2013年1月27日日曜日

2013.01.27 フレッシュアーティスト・ガラ・コンサート


栃木県総合文化センター サブホール

● このコンサートは,毎年この時期に「とちぎ未来づくり財団」が主催しているもの。栃木県ジュニアピアノコンクールとコンセール・マロニエ21の優勝者の披露演奏会。
 開演は午後2時。入場無料。事前に「とちぎ未来づくり財団」申しこんで,整理券をもらっておく方式。会場はほぼ満席だった。

● トップバッターはジュニアピアノコンクールの大賞受賞者,斉藤花帆さん。小学4年生。ということは,まだ10年しか生きてないってことか。その彼女が中学生,高校生を押さえての大賞受賞。
 県のコンクールで優勝するくらいだから,天才少女と呼びたくなるわけだけど,ここで難しいのが,天才少女や天才少年が大人になってからも天才のままでいた例はさほど多くはないということ。
 3歳や4歳でピアノを弾きこなす坊やを,テレビが取りあげることがときたまあるけれども,彼らが大成したという話はついぞ聞かない。あまり早すぎてもいけないようだ。途中で飽きちゃったりもするんだろうしね。

● ともあれ,彼女が演奏したのは,グリーグの「抒情小曲集」から「小妖精」「夜想曲」「トロルドハウゲンの婚礼の日」の3つ。
 素人感想ながら,栃木から世界にはばたく大物ピアニストが誕生する予感? このコンサートを聴くのは今回が3回目なんだけれども,ジュニアピアノコンクール大賞受賞者の演奏を聴いて,これだけのノビシロを感じさせられたのは初めてだ。
 あるいは,今が急激に伸びている時期で,その勢いを感じたのかもしれない。

● 次は,ヴァイオリンの戸原直さん。コンセール・マロニエ21弦楽器部門で第1位。彼も芸大のまだ2年生じゃないかなぁ。ってことは,20年しか生きていないわけだ。
 演奏したのは,バルトークの「ルーマニア民俗舞曲」とチャイコフスキーの「なつかしい土地の思い出」「ワルツ・スケルツォ」。ピアノ伴奏は町田美弥子さん。

● 「なつかしい土地の思い出」は3曲で構成されているわけだけど,1曲ごとに拍手が起きてしまう。そのあたりは,戸原さんも町田さんも折りこみ済みだったみたい。実際,拍手したくなりますよね。初めてこの曲を聴く人だったらなおのこと。
 戸原さんが奏でるヴァイオリンの音色に身を任せるだけですね。「ルーマニア民俗舞曲」にしても「なつかしい土地の思い出」にしても,CDで聴くことはできても,生で聴くのはできそうで案外できないのでね。
 こういうのをタダで聴けるってのはねぇ,何だかしみじみと嬉しくなってきますねぇ。おまえはタダが好きなんだなと言われそうなんですけどね。好きなんですよ,タダ。

● 秋本悠希さん。同じくコンセール・マロニエ21の声楽部門の第1位。「カルメン」から「恋は野の鳥」と「セギディーリャ」。あと,日本の歌曲を5つ。ピアノ伴奏は羽賀美歩さん。
 声楽の持つ圧倒的な説得力。彼女が発した空気の震えが客席にビーッと届く。空気の震えなんだから,こちらとしてはそれに包まれるしかないわけでね。

● 3ヵ月前のコンセール・マロニエのときより,気持ち太りましたか。貫禄が付いてきた感じ。どう,私の歌は,っていう押しだしが出てきたような。
 彼女は広島県尾道市の出身。先月見た映画「東京物語」に登場する場所なんですよねぇ。だから何ってわけでもないんだけど。

● 15分間の休憩の後,第2部。ゲストの演奏になる。一昨年はヴァイオリンの田口美里さんで,昨年は声楽(ソプラノ)の松岡万希さんだった。今回はトランペットの牛腸和彦さん。彼もまた,過去のコンセール・マロニエ21の金管部門で第1位になった人。ピアノ伴奏は渚智佳さん。彼女もまた同じ。
 演奏したのはエネスコ「レジェンド」,ヘーネ「スラブ幻想曲」,ネルーダ「トランペット協奏曲」の3つ。最後の曲だけは手元にCDがある。つまりは,こういう機会がないとまずもって聴く機会を持てないわけですね。

