2014年1月27日月曜日

2014.01.26 オペラ「夕鶴」

栃木県総合文化センター メインホール

● 佐藤しのぶさん主演のオペラ「夕鶴」の全国公演が宇都宮でも。
 指揮は現田茂夫さんで,ピットに入るのは東京フィル。市川右近さんが演出し,美術は千住博,照明が成瀬一裕,衣装が森英恵とビッグネームが並ぶ。このあたりに惹かれて,チケットを購入していた。
 S席で9,000円。プログラムは別売で1,500円。開演は午後3時。

● 1階は両翼席を含めてほぼ満席。2階席に空きがあった。S席から売れていったようだ。A席,B席との料金差が1,500円きざみだから,どうせならS席でとぼくも考えたけどね。
 S席が全席の過半を占めているはずだから,正真正銘のSと,Aに近いSではかなりの違いがある。さっさといい席を確保しておきましたよ,と。

● 出演者は「つう」の佐藤しのぶさんのほか,「与ひょう」に倉石真さん,「運ず」が原田圭さん,「惣ど」が高橋啓三さん。
 児童合唱は地元の宇都宮少年少女合唱団と上三川少年少女合唱団の精鋭たち。

● 9,000円以上のものを返してもらった感じ。佐藤さんの「つう」は何と言いますか,繊細でたおやか。舞台の背景画も細かく作りこまれていて,見応えあり。
 演者を見て,細かく動く背景を見て,ピットも見て,その合間に字幕も見なきゃいけない。けっこう忙しかった。

● ストーリーは大人のママゴトじゃないですか。ストーリーだけを取れば。
 鶴が手弱女に姿を変えてってのは別にしても,一緒に暮らしている男女がいつまでも仲睦まじくなんてあるはずがないじゃないですか。結婚は恋愛の終わりであって倦怠の始まりですよねぇ。
 私だけを可愛がって,私よりお金が大事なの,なんて奥さんが言うわけないもんね。一般論として言えば,男より女の方がお金好きだもんな。ガメツイもん。

● ということを自分に言い聞かせて,これは作り事なんだと思おうとしましたね。そうしないと,舞台で展開されるストーリーを受けとめるのが辛いんですよ。そのくらいのリアリティが客席に届くっていうかね。
 オペラっていう表現方式のすごさでしょうね。微細にリアルに届いて来ちゃうんですよねぇ。

● 物語の持つ普遍性とでもいうべきものの力もありますね。
 「つう」ははっきり女神なわけですよ。現実には存在しない女性性の象徴ですよね。無垢であり,献身であり,愛情であり,一途であり,利他であり,無邪気であって,世俗なるものとは一線も二線も画している。
 したがって,それはとてもはかなくて壊れやすいもので,世俗でまっとうされることはない。
 そういうことが,けっこう切なく迫ってくるんだよなぁ。

● 劇は,身を削って力尽きた「つう」がヨタヨタと飛び去っていくのを,残された「与ひょう」たちが見送るところで感動的に終わる。
 だけど,たぶん,このあと「与ひょう」たちは都に出かけて,「つう」が形見に残した布まで売ってお金に換えるに決まっているわけでね。
 頼むからそれはやってくれるなよ。観客も会場にその思いを残してくるんだと思う。

● これはいうなら,壮大な遊び。これだけの遊びを作るにはべらぼうなお金がかかっているはずだ。「芸術」はすなわち贅沢極まる遊びですな。
 そうして,人が生きていくのに遊びは欠かせないものだから,何が何でも人はこうした遊びの創作に向かっていく。
 「つう」の無垢や献身に心を洗ってもらうのって,快感だからね。洗ってもらえたと思うのも錯覚に違いないんだけど,その錯覚は求めたくなるものだよね。

● このオペラのCDはぼくの手元にもある。上演600回記念公演を録音したもの。鮫島有美子さんが「つう」を演じてるやつね。
 で,それも聴いてみたんだけど,当然ながら,舞台で味わえたリアルさは届いてきませんね。そのリアルさを9,000円で買うのだとすると,9,000円は安かったと思いますねぇ。

