2025年6月10日火曜日

2025.06.08 栃木県交響楽団 第117回定期演奏会

宇都宮市文化会館 大ホール

● 開場前から長蛇の列。幾重にも折れ曲がって延々と続いている。チケットはあらかじめ買ってあるが,入れるのかと思ってしまう。
 ダラダラと延びた列というのは,視覚に過大に映る。ホールのきっちり詰まった座席に座らせると,何だこんなものだったのか,となるのは経験則でわかっているのだが,それでもこれだけ長い列を見るとね。

● 今回は栃響創立50周年記念。本来ならとっくにやっているはずのものだったが,コロナで開催中止。5年遅れで,しかし,仕上げて,公開に漕ぎつけた,と。
 ちなみに,今回は50周年記念の1st.ステージ。2nd.もあって,マーラーの2番を演るらしい。時期は来年の今頃か。

● というわけで,今回は曲目が凄い。ドヴォルザークの9番とストラヴィンスキーの「春の祭典」。
 開演は14時。指揮は三原明人さん。

● ドヴォルザークの9番。ひょっとして,この楽曲には普段聴いているのとは違う,別版の楽譜があったのか,と思った。???と思ったところが数ヶ所あった。
 ???には単なるミスも含まれるけれども,ミスは仕方がない。人間が演奏しているのだ。プロでもやる。
 そうではなくて,緩急というか,テンポというか。指揮者のいわゆる解釈の範疇だろうか。異物感があった。
 だからダメと言うのではもちろんない。今まで聴いて来たのとは違う,と感じただけのことだ。

● 「春の祭典」は当然にして大編隊。この曲をなぜ演奏できてしまうのか。そこがまず不思議だ。
 音源があって,実際の演奏を何度でも聴くことができるからだ,というのがひとつの解答ではあろうけれども,縦の線を揃えるだけでも大変でしょ,これ。しかも,これだけの大人数なのだ。

● さすがは栃響。特に,弦の水準が全体を盛り上げていた感じ。
 盛り上げるというより,演奏の大枠を形作っていた。この弦があったから「春の祭典」が成立したんじゃないか,と思わせるっていうかね。
 急いで付け加えておくが,他がダメと言ってるのではない。そんなことは1ミリもない。ダメなパートがあったら,そもそも演奏にならないのでね。

● 打楽器のセンターに久しぶりの田村さん。賛助になるんだけれども,やっぱりここは彼女じゃなきゃって感じですか。
 終演後に指揮者に立たされたときにも,彼女への拍手がひときわ大きかった。ティンパニへの拍手が大きいのは演奏会の常ではある。目立つところにいるし,音も目立つ。けれども,今日の拍手は見事だったという客席側の意思表示でしょう。

● 唯一,残念だったのは,終演の1秒前,最後の一音がこれから鳴るというときに,ブラボーを叫んだバカがいたことだ。
 ブラボー屋って,若者が多いのかと思いきや,たいていは皮膚のひったるんだ中高年のオヤジであるのは,経験則の教えるところ。どうしようもない年代なんだな。

● あと,客席の照明を明るくするタイミングをひょっとしたら間違えたか。もう少し余韻を引いてもよかったかもしれない。

2025年6月2日月曜日

2025.06.01 慶應義塾ワグネル・ソサィエティー・オーケストラ 第244回定期演奏会

ミューザ川崎 シンフォニーホール

● 開演は13:30。チケットは TEKET で。曲目は次のとおり。指揮は原田慶太楼さん。豪勢なものだ。
 伊福部昭 SF交響ファンタジー第1番
 ニールセン 交響曲第1番
 ドヴォルザーク 交響曲第7番

● どうです? これは聴いておきたいと思うでしょう。北関東の田んぼの村からでも川崎まで行きますよ。
 というか,ミューザは北関東からだと一番行きやすいホールだったりする。宇都宮から乗り換えなしで一本で行けるし,駅から至近だしね。

● この演奏会を聴きに行くか行かないかを決める理由は,色々ある。演奏するオケがどこなのか,何を演奏するのか,というのがまずあるけれども,どこで演奏するのかもわりと大きな理由かな,と。
 なおかつ,チケットの入手が容易であること。つまり,TEKET に対応していること。こういう些末なことがけっこうモノを言う。場所がミューザで,チケットが TEKET で買えるなら,行ってみるかとなったりする。

