2020年3月3日火曜日

2020.03.01 東京カンマーフィルハーモニー 第20回定期演奏会

渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール

● コロナ・ウィルスが急に存在感を持ちだした。そう感じるのは,クラシック音楽の演奏会でも中止や延期になるものが増えてきたからだ。じつは,今日はミューザ川崎で開催される東京アマデウスの演奏会に行く予定にしていた。
 が,これも中止になったことを知った。頻繁にネットをチェックしないといけないね。

● これに関してはネット上にもいろんな意見がある。大半は何の情報も持たない有象無象がオダをあげているだけだから,無視すればいいものだけども,専門家の間でも意見が割れているから,ぼくらはどうすればいいのかわからない。
 騒ぎすぎだという意見がある。コンサートの中止は当然だという意見もある。パンデミックという言葉も聞こえてくるが,コロナ・ウィルスによる新型肺炎は多くの場合,軽症ですみ,医療行為を要せず直ることが多いらしい。したがって,感染者はマスコミが報道している数よりずっと多いのかもしれない。

● ので,どう対応すればいいのかは,つまるところそれぞれの個人に任される。ぼくがどうしているかといえば,コロナ・ウィルスなど存在していないかのごとくふるまっている。
 休日に東京に出る。中国人も泊まっているかもしれないホテルに泊まる。中国人も歩いているであろう銀座を歩く。そうして,多くの人が密集するコンサートホールに向かう。

● そういうわけで,この時期に中止しないで開催する東京カンマーフィルの演奏会にやってきた。たしかに閑散としている雰囲気はある。空席が多い。
 けれども,渋谷駅前の雑踏はいつもどおりすさまじい。評判の飲食店なのだろうか,行列を作って順番を待っている人たちもいる。
 これではコンサートを中止しようがすまいが,あまり(というか,ほとんど)結果に影響しないのじゃないかと思えてくる。感染する場合は,このホールにたどり着く前に感染しているのじゃないか。
 あれだけの雑踏でも屋外なら心配には及ばないんだろうか。どうも,素人の体感ではついて行けない部分がある。

● チケットはもぎらない。見せるだけで通過。プログラムも手渡しではなくて,聴衆が勝手に取っていく方式。
 濃厚接触を避けるためであることはわかるのだけども,これも果たしてどれだけの効果があるものやら。しかし,ポーズとしてもやらないわけには行かないんでしょうねぇ。学校が休校になるんだものなぁ。
 何の根拠もなく言うんだけど,おそらく大山鳴動して鼠ネズミ1匹となるような気がする。とはいっても,世界中が鳴動しているんだから,日本だけ超然としているわけには行くまい。超然としている人が実際には多いんだと思うんだけど。

● 開演は午後2時。チケットは1,500円。曲目は次のとおり。指揮は松井慶太さん。
 シューマン ピアノ協奏曲
 シューマン 交響曲第3番「ライン」

● ピアノ協奏曲のソリストは海瀬京子さん。彼女のピアノを聴けただけで,1,500円の元は取れるでしょうね。
 ちなみに,海瀬さんのアンコールはブラームス「6つの小品」。クララ・シューマンに献呈されてるんでしたね。

● シューマンというと,ぼくは吉田秀和さんのシューマン評が頭にこびりついてしまっていて,これがどうも鑑賞の妨げになっているような気がしている。吉田さんは『世界の指揮者』において,シューマンを「どこかに故障があって,ほっておけばバランスが失われてしまう自転車」「傾斜している船」に例えているのだ。
 畏れ多くも,ぼくにはそれがピンと来ない。今日の2曲はどちらも堂々たる布陣で,しかも安定しているように思えるのだが。

● 第3番の頃にはすでに精神の疾患はあったのかもしれないけれど,この曲にそれが照射されているかといえば,ぼくにはそれを嗅ぎ分けることができない。
 シューマンは今の言葉でいえば統合失調症で,自殺未遂を経て,最後は精神病院で亡くなるのだが,そういう知識を頭からはずしたうえで,今日の2曲を聴いたとして,それでもなお「ほっておけばバランスが失われてしまう自転車」とか「傾斜している船」に例えうる部分を感知できるものだろうか。

● 実際に演奏してみるとそこがわかるものなのだよ,と言われるんだろうかなぁ。ぼくはシューマンが本当に精神疾患だったのかどうかも怪しいものだと思っているのだが。
 ま,しかし。ぼくの聴覚にはいくつもの盲点があって,知覚できないところが多々あるに違いない。

● オケの演奏はといえば,東京の層の厚さをまた知ることになった。比較的小さな規模のオケ。マーラーやブルックナーを演奏するわけにはなかなかいかないだろうけれど,そういうものを演奏したいとも考えていないだろう。
 小粒でピリッとしたというと安易なまとめすぎになるけれども,輪郭がクッキリとしたオーケストラという印象。この東京で20回の定演を重ねてきたのだから,それだけのことはあるはずなのだ。

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