約2時間のコンサートが終了した直後の満足感は,他のものでは代替できません。この世に音楽というものが存在すること。演奏の才に恵まれた人たちが,時間と費用を惜しまずに技を磨いていること。その鍛錬の成果をぼくたちの前で惜しみなく披露してくれること。そうしたことが重なって,ぼくの2時間が存在します。ありがたい世の中に生きていると痛感します。 主には,ぼくの地元である栃木県で開催される,クラシック音楽コンサートの記録になります。
2010年3月31日水曜日
2010.03.28 獨協医科大学管弦楽団第23回定期演奏会
栃木市文化会館大ホール
● 獨協医科大学管弦楽団の演奏会を聴きに行ってきた。場所は栃木市文化会館。ぼくとしては初めて県南文化圏(そんなものがあるのか)に入りこむことになる。入場は無料。
● 栃木を歩いて気づくことは,進学塾と予備校が多いこと。教育熱心な伝統があるんでしょうかね。栃高,栃女高は栃木県を代表する名門校だしね。
● 私立の医科大学なのだから,学生たちはいいところの嬢ちゃん・坊っちゃんに決まっている。
23歳のとき,宇都宮のバーで呑んでいたら,とある若者がやってきて,バーテンダーを相手に楽しそうに話しだした。マティーニを頼んで,オリーブの代わりに梅干しか何かを入れて,これも旨いんだと言っていたような。遊び慣れている様子を見せられて(今思えば,薄っぺらい男だったに違いないと思うんだけどね),ぼくは劣等感に染まってしまった。こっちは貧乏人の小倅だし,そのバーへも背伸びして行っていたからね。で,その若者がこの大学の学生だったというわけです。
以後,その店には足をふみこんでいない。そんな昔のことをいまだに憶えているのもどうかと思うが,獨協医大といえば,ぼくの中のイメージはあの若者なのだ。
しかし,今どきの嬢ちゃん,坊っちゃんは礼儀正しい。受付でパンフレットをもらうとき,帰りに見送られるとき,それを感じる。
● 曲目はモーツァルト「劇場支配人」,芥川也寸志「弦楽のための3楽章」,ベートーヴェン「交響曲第7番」。指揮は吉澤真一氏。宇短大附属高校音楽科から芸大に進んでいる。
で,演奏だけれども,ありていに申せば,ウゥゥン・・・。それぞれの楽器が勝手に音を出している感じ。しかも,どうせ出すなら思いきりよく出せばいいのに,ちょっとためらいながら出しているっていう。
けれども,それだけ巧くなれる余地も大きいということ。
● プログラムに団員の紹介があったのだけれども,ヴァイオリンでも大学に入ってから始めたっていう学生が数名いた。笛やラッパ,太鼓ならそれもあるかと思うのだが,ヴァイオリンでもあるんだねぇ。
● 芥川也寸志の曲は初めて聴くもの。ぼくは音楽鑑賞初心者だから,たいていのコンサートで初めて聴く曲に出くわすのだが,そのことが嬉しい。知らない曲との出会いはCDよりライブがいい。そこからCDで聴く曲が増えれば,これ以上の幸せはない。
この種の幸せは初心者の特権だろうから,今のうちにその幸せをたっぷり味わっておきたい。
2010.03.21 ユーゲント・フィルハーモニカー第4回定期演奏会
文京シビックホール大ホール
● この日はもうひとつ。ユーゲント・フィルハーモニカー。文京シビックホールで午後6時半からの開演。
● だいぶ時間があったので,会場の付近を歩いてみた。文京シビックセンターの前をそのまま歩いていくと,富坂にかかる。春日局のブロンズ像がある。この辺一帯の地名(春日)の由来が説明されていた。その先に中央大学の理工学部がある。
こうして東京の街を歩いていると,東京の凄みを感じる。政治や経済のことではない。それももちろんだけれども,学術や文化,教養,情報,ファッション,アミューズメント,街歩きの楽しさ,歴史的建造物などの観光資源,そういったものにおいても,東京は傑出しているってことね。
● 地方文化を振興せよと説かれることが多いが,そんなことが本当にできるんだろうか。現在の東京と地方の格差からすれば,江戸時代の江戸と諸藩の格差など格差のうちに入らないものだろう。
こうまで圧倒的な東京がある以上,地方の独自性なんて幻でしかなくなっているのではないか。地方の経営はいかにうまく東京に便乗するかしかないのではないか。東京と切り離した地方独自の文化なんてあり得るのか。
● チケットは前売は5百円で当日は千円。ぼくは当日券を買った。