● ミューザの音響はサントリーホールをしのぐのではないかと思っている。国内屈指の名ホールのはずだ。
 が,欠点もあって,座席が窮屈なこと。もうひとつ。座席の配置は斬新でいいと思うのだが,その配置ゆえ仕方がないことながら,自分の席を見つけにくい。
 今回のぼくの席は1C-11列-27。北関東の田んぼの村から出向くのだから,奮発してS席を取ったのだけど,パッとわかったわけでもない。慣れるしかない。だいぶ慣れてはきたのだけどね。

● 指揮の原田慶太楼さんは,何というのか,客を呼べる指揮者だ。日本では数少ない存在ではなかろうか。和製バーンスタインと言いたくなるパフォーマンス。
 一見,奔放に見えるけれども,とてつもなく緻密。入念に譜読みを重ねているに違いない。それを指揮という身体動作と表情作りに翻案する。その翻案の仕方が原田流を形作っているのだが,ではその「仕方」を言語化してみろと言われると,本人にもできないだろう。長嶋や落合やイチローにどうしてそのバッティングフォームなのかと訊ねても,長嶋も落合もイチローも答えられないだろう。それと同じ。

● 慶應ワグネルといえば,大学オケの中では超絶有名。実力も伴っている。原田さんを引っ張って来れるのも,その実力ゆえでしょ。
 弦の奏者に男性が多い。1st.Vn の第1プルトが2人とも男性というのはアマオケでは珍しいんじゃないですか。
 ま,これはSF交響ファンタジーのときのことで,ニールセンになると,あれっ,男,減っちゃったよ,ってなったんだけどね。

● SF交響ファンタジー第1番は,ひょっとして原田さんの提案だろうか。ノリノリで力のこもった立派な演奏で,この1曲で田んぼの村から出張ってきてよかったと思いましたよ。
 この楽団は海外公演もやるらしい。このプログラムでデンマークとチェコに殴り込めばいいんじゃないですかね。

● 他の2曲,特にドヴォルザーク7番も聴き応えがあった。音大に行こうとすれば楽々行けた学生が相当いる。
 美形で頭が良くて楽器もセミプロ級。どれかひとつ,ぼくにも分けてくれないか。

2025年5月25日日曜日

2025.05.25 学習院輔仁会音楽部管弦楽団 第64回定期演奏会

ミューザ川崎 シンフォニーホール

自治医大駅
● 宇都宮から上野東京ライン平塚行きに乗って,自治医大でいったん下車。「休日おでかけパス」を買って,11:02発の熱海行きに乗車。13時ちょい前に川崎着。
 なぜ川崎に来たのかというと,ミューザで学習院輔仁会音楽部管弦楽団の定演を聴くため。

● 開演が13:15。けっこうギリギリ。昼の演奏会は14時開演が多いと思うのだが,45分早いとだいぶ違うな。
 入場料は1,000円。チケットは TEKET 対応で,これが行くか行かないかを決める要因のひとつになる。少なくとも,ぼくの場合はそうだ。

● 地元開催の演奏会ならプレイガイドにチケットを買いに行く気にもなるが,首都圏開催の場合に,たとえば「ぴあ」でしか買えないような演奏会は,その時点で行く気が失せる。
 紙のチケットに対する思い入れもない。チケットはQRコードで充分だ。紙にこだわるから,わざわざコンビニに出向かなくてはいけなくなる。
 演奏を聴くために東京や川崎に出るのはいいけれど,紙のチケットを受取るために近くのコンビニに行かなければならないのは,鬱陶しいことこの上もない。チケットを買うのにそんな面倒を強いられる筋合いはない。

● この楽団に関しては思い入れがある。コロナ禍中の2021年に「第九」を演奏してくれたことだ。今から振り返っても,よくやれたものだと思う。
 他に例がなかったわけではない。が,アマチュアオーケストラであの時期に「第九」をやったところが他にあったかどうか,寡聞にしてぼくは知らない。

● 曲目は次のとおり。指揮は金山隆夫さん。
 ロッシーニ 「ウィリアム・テル」序曲
 チャイコフスキー バレエ組曲「眠れる森の美女」
 ラフマニノフ 交響曲第2番

● 特に弦は子供の頃から始めていた人が多いんだろうなと思えるんだけども,中には大学生になってから始めてここまでになったという人もいるんだろうか。それができるだけの伸びしろを秘めている年代だとは思うんだけど,どうなんだろう。
 管は中学で吹奏楽部に入部してってのがある。けど,弦は中高で部活でやったという人は少ないはず。
 彼ら彼女らが1日,1週間,1年のうち,どの程度の割合を楽器に充てているのかは知る由もないけれども,相当な時間を使っているんでしょうねぇ。そうではなく,部活でしか楽器には触っていないのだとしたら,大変な才能の持ち主ということになりそうだ。

