2019年3月18日月曜日

2019.03.16 ワグネル・ソサィエティー・OBオーケストラ 第85回記念定期演奏会

すみだトリフォニーホール 大ホール

● ワグネル・ソサィエティー・OBオーケストラとは「慶應義塾ワグネル・ソサィエティー・オーケストラの卒業生を中心としたアマチュアオーケストラ」であって,読んで字のごとし。では,慶應義塾ワグネル・ソサィエティー・オーケストラとは何かといえば,「1901年に創立した日本最古のアマチュア学生音楽団体」で「ドイツの作曲家リヒャルト・ワーグナーにちなんで名づけられた」ものらしい。
 残念ながら,その慶應義塾ワグネル・ソサィエティー・オーケストラの演奏を聴く機会はまだ得ていないが,名声は耳にしている。OB・OGが立ちあげた団体もこの楽団の他にもあるらしいのだが,いずれも聴いたことはない。今回が初めて。

● 開演は午後2時。それに間に合うためには,何時に家を出なければならないかは当然わかる。開演前に着席して,配られたプログラム冊子に目を通して,それを脳内メモリにコピー&ペーストしておく必要がある。それこみで,何時に家を出るかを計算する。
 のだが,今日はごく私的な事情があって,それが叶わなかった。ホールに到着したときは,午後2時を15分ほど過ぎていた。

● さて,どうする。スパッと諦めて街の雑踏の1人になるか,途中からでも聴くか。曲目は次のとおりだ。
 ブラームス 悲劇的序曲
 ドボルザーク チェロ協奏曲
 ブラームス 交響曲第2番
 今からだと,「悲劇的序曲」が終わったあとに入場することになるだろう。どうしようか。0.3秒ほども考えたろうか。後者を選択した。当日券(2,000円)を買って,ドアの前に並んでいる先達(?)たちの列についた。
 こういうときに大事なのは席を選ばないこと。近くに空いている席を見つけたらサッサと座ること。

● というわけで,ドボルザークのチェロ協奏曲から聴くことになった。こういうブザマを晒すのはたぶん初めてだ(と思いたい)。
 しかし,気分としてバタバタすることはなく,すぐに“聴くこと”に入っていけた(と思う)。独奏チェロは丸山泰雄さん。指揮は井﨑正浩さん。
 丸山さんのチェロを聴けるのはもちろんありがたい話で,謹んで拝聴したいと思うのだが,それでもこの曲は管弦楽を聴くためにあるような気がする。

● 大学オケの慶應義塾ワグネル・ソサィエティー・オーケストラについては,先に申しあげたとおり,名声はしばしば耳にするのだが,演奏を聴いたことはない。演奏を聴いたことはないのだが,名声はしばしば耳にする。で,だいたいこんなものではないのかなと頭の中で想像する。
 OBになった後もそれを維持するのは,常識的に考えれば不可能なはずだ。それが可能なのは演奏することを仕事にした場合だけのはずで,それに次ぐのが中学や高校の音楽教師になることだろうが,それだって現役時代の腕を落とさずにいるのは,なかなか容易ではないと思う。

● しかるに,事実は小説よりも奇なりという状況に遭遇することがある。辻褄が合わないではないかと異議を申し立てたくなる。
 落ちることがないところまで,技術を体内に固定化しているということだろうか。そこまではやったよ,と。

● コンミスがイケイケドンドンの人。怖いもの知らずという印象。といって,怖いものを知らなかったら,コンミスは務まらないだろうから,そこは緻密な計算があるのだろう。
 と思う。思うのだが,ひょっとするとそんな姑息な計算などないかもしれない。天然なのかも。そんな計算などしていたのでは間に合わないかも。だとすると,たいした豪腕だということになる。

● この楽団,層が厚い。ヴァイオリンだけ取っても,コンミスに何かがあっても,次の瞬間から代打に立てる人が,ゾロゾロいそうだ。
 今回の演奏では特にフルートが目立ったと思うんだけど,木管も金管もレベルが高い。そうして,個々の奏者のレベル差が少ない。

● ブラームスの1番と2番を並べてみると,とにかく不思議。曲想がまるで違うと思えるし,1番が構想期間も含めれば苦節ン十年なのに対して,2番は4ヶ月で書きあげたらしい。1番の(ベートーヴェンとの)苦闘があったからそれが可能になったのだよと言われれば,たしかにそうなのだろうけれど,にわかには信じがたい。
 投入したエネルギーと作品の出来は比例しないというのも,たしかにそうなのだろうけれど,直列処理ではなく並列で処理していたと考えた方が腑に落ちるかなぁ。
 どっちでもいいんだけどさ。彼ほどの天才になれば,こういう小賢しい詮索に対しては,お好きにどうぞという話にしかならないんでしょうからね。

● ところで,丸山さんのアンコール曲。ジョヴァンニ・ソッリマの「ラメンタツィオ」という曲らしいのだが,初めて聴くのはもちろん,名前も知らなかった。
 ラメンタツィオとは哀歌という意味らしいのだが,ぼくの耳では哀歌っぽさは感じ取れなかった。というか,チェロにこんな奏法があるのかという驚きが先にたって,そこから進めなかったというのが正直なところだ。
 チェロ奏者には有名な曲なのかもしれない。これを聴けただけで,チケット代の元は取れたような気がした。

● オケのアンコールはドボルザークのスラヴ舞曲第9番。チケットは強気の2千円だが,この演奏なら取っていいか。井﨑さんの指揮にも久しぶりに接した。

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