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2017年4月27日木曜日

2017.04.16 PROJECT Bオーケストラ第5回演奏会(PROJECT B 2017)

第一生命ホール

● 昨年に続いて,2回目の拝聴。
 有楽町で降りて,会場の第一生命ホールまで歩くのも,これが2回目。晴海通りを,銀座,築地,月島と歩いていくわけだけど,田舎者には期せずして東京見物ができるコースだ。
 世界の銀座,歌舞伎座,築地本願寺,隅田川と次々に名所が現れるんだからね。歩いていて飽きることがない。

● 第一生命ホール,767席。音響はじつに素晴らしい。紀尾井ホールと比べたくなる。規模も同じくらいか。
 この席数だと,すべての席が埋まっても,プロのオーケストラが興行的に採算に乗せるのは難しかろう。チケットをかなり高くしないと。でも,室内楽には最高の舞台になるかもしれない。

● F生命に百数十万円を騙しとられたことがある。昔のことだ。ま,騙しとられたというと,言葉がきつすぎるし,そもそもそういうのは騙される方が悪いということなんだけど。
 いわゆる生命保険のオバチャンにしてやられた。彼女,嘘をついたわけではないのだけれども,今の言葉でいえば説明責任を充分に果たしたとは言い難い。いいことだけ言って,それに伴う(ぼくにとっての)マイナスの説明はスキップしたところがある。
 だから何だと言われれば,生命保険会社にはいい印象を持っていないってことね。マイナス金利なんてことになって,生保もいろいろ大変だろうけどね。

● だからといって,第一生命ホールの良さが損なわれるわけではもちろんない。いいホールであることに変わりはない。
 座席の配置も1列ごとに席の半分をズラしているから,前の人の頭が視界からはずれる。これはありがたい。
 もっとも,たとえば宇都宮の総合文化センターもそのような配置になっている。ただ,ここまで思い切りよくズラしているところはそんなにないのじゃないか。

● 前後左右にゆったりしているのも特徴。ミューザも芸劇も,ここの座席に比べるとかなり窮屈だ。同じエコノミーでも,レガシー・キャリアとLCC程度の違いはある。
 席数を増やすことよりも,観客の快適さを優先した造作になっている。公共セクターではなかなかこういうものは作れまい。民間なればこそ。

● さて,その贅沢なホールで聴いたのは,ベートーヴェンの交響曲3番「英雄」とピアノ協奏曲5番「皇帝」。
 ピアノは今回も田中良茂さん。指揮は畑農敏哉さん。
 開演は午後2時。チケットは1,000円。当日券を購入。ほぼ満席になった。

● じつは,この日,行ってみたいコンサートがもうひとつあった。「昭和音楽大学&ソウル市立大学校 日韓大学交流コンサート」というやつで,こちらは昭和音楽大学「ユリホール」で開催された。最寄駅は小田急の新百合ヶ丘。
 若い学生さんの声楽やピアノにも惹かれる。どっちにしようか今朝になっても迷っていた。
 が,出立が少々出遅れてしまったので,近い方を選んだ。新百合ヶ丘でもたぶん間に合ったとは思うんだけど。

● 演奏が始まって10秒後には,こちらを選んで正解だったと思った。この楽団の演奏水準もかなりのもの。前回聴いてわかっていることではあるのだが。
 東京にはここまでやれるアマオケがいったいいくつあるんだろう。何もかもが東京に一極集中していると思うしかないねぇ。

● 今回は「英雄」の第2楽章が白眉だったと思う。葬送行進曲。どこがどう良かったのか,説明せよ。
 と言われても,良かったから良かったとしか言えない。良かったと感じるのは,演奏それ自体のほかに,聴く側の状況も影響するのでね。“良かった”を言葉で分析できる人なんて,おそらく世界中を探してもいないんじゃないか。

● ぼくのような俗物は,生でオーケストラの演奏を聴きながらも,日常些事のあれやこれやが頭を去来して,なかなか“聴く”ことに没頭できない。
 4月から仕事の環境が変わって,いまいち適応しきれないでいる。だもので,ため息とか愚痴(脳内で独りごちるわけだが)とか,演奏を聴きながらも,出てくるんじゃないかと思っていた。
 が,今回に限っては,そんなことはなかったんでした。約2時間,浮き世から遮断された。

● 葬送行進曲には特に。葬送といっても,悲しみ一色ではない。随所に華があり,星が瞬くような煌びやかさがあり,四季の移り変わりまであるような気がした。
 なるほど,英雄を送る曲とはこういうものかとも思った。

● 演奏が放つ演奏に集中させる力,吸引力が半端なかった。ステージからこちらに届いてくる音の気持ちよさ。
 よどみのない流れ。静かにゆっくりと歩いているところから,パッとギャロップに変わるような切り替え。すべてのパートが参加する大音響でもまったく割れない音。
 ほめすぎだろうか。

● 大晦日に東京文化会館で催行される「ベートーヴェンは凄い! 全交響曲連続演奏会」を6年連続で聴いている。当然,3番も聴くことになるわけだ。
 技術だけを取りあげれば,この楽団が大晦日の「岩城宏之メモリアル・オーケストラ」を上回ることは,まさかないはずだ。
 けれども,葬送行進曲にこめられた情報量は,今回のこの演奏の方が多かったように思える。そのあたりが,つまりは聴く側の状況によるという部分なのかもしれない(そうではなくて,別の理由があるのかもしれない)。

