2025年4月29日火曜日

2025.04.29 オトメ8×オクテット

小山市立文化センター 大ホール

● 宇都宮から小山に向かっている。この時間帯だと久喜あたりまではガラガラなのが常なのだが,GW中はそうではない。宇都宮から乗る人がけっこういる。
 お一人様の男性が多い。どこ行くの?

● 着いた先は小山市立文化センター。栃木県でも県北の純朴な民には,小山はスレっ枯らしの都市民が跋扈する別世界という気がしててね。
 あまり行ってみたいところではないと言うかさ。通過するところであって,わざわざ降りてみるところじゃない,という何とはなしのイメージね。実際には何度も来てるんですけどね。

● 「オトメ8×オクテット」のメンデルスゾーン「八重奏曲」を聴くためにやって来た。“上保朋子の室内楽シリーズ Vol.9” という副題が付いている。
 今日は宇都宮の総合文化センターでも,藝大同声会栃木県支部の演奏会があった。さてどちらにするかと3秒ほど悩んだけれども,こちらにした。
 当日券で入場。開演は14時。生演奏を聴くのは1ヶ月ぶり。

● 曲目は次のとおり。
 モーツァルト アイネ・クライネ・ナハトムジーク
 ルクレール 2つのヴァイオリンのためのソナタ
 ハルヴォルセン ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏「パッサカリア」
 グリエール ヴァイオリンとチェロのための8の小品 より “ガヴォット” “スケルツォ”
 メンデルスゾーン 弦楽八重奏曲

● 女性8人による弦楽八重奏。弦楽八重奏を生で聴くこと自体,ひょっとすると初めてかもしれない。記憶にない。
 出演者の8人は,栃木県に住んでいるとしばしば目にする人たちだ。全員が全員,栃木県ゆかりの人かどうかは知らないけれど。

● 今日はメンデルスゾーン「八重奏曲」は圧巻の熱量。これだけの演奏を地元で聴けるわけだ。
 最初にモーツァルトを聴かされていたので,いっそう熱を感じることになったのかもしれない。対比の妙というのはどうしたってある。
 そうして,自分はやっぱりモーツァルトが好きなんだな,と思ったんでした。たぶん,多くの人がそうだと思うんだけどね。

● いや,楽しい演奏会でしたよ。最後はバッハ「アリア」でクールダウンしてもらって,爽やかに帰宅しましたとさ。
 こういう演奏会は客席でかしこまって聴くよりも,ワイングラス片手にリラックスして聴くべきものかもしれない,とも思った。しかし,それをすると,食器や銀器の音がひっきりなしに聞こえてくることになる。許されませんな。

● どうしてもそれをしたければ,自宅でCDかストリーミング配信を聴きながら,となりますね。
 デジタル化によって,再生するための機材が少なくてすむようになった。再生コストが大きく下がった。
 音響メーカーにとっては死活問題だが,ユーザーにしてみればこんなありがたいことはない。こうしてクラシック音楽の視聴も大衆化して行く。大衆化を推し進めるのは市民革命やイデオロギーではなくて,技術革新だということね。

● オトメ問題については,主催者側も散々言われているのかも。広辞苑の “おとめ” の定義を大きく書き換えなければならないぞ,的なことをね。
 自虐も含むシャレということで,ひとつよろしく。

2025年3月31日月曜日

2025.03.31 東京ジュニアオーケストラソサエティ チャリティーコンサート 春の演奏会

国立オリンピック記念青少年総合センター 大ホール

● 東京へ。今日は月曜日で休日ではないので,「休日おでかけパス」は使えない。が,街には若い人たちがかなりいる。学生さんは春休みですからね。
 宇都宮発10:35の湘南新宿ライン快速 逗子行きに乗車。埼玉県に入るまでは,このガラガラのプラチナシートが続く。

● 新宿で山手線に乗り換えて,代々木で下車。代々木で降りるのは初めてだと思う。
 国立オリンピック記念青少年総合センターまで歩く。ここに来るのは初めてではないけれども,メトロ千代田線の代々木公園駅から歩いていた。
 ので,Google Map を使いながらも,少し道を間違えた。紙の地図があれば間違えずにすんだんじゃないかと思う。スマホで見るとどうも。

● 東京でも桜が咲き出している。いや,咲き出しているんじゃなくて,だいぶ咲いている。
 ぼくが住んでいる北関東の田んぼの村は,東京に比べればはっきり寒い。田んぼの村では,桜はまだだ。