● 「ウィリアム・テル」序曲での軽快なギャロップが心地よかった。が,ラフマニノフの2番の仕上がりが印象的。
 劇付随音楽ではないのかと思えるほどに奔放な曲調の変遷。ラフマニノフは作家でもって,彼の頭の中には明確にひとつの物語があったんだろうか。その物語を絵にしていくように,音楽で彩色していったんだろうか。

● 客席は高齢者が主力を占めるのが常。しかも,男性の高齢者が一人で来るのが増えた。10年ほど前からの傾向だ。昔は,女性ばかりだった印象なのだが,最近は決してそうではなくなっている。
 ぼくもその一人なのに,こういうことを言っては申しわけないのだが,これはさほどに喜べることではないと思っている。男性高齢者が集まるところには,若者や女性は寄って来ないからだ。

● が,今回のような大学オケの場合は,奏者の友人たちがたくさんしてたりするから,客席の平均年齢がだいぶ若返る。
 今日なんか,隣が二十歳くらいのお嬢さんなんですよ。いや,幸せでしたよ。彼女,あらかた寝てたけど,いいんですよ,そんなことは。

2025年5月19日月曜日

2025.05.18 宇都宮シンフォニーオーケストラ 第22回定期演奏会

宇都宮市文化会館 大ホール

● 開演は14時。入場料は1,000円。当日券を買った。2階右翼席に着座。
 曲目は次のとおり。指揮はいつもの石川和紀さん。
 モーツァルト 歌劇「フィガロの結婚」序曲
 ドヴォルザーク チェロ協奏曲 ロ短調
 ブラームス 交響曲第4番 ホ短調
 
● ドヴォルザーク「チェロ協奏曲」のソリストは佐山裕樹さん。新日フィルの若きチェロ首席。
 佐山さんの独奏でこの曲を聴くのは,今回が二度目。4年前の今月真岡市民交響楽団の定演で聴いている。

● そのときはどうだったか,詳しいことは忘れている。いや,聴いたことは憶えているが,聴いたことだけしか憶えていない。
 第1楽章が終わったところで拍手が起きた。拍手したくなるだろう,それが自然だろうと,ぼくも思った。
 オケも本気の熱演。ソリストに引っ張られるというよりは,ドヴォルザークの楽譜に引っ張られるんだろうか。

● ドヴォルザークは鉄道好きで,じつは機関車の音を音楽にしたのだと言う人がいる。たしかに言い得て妙なところがあって,「新世界」なんていたるところにそれがある。
 チェロ協奏曲も特に第3楽章にそれが多いような気がする。で,そういう気になると,曲中に機関車音を探してしまうことになる。まったく余計なことを教えてくれたものだ。

● 栃木県はチェリストを輩出する県だ。金子鈴太郎さん,玉川克さん,宮田大さん,そして佐山さん。
 ま,栃木県が輩出しているわけではなく,彼らはどこに生まれても,どこで育っても,チェリストになったと思うけど。選ばれた人たちだろうから。チェリスト以外の何になってもいけない,という人たちでしょ。

● ブラームスの4番はスィーティーなメロディーで始まるから,なるほどブラームスはメロディーメーカーなのだなぁと感心しているうちに終わってしまうのだが,もちろんスィーティーなだけの曲ではない。大変な質量がある。
 ということをわからせてくれる演奏で,仕事や家庭を抱えながら,こうした演奏活動を継続している貴方がたは大したものだ。

● 佐山さんもチェロの列に加わっていた。新日フィルの首席を賛助に迎えての演奏だったわけだ。
 アンコールは「ハンガリー舞曲」の6番。

● ひとつだけうっかりしたことがあって,開演前に宇都宮市民芸術祭(この宇都宮シンフォニーオーケストラの定演も,その一環とされている)の開会セレモニーがあったことだ。早めに行ったので,これに付き合うことになってしまった。去年の「第九」のときもそうだったな。
 あまり見たくもない顔がステージに並び,聞きたくもない挨拶を聞かされる。ぼくはウォークマンのイヤホンを耳に突っ込んで,スマホを見ながらやり過ごしたが,このセレモニーは必要なのかね。
 主催者の自己満足でしかないように思うが。いつまで昭和を引きずるうもりだ? 何よりいけないのは,開演の直前に,場の空気を思いっきり冷やしてしまうことだ。こちらは演奏を聴きに来ているのだ。