● 牛腸さんのトランペットはとにかくなめらか。レガートという言葉を思いだした。客席も魅了されたのでしょうね,終了後も拍手がやまず。
 牛腸さんによれば,アンコールは用意してなかったそうだ。が,急遽,ルロイ・アンダーソン「トランペット吹きの子守唄」をやってくれた。このコンサートでのアンコールは(ぼくの知る限り)初めてのこと。
 思いがけないお年玉。演奏後に,伴奏の渚さんが胸をなでおろす仕草をしていたのが,また客席に受けた。

2013.01.26 Comet Project presents The Secret Concert

ティアラこうとう大ホール

● 演奏曲目非公開の1回限りのコンサート。したがって,演奏するオーケストラも常設のオケではなくて,このために集まったプロジェクトオーケストラ(という言葉があるのかどうかは知らないけど,つまり一発オケ)。
 「Project Leader」がブログ『彗星の尻尾』でこのコンサートに向けた進捗状況を逐一報告しているのだけど,そのブログによれば,曲目非公開とはいいながら,もはや誰でも知っている公然の秘密になっているらしかった。

● チラシには「運命の扉を開いたその先には…今から72年前のサンクトペテルブルク」なるコピーがあったので,ベートーヴェンの5番とプロコフィエフの交響組曲「1941年」をやるのかと思ったんだけど,それじゃちょっとバランスが悪いよなぁ,と。
 その後,「壮大なる愚作」といわれたとの紹介があったので,あ,あれか,と。

● このコンサートを聴くためにわざわざ栃木から出張ったのは,ひとつにはその『彗星の尻尾』が面白かったことですね。なにゆえに面白いかといえば,若い女性の躍動感がそこここに感じられるところ。
 今回の企画の言いだしっぺであり,コンサートミストレスであり,事務局の責任者であり,雑用万般の担当者。ひとつの演奏会をゼロから立ちあげて実現に漕ぎつけるまでには,こういう作業をこういう段取りでやっていくのかと,こちらもひとつ利口になった。

● 業としてやっている人なら,もっと手際よくやるんだろうけど,基本,素人がやることだから,手戻りができちゃったりもする。愚直に泥くさくやっているところが,共感を呼ぶかも。
 しかも,嫌々やっているわけじゃない。具体的な夢をリアル化する過程だからね。嬉々として(とまでいっていいのかどうか)粘り腰を発揮している。その辺も素直に伝わってくるので,このブログ,かなりの応援者を獲得したはずだ。

● 計算していないのもいい。自分がやりたいことに一所懸命で,その姿勢が清々しい。なかなかできないもんなぁ。
 たいていは,生活の安定を第一にする。っていうか,それだけで手一杯。自分のやりたいことをやるなんてのは,その陰に隠れてしまう。
 ぼくもまた同じ。そんなことを真面目に考えたことがあったかどうか。
 やりたいことが明確にあるってのはそれだけで幸せなことなんだろうな,神さまに選ばれた人だよな,と気楽に考えてしまうんだけどもね。

● 当然,自分の生活もあるわけだから,相当に忙しかったろう。いろいろあっても気分を切り替えて次に向かおうとする様は,一途というか凛々しいというか。
 それにしてもこの切り替えの速さは女性ならでは。大方の男性にはできないものだろう。

● どうしてなんだと時々考えるんですよ。浮かんでくる理由はふたつ。
 ひとつは,男よりも女の方がやるべきことがたくさんあるのだろうってこと。サッサと切り替えないとこなしていけない。
 もうひとつは,埋没する度合いが男より深いんじゃないかってことなんですけどね。深く関わったから,未練を残さないですむんじゃないか,と(ただ,これはちょっと自信なし)。
 こういうのを読むと,男よりも女の方が神に近いところにいるなぁと思うんですよねぇ。

● 曲目を明かさないという遊びも,1回限りのプロジェクトだから成立する。常設のオケではできない相談。
 けれども,いくら1回限りとはいえ,その遊びを実際に遊んでみせるってのはなかなかできないことですよね。これも「Project Leader」による企みかと思われるんだけど,男では発想はできても実行はできないのじゃないか。
 男の遊びって,昔なら呑む打つ買う,今だと何ですかねぇ,何らかのオタク系になるのかなぁ。ひとりか少人数での遊びになりますねぇ(あるいは,逆の極端に振れて,政治家になって社会を動かすのを遊びにするとか,自己顕示まるだしの目立つことを考えるとか)。