2014年1月25日土曜日

2014.01.25 Nonette Pipers Ensemble 第29回定期演奏会

宇都宮市文化会館 小ホール

● 昨夜は呑み会があった。若い頃はけっこう以上に呑みましたよ,ええ。人の二生分は呑んだろうから,酒はもういいやと思ってる。思ってるだけで呑むのをやめたわけじゃないんだけど,職場の忘年会だの暑気払いだの以外に呑むことはめっきり少なくなった。昨夜も,昔の職場絡みの呑み会。
 出てくる料理が,刺身にしても野菜の炊き合わせにしても,どれも旨くてですね,これじゃ日本酒じゃないとな,っていうわけで。

● ご多分にもれず,ぼくも焼酎とかウイスキーのソーダ割りなんぞを呑んでるんですよ,普段はね。翌日,楽なような気がするんで。
 でも昨夜は日本酒。これがまた旨くてですね(地元の「惣誉」っていう酒なんですが),スイスイ入る。で,四合ほど呑んじゃった。老いの身には適量を超えたようなんですね。その前にハイボールも呑んでたし。
 でもって,今日は体調不良でしたよ,と。呑むとどうしても睡眠が浅くなりますよね。これが効きますな。

● そんな状態だったので,奏者には申しわけのない聴き方になってしまった。出かけなければいいんだけどね,そういうときは。
 そのあたりがビシッとできれば,ぼくもひと皮むけるかなと思うんだけどね。

● 今回で29回を数えるわけだから,活動実績の長い木管アンサンブル集団ってことですね。ところが。知らずにきてしまいましたよ。今の今まで。
 開演は午後2時。チケットは500円。当日券を購入。

● プログラムは次のとおり。演奏メンバーは曲ごとに交替。
 近衛珍念編 日本の歌メドレー
 ラハナー 八重奏曲 変ロ長調
 ルーセル ディヴェルティメント
 ドヴォルザーク 管楽セレナーデ

● ラハナーの「八重奏曲」で,この集団が並の水準ではないことはすぐに了解できた。特に,両端のフルートとクラリネット。でも,オーボエやファゴットもかなりの高みにいるっていう。
 どうして今まで知らずにいたのか,自分のことながら不思議な気がする。

● ドヴォルザーク「管楽セレナーデ」ではオーボエにとんでもなく長いフレーズがあって,よく息が続くものだなぁと素朴に感心。
 この曲だけ指揮者がいて,N響でファゴットを吹いている菅原恵子さん。彼女がここのトレーナーを務めているらしい。

● オーケストラだといろいろと突っ込みどころがある。演奏するのも花満載の交響曲。対して,こうした少人数のアンサンブルだと,聴き手にも技量が問われるっていうか,ヘタなことを書くとお里が知られそうだ。
 大きなホールができる前は,こうした演奏を人々(貴族ってことになるんだろうけど)は楽しんでいたのだろう。たいした聴き巧者だったに違いない。

2014年1月20日月曜日

2014.01.20 間奏35:東京ディズニーシーのショーを見に行った

● ちょっと前のことになるんだけど,TDSに行ってきた。
 何しにいったかというと,シーのショーを見たくなったんですよ。

● ランドの「ワンマンズ・ドリームⅡ」なんてすごいからね。音楽は録音だから,見るべきものは舞台の設えとダンス,振付ってことになる。
 水準が高ければ観客を飽きさせない。好きな人はアトラクションには目もくれずに,「ワンマンズ・ドリームⅡ」を1日に何度も観る。たいていは女性で,好きなダンサーを追っかけてたりする。

● シーには,生演奏のショーがありますな。「ビッグバンドビート」。「ビッグバンドジャズの迫力あふれる演奏をバックに,本場のミュージシャンやタップダンサーたちが繰り広げるスタイリッシュなレビューショー」と紹介されてる。
 演奏も高水準なら,タップもお見事。ついでに,会場(ブロードウェイ・ミュージックシアター)も本格的。1日に3~5回の演奏。奏者やダンサーにとって,ここが終着駅ってことはないだろうけど,かといってここで吹いたり踊ったりするのは,業界に属する人であれば誰でもできるというわけでもないだろう。

● ジャズについて知るところはほとんどないんだけど,このショーは往年のクラシックジャズの趣を濃く湛えている(ように思われる)。なんか懐かしい感じがする。
 ジャズに詳しくない人が,茫漠と持っているジャズに対するイメージを損なわないように構成しているのだろう。TDRに遊びに来るお客さんは,ほとんどそうした人たちだろうから,それら最大公約数に対応しなければならない。
 TDSに来ればいつでもこのショーが見られるとなると,特にジャズファンでもないぼくとしては,ジャズはこれだけでいいかなぁと思ったりね。

