2020年2月20日木曜日

2020.02.15 第3回 東京・ヨーロッパ友好音楽祭 チャリティーコンサート

なかのZERO 大ホール

● この演奏会は3回目になるらしいのだけども,自分が聴くのは今回が初めて。開演は午後2時。当日券(2,000円)で入場。

● 友好音楽祭オーケストラは「2017年に発足した,東京大学・早稲田大学・慶應義塾大学の現役,卒業生が中心となったオーケストラ。世界的に活躍するアーティストを迎え,音楽を通した国際交流の推進を図っている」とネットで自己紹介している。
 自分が所属する大学のオケ活動だけでは物足りなくなった人たちの集団だろうか。

● 指揮は中島章博さん。彼の指揮を見るのは昨年末の東京海洋大学・共立薬科大学管弦楽団の定演以来,今回が二度目。異色というか,魅力的な経歴の持ち主。

● 「世界的に活躍するアーティスト」として登場したのはチェロのタマーシュ・ヴァルガ氏。過去に一度だけ,彼の演奏に接したことがある。2013年に宇都宮で。かのウィーン・フィルの首席。
 ウィーン・フィルといえば,まず連想する言葉が純血主義。今はそうではなくなっているのだろうが,それでもウィーン・フィルに黄色い人や褐色の人はいないのではないか。長く女人禁制でもあった。今でも女性奏者は非常に少ない。
 オーストリアの人口は東京のそれより少ない。そこで純血主義だの女人禁制だのをやっていながら,世界のトップレベルを維持できているというのは,奇跡というか奇跡以上というか。

● 長くそうなのだから,何らかの理由というか,システムというか,なるべくしてなっているメカニズムがあるのだと思うが,とにかく非常に不思議な状況だ。
 ところで,ヴァルガ氏はオーストリアの人ではなく,ハンガリー人であるらしい。かつてのハプスブルク帝国はオーストリア=ハンガリー二重帝国だった。今でもその名残のようなものがあるんだろうか。ハンガリーはオーストリアにとって外国ではないというような。

● ヴァルガ氏から感じるオーラが心地いい。気さく。世界のトッププロなのに(トッププロだからかもしれないが)周囲に壁を作らない人のようだ。呼ばれれば,そして日程が許せば,世界のどこにでも出かけていく人っぽい。
 そのヴァルガ氏を迎えての曲目は,エルガーのチェロ協奏曲。彼のチェロを十全に味わえるだけの鑑賞能力が自分にないことを遺憾に思う。

● オケの演奏はドヴォルザークの8番。誠実な演奏で,好感度はかなり高い。技術も相当なものと見る。聴きに来て良かったと思った。
 ところが,ここでもヴァルガ氏がチェロパートの首席奏者を務めるというサービスぶり。これねぇ,チェロパートのメンバーはもとより,コンミスや指揮者にとっても,なんて言うんだろ,緊張と興奮が相半ばする貴重きわまる体験だったでしょうねぇ。
 でも,ヴァルガ氏も日本の,若い団員が多い清新なアマチュアオーケストラと一緒に演奏するのが楽しそうだったな。彼にとっても楽しいひとときだったのではないかと思う。

● チャリティーコンサートになっているのは,東日本大震災や昨年の台風で被害を受けた被災地に,復興支援金として今回の収益金が贈られるということのようだ。募金箱が置かれていた。大人の義務を果たしてきた。ただし,半分か3分の1くらいだけど。
 募金箱の置き方もどこか控えめでね。もっと図々しくしてもいいかもね。可能ならば単に置くんじゃなくて,人が持った方がいいでしょう。可能ならば,だけれど。

● というわけで,ヴァルガ氏とオケの性格の相乗効果のゆえか,とても気持ちのいい演奏会だった。チャリティー云々とは関係なく,清々しさに満たされた。
 にしてもだよ,どういうツテをたどって,どういうプレゼンをして,これだけのスターを引っぱって来れるんだろうかねぇ。

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