2025年5月14日水曜日

2025.05.11 課題曲演奏会 in 宇都宮

宇都宮市文化会館 大ホール

● 吹奏楽コンクールの課題曲をまとめて演奏しようという演奏会。今年の課題曲もあるし,過去の課題曲もある。
 聴きに来たのは,今年のコンクールに出場する吹奏楽部の中高生が多いのだろうが,ぼくのように聴くことを娯楽にしているロートルも多かったようだ。

● チケットは5日に開催された作新学院高校の演奏会で出張販売(?)していたので,そのときに買っておいた。
 入場時に半券を自分でもぎる。このやり方はコロナ禍で身体接触を避けるために始まった。コロナ禍が去ると元に戻ってしまったようなのだが,どう考えても入場者が自分でもぎる方が合理的だ。
 チケットの受渡しをしないのだから,入場に要する時間も短くできる。このやり方,定着してほしいと個人的には思っている。ちなみに,電子チケットは定着したようで,慶賀の至りだ。

● 一応,2部構成。ただし,休憩時間が短かった(15分間)こともあって,2部感はさほどしなかった。
 まずは,県南の中学生を中心とするメンバーの演奏。次の3曲。
 大島ミチル Rhapsody~Eclipse(2025)
 河野土洋 ブラジリアン・ポートレート(1998)
 後藤 洋 ステップ,スキップ,ノンストップ(順次進行によるカプリッチョ)(2025)

● 宇都宮文星女子高校と文星芸大附属高校を中心とするメンバーで次の2曲。
 伊藤士恩 マーチ「メモリーズ・リフレイン」(2025)
 岩井直溥 ポップス描写曲「メイン・ストリートで」(1976)

● さらに,宇都宮市立陽南中学校と宮の原中学校のメンバーで次の2曲。
 伊藤士恩 マーチ「メモリーズ・リフレイン」
 渡口公康 行進曲「勇気の旗を掲げて」(2024)

● 後藤洋さんがゲストに来ていて,中学生に直接指導。中学生がちゃんと喰らいついて行くんですね。確かに変わる。変わった後が前より良くなったのかどうかは,ぼくにはわからないが。いや,中学生を舐めてはいけない。
 こういう場面はその後もあった。聴きにきていた吹奏楽部の中高生にとっても,ワークショップのようなものだったでしょうかね。

● 最後に,社会人のシンフォニックウインドオーケストラ21が次の2曲。
 大島ミチル Rhapsody~Eclipse
 間宮芳生 マーチ「カタロニアの栄光」(1990)

● ここから第2部。まず登場したのは東海大学菅生高校。
 杉山義隆 祝い唄と踊り唄による幻想曲(2025)
 小長谷宗一 風と炎の踊り(1989)
 J.マッキー 吹奏楽のための交響曲「ワインダーク・シー」

● 杉山さんもゲストに来ていたので,作曲者が指揮をするという場面があった。
 が,そんなことよりも「ワインダーク・シー」が圧巻。何だ,これは,と思った。こういう演奏を高校生がするのか。
 ステージから圧縮された熱が放たれて,客席を覆う。身体がジーンとなる感じ。

● 次に地元の作新学院が登場し,次の2曲を演奏した。
 後藤 洋 ステップ,スキップ,ノンストップ(順次進行によるカプリッチョ)
 高橋宏樹 ストリート・パフォーマーズ・マーチ(2005)
 安心して聴ける演奏であるのは言うまでもない。何せ,演奏しているのが作新なのだ。たぶん,これが県内最高峰。

● 最後は埼玉栄高校。次の3曲を演奏。
 高橋宏樹 イギリス民謡による行進曲(2003)
 後藤 洋 ステップ,スキップ,ノンストップ(順次進行によるカプリッチョ)
 ワーグナー 歌劇「ローエングリン」より “エルザの大聖堂への行列”

● 「エルザの大聖堂への行列」はオオトリに相応しかった。うぅむ,としか言えない。
 31日に大宮ソニックで定演があるらしい。大宮まで行くか,行かざるか。


(追記)

● 埼玉栄高校吹奏楽部のサイトを見たら,昼夜2回公演なんですね。定期演奏会がね。
 一定以上の認知をすでに獲得しているわけだねぇ。作新もそうなのだが,吹奏楽をやりたいから栄に入学したという生徒たちなんでしょうね。