文京シビック大ホールに入ったら,なかのZEROに舞い戻ったような錯覚に襲われた。細部までよく似た造りだ。
● 楽団のホームページによれば,ユーゲント・フィルハーモニカーは「財団法人日本青年館の音楽行事(オーケストラ・フェスタ,全国高等学校選抜オーケストラ・ヨーロッパ公演,日本ユンゲ・オーケストラ・ヨーロッパ公演)に参加したメンバーが中心となって2006年3月に創設されたオーケストラ」とのことだ。レベル高そう。
● 曲目は次の3曲。
サン=サーンス 交響詩「死の舞踏」
ドビュッシー 小組曲(ビュッセル編)
ラフマニノフ 交響曲第2番 ホ短調
● 客の入りは8割程度か。だいぶ埋まっていた。団員の過半は現役の大学生かと思われた。客席の平均年齢もだいぶ若かった。
サン=サーンスの交響詩「死の舞踏」は初めて聴く。
ラフマニノフの交響曲第2番は1月に東大音楽部管弦楽団の演奏で聴いている。東大管弦楽団の演奏にもしびれたが,今回もそれに勝るとも劣らない水準。高校選抜はダテじゃなかった。
清新な演奏でいて,技術は熟達している。ひとつの理想型をなしていると思えた。
● この日はもうひとつ。ユーゲント・フィルハーモニカー。文京シビックホールで午後6時半からの開演。
● だいぶ時間があったので,会場の付近を歩いてみた。文京シビックセンターの前をそのまま歩いていくと,富坂にかかる。春日局のブロンズ像がある。この辺一帯の地名(春日)の由来が説明されていた。その先に中央大学の理工学部がある。
こうして東京の街を歩いていると,東京の凄みを感じる。政治や経済のことではない。それももちろんだけれども,学術や文化,教養,情報,ファッション,アミューズメント,街歩きの楽しさ,歴史的建造物などの観光資源,そういったものにおいても,東京は傑出しているってことね。
● 地方文化を振興せよと説かれることが多いが,そんなことが本当にできるんだろうか。現在の東京と地方の格差からすれば,江戸時代の江戸と諸藩の格差など格差のうちに入らないものだろう。
こうまで圧倒的な東京がある以上,地方の独自性なんて幻でしかなくなっているのではないか。地方の経営はいかにうまく東京に便乗するかしかないのではないか。東京と切り離した地方独自の文化なんてあり得るのか。
● チケットは前売は5百円で当日は千円。ぼくは当日券を買った。
文京シビック大ホールに入ったら,なかのZEROに舞い戻ったような錯覚に襲われた。細部までよく似た造りだ。
● 楽団のホームページによれば,ユーゲント・フィルハーモニカーは「財団法人日本青年館の音楽行事(オーケストラ・フェスタ,全国高等学校選抜オーケストラ・ヨーロッパ公演,日本ユンゲ・オーケストラ・ヨーロッパ公演)に参加したメンバーが中心となって2006年3月に創設されたオーケストラ」とのことだ。レベル高そう。
● 曲目は次の3曲。
サン=サーンス 交響詩「死の舞踏」
ドビュッシー 小組曲(ビュッセル編)
ラフマニノフ 交響曲第2番 ホ短調
● 客の入りは8割程度か。だいぶ埋まっていた。団員の過半は現役の大学生かと思われた。客席の平均年齢もだいぶ若かった。
サン=サーンスの交響詩「死の舞踏」は初めて聴く。
ラフマニノフの交響曲第2番は1月に東大音楽部管弦楽団の演奏で聴いている。東大管弦楽団の演奏にもしびれたが,今回もそれに勝るとも劣らない水準。高校選抜はダテじゃなかった。
清新な演奏でいて,技術は熟達している。ひとつの理想型をなしていると思えた。
2010.03.21 ニューシティオーケストラ第57回定期演奏会
なかのZERO大ホール
● 東京に出てコンサートをはしごする。
1本目はニューシティオーケストラ。会場はなかのZERO大ホールで,午後2時の開演。チケットは千円。ニューシティオーケストラのホームページによると,「東京都目黒区などで活動するアマチュアオーケストラ」とのこと。客席は6割の入りか。
曲目は次の3曲。
ワーグナー 歌劇「ローエングリン」より第一幕への前奏曲
プロコフィエフ 交響曲第1番「古典」
ブラームス 交響曲第2番 ニ長調
● 最初の2つは初めて聴く曲。ブラームスの2番は去年の5月9日に真岡市民交響楽団の演奏で聴いている。初めてのライブで聴いた曲で,ぼくには記念碑的な曲なのだが,その後CDで聴くこともなく過ぎてしまった。
● 指揮者は清水宏之さん。プログラムの紹介によれば,15歳で渡米。最後はエール大学院で指揮の課程を修めている。まだ若い。
