2013年9月8日日曜日

2013.09.07 藝祭2013-A.Schnittke Memorial Orchestra

東京藝術大学 奏楽堂

● 3年ぶりに藝祭に行ってみた。今年は6日から8日までの3日間。できれば3日間とも日参したいわけだけども,ま,そうもいかない。
 で,とりあえず,なか日にお邪魔することに。

● 演しものについては,ホームページに掲載されているので,それを眺めながら決めて行く。15:40からの山田流箏曲自主演奏会と,17:15からのA.Schnittke Memorial Orchestraを聴くことにした。
 3年前と違っていたのは,ほとんどの演奏会が事前に整理券を取らないと入場できないシステムになっていること。

● 整理券の配布時刻はどちらも正午からだったので,まずA.Schnittke Memorial Orchestraの整理券をゲット。次に,山田流箏曲の方に行ったんだけど,すでに配布終了になっていた。うぅーん,人気があるな,山田流。
 高水準の邦楽演奏をタダでたっぷり楽しめるのが,ほかにはない藝祭の魅力(のひとつ)でしょ。好きな人にとってはたまらないはずだ。

● 順序を逆にすれば,あるいは両方ゲットできたかもしれない。
 ともあれ,時間がポッカリ空いてしまった。午後5時までどうしようか。って,こういうときに二の矢を用意しておくのが紳士のたしなみというものだ。
 渋谷に転戦?して,D@E管弦楽団の演奏会を聴いた。大いに満足して,上野に舞い戻った(おかげで山手線を一周することができた)。

● 大学祭の類っていうのは,学生たちが模擬店を開いて,声をからして客の呼び込みをして,若いエネルギーを発散(浪費)するためのものだろ,と思っているわけですよ。キャンパスを一時的に遊園地にして一般開放するのが大学祭,っていうね。
 もちろん,たとえば法学部の学生だったら模擬裁判をやったりとか講演会を開催するとか,真面目っぽいものも昔からあるにはあったと思うんだけど,だいたいはそんなもんでしょうなぁ。

● ところが,藝祭はそういうのもあるんだけど,大方は研究発表的な感じ。日頃の成果をギュッと圧縮してお見せしますよ,というもの。音楽と美術なんだから,それがやりやすいっていうか,そうしてもお客を呼べるっていうところもあるんでしょうかね。お客さんが藝祭に期待しているのも,まさか模擬店じゃないだろうし。
 で,A.Schnittke Memorial Orchestra。仰天してしまった。大学祭でこんなコンサートをやってのけるとは。

● 仕掛人は,大学院生の飯野和英さん。このイベントを構想することは難しくないかもしれない。凡人には思いつかないことだとしても。
 しかし,これをリアルな形に仕上げるのは,いかな芸大という恵まれた環境に置かれていても,相当に難しかったんじゃないのかと思う。
 いや,意外にそうでもないのか。あ,それ面白そうだね,やろうやろう,ってな具合に人が集まっちゃったりするのかねぇ(昔のドラマにはよく登場したシーンだね)。

● シュニトケの「ハイドン風モーツァルト」と「オラトリオ長崎」を演奏。
 「ハイドン風モーツァルト」はCDで聴いても仕方がない。ま,仕方がなくはないんだろうけど,半ば劇のようなものだもんね,観てなんぼだなぁ。
 というようなことも,実際に観たから気づくわけでね。CDに付いている解説書の文章を読んだところで,このイメージを頭の中に再現するのは無理だ。できる人もいるのかもしれないけど。

● ヴァイオリンのソリストがふたり。二瓶真悠さんと長尾春花さん。飯野さんの表現を借りれば,芸大のツートップ。このふたりが前面で押したり引いたりの掛けあいを続ける。
 ステージが暗転して,奏者たちがうなだれて演奏しながら袖に消えていく。指揮者もまた奏者のひとりなんですね,この曲においては。

● しかし,圧巻は「オラトリオ長崎」。
 飯野さんの解説によれば,この曲はシュニトケのモスクワ音楽院の卒業作品。世界初演が2006年。日本初演は2008年(読響)。
 約100人のオーケストラ。ピアノもオルガンも加わる。合唱団は約80人。ソリスト(メゾソプラノ)は秋本悠希さん。これだけのものを自前で用意できるところが,まずすごい。

● ひょっとすると,メッセージ性がここまで露骨なのを忌避する人もいるかもしれない。反論しようのない正論を大げさに表現しているだけじゃないか,っていうような。
 けれども,飯野さんがおっしゃるように「耳に残りやす」いし,何よりこれだけの大編隊が産みだす迫力は有無を言わせない。

● 読響の後,この曲が演奏されたことがあるのかどうか知らない。今回が日本で2回目の演奏だったかもしれない。これから先も,そうそう演奏されることがあるとも思えない。これだけの装備が必要なんだしね。
 稀少価値のある機会に立ち会えたのだと思っている。世界初演がCDになっているから,ともかく聴くことはできるんだけども,芸大クォリティーのライヴを味わえたのは,じつにどうもお得感が強い。下世話な言い方で申しわけないけれど。

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