● 開演は午後2時。チケットは2,000円。
 当日券で入場。平日昼の演奏(開演は14時)なんだから,よほどのことがない限り,当日券はある。

● 曲目は次のとおり。
 シベリウス カレリア組曲
 モーツァルト 交響曲第35番「ハフナー」
 ドヴォルザーク 交響曲第8番
 指揮は,前半が東響のクラリネット奏者の近藤千花子さん。この楽団の卒団生であるらしい。後半のドヴォルザークは市 寛也さん。N響のチェロ奏者。

● 東京ジュニアオーケストラソサエティの演奏は昨年夏に初めて拝聴して,レベルの高さに仰天した。しばらく,追っかけることに決めた。
 才能あふれる少年少女のサラブレッド集団。呆れるほど上手い。これが成立するのは東京だからでしょうね。

● けっこうな大編成で,カレリアやハフナーにははっきり人員過剰。が,そのデメリットが全く出て来ない。音が割れたりなんかしない。上手さが半端ない。驚く他はない。
 ホンチャンの前にプレコンサートもあった。これがまた素晴らしくてね。パガニーニ「ヴァイオリンとファゴットのための二重奏曲」なんて涙が出そうになった。

● 帰りは小田急の参宮橋駅から新宿へ。国立オリンピック青少年センターからは参宮橋駅でも中途半端に距離があるんだな。原宿まで歩いた方がよかったか。
 せっかく新宿に来たので,ちょっと歩いてみたんですけどね。インバウンドで賑わっているのを久しぶりに見た気がする。大量のインバウンドのせいか,歩行速度がすこぶる遅い。渋滞している。

● 往きは湘南新宿ラインを使ったけれども,復りは山手線で品川に出て,上野東京ラインの宇都宮行きに乗った。上野東京ラインが王道だと思ってるんですよ。
 あと,混雑度が上野東京ラインの方が少ない。渋谷,新宿,池袋を通る湘南新宿ラインは激混みなんですよねぇ。

2025年3月29日土曜日

2025.03.29 第14回 音楽大学フェスティバル・オーケストラ

ミューザ川崎 シンフォニーホール

● 久しぶりに川崎に来た。たまには電車に乗って遠出するのもいいものだと思いました。このひと月,それができない状態が続いてたんだけども(まったくの私事です),峠を越えた感じです。
 川崎では桜が咲きだしてましたよ。今日は肌寒かったですけどね。

● 何しに川崎に来たかと言うと,これですね。音大フェスオーケストラの演奏会を聴くため。聴くでしょ,これは外せないでしょ。

● 開演は15時。曲目は武満徹「系図」とショスタコーヴィチの4番。指揮は沼尻竜典さん。
 ショスタコーヴィチを聴きながら思ったのは,彼もロシア音楽の系譜に連なる作曲家なのだなという当たり前のこと。

● もうひとつ,この曲の主成分は「雑味」であること。ベートーヴェンは短い旋律を高く積み上げて壮大な交響曲を作ったとしばしば言われるけれども,ショスタコーヴィチは丹念に雑味を積み上げて,雑味どころではない崇高さを目指したように思われる。
 それが彼の本意であったのかどうかはわからないが。

● 首都圏音大の選抜チームが,それを容赦のない熱演で表現してくれる。こんな演奏はプロでもできない(と思う)。奏者の彼ら彼女らにしても,今しかできないものじゃないですかね。
 あとね,ヴィオラ奏者の中に女優の尾野真千子似の美人がいてね。見とれちゃいましたよ。

● 歳を取って毎日が日曜日となったぼくには,あまり関係のないことではあるけれど,これで年度末から新年度に変わるのだなという少々の感慨もある。
 奏者の中にはすでに卒業式を終えた4年生もいると聞いたことがある。数日後には今までにない大きな環境の変化を味わうことになる人もいるのだろう。
 そうなる前の,学生としての最後の大イベントでもあったわけだ。

2024年12月3日火曜日

2024.12.01 第15回音楽大学オーケストラ・フェスティバル 東邦音楽大学・洗足学園音楽大学

すみだトリフォニーホール 大ホール

● 音大フェス,3日目(最終日)。
 東邦はモーツァルトの41番。端整かつ清新な「ジュピター」だった。指揮は大友直人さん。

● モーツァルトから離れてしまってはいけないんじゃないか,と思った。生では意外に演奏されないからね,モーツァルトって。尚のことですよ。
 クラシック音楽はモーツァルトに始まってモーツァルトに終わる,かどうかはわからない。「モーツァルト」のところにバッハを代入してもブラームスを代入しても,ことごとく成立しちゃうから。