今まで見てきた指揮者の中で最も動きが大きい。指揮台の上で踊っているようだ。情熱的である。あるいは饒舌である。
● この日は未明から強風が吹きあれ,湘南新宿ラインは全線運休中だった。上野行きも古河-栗橋間が時速25キロの徐行運転。間引き運転だから,相当な混み具合でした。
● 東京に出てコンサートをはしごする。
1本目はニューシティオーケストラ。会場はなかのZERO大ホールで,午後2時の開演。チケットは千円。ニューシティオーケストラのホームページによると,「東京都目黒区などで活動するアマチュアオーケストラ」とのこと。客席は6割の入りか。
曲目は次の3曲。
ワーグナー 歌劇「ローエングリン」より第一幕への前奏曲
プロコフィエフ 交響曲第1番「古典」
ブラームス 交響曲第2番 ニ長調
● 最初の2つは初めて聴く曲。ブラームスの2番は去年の5月9日に真岡市民交響楽団の演奏で聴いている。初めてのライブで聴いた曲で,ぼくには記念碑的な曲なのだが,その後CDで聴くこともなく過ぎてしまった。
● 指揮者は清水宏之さん。プログラムの紹介によれば,15歳で渡米。最後はエール大学院で指揮の課程を修めている。まだ若い。
今まで見てきた指揮者の中で最も動きが大きい。指揮台の上で踊っているようだ。情熱的である。あるいは饒舌である。
● この日は未明から強風が吹きあれ,湘南新宿ラインは全線運休中だった。上野行きも古河-栗橋間が時速25キロの徐行運転。間引き運転だから,相当な混み具合でした。
2010.03.13 第13回青少年の自立を考える会コンサート
宇都宮市文化会館大ホール
● 3月は13日(土)から。17時から宇都宮市文化会館で「青少年の自立を支える会コンサート」というのがあった。自立援助ホーム「星の家」を運営しているNPOが主催するコンサートで,今年で13回目になる。
出演者はボランティア,無料で出ているそうだ。チケットは千円。会場使用料を差し引いた額が,NPOの活動に使われるのだろう。チャリティーコンサートである。
● ぼくがこのコンサートに行ったのは,出演者の中にAKIRA氏がいたからだ。彼の『アジアに落ちて』を読んで以来,ぼくの中では気になる人のひとりなのだ。
AKIRA氏は「星の家」に入居している子供たちと同じような境遇で育ったらしい。若いときに奨学金を得て,アメリカに渡った。世界を放浪して,その一部が『アジアに落ちて』にまとめられている。音楽(作詞作曲,ボーカル)のほかに絵画や彫刻,小説など,いろんな分野で作品を作り続けている。マルチアーティストってことになりますか。
しかし,CDがミリオンセラーになるわけでなし,ベストセラー作家になるほど小説が売れるわけでなし,生活は楽ではない。そのあたりはホームページで面白おかしく書いている。日光の産で,現在も日光市在住。
● コンサートは2部構成になっていて,第1部がそのAKIRA氏のライブ。渡辺真理さん(宇都宮出身。海星女子学院を卒業してすぐにピアノで食べる道に進んだようだ。何度もAKIRA氏と一緒にライブをやっているらしい)がピアノで伴奏を務めた。
初めてAKIRA氏の謦咳に接したわけだけど,フォークシンガーってことになるんでしょうね。
声が特にいいとも思えず,歌が抜きんでて上手いわけでもなかった。これではメジャーにはなり得ないし,そんなことは本人もよくわかっているだろう。自分の行く方向はそんなところじゃない,と。
● 第2部は倉沢大樹(エレクトーン・ピアノ),島田絵里(フルート),浅香薫子(ソプラノ)によるセッション。ジブリメドレー,映画音楽(卒業,ひまわり,など),ジャズ,ポップス(さだまさしの曲をいくつか。倉沢氏がさだのファンであるらしい)など。
この3人には共通点があって,3人とも宇都宮出身で,宇短大附属高校・宇短大で音楽を専攻していること。
まとめ役は最も若い倉沢氏。エレクトーンの国際コンクールでの優勝経験がある。長野五輪の表彰式の音楽はすべて若き倉沢氏が差配したそうだ。
しかし,最も印象に残ったのは島田さんのフルート。ずっと聴いていたいと思わせる確かな技術とホスピタリティー。ステージ映えする細身の身体もポイントが高い。見映えは大事だ。普段はジャズを演奏することが多いそうだ。
