2010年6月30日水曜日

2010.06.27 東京大学フォイヤーヴェルク管弦楽団第23回定期演奏会

すみだトリフォニーホール大ホール

● 27日は東京に行ってきた。東京大学フォイヤーヴェルク管弦楽団の定期演奏会。場所は錦糸町の「すみだトリフォニーホール」。
 いきなり結論から書くけれども,これはわざわざ電車賃を払って東京まで聴きに行く価値があるものだった。巧い。楽器が完全に体の一部になっている。手練れという言葉が浮かんできた。
 一昨年のコンセール・マロニエ21の弦楽器部門で第1位になったのはヴィオラの金孝珍さんという,韓国籍の女性だったのだが,その金さんが奏者に名を連ねていた。賛助出演ということになっていたが,彼女が一メンバーとして演奏しているのだから,レベルの高さが知れるのではあるまいか。

● 女性奏者の衣装がカラフルで目を奪われた。コンサートドレスというんでしょうね。プロであれアマであれ,たいていの楽団は黒ばかりで,烏の群れになる。それはそれでいいんだけれども,フォイヤーヴェルクはピンクやらブルーやらグリーンやら。深紅もあれば,赤紫も青紫もある。白で裾の長い,まるでウェディングドレスのようなのもあった。
 オーケストラは目をも楽しませるものであるべし,と,ぼくは思っているから,こういうのは大歓迎だ。何といっても,女性奏者はステージ上の花なんですよ。花は花らしくあった方がいいんですよ。

● 指揮者は原田幸一郎氏。プログラムに掲載されたプロフィールによれば,元々は天才ヴァイオリニスト。海外で活躍し,現在は桐朋学園大学教授を務める。

● 曲目はロッシーニ の歌劇「アルジェのイタリア女」序曲,ベートーヴェンの「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」,メンデルスゾーン「交響曲第4番イタリア」。曲毎にコンマスが交替する。奏者も入れ替わる(全員ではないけど)。
 最初の「アルジェのイタリア女」序曲で彼らの凄さがわかった。ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲のソリストは荒井英治さん。現在は東京フィルハーモニー交響楽団のソロ・コンサートマスターとのことだ。
 しかし,そのソリストが邪魔とまでは言わないけれど,君の演奏よりバックのオーケストラを聴いていたいんだけど,っていう感じでしたね。

● メンデルスゾーンの第4番は何度も聴いている。ヴァイオリン協奏曲ホ短調の印象はあまりにも強烈だけど,交響曲の4番もいい。この曲からぼくが感じるのは「誠実」。メンデルスゾーンは誠実の人だったに違いないと勝手に思っている。
 もっとも,作品と作者の人柄とは全くの別物だと思った方がいいのだろうから(その典型例がモーツァルト),メンデルスゾーンが本当にそうだったのかどうかは,もちろんぼくの知るところではない。

● フォイヤーヴェルク管弦楽団の演奏は最後まで集中が切れることがなかった。たいしたものだ。ひとつの楽章の演奏が終わって次の楽章に移るまでの間が短いのも好印象。プロっぽいっていうか。いや,本当に,セミプロ級だと思った。
 この楽団は東京大学の名を冠してはいるけれども,学生の出自は東大だけではなく,多岐に亘っている(コンマスを務めた3人のうち,東大生は一人だけ。楽員代表も東大生ではない)。音楽大学に在籍している人も多い。
 大学生に限ったわけでもない。院生も社会人もいるようだ。あちこちから上質な上澄みを集めている感じだ。

● プログラムにもオチャラケは一切ない。大学オケの演奏会のプログラムってのは,客席にいるのも大学生だけっていう前提にたっているんじゃないかと思いたくなるものが多い。パートごとにオフザケ感いっぱいにメンバーを紹介していたりね。学生どおしのノリで終始している。それはそれでいいんだけどね。
 が,この楽団ではそれはなし(5月に聴いた東大音楽部管弦楽団のプログラムもシックなもので,オチャラケはなかった)。気分はプロ。

● で,ぼく,この楽団の賛助会員になっている。年会費6千円を払っている。その見返りは何かといえば,VIP待遇だ。年2回の定期演奏会のチケットは指定席で送ってくれる。
 この楽団の実力を知っている人はたくさんいるようで,演奏会当日は一般客で混み合うのだが,ぼくら賛助会員はその混雑をよそに別口から入場できる。入場すれば特等席が指定されている。この日のぼくの席は2階席の一番前の真ん中。ステージまで距離はあるけれども,何物にも遮られることなく,ステージが一望できた。
 演奏会の録音CDも送ってくれる。この演奏をCDで聴き直せるとは楽しみなことだ。ライブなしでいきなりCDだと,ぼくの耳では何も感じないと思うけれど,生の演奏を聴いていれば,CDからぼくの頭脳が再生できる事柄はグンと多くなるだろう。

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