● ついでに,「ミスティックリズム」。
 「ロストリバーデルタの精霊たちによる幻想的な世界。力強いリズム,目を見はる空中パフォーマンスの数々…。ジャングルの神秘と伝説の幕が切っておとされます!」というわけなんだけど,これは何だろう,水と火の対決ってことなんだろうか。
 宣伝文句に偽りなしで,難易度の高い演技が頻出する。

● さらにアトラクションも。「ストームライダー」のキャプテン・デイビスのキャラクターは魅力的だな。「緑のチカチカ,チェック」は特にいい。「機内食の時間はなさそうだな」も。
 このあたりの脚本は,名手によるものなんでしょうね。声優もね。

● 最近,香港のディズニーランドにも行ったムスコが言うには,TDSは,この時期の平日でも,土日の香港より混んでいる。
 ぼくも一度だけ,香港のディズニーランドに行ったことがある。あれははっきり東京とは別もの。似ても似つかない。まず華やぎがない。華やぎのための第一要因である賑わいがない。
 アトラクションも大雑把にいうとチープな感じ。乗ってもぜんぜん高揚しない。ありていに申しあげれば,場末の遊園地だ。

● TDRのホスピタリティーがしばしば指摘されるけれども,これはディズニーよりオリエンタルランドの功績に帰せられるべきものかも。ディズニーのマニュアルを遵守するばかりか,さらにそれに磨きをかけたっていうか。
 これほどの賑わいは,日本人のある意味馬鹿さ加減が支えている。その馬鹿さ加減を細かく分析していくと,面白い日本人馬鹿論ができあがるかもしれない。
 が,馬鹿が結局は利口ではないかと,今のところは思っている。人間が二百年も三百年も生きるのならまた別かもしれないけれども,たかだか数十年なのだから,利口ぶるには人生はあまりにも短い。

2014年1月18日土曜日

2014.01.18 ウインナー・ワルツ・オーケストラ 宮殿祝賀コンサート

栃木県総合文化センター メインホール

● どうなんだかなぁ,こういうコンサート。と思いながら,勢いでチケットを買ってしまっていた。全席指定で一律4,000円。
 1階の両翼席と2階席にはけっこう空席があった。開演は午後3時。

● プログラムは次のとおり。
 ビゼー 「アルルの女」第2組曲より“ファランドール”
 ヨハン・シュトラウス ポルカ「あれか,これか!」
 ヨハン・シュトラウス 入江のワルツ
 ヨハン・シュトラウス ポルカ「狩り」
 ヅーツィンスキー ウィーン,わが夢の町
 ヨハン・シュトラウス 皇帝円舞曲
 ブラームス ハンガリー舞曲第1番
 (休憩)
 リスト ハンガリー狂詩曲
 ワルトトイフェル シャブリエの狂詩曲に基づくワルツ「スペイン」
 キアーラ ラ・スパニョーラ
 E.シュトラウス ポルカ「粋に」
 ヨハン・シュトラウス ポルカ「雷鳴と雷光」
 フバイ ヘイレ・カティ
 レイモンド 喜歌劇「青い仮面」より“ブダペストのユリスカ”
 ヨハン・シュトラウス ワルツ「美しく青きドナウ」

 アンコールは次の3曲。
 ヨハン・シュトラウス ラデツキー行進曲
 ビゼー 「カルメン」より第1幕前奏曲
 ヨハン・シュトラウス トリッチ・トラッチ・ポルカ

● 指揮はサンドロ・クトゥレーロ。プログラムのメンバーリストを見ると,スラブ系の名前が多いようなんだけど,パッと見た目,だいぶ多国籍。

● 演奏開始早々に,男女二人ずつのダンスが入った。こちらの希望としては,演奏中は指揮者と奏者だけを見ていたい。
 ダンスが凡庸ならば,ダンサーなど無視して,演奏する様を見ていればすむ話なんだけど,何気に高度な技を見せてくれるものだから,ひじょうに困る。取扱いが厄介だ。

● 「ウィーン,わが夢の町」にはソプラノも入った。ミレーナ・アルソフスカさん。声楽が入ると,どうしたってそちらに気が向く。しかも,呆れるほどの美人。これもひじょうに困る。

