2016年4月25日月曜日

2016.04.21 パトリック・ガロワ&栗田智水 フルート・デュオリサイタル

栃木県総合文化センター サブホール

● 開演は午後7時。チケットは3,500円。当日券だと500円増しになるので,前売券を買っておいた。

● 演奏曲は次のとおり。
 ドビュッシー 牧神の午後への前奏曲(ガロワ)
 エネスコ カンタービレとプレスト(栗田)
 ピエルネ ソナタ(ガロワ)

 ゴーベール ソナタ第2番(ガロワ)
 フォーレ シシリエンヌ(ガロワ)
 クーラウ フルート・トリオ(ガロワ,栗田,瀬尾和紀)
 ベーム メンデルスゾーンとラハナーによる3つの二重奏曲(ガロワ,栗田)
 ドップラー デュエッティーノ・アメリカン(ガロワ,栗田)

● このうち,3人で演奏したフルート・トリオはプログラムになかったもの。昨日,やることに決めたものだそうだ。
 栗田さんも瀬尾さんもガロワ氏の弟子というか教え子(瀬尾さんはそうじゃないかもしれない)。その瀬尾さんがピアノ伴奏に回った。唯一,プログラム外のこの曲で,フルートを披露。

● ともあれ,「夢の師弟共演!フルート界の至宝パトリック・ガロワの宇都宮公演が16年ぶりに実現!」ということだ。
 瀬尾さんがガロワ氏についてプログラム冊子に文章を寄せている。「かつての貴公子然とした出で立ちしかご存知ない方だと,現在の写真の風貌からはこれが今のガロワだと想像つかなかった方も多くいらっしゃったかもしれません」とある。
 還暦になるらしい。が,現在の彼の風貌から若き貴公子を想像することは,さほどに難事ではないように思う。

● ガロワ氏が使っているのは木管フルート。木製のフルートは音色が尺八に近いように思われた。
 いやいや,尺八とはまるで違うんだけれども,彼のオールバックの髪型が日本の剣豪を連想させるものだから,つい尺八を持ちだしてしまった。
 昔,漫画かイラストで見た塚原卜伝がこんな風貌だったような。

● ドビュッシーから始めるのはひじょうによくわかる。ぼくの鈍い耳では,この時点ではあまりピンと来なかった。
 彼のすごさの片鱗をぼくが知覚できるようになったのは,後半に入ってから。後半はエンタテインメント性が高い曲が並んだように思えた。たぶん,それでわかったぞと錯覚できたのかもしれないんだけどね。

● 音の粒子が細かい。これだけ微細だと,いかようにでも成形あるいは造形することができそうだ。曲ひとつを自分の掌で転がして自分好みに仕立てるという芸当も可能ではないか。
 作曲家に縛られる度合が少なくなるような。君がこの曲のこの部分をこう作ったのは,こういう理由によるんだろうな,でもぼくはちょっとひねって別の色にしてみるよ,というようなこと。

● 余裕綽々感がある。デュオやトリオのときも,共演者をよく見ていて,退くときには退くし,出るときには出る。
 あるいは,わざとタイミングを8分の1拍くらいずらしてみたり,けっこう遊んでいたようでもある。
 基本,曲に負けていない。曲の前に膝を屈する感がない。作曲家と自分は対等であると自然に思っている(ように見えた)。

● 瀬尾さんもまじえて3人で演奏した曲は,クーラウのトリオだと上に書いた。が,違うかもしれない。栗田さんがそう言っていたと記憶しているので,その記憶にしたがった。が,聞き違いってこともあるしね。
 クーラウのトリオっていくつもあるんでしょ。その中のどれなのか,ぼくには全然わからない。
 今回のプログラムもフルート吹きには馴染みのある曲なんだろうけど,ぼくには初めて目にする曲ばかりだ。

● 冒頭,栗田さんが登場して挨拶した。自身の妊娠についての話がわりと長かったかな。8ヶ月だそうだ。
 女は弱し,されど母は強し。誰なんだ,そんなことを言ったやつは。女は強い。この日の栗田さんを見て,そう思った。身体の構造がそうなっているのだろうな。柔らかいがゆえに強い。あるいは,脳が強固にできているようにも思える。
 男が女に勝るのは,瞬発力(短距離競技)くらいのものではないか。あるいは,ごく短時間,深い集中に入ること。それくらいのものだろうよ。

● その強い女が母になったらどうなるのか。猛獣になるんだな。これは栗田さんのことではなくて,ぼくの身近にいるとある女性を見ての,ぼくなりの結論なんだけどね。
 ただし,ぼくらは猛獣に育てられているんだよね。一頭の猛獣にミルクを飲ませてもらって,オシメを替えてもらって,大きくなったんだよ。
 ぼくらは,絶対,猛獣に勝てない。どうすればいいんだろうか。

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