2024年12月3日火曜日

2024.12.01 第15回音楽大学オーケストラ・フェスティバル 東邦音楽大学・洗足学園音楽大学

すみだトリフォニーホール 大ホール

● 音大フェス,3日目(最終日)。
 東邦はモーツァルトの41番。端整かつ清新な「ジュピター」だった。指揮は大友直人さん。

● モーツァルトから離れてしまってはいけないんじゃないか,と思った。生では意外に演奏されないからね,モーツァルトって。尚のことですよ。
 クラシック音楽はモーツァルトに始まってモーツァルトに終わる,かどうかはわからない。「モーツァルト」のところにバッハを代入してもブラームスを代入しても,ことごとく成立しちゃうから。

● オオトリは洗足。ベートーヴェンの「第九」。仕組んだわけではないんだろうけど,絵に描いたような大団円ね。この音大フェスで第九が演奏されるのは2018年の武蔵野以来。
 洗足の学生をもってしても第九は難関のようだなと思って聴いてたんだけど,終わってみればとてつもない演奏になっていた。山場のひとつである歓喜のテーマの盛りあがりもだけども,合唱団がレベル高すぎ。いかに音大でもここまでとは。

● 指揮は秋山和慶さん。存在自体が凄い。80歳を3つ過ぎておられるのか。スッと立って長大な第九を事もなげに指揮する。日本で最もダンディな83歳だろう。
 秋山さんの指揮とあっては,合唱団もソリストも途中から入場というわけには参らない。第1楽章が始まる前にスタンバイ。

● 第1楽章はビッグバンの音楽的表現だと勝手に思っている。宇宙創生の音楽。昔は,第1楽章を聴けば第九を聴いたことになる,と思ってましたよ。
 第九はやっぱり途方もない曲だな。

● これに比べたら,マーラーがやったことなど児戯に類する。と,余計なことを言って,ヤな顔をされたこと,数知れず。マーラーって,知が勝ちすぎてません?
 才能は欠落だと思っていてさ。これがなかったら死ぬか狂うかしかないっていう人が,「これ」をやらないとダメなんだよね。マーラーは指揮や作曲じゃない他の仕事でもスマートにやって行けた人なんじゃないかな,と思えるんですよ。欠落がない。

● ま,それは余計なこと。この第九でフェスの環は閉じた。今年もこのフェスに皆勤。
 齢をとってできた暇をこういうことに使えるとは,どこにおわしますかは知らねども,神に感謝したくなりますよ。
 というわけで,今年が終わった。

2024年11月30日土曜日

2024.11.30 第15回音楽大学オーケストラ・フェスティバル 武蔵野音楽大学・東京音楽大学・国立音楽大学

ミューザ川崎 シンフォニーホール

● ミューザで音大フェスの2日目。まず,武蔵野のサン=サーンス「オルガン付き」。指揮は現田茂夫さん。
 迫力充分。サン=サーンスが躍動する。

● そりゃあね,細かいミスがないわけではない。けど,いいんですよ,そんなものは。
 若い人たちの全力投球は必ず何かを生む。と感じるのは,自分が年寄りだからかもしれないのだが。
 この曲だからオーボエが最も目立つ。女子学生が見事に演じきった。

● 東京はプロコフィエフの5番。指揮は広上淳一さん。
 悠揚迫らざる初動からプロコフィエフが紡ぎ出すいくつもの物語あるいは情景を,きっちりと音に変えていく。緻密でありながら縮こまっていないのは,実力があればこそ。

● 来月4日定期演奏会でも演るのだけれとも,こうした演奏をまとめて聴けるのが音大フェスのフェスたる所以でしょ。
 関西でも「関西の音楽大学オーケストラ・フェスティバル」があるらしい。大阪音楽大学,大阪教育大学,大阪芸術大学,京都市立芸術大学,神戸女学院大学,相愛大学,同志社女子大学,武庫川女子大学の8大学が参加する。
 が,これは,これら8大学の合同チームによる1回だけの演奏会のようなんだよね。

● 国立はレスピーギの「ローマの噴水」と「ローマの松」。指揮は高関健さん。
 こちらは明日の定演で同じ曲を演奏する。おそらく,今日の方が観客は多いはず。予行演習という感じは皆無。

● 噴水より松の方が耳に馴染みがある分,ちゃんと聴けたと思うんだけども,その “ちゃんと” がどの程度なのかはわれながら疑問。
 こういう演奏を続けて3本というのは,ありがたい一方で,聴き手にも相当な重量がある。今回は芸劇が使えないので,3日で全日程を終えるというスケジュールになったのだと思うが。
 しかし,こちらも気合いを入れていかんとね。