● オオトリは洗足。ベートーヴェンの「第九」。仕組んだわけではないんだろうけど,絵に描いたような大団円ね。この音大フェスで第九が演奏されるのは2018年の武蔵野以来。
 洗足の学生をもってしても第九は難関のようだなと思って聴いてたんだけど,終わってみればとてつもない演奏になっていた。山場のひとつである歓喜のテーマの盛りあがりもだけども,合唱団がレベル高すぎ。いかに音大でもここまでとは。

● 指揮は秋山和慶さん。存在自体が凄い。80歳を3つ過ぎておられるのか。スッと立って長大な第九を事もなげに指揮する。日本で最もダンディな83歳だろう。
 秋山さんの指揮とあっては,合唱団もソリストも途中から入場というわけには参らない。第1楽章が始まる前にスタンバイ。

● 第1楽章はビッグバンの音楽的表現だと勝手に思っている。宇宙創生の音楽。昔は,第1楽章を聴けば第九を聴いたことになる,と思ってましたよ。
 第九はやっぱり途方もない曲だな。

● これに比べたら,マーラーがやったことなど児戯に類する。と,余計なことを言って,ヤな顔をされたこと,数知れず。マーラーって,知が勝ちすぎてません?
 才能は欠落だと思っていてさ。これがなかったら死ぬか狂うかしかないっていう人が,「これ」をやらないとダメなんだよね。マーラーは指揮や作曲じゃない他の仕事でもスマートにやって行けた人なんじゃないかな,と思えるんですよ。欠落がない。

● ま,それは余計なこと。この第九でフェスの環は閉じた。今年もこのフェスに皆勤。
 齢をとってできた暇をこういうことに使えるとは,どこにおわしますかは知らねども,神に感謝したくなりますよ。
 というわけで,今年が終わった。

2024年11月30日土曜日

2024.11.30 第15回音楽大学オーケストラ・フェスティバル 武蔵野音楽大学・東京音楽大学・国立音楽大学

ミューザ川崎 シンフォニーホール

● ミューザで音大フェスの2日目。まず,武蔵野のサン=サーンス「オルガン付き」。指揮は現田茂夫さん。
 迫力充分。サン=サーンスが躍動する。

● そりゃあね,細かいミスがないわけではない。けど,いいんですよ,そんなものは。
 若い人たちの全力投球は必ず何かを生む。と感じるのは,自分が年寄りだからかもしれないのだが。
 この曲だからオーボエが最も目立つ。女子学生が見事に演じきった。

● 東京はプロコフィエフの5番。指揮は広上淳一さん。
 悠揚迫らざる初動からプロコフィエフが紡ぎ出すいくつもの物語あるいは情景を,きっちりと音に変えていく。緻密でありながら縮こまっていないのは,実力があればこそ。

● 来月4日定期演奏会でも演るのだけれとも,こうした演奏をまとめて聴けるのが音大フェスのフェスたる所以でしょ。
 関西でも「関西の音楽大学オーケストラ・フェスティバル」があるらしい。大阪音楽大学,大阪教育大学,大阪芸術大学,京都市立芸術大学,神戸女学院大学,相愛大学,同志社女子大学,武庫川女子大学の8大学が参加する。
 が,これは,これら8大学の合同チームによる1回だけの演奏会のようなんだよね。

● 国立はレスピーギの「ローマの噴水」と「ローマの松」。指揮は高関健さん。
 こちらは明日の定演で同じ曲を演奏する。おそらく,今日の方が観客は多いはず。予行演習という感じは皆無。

● 噴水より松の方が耳に馴染みがある分,ちゃんと聴けたと思うんだけども,その “ちゃんと” がどの程度なのかはわれながら疑問。
 こういう演奏を続けて3本というのは,ありがたい一方で,聴き手にも相当な重量がある。今回は芸劇が使えないので,3日で全日程を終えるというスケジュールになったのだと思うが。
 しかし,こちらも気合いを入れていかんとね。

