府中の森芸術劇場 どりーむホール
● 府中の森芸術劇場でもうひとつの演奏会があるのを知った。しかも,ディヴェルティーレ・チェンバー・オーケストラが終わってからまもなくの開演。
せっかくだから聴いていこうと思う。
● その演奏会が東京学芸大学管弦楽団の春季定演。開演は午後5時。入場無料。曲目は次のとおり。指揮は広井隆さん。
シベリウス 交響詩「フィンランディア」
シベリウス 「カレリア」組曲
フランク 交響曲 ニ短調
● たまたま現地で知った演奏会なんだけど,これは聴いて正解だった。学生オケに特有の,混じり気のないひたむきさ(のようなもの)が溢れている。
彼ら彼女らは,子供時代を振り返りながら,自分は充分に年を取って汚れてしまったと思っているのかなぁ。小さな晩年気分を味わうお年頃かもしれないのでね。
● しかし。凜として曲に対峙している感があって,とても羨ましく思えた。論文だの就職だの採用試験だの,彼氏や彼女とのこれからのことだの,あれやこれや,悩みや気がかりも抱えているんだろうけれども,いったんはそれらを脇に置いて曲に向かうという感じがねぇ。中にはそんなものは歯牙にもかけない学生もいるかもしれないけれど。
指揮者もこういう学生たちを指導できるのは,それ自体が楽しいことだろう。
● 「フィンランディア」で,まずは金管の粒が揃っているのに驚いた。これはもう「フィンランディア」の第1音で。行進曲ではないけれども,金管の比重が高い。金管がここまでしっかりしていれば,「フィンランディア」は黙っていても成功する。
「カレリア」の短い第2曲で木管の上手さがしみじみとわかった。弦は言うにや及ぶ。フランク交響曲でヴィオラのトップとセカンドに瞠目。あと,ティンパニ。
要するに,高い水準でバランスの取れたオーケストラだ。大学から楽器を始めた人もいるっぽいのだが。すでにできあがった“場”が持つ養成力とでもいうべきものがあるのだろうか。
● わりと空席が目立ったんだけど,黄金週間中は学生さんは海外に遊びに行っているんだろうか。今どきの若者はあまり海外を目指さないと聞いているんだが。あるいは田舎に帰っているのか,バイトが忙しいのか。観客が学生や大学の関係者である必要はないんだけれども,この入り具合はちょっともったいない感じがする。
学芸大学にとって,ここはホームではない?
● こういう演奏を聴けると嬉しくなる。栃木から彼らを追っかけるってわけにはなかなかいかないけれども,記憶にとどめておくべき楽団だ。
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