● ぼくの隣の男性氏がブラボー屋だった。ブラボーと叫ぶのは,若くて元気のいい人なのかと思っていたんだけども,普段は冴えない,ひょっとすると仕事も普通にできてるのかと疑わしいような,中年のオッサンが多かったりするんだろうかね。
 案外,そうかもしれないな。女性には相手にされないよえなタイプの,くたびれた感じの中年男が多いのかもしれないよ。

2024年11月23日土曜日

2024.11.23 第15回音楽大学オーケストラ・フェスティバル 昭和音楽大学・東京藝術大学・桐朋学園大学

ミューザ川崎 シンフォニーホール

● 音大フェスの1日目。昭和,藝大,桐朋。
 昭和はバルトーク「管弦楽のための協奏曲」。指揮は時任康文さん。この曲はこのフェスでもしばしば取りあげられる。
 藝大はベートーヴェン「レオノーレ2番」と三善晃「焉歌・波摘み」。指揮は下野竜也さん。これは逆に音大フェス初登場。音大フェス以外でも,生で聴くのは,ぼくは初めてだ。

● 桐朋はシュトラウスの交響詩「ドン・キホーテ」。指揮は沼尻竜典さん。
 このフェスで強烈に印象に残っている演奏が2つある。1つは2013年のストラヴィンスキー「春の祭典」。もう1つは2018年のホルスト「惑星」。
 いずれも桐朋が演奏したものだ。今回の「ドン・キホーテ」も然りだろう。ただし,聴く人が聴けば,ということになる。

● 3つとも,とてつもないものを聴いているというのはわかる。が,聴けたかどうかはわからない。
 情報量(という言葉を安易に使ってしまうのだが)はプロオケの演奏よりずっと多いと思える。届くものが違う。それをちゃんと受領できてるかどうか。われながら心許ない。

● まぁ,しかし。これを聴かないですますというのはあり得ないと思っている。指揮者も錚々たる人たちが勢揃いする。
 ハロウィンとクリスマスの間の最大イベントですよ。ハロウィンもクリスマスもなくていいんだけれども,これがないのは困る。

● 首都圏まで聴きに行くのは減らして,地元に沈潜しようと画策してるんだけど(数年前から画策してるんだけども上手く行かない),これは別ね。千里の道も遠しとしないで出かけていきますよ(千里も離れてないんだけどさ)。
 今回も通し券を買っている。来年3月には選抜チームの演奏会もあるので,開演前にそのチケットも買いましたよ。

2024年7月14日日曜日

2024.07.14 間奏:音大フェスとフェスタサマーミューザ

● 川崎に来た。ミューザの隣のホテルに投宿。チェックイン後,まず行ったのはそのミューザ。
 今年も音大フェスがある。昨日がチケット販売の開始日。通し券を購入した。
 今回は3日間の強行日程。芸劇ではなくすみだトリフォニーを使うのは,芸劇は設備更新工事のため,今年の9月末から来年の7月まで休館するから。

● チケットも値上がっているが,インフレのご時世,致し方がない。それでも通し券の3,600円は激安だと思う。
 この大きな催事も,催行するにはいくつもの障害やハードルがあって,外から見えるほど簡単ではないはずだ。どうか続いてもらいたい。

● フェスタサマーミューザを初めて聴いたのは2021年。コロナ禍中の開催だった。よく踏み切ったな。
 通し券を買って,オケ演奏は全部聴いた。こんな贅沢を自分に許していいのかと,罪悪感のようなものも感じてました。

● 翌2022年も開催したが,このときはネット配信で視聴した。ジャズが面白かったね。チック・コリアってこういう人だったのかと勉強させてもらいましたよ。
 「スペイン〜六重奏とオーケストラのための」を演奏しているときの東京シティフィルの団員の楽しそうな表情も印象的でした。

● ネット配信はずっと続くのかと思いきや,コロナが収束した昨年(2023年)は実施されなかつた。ホールに行くか,あの途方もない贅沢をまた自分に許可するか。結局,見送った。
 今年もネット配信はない。コロナ禍の緊急避難的な措置にしてしまうのはもったいない気もするんだが,致し方がない。

● ぼくは聴けないけれども,聴ける人は聴いた方がいいに決まってる。これも格安と言っていいと思う。川崎市の財政負担があるのだろう。チケット料金だけで賄えるはずがない。
 首都圏に住んでる人は遠慮なく公の財政負担の恩恵を享受すべし。都市に住むことのメリットのひとつがそれではないか。