● 徒手空拳で大勢を巻きこんで遊ぶのは女性の方が得意なのかも。人生を楽しむという面では,男より女にアドバンテージがあるかなぁ。
 これが遊ばせ上手ってことになると,ほぼ女性の専売特許になるわけで,今回の企画もこちらの範疇に入るかもしれない。
 と書きながら,こういう分類好きはいかにも男のものだなぁと思うんだけどさ。要するに,くだらないんだよね。この種の分類って。

● 開演は午後1時半。入場無料。指揮者は河上隆介さん。
 曲目はベートーヴェンの5番とショスタコーヴィチの7番。Comet Projectオーケストラ,平均年齢が若い。それゆえ,清新な演奏。
 ベートーヴェンの5番は小細工をしない直球勝負の演奏って感じでしたね。この曲に小細工はあり得ないんだろうけど。

● ショスタコーヴィチの7番については,前日にCD(バーンスタイン指揮,シカゴ交響楽団)を聴いてみた。でね,途中で寝てしまったんですよ。ダメだねぇ。
 っていうかですね,たとえばベートーヴェンの9番であれば,90分の演奏時間は納得できるんですよ。90分間,集中して聴いていられる。そうさせる必然性が曲の側にある。マーラーの3番は100分。これも,しかし,納得できる。
 ショスタコーヴィチの7番は80分。これはどうか。大変に畏れ多いことながら,少し長すぎるのではないか。いや,ホントに畏れ多いことなんですけどね。

● プログラムの曲目解説には,ショスタコーヴィチが「自国の極端な全体主義,そしてその根底にあるファシズム精神に対し,異議を唱えた」とある。
 ショスタコーヴィチをそこまで哲人に祭りあげるのはいかがかとも思うけど,そうだったのかもしれないとも思う。

● 当時,レニングラードはナチスに包囲されて,数十万人の餓死者が出たと言われる。その渦中にいるときに,自国の政治体制に思いを向けるとは考えにくい。そんな暢気な状況ではない。愛国心に燃えていたはずだ。敵を退ける,その思いだけだったはずだ。
 しかし,自国の政治体制に対する絶望感のようなものがずっと彼を被っていたかもしれない。

● でも,そうした解釈って,あまり議論する実益はないのだろう。どのどちらだとしても,演奏に違いをもたらすことはなさそうだから。
 Comet Projectオーケストラは,そんなこととは関係なく,集中を切らさずに演奏してくれた。この曲を生で聴ける機会は,ひょっとするとこれが最初で最後かもしれない。ありがたかった。
 ぼくの場合,何度かCDを聴かないとこの曲は身体に入ってこないようだ。せっかく生で聴く機会を得たのだから,しばらくCDのお世話になってみようと思う。これを機にショスタコーヴィチの他の曲にも馴染んでいければ,ラッキーこのうえない。

● 客席の埋まり具合は半分ほどだったろうか。「Project Leader」のブログはかなりの共感を呼んだと思う。ただ,そのことと実際に会場に足を運ぶのとは別のこと。それ以前に,ブログを読む人は限られるだろう。チラシの効果も限定的だろうし。
 リアルの集客は難しい。いや,半分埋まれば上出来といっていいのかもね。

2013年1月20日日曜日

2013.01.20 古河フィルハーモニー管弦楽団第8回定期演奏会

小山市立文化センター大ホール

● 今回の古河フィルの定演は「交響曲プログラム」。モーツァルトの35番「ハフナー」とマーラーの1番。
 開演は午後2時。当日券(1,000円)で入場。指揮者は常任(という言葉をこの楽団では用いていないのだが)の高山健児さん。

● 「ハフナー」は,音がステージ上で寝てしまって,こちら側に向かって立ちあがってこないような印象。この楽団の演奏でこんな印象を持ったのは初めてのこと。
 ただし,演奏ではなく,ぼくの受入体勢に問題があったのだと思われる。隣に小さい子供が3人いてね,ちょこちょこと音を出すので,そちらの方に気が行ってしまってた。