● 当日券,あるかなぁ。夜公演ならあるんかな。
 と言うのは,前売券はセブンチケットで買うしかなさそうなんだけど,セブンチケットにアクセスできなくなっているんですよ。パスワードが撥ねられてしまう。以前は買えてたんですけどね。

2025年5月7日水曜日

2025.05.06 アウローラ管弦楽団 第33回定期演奏会

ミューザ川崎 シンフォニーホール

● 開演は13時30分。曲目は次のとおり。指揮は米津俊広さん。
 グリエール 序曲「フェルガナの休日」
 イッポリトフ=イワノフ 組曲「イヴェリア」
 リムスキー=コルサコフ 交響組曲「シェエラザード」

● ロシアしか取り上げないこの楽団ならではのプログラムでしょ。「フェルガナの休日」も「イヴェリア」も,ぼくは音源を持っていない(ネットには転がっている)。
 フェルガナはウズベキスタンの東部,キルギスとタジキスタンの国境近くにある街らしい。キルギスとタジキスタンの国境には未画定区間があったようで,武力衝突も起こっている。昨年,一応,国境は画定したらしいのだが,これで安泰というほど楽観はできないのだろう。
 そのトバッチリをフェルガナも受けざるを得ない。昔は知らず,現在は地政学的に厄介なことになっているようだ。

● 「イヴェリア」は「コーカサスの風景」第2番とも言われるのだが,「コーカサスの風景」のCDは持っている。ただし,聴いたことはない。聴きたいと思った記憶もないから,何かと抱き合わせになってるのを入手したのだと思う。
 今日の演奏会で「イヴェリア」を聴いたことによって,「コーカサスの風景」も聴くことになるかな(ならないかな)。

● 以前は,聴いたことがない曲を生で聴く機会があると,音源を手当しなきゃと思ったものだ。が,最近では諦めムードだ。キリがないからだ。
 数多ある楽曲の中で自分が聴いたことのあるものなど,ほんのひと握りに過ぎない。永遠に生きられるならともかく,寿命の残りがリアルに感じられるお年頃になると,諦めるべきは諦めなきゃしょうがないと思うようになった。

● 女性奏者はカラフルなドレスをまとって登場。華やかで,文字どおり花が咲いたようになる。
 が,私はそんなのイヤだ,演奏するのにそんな恰好はしたくない,という人が一人くらいはいてもよさそうなものだ。ひょっとして,それを許さない同調圧力がこういうところでも効いてしまうのかと思ってたんですけどね。
 ちゃんといましたよ。黒の演奏服(?)の女性奏者が二人いた。

● 「シェエラザード」を取りあげるのは,今回が二度目になるそうだ。10年前の第10回定演で演奏している。
 そのときのアクシデントをコンミスが紹介している。直前に弓が折れてしまったこと。“号泣” したとあるのだが,弓が折れたことよりも号泣したことからの立て直しの方が大変だったのではないか。
 と,思うのは凡人の浅はかさのようで,ステージで待機している団員を待たせながら「舞台袖の鏡でマスカラが落ちていないか入念にチェックしていた」というのだから,相当な大者だ。それとも,女性はだいたいそんなものか。
 ちなみに,その演奏会はぼくも聴いたのだが,そんなアクシデントがあったことは,もちろん髪の毛一本ほども感じさせなかった。

● 演奏の水準は相当なもの。あまたあるアマチュアオーケストラの中でも,この楽団の水準は相当上位と思う。であればこそ,北関東の田んぼの村から川崎まで聴きに来ようとなるわけだ。
 ロシアを専ら取りあげるのは他にもあったと思うが,その代名詞的存在はこの楽団ということになる。

● こうした演奏を聴くというのは,単に耳で聴くにとどまらず,眼で観るものでもあるし,皮膚で感じる要素もある。
 “聴く” だけを取りあげても,CDで聴くのと生演奏を聴くのとでは,働く神経細胞と神経回路の数がかなり違ってくるように思うが,そこに眼や皮膚も加わるとなると,そもそもライヴとCDは並べるものではないのだろう。

● あとどのくらい自分の身体をホールに運んでいくことができるのか,と考えることがあるようになった。そういうお年頃。
 無理をすると他の観客に迷惑をかけることになる。これ以上は無理だと思う少し手前で退きたいと考えているが,願わくば,その時期が少しでも遅からんことを。