● プログラム冊子の曲目解説に,田中さんが「皇帝」について書いている。そこからひとつだけ転載しておこう。
 私にとってこの協奏曲は,深読みすればするほど読み解きにくい。その理由は「健全な明るさ」にある。 一応,私は多くのベートーヴェンの音楽と接してきたわけで,彼の初期作品からもただならぬ「哲学」を感じてきた。それは言い換えれば「苦味」や「痛み」でもあるのだが,『皇帝』にはそれらをはねのける不思議な力が備わっている。
 というプロの演奏に対して,ろくな勉強もしていない素人観客が,ああでもないこうでもないと言うのは控えるのが礼儀というものだろう。

● ぼく的には,今回の演奏会は交響曲第3番の第2楽章が素晴らしすぎた。そのために,それ以外の記憶がおぼろになったきらいがないでもない。
 おそらく,この感想は他のお客さんとは違っているだろうとも思うのだが。

2016年4月20日水曜日

2016.04.16 PROJECT Bオーケストラ第4回演奏会(PROJECT B 2016)

第一生命ホール

● 会場の第一生命ホールに行くのはこれが2回目。前回は地下鉄大江戸線を使った。
 今回は有楽町から晴海通りを歩くことにした。銀座,築地を通って,隅田川を渡って月島に入る。
 散歩にちょうどいい距離だし,歩いて面白いエリアだと思われた。だいたい,ぼくは築地には行ったことがない。
 で,予想どおり小さい旅を楽しむことができた。

● 開演は午後2時。入場料は1,000円。当日券を購入。

● プログラムはオール・ベートーヴェン。
  歌劇「フィデリオ」序曲
  交響曲第7番 イ長調
  ピアノ協奏曲第4番 ト長調
 この楽団の名前のBはBeethovenのことだろう。ベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲を演奏することをミッションとして設立したらしいから。
 プログラムに入る前に,バッハの“G線上のアリア”を演奏した。熊本を中心とする地震で亡くなられた方々への鎮魂。

● 演奏順も上記のとおり。最後にピアノ協奏曲。
 指揮者は畑農敏哉さん。この楽団を立ちあげた中心人物で,その経緯は畑農さんの著者『アマチュアオーケストラに乾杯! 素顔の休日音楽家たち』に詳しく解説されている。

● ベートーヴェンの7番は2週間前に聴いたばかり。重なるときは重なるもので,サイコロの目と同じだ。確率は均等に散らばるものではないね。
 こういうベト7を聴くと,ワーグナーが「舞踏の聖化」と評したのも頷ける気になる。ワーグナーに対して頷くっていうと,いかなる了見かって問いつめられてしまうけれども,ここは言葉の綾なのであしからず。

● 客席に届いてくる音の重なり,連なりが気品をまとっている(と感じた)。気品という表現でいいと思う。
 演奏に限るまいが,直接それを求めると逃げていくのが気品というものだ。結果においてそこにある。それ以外のあり方はない。

● 結果において気品を生んだ理由は何か。オーボエとフルートの健闘は当然として,縦の線がピタッと揃っていたことが大きい。
 揃う度合には幅がある。揃っているといっても,その態様は一様ではない。この楽団の演奏においては,1ミリのズレもなくピタッと揃っている。

● ところで。ティンパニの音は聞こえてくるのに奏者がいない。どうなっているのだ,舞台に載りきらずに袖のほうで叩いているのか,としばらく落ち着かない思いでいた。
 非常に単純な理由なのだった。ぼくの席からだと,指揮者に隠れて見えなかっただけなんでした。ティンパニが隠れるってあまりないことなんで,その可能性に気づくのに少し時間を要してしまった。

● 7番を聴いて,すっかり満足した。これで終わりでもいいと思った。しかし,この楽団としては,次がメインの演しものということになるのだろう。
 ソリストは田中良茂さん。今回に限らず,ずっとコンビを組んでいるようだ。

● ピアノ協奏曲に関しては,3番と5番には少しは馴染んだつもりでいるけれども,4番を生で聴くのは初めてだ。CDを何度か聴いているにすぎない。
 管弦楽ではなくピアノが曲の始まりを告げる。どことなく控えめに。

● 地味といっていいんだろうか。でも,そんな言葉,ベートーヴェンにあるんだろうか。
 静かといったらどうか。2楽章は特にそうだけど,静かなだけではない。3楽章は気持ちよくうねる。

● こうしてライヴを聴くと,困るなと思うことがある。聴きたい曲,聴くべき曲がどんどん増えてしまうことだ。
 多くの人は一生かかっても聴ききれないほどのCDを持っていると思う。その中でオレを聴いてよ,ボクも聴いてよ,と,CDの山から自己主張しだすのがどんどん増えていく。
 かといって,もう聴き飽きたからいいやっていう曲は出ない。入るは増え,出るはない。溜まる一方だ。貯金ならそれで何の問題もないわけだけど。