● マーラーが始まったときは,彼らが忽然?と姿を消してた。
 だからというわけでもないのだが,マーラーの1番はビンビン届いた。楽曲そのものの然らしめるところでもあると思うんですけどね。
 マーラーはこの楽団にとっても挑戦だったろう。途中で音が割れるのではないかと意地悪くも思ってたんだけど,ごめんなさいです。演奏する方は最後まで冷静だったですね。
 素人考えながら,うわずっちゃいけないとわかりながらも無性に走りたくなる局面があるんじゃないかと思うんですよねぇ。ここで走ったら気持ちいいだろうなぁ,って(いや,この曲に関しては,マーラーに走らされるだけで充分で,そんな余力はないか)。
 もちろん,暴走はなく,きちんと終曲。ぼくは木管に魅了されたけれども,金管陣もしっかり務めを果たしていた感じ。

● マーラーの交響曲って,CDで聴いても隔靴掻痒っていうか,あまり響いてこないっていうか,要はピンと来ないんですよねぇ。すごさがいまいちわからない。ぼくだけのことかもしれないんですけどね。
 こうして生で聴けると,痒いところをバリバリ掻いているような快感を味わえます。

● プログラムの「代表挨拶」に,「今回の演奏会をもちまして,古河フィルは一旦,活動を終了いたします」とあった。えっ,なくなっちゃうの?
 どうやらそうではないようだ。「小山市立文化センターが音楽愛好家に呼びかけて」,新たなオーケストラが設立されたらしいのですね。しかも,音楽監督には高山さんがすでに就任している。第1回目の定期演奏会の日程まで決まっている。

● 古河フィルはそちらに合流するということなんでしょう。っていうか,古河フィルが新オーケストラの母体になるんでしょうね。発展的解消ってやつですか。
 「将来的には特定非営利団体となることも視野に入れて活動」していくともある。NPO法人になることのメリットは,ぼくにはよくわからないが,意気込みは伝わってくる。

● その新たなオーケストラの名称は「日本交響楽団」。いけない理由は何もないんだけれども,本当にいいのか,この名前で。
 何はともあれ,新オーケストラの1回目の定演は6月9日。ブラームスの2番。読響の小森谷さんを迎えて,メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲も。

2013年1月14日月曜日

2013.01.14 間奏26:大雪-那須野が原ハーモニーホールのニューイヤーコンサートに行けなかった


● 怠惰の極みの二度寝をして,ゆっくり起きてみたら,窓の外が白い。雪。しかもワッサワッサと降っている。加えて北風が強い。
 今日は午後2時半から,那須野が原ハーモニーホールでニューイヤーコンサートが開催される。もちろん手帳にも書き留めているけれど,それ以前に小さな頭に入っている。
 当日券があると踏んでいたので,事前にチケットは買っていなかったんだけど,当然,行くつもりでいた。

● しかし。この天候では。どうしようか。家で温々とCDを聴いてる方がいいかなぁ。

● でもね,出演者は雪だろうと何だろうと,決められた時刻にはスタンバイしなければならないだろう。今回は大田原高校の合唱部も出演するんだけど,彼らも何が何でも会場に集合するのだろう。
 であれば,こういうときこそ,出かけてナンボではないか。それでこそ,出演者を応援できるというものではないか。

● というわけで,雪の中を出立。ゆえあってぼくが使える車はないので(あっても,この雪では自重したと思うが),電車で向かうことにした。
 さすがJR東日本の電車は,この程度の雪では不通にはならないのだった。
 のだが。蒲須坂駅の手前でガクンと急停車。踏切の安全確認をするという車内放送があった。結局,30分間の予定外の停車となった。

● これで開演時刻までに会場に到着できる可能性はゼロになった。さて,どうする。行くか退くか。
 チケットは買っていないんだから,退いても損害はないぞ。でも,ひょっとすると開演じたいが遅れるかもしれないから,まにあう可能性もある。
 結局,退くことにした。ミソを付けてしまった感じがしましたのでね。残念でもここは撤退した方が,傷口を広げなくてすみそうな感じがしたんですよ。
 もうひとつ。今年は弦楽亭オーケストラが登場しないんですね。これゆえに,聴かなくてもいいかとチラッと思ってしまったのも事実。

● で,上り電車で引き返すことにしたんだけども,今度はその上り電車が矢板駅で延々と停車したままになった。宝積寺駅近くで,電車のパンタグラフが大雪のために壊れてしまったらしい。
 2時間も停まっていたろうか。何だかんだで半日を電車の中で過ごした感じ(もちろん,大袈裟な言い方です)。
 これなら,退かないで行っとくべきだったと,当然,思いましたね。ホールで音楽を聴いている2時間と動かない電車の中で過ごす2時間,どちらがいいですか。

