2019年5月7日火曜日

2019.05.06 作新学院高等学校吹奏楽部 フレッシュグリーンコンサート2019

宇都宮市文化会館 大ホール

● 昨年は行けなかったので,このフレッシュグリーンコンサートは2年ぶりの拝聴。会場の宇都宮市文化館に着くと,すでに長蛇の列。
 これだけの長い列ができるのは,作新吹奏楽部の他には,年末の宇高・宇女高の第九演奏会だけではないか。そろそろ列の長さに恐れをなして回れ右となるかもしれないんだけど,今のところはまだその列に並ぶ気力が残っている。

● しかし,10連休の影響だろうか,2年前に比べるとやや空席が目立ったか。3階席はけっこう空いていた。とはいうものの,この大ホールがこれだけ埋まるのはそうそうあることではない。
 毎度のことながら,制服姿の中学生,高校生がけっこう多い。作新の生徒ではない。それぞれの学校で自分も吹奏楽をやっているのだろう。
 彼らにとってこの演奏会は聴くに値するものなのだろう。範例になるわけだろう。

● 開演は15時。チケット(1,000円)は事前に購入しておいた。
 曲目は次のとおり。例によって3部構成,
 真島俊夫 輝け青春
 林 大地 「あんたがたどこさ」の主題による幻想曲
 近藤悠介 マーチ「エイプリル・リーフ」
 福島弘和 行進曲「春」
 森田一浩編 「ノートルダムの鐘」より

 森田一浩編 ライオン・キング・メドレー
 ルロイ・アンダーソン クラリネットキャンディ
 ヴィム・ラセロムス マジック・スライド-トロンボーンとバンドのための
 笹木敦志 いちご一会-とちぎ国体2022イメージソング
 チック・コリア スペイン
 星出尚志編 坂本冬美メドレー
 鈴木英史編 魔法にかけられて

 シルヴェスター・リーヴァイ ミュージカル「エリザベート」より

● 初っぱなの「輝け青春」を聴いた印象は,呼吸をしているようだ,と。息を吐いたり吸ったりするように楽器を扱っている。人体と楽器の間に距離がない。はぁぁと思うしかないかな,もう。
 これに対してああだこうだと何事かを述べるのは,そもそも場違いのような気がする。参りましたと言う他はない。
 最も才能に恵まれた集団が他校を圧倒する最も激しい練習を重ねているという,その結果がこうなっている。それだけのことだと理解しているが,それを述べること自体が,余計なことかもしれない。

● 個々のプレーヤーの技量が大したものだ。藝大に合格する子もいるのだ。さすがに他校にはそこまでの生徒がいるかどうか。
 そういう才能の持ち主を集めるだけの磁場の強さがあるのだと思うしかない。

● 今年度の部員は100名を超えたという。作新への一極集中が進行しているというか,作新の一人勝ちというか。
 作新が批判される筋合いはない。努力の結果だ。才能ある中学生がどうせやるなら作新でやりたいと考える。そういう場を作りあげてきたということだ。
 しかし,ここまで卓越してしまうと,別の問題が出てくるようにも思われる。作新が自校のことだけを考えて動くことは,もはや許されなくなっているのではないか。

● 「あんたがたどこさ」の主題による幻想曲,「エイプリル・リーフ」,「春」の3曲は,今年度のコンクールの課題曲になっている。演奏前にどこに気をつけて演奏すべきかのレクチャーを,作新の指導陣が客席に向けて行った。
 他校の生徒に向けてのものだろう。ぼくが聞いてもチンプンカンプンなわけだが,聞く人が聞けば大いに参考になるのだろう。
 今回のレクチャーもそうだけれども,以前から,課題曲の説明会などで模範演奏(?)をする役割を作新は果たしてきているようだ。吹奏楽界に水を流すダムの役割。
 が,ノブレス・オブリージュとしてそれらを引き受けるだけではすまなくなるかもしれない。ひょっとすると,作新がやらなければならない焦眉の急は,自校に拮抗できる他校を作ることではないか。

● これだけの“場”を作るまでには,並ではない苦労があったろう。が,いったんできてしまえば安泰かといえば,おそらくそうではない。できあがった“場”を維持するためのメンテナンスにもまた苦心惨憺を要求されるだろう。
 吹奏楽界の全体を考えている間に,その“場”を失うようなことがあっては,元も子もない。作新ですら東関東で足踏みを余儀なくされているのだ。その先を目指すなら,現状に満足しているわけにはいかないという事情もある。
 それでもなお,自校のことだけを考えることは許されないとなると,かなり難しいステージに歩みを進めてしまったものだ。

● ということを考えたくなるほどに,この高校の演奏は卓越している。第2部の「スペイン」における冒頭のトランペット。これを聴いて心を動かされない人はおそらくいないはずで,それを演奏しているのが高校生なのだぞ。
 その水準がそちこちに顔をだす。その結果,気を抜けなくなるかというと,その逆で,何ともいえないいい気分になる。

● 第3部のミュージカル「エリザベート」は,そのままミュージカルで差しだすのではなく,いわゆるドリル。ダンスはあるが台詞はない。
 隊列の変化の妙。打楽器と管楽器の掛け合いや重なりの妙。この高校ならではのフラッグの舞。耳の保養になるが,目の保養にもなる。
 当然,たとえばラインを考える参謀がいる。そういうことを含めて,これを企画して実施できるのは,栃木県ではこの高校だけだろうと思われる。

● すべてのプログラムを終了したあとに,恒例(?)の野球応援編。これを楽しみにこの会場にやって来た人も多いに違いない。
 エンタテインメントとしても傑出している。エンタテインメントとして成立するには,ディズニーランドのアトラクションが典型的にそうだと思うが,どこにでもあるものであってはいけない。ここにしかないものでなければ。
 そういう意味じゃ,これは絶対に他にはないものではある。カットバセー,サックッシン,なのだからね。
 もちろん,細部の作り込みの緻密さが前提にあってのものだ。この点でも,ディズニーランドのアトラクションと同じ。

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