● 後半には,クラリネットがとんでもなく長いフレーズを吹いて,見せ場を作る場面もあったんだけど,前半ではフルートの女性奏者に注目。闊達でしなやか。絵になっていた。
 彼女に限らず,腕前については,ぼくがどうこういう余地はない。

● 観客を楽しませるための演奏だ。黙って俺たちの演奏を聴きやがれ,というのではない。そうである以上,こちらもそれに乗るのがマナーというものだ。
 むしろ,こちらが奏者の背中を押すくらいでありたいわけだけど,これも迂闊に乗ると,演奏の流れを無視して,ダンサーに拍手しそうになったりする。結局,最後まで自重した感じ。
 ウィーン・フィルのニュー・イヤー・コンサートをテレビで見ていても,観客はちょっと固くなっているじゃないですか。あれとこれとを一緒にするわけにはいかないけれども,ほどよいリラックスで楽しむって,意外に難しいのかもしれないな,と。

● 後半ではダンスが白熱した。演奏と五分を張る存在になっちゃった。「指揮者と奏者だけを見ていたい」なんて気持ちは,雲散霧消。
 「ラ・スパニョーラ」と「ブダペストのユリスカ」では,再び,アルソフスカさんが登場。いるだけで場が華やぐ。ラストでは,器楽の演奏が彼女の声を消してしまっていたんだけど,これは場面的にやむを得ないんでしょうねぇ。

● 「ヘイレ・カティ」ではヴァイオリン首席の見せ場もあり,指揮者がエンタテナーの役を買ってでて,ダンサーや歌手と絡んだり,日本語のあいさつをはさんだり。アンコールの「ラデツキー行進曲」も流れ的に必然。
 結局,終わってみれば小粋を維持した2時間になっていた。エンタテインメントに徹しましたよ,と。

● こうまでしてくれると,終演後のCDやDVDの売上げが確実に増えるね。
 勢いで買ったチケットだけれども,勢いには乗ってみるもんだなぁ。こういう楽しみ方もいいものだと思った。
 客席からも始終,大きな拍手が起こっていたけれど,「楽しませてくれてありがとう」が成分の8割を占めていたように思われる。

2014年1月14日火曜日

2014.01.13 日本交響楽団第2回定期演奏会

小山市立文化センター 大ホール

● 日本交響楽団の第1回目の演奏会は栃響と重なってしまって行けなかった。
 開演は午後2時。全席指定。SとAの2種。当日券を購入。残りわずかだった。残りの中から最も良さそうな席を選んだところ,A席で料金は1,000円。
 けれども,鑑賞には支障なし。もともとさほどに大きなホールではないから,まずどの席でも問題はなさげだ。あまりに前の方はさけた方が無難だろうけれども。

● という次第で,客席は満席状態。小山市立文化センターがだいぶ関わって結成したようだから,自分の市のオーケストラとして応援しようという小山市民が多いんですか。
 名前は日本だけれども,ローカル色がだいぶ強いようだ。いい悪い,ではなく。地域に根づきつつあるといいますか,最初から根づいていたといいますか。

● 指揮者は高山健児さん。読響のコントラバス奏者で,古河フィルの指揮者でもあった。
 ということなので,この楽団は古河フィルを母体にしたものだと思ってしまうんだけど(実際,古河フィルのメンバーだった人も多いんだけど),この移行に際してはたぶんいろいろあったんだろうな。こちらに参加しなかった人もだいぶいるようだから。

● 古河フィルはけっこう好きなオーケストラで,初めて聴いた2010年4月の第3回定演以来,欠かしたことはなかったと思う。真面目さが溢れていたという印象でね。一所懸命にやっているなぁ,っていう。清潔感もあって,これなら聴きに行くでしょ,と思っていた。
 指導者は替わらないんだからね,同じ印象はこの楽団にも引き継がれている。でも,やっぱり同じではないですよね。当然なんだけど。

● 曲目は次のとおり。演奏もこの順番。
 ベートーヴェン 交響曲第5番「運命」
 ワーグナー 「さまよえるオランダ人」序曲
 ワーグナー 「タンホイザー」序曲
 リスト 交響詩「前奏曲」