● かえってミソを加えてしまったなぁ。予測不可能ではあるわけだけど,そういうときこそ,その人の運というかツキが現れるのかもな。
 っていうかさ,あと1本前の電車に乗っていれば,何の問題もなかったわけでね。この天気なんだから,当然,それくらいの慮りはあってよかったよねぇ。

● やっぱりね,こういうときは出かけずに家でマッタリするのが吉ですな。
 でもJRの工事の人なんか典型的にそうなんだけど,雪だからといって家でマッタリするなんて許されない立場の人がたくさんいる。普段どおりに街は動いているわけだからね。動かしている人たちは,雪の中を仕事に出ているわけだもんね。
 コンサート,どうだったんだろう。無事に終われたんだろうか。

● じつを言うと,電車が立ち往生したくらいで困ることなんてないんですけどね。その間,どうしていたかといえば,イヤフォンを耳に突っこんで音楽を聴いていた。あと,時々,読書。
 ヴィヴァルディの「四季」を全曲聴き,ベートーヴェンの「第九」も聴けてしまった。家にいるより,こういう状況の方が聴けるものです。
 しかも,電車の中は暖房も効いている。多少の窮屈さを我慢すれば,ほんと,何も困らない。けっこう充実した時間を過ごせたかもしれない。
 スマホひとつ持っていると,苛々から自由になれる。便利な機器だとあらためて思った。

● 問題は明朝の道路事情。栃木県って車依存度が高い地域なんだけど,そんなに雪って降らないから,基本,備えが甘い(オマエが言うなっ)。

2013年1月13日日曜日

2013.01.13 宇都宮クラリネットアンサンブル第5回演奏会

宇都宮市文化会館小ホール

● 本演奏会の宣伝チラシによれば,宇都宮クラリネットアンサンブルは「2007年1月に結成。メンバーは17名で栃木県立宇都宮北高等学校の卒業生で構成されている。アマチュアからプロまでさまざまなメンバーが集まっている」とのこと。
 将来的には「メンバーを増やしていき、栃木県初のクラリネットクワイヤー(クラリネットオーケストラ)にしていく予定」ともある。
 ちなみに,17名は全員が女性。

● 5回目になるまで,この団体の存在を知らなかった。ほかにもあるかもしれない。ぼくの知らない栃木県内の演奏団体が。
 開演は午後2時。チケットは500円。座席はかなり埋まっていた。宇都宮北高校の卒業生や在校生が多いのかとは思うのだが,ひょっとすると知る人ぞ知る演奏会なのかもしれない。

● というのは,ステージに華があったからなんですね。全員が女性だからってのも理由かもしれないんだけど,実力がないのに華があるというのはあり得ないわけでね。
 きっちり聴かせる演奏だったわけなんです。っていうか,相当,レベル高いです。

● 内容は3部構成。
 第1部は「クラリネット小編成」。独奏と二重奏と四重奏。
 独奏はバッハの「無伴奏チェロ組曲第3番」の一部と,ピアソラの「タンゴ・エチュード第3番」。二重奏(+ピアノ伴奏)はメンデルスゾーンの「演奏会用小品第2番」。四重奏は「おしえて」(「アルプスの少女ハイジ」の主題歌)とガーシュウィンの「アイ・ガット・リズム変奏曲」。
 最も印象に残ったのは「演奏会用小品第2番」だけれど(メンデルスゾーンにこういう作品があったのを初めて知った),1曲目から安心して聴いていられたっていうか,身を任せることができたっていうか。

● 第2部は「クラリネット11重奏」。
 「情熱大陸」(葉加瀬太郎),ユーミンメドレー,「エスクアロ-鮫」(ピアソラ),「ルーマニア民族舞曲」(バルトーク)の4つ。
 テレビの「情熱大陸」は見ていないので,この曲も耳にしたことは少ない。あらためて聴かせてもらうと,けっこう以上にいい曲ですよね,これ。元気がないときのカンフル曲?として使えそうな気もしますな。

