2012年8月26日日曜日

2012.08.25 Orchestra HAL第4回定期演奏会

杉並公会堂大ホール

● この日のふたつめはOrchestra HAL
 まったく東京にはどれだけのアマオケがあるんだか。東京に住んでれば毎日音楽三昧で暮らせるねぇ。実際,そうなったらかえって聴かなくなってしまいそうだけどね。
      
● 開演は午後6時半。チケットは1,000円。曲目はシューベルトの交響曲第4番とドヴォルザークの8番。交響曲2つというあまり見かけないメニュー。
 シューベルトの4番を生で聴ける機会なんて,そんなにはないのじゃないかと思う。

● 特徴は団員が若い人たちだってこと。腕は確かで,ひょっとすると自分たちの大学のオケに飽き足らない学生たちが集まっているのかもしれないと思いましたね。
 ドヴォルザーク8番の2楽章では,木管のピアニッシモの表現にへぇぇと思い,3楽章では弦の透明感に感心し,4楽章では初っ端のトランペットのファンファーレに驚いた。2つのトランペットがここまで溶けあっているのって,そうそうないように思えたので。
 アンコールはドヴォルザークのスラヴ舞曲第2番ホ短調。
 
● この楽団の指揮者は石毛保彦さん。楽団のホームページによれば,3歳からヴァイオリンを始めたそうだ。しかし,幸か不幸か勉強もできちゃったんでしょう。大学は国立の医大。医者になって10数年働いたんだけど,「指揮者になる夢を棄てきれず」に桐朋学園に入学したとある。現在は音楽活動に専念しているようだ。夢が叶ったってことですよね。
 7月に聴いた東京農業大学OBOG管弦楽団の内藤佳有氏もそうなんだけど,傍目には成功したと思われる人生を途中で降りて,音楽の方向に梶を切る人にとっての,音楽の吸引力の強さってのは,ぼくには想像がつかないところがある。

● 医者になりたくてもなれなかった人がたくさんいるに違いないし,東大に入りたくても入れなかった人もたくさんいるはずだ。そういう人から見ると,医者をすてたり東大をすてたりってのは,大いに驚くことなんだけど,それって当事者には関係ないもんな。
 自分がやりたいことがほかにあった。自分と環境との間に数ミリか数センチの隙間があって,合わないサイズの洋服を着ているのが我慢ならなかった。そういうことなんでしょうね。あたりさわりのなさすぎる結論だけどさ。

● ひょっとして,傍目には成功に見えても,本人たちにはその仕事がつまらなかったのかなぁ。でもなぁ,仕事ってつまらないもんだよねぇ,普通。そうじゃない? 仕事がつまらなくないっていう人がそんなにいるとも思えないねぇ。
 好きを仕事にするったって,仕事にしてしまったら,好きが好きじゃなくなりそうな気がするんだけど。

● でもですよ,そこまでしてでもやりたいことがあったっていうのがね,何かすごいなぁ,と。そういう人って,やっぱり選ばれた人だなと思うんですよ。
 自分のことを言っても仕方がないけれども,ぼく,やりたい仕事って別にないもん。可能であれば,何もしないで遊んで暮らしたいもん。
 やりたいことがあるってのは,それだけで相当たいしたものなんだよ。たとえばさ,売れっ子の芸能人なんて寝る暇もないくらいでしょ。よくやってるなと思うんだよね。でも,そういうものに私はなりたいと思えているってのは,(なれるかなれないかにかかわらず)たいしたもんですよ。
 政治家や官僚になりたいってのもそう。国家権力を握って支配欲を満足させたいのかと言われたりもするけど,そういうものに私はなりたいと思っているのであれば,それはそれでたいしたもの。

● と色々書いたけれども,実際に石毛さんの指揮を見ると,すべてためにする議論だったなぁと思えてきた。石毛さん,幸せそうだったからね。

● ところで,その石毛さん,栃木県の出身なんですね。石毛って名字は,県南,特に足利あたりに多いかなと思うんだけどね。

● 残念だったのは客席があまり埋まっていなかったこと。多けりゃいいってわけじゃないけれど,これほどの演奏だもの,多くの人に聴いてもらいたいね。
 ひょっとしてあれか,この程度だったら東京では珍しくもないってことなのか。まさかね。

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