● ぼくの隣の男性氏がブラボー屋だった。ブラボーと叫ぶのは,若くて元気のいい人なのかと思っていたんだけども,普段は冴えない,ひょっとすると仕事も普通にできてるのかと疑わしいような,中年のオッサンが多かったりするんだろうかね。
 案外,そうかもしれないな。女性には相手にされないよえなタイプの,くたびれた感じの中年男が多いのかもしれないよ。

2024年11月23日土曜日

2024.11.23 第15回音楽大学オーケストラ・フェスティバル 昭和音楽大学・東京藝術大学・桐朋学園大学

ミューザ川崎 シンフォニーホール

● 音大フェスの1日目。昭和,藝大,桐朋。15時開演。
 昭和はバルトーク「管弦楽のための協奏曲」。指揮は時任康文さん。この曲はこのフェスでもしばしば取りあげられる。
 藝大はベートーヴェン「レオノーレ2番」と三善晃「焉歌・波摘み」。指揮は下野竜也さん。これは逆に音大フェス初登場。音大フェス以外でも,生で聴くのは,ぼくは初めてだ。

● 桐朋はシュトラウスの交響詩「ドン・キホーテ」。指揮は沼尻竜典さん。
 このフェスで強烈に印象に残っている演奏が2つある。1つは2013年のストラヴィンスキー「春の祭典」。もう1つは2018年のホルスト「惑星」。
 いずれも桐朋が演奏したものだ。今回の「ドン・キホーテ」も然りだろう。ただし,聴く人が聴けば,ということになる。

● 3つとも,とてつもないものを聴いているというのはわかる。が,聴けたかどうかはわからない。
 情報量(という言葉を安易に使ってしまうのだが)はプロオケの演奏よりずっと多いと思える。届くものが違う。それをちゃんと受領できてるかどうか。われながら心許ない。

● まぁ,しかし。これを聴かないですますというのはあり得ないと思っている。指揮者も錚々たる人たちが勢揃いする。
 ハロウィンとクリスマスの間の最大イベントですよ。ハロウィンもクリスマスもなくていいんだけれども,これがないのは困る。

● 首都圏まで聴きに行くのは減らして,地元に沈潜しようと画策してるんだけど(数年前から画策してるんだけども上手く行かない),これは別ね。千里の道も遠しとしないで出かけていきますよ(千里も離れてないんだけどさ)。
 今回も通し券を買っている。来年3月には選抜チームの演奏会もあるので,開演前にそのチケットも買いましたよ。

2024年7月14日日曜日

2024.07.14 間奏:音大フェスとフェスタサマーミューザ

● 川崎に来た。ミューザの隣のホテルに投宿。チェックイン後,まず行ったのはそのミューザ。
 今年も音大フェスがある。昨日がチケット販売の開始日。通し券を購入した。
 今回は3日間の強行日程。芸劇ではなくすみだトリフォニーを使うのは,芸劇は設備更新工事のため,今年の9月末から来年の7月まで休館するから。

● チケットも値上がっているが,インフレのご時世,致し方がない。それでも通し券の3,600円は激安だと思う。
 この大きな催事も,催行するにはいくつもの障害やハードルがあって,外から見えるほど簡単ではないはずだ。どうか続いてもらいたい。

● フェスタサマーミューザを初めて聴いたのは2021年。コロナ禍中の開催だった。よく踏み切ったな。
 通し券を買って,オケ演奏は全部聴いた。こんな贅沢を自分に許していいのかと,罪悪感のようなものも感じてました。

● 翌2022年も開催したが,このときはネット配信で視聴した。ジャズが面白かったね。チック・コリアってこういう人だったのかと勉強させてもらいましたよ。
 「スペイン〜六重奏とオーケストラのための」を演奏しているときの東京シティフィルの団員の楽しそうな表情も印象的でした。

● ネット配信はずっと続くのかと思いきや,コロナが収束した昨年(2023年)は実施されなかつた。ホールに行くか,あの途方もない贅沢をまた自分に許可するか。結局,見送った。
 今年もネット配信はない。コロナ禍の緊急避難的な措置にしてしまうのはもったいない気もするんだが,致し方がない。

● ぼくは聴けないけれども,聴ける人は聴いた方がいいに決まってる。これも格安と言っていいと思う。川崎市の財政負担があるのだろう。チケット料金だけで賄えるはずがない。
 首都圏に住んでる人は遠慮なく公の財政負担の恩恵を享受すべし。都市に住むことのメリットのひとつがそれではないか。