2012年8月26日日曜日

2012.08.25 NSシンフォニー・オーケストラ第10回定期演奏会

紀尾井ホール

● 25日も東京へ。NSシンフォニー・オーケストラの定期演奏会。「NS」とは「Nippon Steel」のイニシャルで,「団員は新日鐵グループの社員を中心に,その家族,友人,あわせて約60名で構成されて」いるとのこと。
 ちなみに,会場の紀尾井ホールを運営しているのが新日鐵文化財団であることも,今回,初めて知った。

● 会場に向かう前に秋葉原で下車。ヨドバシカメラに立ち寄った。といっても,ヨドバシに用があったわけじゃない。ここに「おむすび権米衛」があるものですからね。ここのおにぎりと自販機のお茶。これで朝兼昼食。幸せですよ。

● 四谷駅で降りるのは生涯でたぶんこれが二度目。麹町口を出て,ソフィア通りを歩けば,紀尾井ホールはすぐ。
 このあたりは大名屋敷跡で,都内でも屈指の高級地といっていいんでしょうね。隣はホテルニューオータニ。ホテルの宿泊客とおぼしき人たちも含めて,きちんと身なりを整えた人たちが行きすぎる。
 暑くないのかねと思うけれども,お洒落の要諦のひとつがやせ我慢であることくらいは,ぼくだって知っている。やせ我慢を通している人は立派だと思う。

● 開演は午後2時。チケットは1,000円。曲目は次のとおり。
 ボロディン 「イーゴリ公」序曲
 グリーグ ピアノ協奏曲 イ短調
 ベートーヴェン 交響曲第6番「田園」

● この楽団のホームページには「様々な技術レベルの人たちがそれぞれのベストで奏でるサウンドを誇りとしています。それがアマチュアの醍醐味ではないかと考えているからです」とある。
 そうだよなぁ。プロが上手でアマチュアは下手っていう区分けは,正しいのかもしれないけれども,薄っぺらいと思いますよねぇ。メジャーリーグにはメジャーリーグの,日本のプロ野球には日本のプロ野球の,草野球には草野球の,それぞれの楽しみ方があって,その楽しみ方において,草野球がメジャーリーグに劣るのかって話だよねぇ。

● 上の文章からは,「レベルがバラバラだからね,ちょっとくらいヘタでも勘弁してね」っていうニュアンスを感じることもできるよね。プログラムの団長挨拶にも「ちょっとしたミスは大目にみていただいたうえで」とあった。小さなミスを鬼の首をとったかのように言いたてるヤツがいて,閉口したことがあるのかもしれない。
 でもね,実際の演奏を聴いた結果で言うと,ヘタが目立つ人なんていませんでしたよ。
 ここはむしろ,「レベルはバラバラだけどね,上の方はセミプロ級だよ,ひょっとするとセミのつかないプロ級かもよ」と言いたいのだと解釈した方がいいのかも。

● 特にね,ベートーヴェンの「田園」はね,大雑把な言い方で申しわけないんだけれども,純度が高いっていいますかね,聴いてるうちに涙が出てきましたよ。時々ね,あるんですよ,こういうことが。
 老人性涙腺失禁だろうって? そうかもしれないけどさ,そうだとしてもだよ,この演奏がぼくの脳内の何かを刺激してくれたことは間違いないわけで。つまらない演奏を聴かされて涙が出るなんてないからねぇ。

● 団長挨拶には「会社の人事異動や仕事の都合で思うように人が集まらず,満足な練習ができない場合もあります」ともあるけれど,これ,企業オケの宿命なんでしょうね。
 でも,それあればこそこれありで,そうしてできあがった音楽は,淡々とできあがったものより艶めくのではあるまいか。

● 紀尾井ホールはシックかつゴージャスですな。お金がかかっていることがすぐにわかる。
 天井が高い。正確にいうと,もっと天井が高いホールはざらにあるけれど,平面が小さいので,その分高く感じるわけね。その高い天井からシャンデリアが6つ,つりさげられている。
 機能だけからいえば,なくてもいいものだよね(響きをつくるうえで役にたっていたりするのか)。ムダといえばムダ。でも,ムダの効用ってあるもんね。

● ムダっていえば,ステージ正面にパイプオルガンを設えてるホールってありますよね。あのパイプオルガンって,使用頻度からしたら壮大なムダかもよ。
 ただね,パイプオルガンって有無を言わさぬ存在感があってさ。神につながるための装置だぞ,音楽はもともと神をたたえるためのものだぞ,文句あるか,っていうね。
 ならば,パイプオルガンが実際に使われることがまったくないとしても,それはムダではないともいえるわけでしょ。
 まぁね,何をムダと考えるかが人によって違うもんな。デコラティブに対する許容度も人によって違う。しかも,同じ人でもそのときの気分や環境に左右される。十人十色なんてもんじゃない。十人千色といっても足りないくらいだ。

● そもそも音楽を聴くなんてムダじゃないか,君の生活からムダを省きなさいよ,と言われると,反論するのにけっこう難儀しそうだ。ほっといてくれとしか言えなくなりそうだな。

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