● 第2部の途中で,楽器とメンバー紹介があった。ジャズなんかだとしつこいくらいにやるんだけれども,これはやってくれた方がいいですよね。
 名前と顔が一致した方が親しみがわくし,バセット・ホルンやバス・クラリネット,コントラバス・クラリネットといった普段はあまり目にすることのない楽器の名前と形状もわかるしね。

● 第3部は「クラリネットオーケストラ」。楽員以外の奏者を公募したそうだ。30人近いメンバーで(男性もふたり),ヤン・ヴァン・デル・ローストの「カンタベリーコラール」と「リクディム」を演奏。
 と,知ったふうに書いているけれども,曲名も作曲者の名前も初めて聞くものだ。吹奏楽でよく演奏される曲らしい。ということはつまり,ノリがいい曲。
 奏者の中には小学生の女の子もいた。堂々の演奏ぶり。女の子はこんな小さいころから肝が据わっているんだねぇ。

● というわけで,またひとついいものを見つけてしまった。1年に一度の楽しみがひとつ増えたってことですね。

2013年1月7日月曜日

2013.01.06 東京大学歌劇団第38回公演 ビゼー「カルメン」


サンパール荒川 大ホール

● この団体のホームページによれば,東大歌劇団とは「オペラの完全自主公演を行う団体で」あり,「団内に合唱団,管弦楽団,舞台スタッフを抱え,オペラの舞台の全てを自分達の力で作り」,「選曲も団員全員で行い」,「指揮者,演出家,キャストも団員の中から選ばれ」,「舞台についても,大道具や小道具,衣裳・メイクから照明まで全て自分たちで用意」する。
 「年に2回,オペラを全幕上演する演奏会を行って」おり,東大の冠がついているけれども,「社会人も多く参加しており,練習に参加できる方なら誰でも入団でき」る,とのこと。

● とはいえ,音楽大学ではない普通の大学の学生たちが自主公演をするといったって,できるものなんだろうか。ひょっとして,好き者による「オペラごっこ」に過ぎないのじゃないだろうか。
 失礼ながら,そう思いつつ,会場へ。開演は午後3時。入場無料(カンパ制)。

● サンパール荒川の大ホールは小ぶりではあるけれども,約千人は収容できる。その大ホールがほぼ満席になった。
 当然ながら,ピットにはオーケストラがスタンバっている。
 舞台装置は手作りだ。安っぽい感じなのは免れない。が,それが当然だろう。学生たちが観客から入場料を取らないでやっているのだから。
 プログラムは洒落ている。っていうか,立派なものだ。表紙の絵も絵として鑑賞するに足るものだよね。
 
● 演芸っていうか芸能っていうか色物っていうかエンタテインメントっていうか,そういうものの原点に近い形を見せてもらったっていう気がしている。
 たとえば歌舞伎だって,現在の洗練を極める舞台になるまでには長い年月を経ている。出雲阿国が出雲大社勧進のために諸国を回って踊っていたのは,まだ10代の,今の言葉でいえば少女の頃だ。今の歌舞伎とはまったくの別物だったはずだ。
 屋台が常設の舞台になり,遊女歌舞伎,少年歌舞伎を経て野郎歌舞伎になり,音楽も舞踊も大道具も衣装も変遷を重ねて,現在に至っている。
 オペラだって今のスタイルになるまでには幾星霜も経てきている。その途中があったはずだろう。

● いや,そういう言い方は適当じゃないですね。今回の公演を,歌舞伎における出雲阿国にたとえてしまうのは,いくら何でも失礼の極みだし,かつての途中の姿を見せてもらったということでもない。この公演はあくまでも現代オペラの舞台だ。
 新国立劇場にかかる舞台がF1カーだとすれば(といっても,その舞台を観たことはないんですけどね),この公演はトヨタのラクティス(ぼくが乗っているクルマなんですけど)かもしれないけれども,とにかく自分で走れるクルマだ。お客さんを乗せて,どこにでも行ける能力は備えている。

● 「原点に近い」というのは,もの作りの現場って最初はこんな感じで始まったんだろうなってことなんですよ。
 高校の部活のノリ。一所懸命に,でも,やりたいからやってるっていう感じ。

● カルメンを演じた子は,今年の春に大学生になるという。「カルメン」の劇中人物の年齢は,ステージで歌っている学生たちと同じか,それより少し若いかだろう。要するに,演技者と劇中人物との間に落差がない(少ない)。乙女の役を乙女が演じている。
 オバサンが乙女を演じるときには,それらしく見せるために,いろいろ工夫をするんだと思う。その工夫が役柄にコクをもたらすってことが,ひょっとしたらあるかもしれない。
 今回はその工夫が基本的に要らない。いうなら素でやれる。それがいいことなのか,そうではないのか。

