2012年10月8日月曜日

2012.10.07 第8回学生邦楽フェスティバル

宇都宮市文化会館小ホール

● 今年で8回目になるこの邦楽フェスティバルに,初めて出かけてみた。どうしてか自分でもわからないんだけど,県文(栃木県総合文化センター)が会場だと思いこんでいた。ので,県文に寄り道。
 開演は午後1時だったのだけど,ちょっと遅れてしまった。泡を喰った。入場無料。

● ステージで演奏したのは,宇都宮市立石井小学校こと部,宇都宮市立西小学校にじいろ琴クラブ,宇都宮市立城山西小学校,宇都宮海星女子学院中学校箏曲部,同高等学校箏曲部,ライオンズクラブ邦楽合奏団,宇都宮ユース邦楽合奏団,和久箏ジュニアアンサンブル,柿の木坂芸術学校,鹿沼商工高校日本音楽部。
 最後に「邦楽ゾリスデン」がゲスト演奏。

● 学校の部活,放課後児童クラブの活動,社会人のサークル,かなり専門的な集団,と様々な団体が出場したわけだけれど,共通項がひとつだけある。それは,指導者。
 いずれも和久文子さんが指導している。栃木県邦楽界の第一人者,というより唯一人者なんですね。見ようによっては,和久文子ワンマンショーでもある。
 また,このフェスティバルの実行委員長も和久さんで,栃木県邦楽界は和久さんを中心に回っている。いい悪いの問題ではない。和久さんは栃木県邦楽界のために献身している。それは自ずと伝わってくる。

● 約4時間,箏の音色を浴び続けた。ピアノは長く聴いていると飽きてくる(ぼくの場合)。聴くのが苦痛になってくる。が,箏はそのようなことはなかった。ずっと聴いていられた。
 箏というと,つま弾くものだと思っていた。間違い。多彩な演奏の仕方があるのだね。それを実地に教えてもらえた。様々な音を出せることも。いろんな表情を持っている楽器なんですな,箏って。
 音量において和楽器は洋楽器に対抗できないと思っていたんですよ。これも間違い。箏って相当な音量を出せるんでした。いくつも並べてアンサンブルを奏でれば,迫力あふれる演奏だってできる。
 基本的なところで蒙を啓いてもらった感じですね。

● 圧巻だったのは海星女子学院高校箏曲部。演奏したのは沢井忠夫作曲の「ファンタジア」。この曲をひっさげて全国大会に乗りこみ,ベスト8に入った。創部は平成10年と決して古くはないものの,和久さんの指導よろしきを得てか,実績は華々しい。
 どこが圧巻だったのかといえば,大きく3つある。といっても,ぼくの耳だからね,あまりアテにはならないからね。
 ひとつは,音が澄んでいたこと。ピュアというか透明度が高いというか。ふたつめは,音の粒が立っていたこと。同じ音量でもこれなら遠くまで届くだろうと感じられた。

● ここまで来るのは容易じゃなかったはずだ。石井小学校や西小学校で箏を始めた児童のうち,筋のいいのが海星に入学するっていうルートなのかなぁ。
 高校から始めてここまでになるってのは,ぼくの想定の外になるけれど,ひょっとしたらそういう生徒もいるのか。だとしたら,相当に筋が良かったんでしょうね。そのうえで,とんでもなく練習したんだろうな。

● みっつめは,姿が美しかったこと。音を消して,舞台上の彼女たちの動きだけを見ていても,鑑賞に耐えるのじゃないかと思えた。身体芸術として成立しちゃってる感じね。
 演奏が始まる前の座り姿。演奏中の上半身の屈伸,腕の動き,そして弦をつま弾く指先の動きですね。指先のさらにその10センチ先まで神経が通っているかのような。
 その指先の動きが,ほとんど舞いを見ているようでね。きれいな動きでしたねぇ。柔らかくてしなやかで。繊細で上品で。女性の上質さを煮つめて,その上澄みを使って絵を描けばこうなるのだろう,っていうような。
 これね,ひょっとすると,彼女たちにとっても10代後半の今しかできない動きなのかもしれないね。筋肉も骨も瑞々しい今だからこそ,なのかもしれない。

● 登場頻度が最も高かったのは,尺八の福田邦智さん。複数の団体に所属しているし,ヘルプの要請も多いしってことだと思うんだけど,今回のフェスティバルで最も印象に残ったのは,箏ではなくて,じつは彼の尺八なんですよねぇ。
 今までね,尺八よりはクラリネットとかオーボエがいいなぁと思ってたんですよ。ごめんなさい。あまりに無知でした。というか未熟すぎました。比べるもんじゃないねぇ。
 福田さん,堂に入った吹きっぷり。自在闊達に音を出す。柔らかくて心地いい音色ですねぇ。こちらの神経にすぅっと溶けこんでくる。

● 司会は斉藤美貴さん。「邦楽ゾリスデン」の「つるのおんがえし」では朗読も。彼女の司会がステージをふくよかにした。

● というわけで,邦楽について実地にわかったことも多かったし,邦楽アンサンブルの魅力にも触れることができた。
 間違って県文に行ってしまったときは,間違えた自分に腹を立てて,帰っちまおうかと思ったんだけど,気を取り直して行ってよかったですよ。
 プログラムも立派なもので,これで無料とは申しわけない。このうえは,枯れ木も山の賑わいだ。県内邦楽の催しに足を運んで,客席のひとつを枯れ木で埋めさせてもらおうか。

2 件のコメント:

  1. ずっと前の記事にコメント失礼します。
    以前海星の卒業生から聞いたのですが、
    実は海星に来て初めて箏に触れる方がずっと多いらしいですよ。
    その中でも半分くらいは高校から始めた生徒だとか。

    返信削除
    返信
    1. そうですか。いや,そうですよね。そうだと思います。
      それであそこまで行ける。
      たいしたものだと思います。

      削除