● いきなりベートーヴェンの5番ですよ。驚いた。プログラムには筆頭に載っていても,これはまさか最後に演奏するんだろうと思っていたから。
 定型をはずしたのには,何か理由があるんですかね。残りの3つを先に演奏してしまうと,「運命」がおとなしく聞こえちゃうと思ったのかなぁ。
 っていうか,この曲目では,そもそも定型はあり得ないか。

● コンミスの躍動感が素晴らしかった。今回の印象の第一はここ。ヴァイオリンが好きで,コツコツと続けてきたというんじゃなく,集中的に取り組んだ数年間を持っているんでしょうね。
 オーボエをはじめ,木管陣も健闘。いい練習をしているんじゃないかと思えた。

● いずれ劣らぬ難しい楽曲だと思われる(簡単な楽曲なんてあるのか)。このあたり,意欲的というか,挑戦的というか。
 次回はメンデルスゾーンの4番「イタリア」。

● 次の次まで日程は決まっている。これは古河フィルのときからそうだった。手際のいいリーダーがいるんでしょう。

2014年1月12日日曜日

2014.01.12 宇都宮クラリネットアンサンブル第6回演奏会

栃木県総合文化センター サブホール

● 昨年に続いてお邪魔した。昨年は「情熱大陸」(葉加瀬太郎)が収穫だった(テレビのこの番組は見ていないので,それまで知らなかった)。YouTubeからダウンロードして何度も聴いた。
 開演は午後2時。チケットは500円。当日券を購入。

● 老若男女でサブホールはほぼ満席。
 宇都宮クラリネットアンサンブルのメンバー(全員が女性)は,宇都宮北高校吹奏楽部のOGがメイン。それゆえか,北高の現役生がだいぶ来ていたようだ。

● 2部構成で,前半は「クラリネット小編成」。最後の四重奏,ピアソラの「タンゴの歴史」,が前半の白眉。「酒場 1900」と「ナイトクラブ 1960」の2曲を演奏した。
 高校卒業後は,たぶん音大で研鑽を積んだのではなかろうか。腕は確かだ(と思われた)。にしても,普段はそんなに会うこともないのだろう。それでいて,ここまでの世界を作ってくれれば,聴く側としてはまったく何の不満もない。
 これが男だったら,こう行くかどうか。個を主張しすぎて,もう少しゴツゴツした感じになったかもしれない。

● この曲はCDを持っている。もちろん,クラリネット四重奏ではないけれど,これを機に聴いてみようと思う。
 可能であれば,「リベルタンゴ」もやってほしかったけれども,そこまで望むのは望みすぎだろう。ひょっとすると,以前の演奏会ですでにやっているのかもしれないし。

● この「タンゴの歴史」の前が「夢をかなえてドラえもん」だった。演奏のほかに少々のアトラクションがあったんだけど,そのMCがなかなか達者。栃木アクセントで盛りあげていた。
 この栃木アクセント,他県の人では絶対にマネできまい。我々はその模倣不可能なアクセントを伴う特殊言語(つまり栃木弁)を操って,日常茶飯を制御しているのだぞ。

● 後半はメンバー全員(17名)による「クラリネットクワイヤー」。ネリベル「コラールと舞曲」が最も印象に残った。
 前半はオルガンを聴いているかのようで,クラリネットの合奏でこういう音も作れるんだと教えてもらった。

● 次回は,来年の今日,宇都宮市文化会館での開催になるそうだ。清楚にして一所懸命な演奏で,心が洗われるぞ。
 っていうか,ほっこりする感じ。行くべし。

2014年1月6日月曜日

2014.01.05 アウローラ管弦楽団第10回定期演奏会

すみだトリフォニーホール 大ホール

● 今年最初の演奏会は,すみだトリフォニーで迎えた。アウローラ管弦楽団の演奏会を聴くのは二度目。
 一昨年の9月に「第5回室内演奏会」に行っている。ロシア音楽に特化した,若い奏者で構成されている楽団という印象だった。

● 開演は午後1時半。チケットは1,000円。当日券を購入。
 曲目は次のとおり。今回もすべてロシア。
 リャードフ 交響詩「魔法にかけられた湖」
 スクリャービン 法悦の詩(交響曲第4番)
 リムスキー=コルサコフ 交響組曲「シェエラザード」