● ジプシーの話だし,盗賊団も登場するわけだから,全体的にもっとワルっぽさがあると良かったかなぁ,と。皆さん,とてもいい人っぽかったから。育ちの良さを消す作業が必要だったかもね。
 たとえば,ドアに手をかけて袖に引っこむところなんか,指が白くて細くてなめらかでねぇ。どう見たってお嬢さんの指で。ジプシーの女には見えないんだよなぁ。
 って,こういうのはないものねだりなんだろうなぁ。そこまでやれっていうのはね。

● (再び)カルメンを演じた子は,プログラムに「JK最後の半年を本公演に費やして参りました。大変でした,ほんとに」と書いている(JKって何だ? おじさんにはさっぱりわからんぞ。女子高生? 高校生には見えなかったんだがなぁ)。
 これはひとり彼女だけのことではないだろう。ここまで持ってくるには,大変な時間を費やしているわけですよね。

● 管弦楽の指揮は法学部の4年生が担当。彼が書いている挨拶文によれば,過去の公演を渉猟して,では自分たちはどうするか,そこをちゃんと考えて「カルメン」に向き合ってきたようだ。
 それを理想的に具体化するには技術も必要だし,お金もいるわけで,そこは現実と妥協しなければいけないけど,姿勢そのものはいたって真摯。遊び半分でやっているわけじゃない。恐れいるよなぁ。

● 元気をもらえる公演だったと思う。怖いもの知らずの部活のノリ。40歳になっても50歳になっても,これを維持できたらどんなにか素敵な人生になるだろう。
 加齢とともにそれができなくなるのは,ひとつには,肥えるからだと思う。舌が肥える,目が肥える,耳が肥える。じつにくだらん,そんなものは,と毒づいてみても,普通に生きてれば(人によって程度の差はあれ)肥えてしまうものだよねぇ
 世に芸術とか教養とかいわれるものは,「肥え」を前提にしているようでもあるんだけどさ。

● この公演,学生たちがやっていることもあって,敷居が低い。こういうものを何度も見て,ストーリーと展開を頭に入れてから,プロがやっている公演に臨むのっては,方法論としてはありかなぁと思いました。こずるい考え方だけどね。
 しかし,これはこれとして楽しめることは確かで,くだらないことをあれこれ考えないで,目の前の公演(演奏)を楽しむという姿勢で行くのが真っ当というものでしょうね。

● この公演を観たおかげで,CDで「カルメン」組曲を聴いても,いっそう味わい深く聴けるようになった(ような気がする)。それだけでも大きなプレゼントをもらったようなものだ(これも肥えたということか)
 次回は7月28日,ヴェルディ「イル・トロヴァトーレ」の予定。

2013年1月3日木曜日

2013.01.03 間奏25:あけましておめでとうございます

● 3ヶ日はゆっくり過ごせましたでしょうか。正月なんて自分には関係ないという方も多いと思うのですが。
 実際,大晦日も元日も普段と何も変わらなくなって久しいですもんね。スーパーもコンビニも普段と同じように営業してるし。個人商店が少なくなったせいでしょうかねぇ。便利っちゃ便利なんだけど。
 凧をあげたり独楽をまわしたりおい羽根ついたりってのは,いつ頃からやらなくなったんだろう。っていうか,ぼくもこの3つを自分でやったっていう記憶はないんですよ。すごろくや福笑いをして遊んだってのも,どうも憶えてない。やってはいたと思うんですけどね。

● 正月の楽しみはテレビ。
 普段から木村拓哉と明石家さんまの番組だけは見てるんですよ。月曜日の「SMAP×SMAP」(フジ)と火曜日の「踊るさんま御殿」(日テレ),それと水曜日の「ホンマでっか!?TV」(フジ)は必ず見てます。
 「恋のカラ騒ぎ」はだいぶ前に終わってしまいましたが,何でですかねぇ。面白かったんだけどなぁ。
 あれ,放送日を土曜から金曜に変えたのがまずかったよね。あの雰囲気は土曜日なんですよ。金曜日にしちゃダメなんですよ。