2025年5月6日火曜日

2025.05.05 作新学院高等学校吹奏楽部 フレッシュグリーンコンサート2025

宇都宮市文化会館 大ホール

● 連休中に行く演奏会の中でも,これがメインと勝手に位置づけている作新学院高校吹奏楽部のフレッシュグリーンコンサート。開演は14時だが,この演奏会はとにかく混む。席数以上にチケットを販売していることはないはずだが,空席を探すのに苦労したことはある。
 ので,開場時刻の13:15よりも前から行列に加わった。それでも,自分の定席と決めている2階右翼席の一番奥の席に座ることはできなかった。

● だいぶ早くに着座したわけだが,開演前のアンサンブル演奏があるので,時間をもてあますことはない。
 ちなみに,開演前の静かなホールの席に座って,ウォークマンで好きな曲を聴くのも,なかなか乙な体感になる。そのためだけにウォークマン(スマホでもいいが)を買うのもありだと思っている。

● 曲目は次のとおり。
 第1部。
 高橋宏樹 ストリート・パフォーマーズ・マーチ
 山田耕筰 この道
 後藤 洋 ステップ,スキップ,ノンストップ
 真島俊夫 吹奏楽のための音詩「漣の島」
 樽屋雅徳 マードックからの最後の手紙

 第2部。
 森田一浩編 ライオン・キング・メドレー
 C.ストラウス バンドとコーラスのためのTomorrow
 Ayase YOASOBIメドレー
 桑田佳祐 みんなのうた

● 「バンドとコーラスのためのTomorrow」では部員によるコーラス隊も入る。たとえば,オペラは総合芸術と言われるが,こういうのを聴いていると,吹奏楽も総合芸術にしやすい,少なくとも総合芸術と相性のいい形態なのだな,と思う。
 足し算がしやすい。第3部のドリルは典型的にそうだ。

● そのドリルが圧巻。圧巻も何も,こんなのは作新にしかできない。
 演奏技術の確かさがすべての基礎にあるのだろうが,それだけではない。ラインの取り方とその表現。立ち姿の見た目を保つ体幹の若さ。バトンやフラッグの取扱いの巧みさ。挙げだせばきりがない。

● 贅肉が付く前のしなやかな女子高校生の肢体自体が見どころになる。助平とかエロ爺とか言われるだろうけれども,絶対的にそれはある。大学生になってしまった後では,この表現はおそらく無理なのではないか。
 かと言って,大学生にしかできない表現もあるはずだから,大学生になってしまったからといって私はもう若くないと落胆するのは,まったく当たらない。今まで生きてきた中で只今現在が最高年齢だから,放っておくと容易に晩年意識に堕ちることになる。ご注意。

● このあと,事実上の第4部になる “野球応援ステージ” がある。
 加えて,今回は “石塚武男メモリアルバンド” による「76本のトロンボーン」「オブラディ・オブラダ」「ヘイ・ジュード」「オリーブの首飾り」の演奏があった。石塚武男とは何者? については,ぼくが語ることではない。
 たっぷり3時間の演奏会。この長丁場をダレ場を作らないでやりおおせるのだから,この吹奏楽団はただ者ではない。毎回感じることだが,今回も同じ印象を持った。

● この定演では過去の定演のCDや作新グッズを販売している。ガッツリ利益を上げて,活動の原資にしてもらいたいものだと思っているが,そうは言ってもなかなか協力するところまでには至らない。
 いつぞやの定演のときに,第54回定演の録音CDを買った。ウォークマンに入れて聴いているが,愛聴CDのひとつになっている。ただし,毎年のCDを買って聴き比べてみるというところまでは行かなくて,この1枚で満足しちゃってる。

● 音だけではなく,姿まで残しておくといいと思うが(特に第3部),仮にDVDがあったら買うかとなると・・・・・・。やはり1枚は買うと思うけど,毎年買うところまでは行かなそうだ。
 なのに,DVDも作ってください,とは言いにくい。主催者側はその必要性を感じていないのだろうし,費用の問題もあるしね。

● 今月の11日には「2025 吹奏楽コンクール課題曲演奏会 in 宇都宮」が,この会場で開催されることを,プログラム冊子と一緒に配られたチラシで知った。東海大学菅生高校と埼玉栄高校も登場する。
 実質的な事務局を作新学院が務めているのかもしれない。ロビーでチケットを販売していた。1枚,買っておいた。
 こういうのは自分から買いに行くと自動的に面倒が発生する。「ぴあ」を使おうものなら,手数料がかかるうえに日数も要する。売りに来てくれてるのを買えば,その種の手間が不要になる。