2019年10月31日木曜日

2019.10.27 マーラー祝祭オーケストラ 第17回定期演奏会

ミューザ川崎 シンフォニーホール

● マーラー祝祭オーケストラの演奏を聴くのは,これが2度目。2015年8月に同じ会場で「大地の歌」を聴いている。「大地の歌」を生で聴いたのは,後にも先にもこれ1回だけ。
 今回の定演はマーラーではなく,新ウィーン学派の代表作を取りあげた。
 ベルン 管弦楽のための「パッサカリア」
 ベルク ヴァイオリン協奏曲「ある天使の思い出に」
 シェーンベルク 交響詩「ペアレスとメリザンド」

● 開演は午後2時。チケットは2,000円。当日券で入場。指揮は井上喜惟さん。
 「ある天使の思い出に」のソリストは久保田巧さん。この楽団とこのソリストの演奏で聴けるのだから,川崎まで来たのも宜なるかな。

● とはいえ,ぼく的には新ウィーン学派というのは難解の代名詞だ。それはおそらく,ぼくだけではないのだと思う。それかあらぬか,客席はけっこう空席が目立った。新ウィーン学派は集客には寄与しない。それも宜なるかな。
 しかし,にもかかわらず会場に足を運んでいるお客さんは,ぼくを別にすれば,けっこう聴き巧者が多かったようだ。開演前や休憩中の彼らの会話を聞いているとね。へえぇ,そんな見方もあるのか,と思うような話をしている。指揮の井上さんを個人的に知っているらしき人もいた。

● 木管,特にクラリネットに瞠目。が,依然として,ぼくには難解なままだ。正直言うと,よくわからんのだ,新ウィーン学派。
 CDで何度も聴けば,何かが開けてくるんだろうか。開けた先に何があるのか。すでにそれを見ている人はあまたいるのだろうが,ぼくはとてもその境地には至れていない。

● 作家の百田尚樹さんが著書『至高の音楽』において,バッハの「平均律クラヴィーア曲集」を取りあげ,十二音技法について言及している。
 この旋律は厳密にはロ短調だが,凄まじいばかりに半音階が使われていて,ほとんど無調性のように聴こえる。(中略)これは私の想像にすぎないが,おそらくバッハはドデカフォニーの原理を知っていたのだと思う。しかしドデカフォニーだけでは美しい音楽にならないことも同時に知っていた。だからこそ,その一歩手前で踏みとどまったのだ。(新書版 p30)
 百田さんは音楽アカデミーに属する人ではないから,この指摘もほとんど無視されているのだろうけれども,超素人の感想ながらストンと納得できる。そうだろうと思う。バッハのみならず,モーツァルトもハイドンも気づいていたんじゃなかろうか。

● ミューザ川崎,来るたびにいいホールだと思う。WALKMANでブラームスの3番を聴きながら,開演を待っていた。開演されなくて,このままずっとこの場所でWALKMANを聴き続けているのもいいなぁ,と思っていた。
 WALKMANで聴いているんだから,静かなところならどこでもいいわけだ(多少の雑音はあってもいいけど)。けれども,WALKMANから直接鼓膜にぶつかる音を聴いているのでも,このホールの1席に座って聴いていると何かが違うような。

● ぼくの乏しい体験からすると,ミューザ川崎が日本で最もいいホールだ。音響,導線,大きさ,スタッフの対応,使い勝手,などなどトータルクオリティで,たぶん,ここが日本一。たぶんと言うのは,西日本のホールはまったく知らないから。
 同じ日の同じ時間帯に複数の演奏会があることは,まぁよくあることだ。楽団や演奏曲目によって2つまで絞ることができた。さて,2つのうちのどちらにしようかというときに,ホールで決めるのはわりとあることではないか。

● わが家からだと,上野東京ラインの開通によって川崎まで乗換えなしで行けるようになった。川崎がグッと近くなった。
 末永くお世話になれればいいと思うのだが,さてさて。

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