● 月9の「PRICELESS」は面白かったですな。木村君の主演ドラマは,ここのところ不調が続いていたからね。「月の恋人」はあれだけの俳優を使っていながら何でこんなにつまらないのだと思うほどだったし,「南極大陸」も後半失速。犬が中心になってからダメね。犬の演技?はすばらしかったんだけど。
 「PRICELESS」は久々に面白かった。と思ったら「ドクターX」の方が視聴率は上。ホントかね。
 「ドクターX」も1回目は見たんですよ。でも,あんまりつまらないので2回目以降は見なかったんだよなぁ。「それって医師免許がなくてもできますよね」って,麻雀だって医師免許がなくてもできるだろうがっ,と突っこみを入れたくなったなぁ。何だよ,あれ。

● ともあれ。今年の元日は「さんタク」(フジ)。「さんタク」はね,1回目からずっと見てるんですよ。去年はちょっと特殊事情があってアレなんだけども,あの二人でやるんだから,どうやったってつまらなくなりようがないんですよ。
 ところが。見逃してしまいました,今年は。痛恨の極み。YouTubeをあたってみたんですけど,部分的にしかアップされていない。まさかあるんだろうな,再放送。お願いしますよ,あってくださいよ。
 2日の「さんまのまんま」(フジ)はバッチリ見れた。喋っているだけなのに,あの面白さは何なのか。後に何も残らないんですよね,さんまのトークって。アハハと笑って,その後に何も残らない。
 これね,普通はなにがしかは残ってしまうものでしょ。ここまで見事に何も残さないってのは,相当すごいことなんじゃないかと思ってるんですけどねぇ。

● 元日の「ウィーンフィル・ニューイヤーコンサート」(NHK)は見たり見なかったり。今年は見ました。
 ウィーン・フィルって男だらけなんですな。別にいいんですけどね。でも,もうちょっと女性がいてもいいんじゃないか。
 初の女性コンサートマスター誕生って騒がれたのはウィーン・フィルじゃなかったけ? どこに行ったのだ? 女性が居づらい雰囲気があるんだろうか。もともとあまり長くとどまる団員は少ないのかねぇ。

● 観客はきちんと正装してますね。観客としても見映えがするね。でもね,たぶんね,彼らの観客としての水準って,さほどでもないと思うぞ。いや,根拠はないんですけどね,何となくそう思うだけで(妄言多謝)。
 ウィーンっていう名前に,どうもぼくらは気圧されがちじゃないか。会場(ウィーン楽友協会の大ホール)のゴージャスさや音楽の都っていう言葉に負けるっていうか。

● 実際にあのホールを見たら,ぼくならむかっ腹を立てると思う。なんでこんな無駄なゴージャスを作ったんだよ,猿の子孫のくせに生意気なんだよ,って。
 ちなみに,同じ理由で,ぼくは栃木県人なんだけど東照宮があんまり好きじゃないんですよ。歴史的価値とか文化的価値とかっていわれると,あぁそうですかっていうしかないんだけどね。
 なんでああまで装飾過剰にするかね。ああいうのを成金趣味っていわないか。成金趣味も極めれば歴史に残る。

● 3日の「NHKニューイヤー・オペラコンサート」も見ちゃいました。これを生で聴いたら,全然違う印象になると思うんですけどね。テレビでは平板な印象になってしまうのは仕方ないんでしょうか。

● 年末に地図帳と歴史年表を買いました。地図はね,昔から好きでして。ちょっと現実逃避をしたいときには,地図帳をながめるといいですよね。
 歴史年表を買うのは,高校を卒業してからは初めてだ。最近,ポツポツと音楽本を読むようになってましてね。たとえば,ベートーヴェンの「第九」が初演されたときって,日本では何があったんだろうって気になります。ちょっと調べるのに便利かな,と。こういうときは,パソコンより紙の方が使い勝手がいいですからね。

● と,勝手なことを書き散らしてしまいました。お見苦しい点は,どうぞご容赦ください。
 この1年が皆さまにとりまして良き年となりますよう,お祈りいたしております。
 なかなかね,そう簡単には問屋が卸してくれないとは思うんですけどね。小さな幸せをできるだけ見つけて,心に留めておくようお互いに心がけたいものです。

(追記) 「さんタク」はFC2動画にありました。今,見終えたところです。よかった,よかった。(2013.01.04)