2012年5月20日日曜日

2012.05.19 真岡市民交響楽団第46回定期演奏会

真岡市二宮文化会館

● 昨年3月の震災で,栃木県内で最も大きな被害を受けたホールは真岡市民会館だろう。現在に至るもなお使用できる状況にない。復旧するのは25年度になるらしい。
 その真岡市民会館を根拠地にして活動している真岡市民交響楽団も,したがって大きく活動を制約されているだろう。年2回の定期演奏会も,昨年は10月に芳賀町民ホールを使って開催したにとどまった。演奏会の中止は他でもあったけれども,団員にとってはやるせなかったに違いない。

● その10月の定演にぼくは行けなかった。今回は旧二宮町の二宮文化会館での開催。チケットは500円。開演は夕方の6時。

● 早めに家を出て,二宮金ちゃんゆかりの桜町陣屋跡に立ち寄った。こういうのって意外に見ないものでしょ。わざわざ行こうって気にもなりにくいし。思いついたときに行っておかないと,死ぬまで行かないで終わりそうだ。
 二宮尊徳資料館をザッと見た。いるのは職員だけ。あとは人っ子一人いなかった。広い駐車場もあるんだけれども,土曜の午後は閑散。

● 金ちゃんはこの陣屋に住んでいた。陣屋って役所と官舎を兼ねたようなものですね。今の目線で見れば,質素な家屋だ。冬は寒かったろうねぇ(でも,昨年の震災でも倒れなかったんだよなぁ。耐震構造のはずもなかろうに)。
 現代とは比較にならないほどに貧しかったろう。モノが希少だったから,少ないモノを大切に使った。スッキリしたもんだったろうねぇ。今だと,家中にモノが溢れているのはむしろ貧乏人の特徴だなんて言われるけどね。
 何が言いたいのかっていうと,ぼくらはいろんなものに恵まれているけれども,その恵みを不要なモノや不要な関係を築くことに割いてしまってて,せっかくの恵みを活かしてないかもしれないよなってこと。
 わが家も震災ではかなりの被害を受けた。それを機にいろんなことを考えさせられた。けれど,結局,何も変わってないんですよね。

● ぼくはこれから音楽を聴きに行くけれど,金ちゃんには音楽なんて無縁なものだったはず。衣食住を含めて,金ちゃんよりぼくの方がずっと恵まれているはずなんだけれども,どうにも幸せの実感が薄い。
 不足感があるんじゃないんですよ。ぜひとも欲しいってほどのモノはない。大金を手にしたいとも思わない。偉くなりたい? とんでもない。愛人が欲しい? 欲しいわけないじゃないか。であるなら,今の生活はパレート最適を達成しているはずなんだけどねぇ。
 でも,幸せの実感が薄い。こういうのって何でなんだろうねぇ。どこかで自分をごまかしているのかなぁ。本当は愛人欲しいぞって思ってんのか,オレ。

● 曲目は次のとおり。
 ワーグナー 歌劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲
 ウォーロック カプリオール組曲(フルオーケストラ版)
 ラヴェル 古風なメヌエット
 メンデルスゾーン 交響曲第3番「スコットランド」

● 初めて聴いたライブがこの真岡市民交響楽団だったことは本当に幸運だったと,あらためて思える。弦が伸びやか。ヴァイオリンもヴィオラも。演奏中の奏者の姿も美しい。真面目な人たちなんだなぁと思える。

● ウォーロックだのカプリオール組曲だのってのは,初めて聞く名前だ。こういうマイナーな曲をやろうと言う人が団員の中にいるってのもいい。
 聴く側にしても,そうしてくれなければ,たぶん聴く機会を持てなかったはずだしね。でも,この曲,CDを入手するのもけっこう難しそうだな。

● メンデルスゾーンの3番はCDで何十回と聴いている。ライブでは初めて。そうか,ここはこんなふうに演奏していたのか,ってわかるのがライブの恩恵のひとつですね。音を聴いただけで演奏の様子をイメージできるところまでは,至っていないもので。
 クライマックスの第4楽章では,クラリネットやフルート,オーボエなど管楽器の見せ場が続く。緊張もするんだろうけど,快感もひとしおなんだろうなぁ。
 ティンパニはTさんが担当。彼女のバチ捌きを見にきているお客さん,けっこう多いんじゃないかと思ってるんですよ。演奏終了後に,指揮者がパートごとの奏者を紹介したときも,彼女への拍手はひときわ大きかったしね。

● 休憩時間にオバサンたちの話を聞いていると,指揮者の佐藤和男さんのファンもいることがわかる。ちょっと痩せたんじゃない?とか,佐藤話で盛りあがっていたりするからね。

● 唯一残念だったのは,開演後に入ってくるお客さんが多かったこと。休憩後もしかり。「スコットランド」の3楽章が終わろうかという頃に戻ってくるヤツもいたもんなぁ。そのたびに扉を開けるから,そこから音が漏れてしまうんだよねぇ。
 特に,演奏が始まる前-奏者が着席して指揮者が入ってくるのを待ってる時間-のこれから始まるぞっていう緊張感を客席も共有できるのが,ライブの醍醐味のひとつだと思ってるんだけど,それが台なしになってしまうんだなぁ。
 でも,あれだ,演奏会じゃなくて村祭りに来たんだと思っているお客さんもいるのだと考えればいいのだ。村祭りなのだとすれば,彼らのふるまいにも得心がいく。

● 二宮文化会館は満席。この楽団の演奏会を容れるには小さすぎるようだ。音響の問題もある。
 上に述べた観客の問題も,その一端は会場じたいが引き起こしているのかもしれない。早く真岡市民会館の大ホールが使えるようになってほしいねぇ。

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