約2時間のコンサートが終了した直後の満足感は,他のものでは代替できません。この世に音楽というものが存在すること。演奏の才に恵まれた人たちが,時間と費用を惜しまずに技を磨いていること。その鍛錬の成果をぼくたちの前で惜しみなく披露してくれること。そうしたことが重なって,ぼくの2時間が存在します。ありがたい世の中に生きていると痛感します。 主には,ぼくの地元である栃木県で開催される,クラシック音楽コンサートの記録になります。
2012年10月15日月曜日
2012.10.13 慶應義塾大学医学部管弦楽団第36回定期演奏会
川口総合文化センター・リリア メインホール
● この日のふたつめは,慶應義塾大学医学部管弦楽団。開演は午後6時。
チケットは1,000円だとぼくは思ってて,当日券の売場を探したんだけど,そんなものはない。皆さん,どんどん入場していく。ぼく,指をくわえてそれを見ていた。
ま,受付で訊けばいいやと思って入ってみたら,プログラムを渡してくれて,そのまま通過できた。つまり,入場無料だったわけですね。
こういう勘違いが最近ちょっと増えている。年のせいというより,私生活がややバタバタしているからだと思っている。バタバタしてていいことなんか何もないってことですね。
● 会場の川口総合文化センターリリアは初めて。巨大なホールだった。メインホールのステージは呆れるほど広い。どんなに大規模なオーケストラでも問題なく乗せることができる。
これだけ広いと,バレエやオペラを上演するんでも,自由にレイアウトを描けるでしょうね。
● 医学部管弦楽団といっても,医学部の学生だけで構成されているわけではない。他学部や他大学の学生もいる。っていうか,数はそちらの方がずっと多い。
それでは,看板に偽りありかというと,そんなこともない。構成割合で見れば,他学部や他大学のどこよりも慶応医学部の学生が多いから。
● 週に3回練習しているそうだ。熱心な学生は自主練習もしているだろう。
ぼく,大学時代は行きつけの喫茶店のマスターから「旗本退屈男」と呼ばれていた。とにかく暇だった記憶しかない。その暇さかげんを全身で発散してたんだと思う。
けれども,医学部の学生は,講義,実験,実習で相当忙しいだろう。その合間をぬって週に3回の練習に参加するのは,かなり大変なのじゃないか。
● この楽団,楽器ごとにトレーナーを付けている。普通,トレーナーって管・弦・打で一人ずつってところが多いよねぇ。
練習環境には恵まれているといっていいんでしょうね。そこに惹かれてこの楽団に参加している他学部・他大学の学生もいるんじゃないのかなぁ。
ぼくなんぞは慶応医学部っていうと,逆差別の目で見てしまいがちになる。どうせお金持ちのボンボンなんだろうって。実際,そういう眼を感じることがしばしばあるのじゃないかと推測する。それってけっこう辛いかもしれないね。普通だよって返したくなるだろうなぁ。
でも,楽器ごとにトレーナーを付けられるって,ねぇ,すごくない? やっぱり,お金持ちなのか。
● 曲目は次のとおり。
ベートーヴェン レオノーレ序曲第3番
ショスタコーヴィチ 交響詩「十月革命」
チャイコフスキー 交響曲第5番
● 「学生オケらしい熱い演奏を来てくれた皆さまに届けられるよう精一杯演奏します」という言葉に嘘はなし。集中,集中。懸命さは客席にも届いていた。大げさにいうと,その様は神々しいほど。
演奏の水準も並みの学生オケをはるかに凌駕するもので,高校生のときから,あるいはそれ以前から,楽器に触ってきた団員が多いのではないかと思われた。木管が巧かったとか弦の響きが素晴らしかったとか,個々のパートがどうのこうのではない。オケとしての全体水準が高い。
ということはつまり,下手がいないってことですね。最も下手な奏者のレベルが下手という範疇ではない,っていいますかね。
● チャイコフスキーの5番はわずか数時間前にマグノリアオーケストラの演奏で聴いたばかり。比べるものではない。このオケにはこのオケのチャイコフスキーがあるということ。
きっちりと仕上げてきた。コントラバス8人の陣容はダテじゃない。底から盛りあがってくるような迫力。
コンマスは一曲ごとに交替。どのコンマスも懸命にオケを引っぱったが,この曲のコンマスもコンマスとして大健闘。絵になるコンマスでしたね。
● 指揮者は佐藤雄一さん。指揮者もパフォーマーのひとり。っていうか,最も目立つ位置にいるわけだからね,指揮者の指揮ぶりって重要ですよね。これでぜんぜん印象が違ってくるものな。
で,佐藤さんの指揮ぶりも見所のひとつだった。大いなる満足感を持って帰途につけたんだけど,その理由のひとつは佐藤さんの指揮ぶりにあり。
飄々とした方なんですかね。客席にもユーモアを振りまくんだけど,オケに鞭を入れるときの動作にはさすがに力があって,それがピッとオケに伝わる小気味よさを味わえた。それも,オケが優秀なればこそなんだけどさ。
● アンコールはハロウィンの乗りで。学生オケならではですかねぇ。当然,客席に和みを提供することになる。
その和み効果も,本番での演奏がペケだったらオイオイってことになってしまうかもしれないよね。もちろん,この楽団はそんなことにはならなかったわけですけどね。
● 開演前,来場者の世間話を聞いていると,オレは千葉から,オレは名古屋からっていう声が聞こえてきた。ぼくも栃木から来てるわけだけど,名古屋ってのはちょっと驚き。
医学部どおしのつながりのようなものがあるんだろうか。あるいは,この楽団の名声が遠くまで届いているってこと?
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