● 指揮は田部井剛さん。一昨年10月の足利市民交響楽団のマーラー2番の指揮も田部井さんだった。昨年7月のル スコアール管弦楽団も。田部井さんの指揮を見るのは,それに続いて三度目。

● プログラムに掲載されている代表者あいさつによると,「結成以来の5年間で,団員として在籍して去って行ったメンバーは実に70名を越えてい」るとのこと。
 「今回の定期演奏会のメンバーで演奏するのは本日が最後の日です」「練習でなかなか上手くいかなかったソロが近づくにつれ緊張で表情がこわばる,演奏後に指揮者に立たされて感極まる・・・,そういった一つ一つの表情の裏に,私たちなりに頑張ってきた「過程」が詰まっています」と書いている。
 そうだろうなぁと思う。競争激甚な東京で,ひとつのオーケストラを結成,維持していくのは,大変なことだろう。その程度の想像はぼくにもできる。ゆえに,こうして感傷にひたる自由は当然認められるべきだ。
 その感傷もドップリベッタリではなく,きちっと抑制が効いているので,充分以上に読ませる文章に仕上がっている。

● スクリャービンといえば,神秘主義かぶれという言葉がついて回る。Wikipediaには「ニーチェ哲学に心酔し,とりわけ超人思想に共鳴する。その後は神智学にも傾倒し,この二つから音楽思想や作曲に影響を受ける」とある。今回のプログラムの曲目解説でも,その方向から詳しく解説されている。
 が,それらの知識を持たないで,かつまた「Le Poème de l'extase」という曲名を知らないで,この曲を聴いたとしたら,果たして法悦なるイメージを自分が持ったかどうか。「神との合一」あるいは「性的快楽にトリップしていく様」をこの音楽から感じとれたかどうか。ぼくにはまったく自信がない。

● プログラムには「スクリャービンの残したノート」と題するコラムが掲載されているんだけど,ここに掲載されているスクリャービンの発言は,密教の教義を連想させるもので,さほどに唐突だとも思えない

● 曲目解説に,「第4番「法悦の詩」に至って,彼の神秘主義傾向は決定的になり」「最後の第5番「プロメテウス」は,もはや通常の人間には理解不可能な領域」とある。
 で,その第5番を帰宅後,CDで聴いてみた。まぁ,理解できないわけだ。けれども,これって「理解」の定義による。
 何が言いたいのかというと,この曲が理解できないのと同じように,ぼくにはストラヴィンスキーもマーラーもベルリオーズも理解できないもんだからね。理解するって,そもそもどういうことなんだか。曲を聴くのに理解が必要なのかなとも思うし(理解しないと味わえないか)。

● 「シェエラザード」はコンマスのヴァイオリン・ソロがやっぱり大きいですよね。何せ命がかかっているわけだから気を抜いてはいられない。かといって,王をその気にさせるトークじゃないといけないんだから,固くなってもダメだ。
 そこは楽譜になっているわけだろうけど,今回のコンミスは切なく歌って,情感にあふれていたという印象。

● あと,タンバリンが記憶に残ったんですけどね。何気にかっこよかったしね。
 タンバリンとかトライアングルとか,誰が叩いても同じはずがないもんなぁ。ひねりの余地はそんなにないと思えるんだけど,深さってあるんでしょうね。それと姿の良さってあるよね。

● にしても。千夜一夜物語からこうした音楽を紡ぎだす作曲家の想像力というのは,まぁすごいものだなぁというね。異能だよなぁ。脳内の神経ネットワークが常人とは違いすぎると思うなぁ。
 
● 演奏会には必ず一人で出かけている。誰かに一緒に行ってもらいたいと思ったことなどない。やむを得ず一人なのではなく,一人がいいと思っている。感想はこのブログに書けばいいので,一緒に行った誰かと語らう必要もない。そんなことは時間の無駄と心得ている。
 が,今回は友人と来た。ほとんど唯一といっていい友人。隣の席に知り合いがいるというのは初めての経験。たぶん,これが最初で最後になるはずだ。
 その友人は,コンミスを評して体が柔らかいと言っていた。なるほど,大事な指摘かも,と思った。

● 一人のときは,東京に出ても,ピンポイントで演奏だけを聴いて帰るのが常だ。けれども,今回はホールのバーコーナーでワインを飲んだ(友人のおごり)。
 まぁ,しかし,休憩時間にアルコールを入れなくてもいいか。