中,何事もなくとはいかないにしても,順調に進んで,第4楽章。
 あの有名な旋律が現れる。コントラバスとチェロが奏で,ヴィオラに引き渡し,1stヴァイオリンが引き継ぎ,ついには管弦楽全体が響かせる。この間の荘重感は,ベートーヴェンというより音楽界が,あるいは人類が,到達しえた最高地点のひとつかもしれない(というと,最高がいくつもあることになって,言葉的には具合が悪いんだけど)。

● 人の声はあらゆる楽器を超えて,聴衆の耳目をひくもので,合唱が登場してしまえば,その場を支配するものは合唱になる。
 中でもソプラノが目立つ。独唱も合唱も。高島さん,リラックス感をただよわせていた。

● この「第九」を聴くと,今年の終わりが見えてきたような気になる。だけど,まだ24分の1は残っているんだよね,今年が。
 諦めちゃいけないよ。まだ,終わってないよ。と,自分に言いきかせておく。

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