● 要するに,クラシックの演奏会ではなかった。観客もクラシックの演奏会とは様相が違っていた。演奏が始まってからケータイが鳴ったのみならず,そのまま話をしていた人がいたくらいだ。乳児の泣き声も何度も聞こえてきたが,「3歳未満のお子さまは入場をご遠慮ください」という規制はそもそもなかった。
じっとおとなしく聴いているのではなくて,手拍子を打ったり,一緒に口ずさんだりと,自ら参加せねばならぬ機会も多かった。で,そうなると自分はまったくダメなのだった。ここは女子供の方がしなやかに対応しますね。中年を過ぎた男どもは体を固くしていたに違いない。
● 座席の埋まり具合は5割程度だったか。チケットは千円だから(これで千円ならばだいぶお得だと思う),2千人の座席が満席になってくれれば,百万円の収入像になる。ぼくは島田さんのフルートを聴くために,来年もまた来るけれど。
● 3月は13日(土)から。17時から宇都宮市文化会館で「青少年の自立を支える会コンサート」というのがあった。自立援助ホーム「星の家」を運営しているNPOが主催するコンサートで,今年で13回目になる。
出演者はボランティア,無料で出ているそうだ。チケットは千円。会場使用料を差し引いた額が,NPOの活動に使われるのだろう。チャリティーコンサートである。
● ぼくがこのコンサートに行ったのは,出演者の中にAKIRA氏がいたからだ。彼の『アジアに落ちて』を読んで以来,ぼくの中では気になる人のひとりなのだ。
AKIRA氏は「星の家」に入居している子供たちと同じような境遇で育ったらしい。若いときに奨学金を得て,アメリカに渡った。世界を放浪して,その一部が『アジアに落ちて』にまとめられている。音楽(作詞作曲,ボーカル)のほかに絵画や彫刻,小説など,いろんな分野で作品を作り続けている。マルチアーティストってことになりますか。
しかし,CDがミリオンセラーになるわけでなし,ベストセラー作家になるほど小説が売れるわけでなし,生活は楽ではない。そのあたりはホームページで面白おかしく書いている。日光の産で,現在も日光市在住。
● コンサートは2部構成になっていて,第1部がそのAKIRA氏のライブ。渡辺真理さん(宇都宮出身。海星女子学院を卒業してすぐにピアノで食べる道に進んだようだ。何度もAKIRA氏と一緒にライブをやっているらしい)がピアノで伴奏を務めた。
初めてAKIRA氏の謦咳に接したわけだけど,フォークシンガーってことになるんでしょうね。
声が特にいいとも思えず,歌が抜きんでて上手いわけでもなかった。これではメジャーにはなり得ないし,そんなことは本人もよくわかっているだろう。自分の行く方向はそんなところじゃない,と。
● 第2部は倉沢大樹(エレクトーン・ピアノ),島田絵里(フルート),浅香薫子(ソプラノ)によるセッション。ジブリメドレー,映画音楽(卒業,ひまわり,など),ジャズ,ポップス(さだまさしの曲をいくつか。倉沢氏がさだのファンであるらしい)など。
この3人には共通点があって,3人とも宇都宮出身で,宇短大附属高校・宇短大で音楽を専攻していること。
まとめ役は最も若い倉沢氏。エレクトーンの国際コンクールでの優勝経験がある。長野五輪の表彰式の音楽はすべて若き倉沢氏が差配したそうだ。
しかし,最も印象に残ったのは島田さんのフルート。ずっと聴いていたいと思わせる確かな技術とホスピタリティー。ステージ映えする細身の身体もポイントが高い。見映えは大事だ。普段はジャズを演奏することが多いそうだ。
● 要するに,クラシックの演奏会ではなかった。観客もクラシックの演奏会とは様相が違っていた。演奏が始まってからケータイが鳴ったのみならず,そのまま話をしていた人がいたくらいだ。乳児の泣き声も何度も聞こえてきたが,「3歳未満のお子さまは入場をご遠慮ください」という規制はそもそもなかった。
じっとおとなしく聴いているのではなくて,手拍子を打ったり,一緒に口ずさんだりと,自ら参加せねばならぬ機会も多かった。で,そうなると自分はまったくダメなのだった。ここは女子供の方がしなやかに対応しますね。中年を過ぎた男どもは体を固くしていたに違いない。
● 座席の埋まり具合は5割程度だったか。チケットは千円だから(これで千円ならばだいぶお得だと思う),2千人の座席が満席になってくれれば,百万円の収入像になる。ぼくは島田さんのフルートを聴くために,来年もまた来るけれど。
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