● 昨年の10月12日に開催予定が,台風19号によって今日に延期された。ここでまたコロナ・ウィルスで中止なんてことになったら,目もあてられない。
コンクールなんだから観客を入れないで実施するのはありだと思われるが,予定どおりの開催となった。ありがたい。
10月12日はぼくも24時間職場に詰めることになったので,延期自体がありがたい。おかげで聴くことができる。
● ぼくはこのコンクールを普通の演奏会として聴いている。ここでしか聴けない曲目ばかりだ。東京に住んでいるなら格別,栃木ではこれを代替できる演奏会はない。かなり貴重な機会なのだ。
しかも演奏するのはファイナルまで残った人たちなのだから,演奏に文句があろうはずがない。こちらとすればこの催事に便乗して,気持ちよく聴かせてもらうだけだ。
毎回,コンクールの意義についての考察が披露されており,そうだったのかと思うことが多い。今回は,「コンクールは,他者との触れ合いの場であるがゆえに,意義を持つ」とある。「たったひとり,舞台の上で自分の音楽を奏でて,価値観の異なる審査員を説得しなければいけない。いわばコンクールのステージは,徒手空拳で立ち向かう「外国」のようなものです」と。
この文章を読めただけで,今日ここに来た甲斐があったと,ぼくは思う。コンクールが増えすぎたので,コンクール慣れしてしまって,「外国」にならない場合が増えたかもしれない,というのは,また別の話だ。
● さて,第24回の今回は金管。順に聴いていくことにしよう。
1人目は田村相円さん。チューバ。国立音大の4年生。ペンデレツキ「無伴奏チューバのためのカプリッチョ」とボザ「コンチェルティーノ」。後者のピアノ伴奏は大川香織さん。
悠揚迫らざる大人(たいじん)の趣あり。大人の風格にチューバという楽器はまったく違和感がない。
● 2人目は武藤向日葵さん。トランペット。昭和音大の2年生。今回の最年少出場者。アルチェニアン「トランペット協奏曲」。ピアノ伴奏は神永睦子さん。
小さい頃は名前で苦労したのではないかと,余計なことを思ってしまった。が,おそらく名前のとおり,向日性の性格かと思う。かなり陽性。抑えようとしても,ポロッポロッと陽性が現れでる的な。
● 3人目は芝宏輔さん。チューバ。藝大の卒業生。ペンデレツキ「無伴奏チューバのためのカプリッチョ」とヤコブセン「チューバ・ブッフォ」。ピアノ伴奏は再び大川香織さん。
チューバにピアノ伴奏の取り合わせは面白い。つまり,ピアノは音の粒がはっきりしていて,粒が粒である時間がけっこう長い(ように感じる)。対して,チューバの音は発せられるとすぐに空気に溶け始める。音の寿命が短いというより,輪郭を保っている時間がピアノに比べればだいぶ短い(ように思われる)。
芝さんのチューバはクリアでメリハリがあって,その短さに対抗している感があった。が,ぼくは大川さんのピアノに気が行ってしまって。美しくも勝ち気そうな大川さんがピアノから生みだす音の粒たち。見事な伴奏だったと思う。
● 4人目は山川栄太郎さん。トランペット。尚美学園を卒業。タンベルク「トランペット協奏曲」。ピアノ伴奏は下田望さん。なんと,譜めくりを武藤さんが務めた。
こういうこと,あるんだ。知り合いだったりするんだろうかね。そういう世界なんだろうかな。
● 5人目は岩倉宗二郎さん。今回,唯一のトロンボーン。武蔵野音大を卒業。ヨルゲンセン「組曲」。ピアノ伴奏は城綾乃さん。
出てきた瞬間にあだ名を付けたよ。ムーミン,だ。たぶん,リアルでもそのあだ名で呼ばれたことがあるに違いない。
いや,ムーミン,すごいよ。いっぱいいっぱいの表情ながら2割の余力を残していたのではないか。
● 6人目は西本葵さん。これまた,今回唯一のホルン。R.シュトラウス「ホルン協奏曲第2番」。ピアノ伴奏は野代奈緒さん。
西本さんは東京音大なんだけど,東京音大と武蔵野音大ってのは好一対で,東京音大が山手,武蔵野音大は下町というイメージがある。申しわけない(どちらに対して?)。
西本さんもそのイメージを裏切らない。お金持ちの家で育ったお嬢様という印象。モデルも務まる。
演奏も素晴らしい。曲もいいので,曲に引っぱられて感想を作ってしまっているかもしれないのだが,そうだとしても演奏も相当にいい。
● 7人目は石丸菜菜さん。男なのに名前が菜菜とはこれいかに。石丸さんも名前で苦労したかなぁ,幼少時代は。
チューバ。藝大を卒業。ペンデレツキ「無伴奏チューバのためのカプリッチョ」とヤコブセン「チューバ・ブッフォ」。ピアノ伴奏は城綾乃さん。
「無伴奏チューバのためのカプリッチョ」は3回聴くことができた。「チューバ・ブッフォ」は2回。この曲を生で聴く機会はおそらくないだろうと思っている。ひょっとすると,このコンセール・マロニエ21の次の金管部門のときに聴けるかもしれないけれど。
● すでに結果は出ているはずだ。総合文化センターのサイトで見ることができる。ぼくはあえて見ないことにしているが。
にしても。新しい才能が次々に出てくるものだ。その分,古い才能が出ていくかというと,そういうわけにはいかないので,新旧の才能が滞留してしまう。
厳しい状況でしょう。聴き手にとってはありがたい状況であるのかもしれないのだが。
● リニューアルなった栃木県総合文化センターに入ること自体,今日が初めて。
ギャラリー棟のロビー。最も大きな変化点は,椅子とテーブルが増えたことだ。快適性が向上した。
カウンターの長いテーブルと,4人がけ用の四角いテーブル。お喋りする人は四角いテーブルを,何か食べたりちょっとした作業をしたい人は,左側のカウンター席を使えばいい。パソコンや書籍を置いて使うのにちょうどいい高さだ。自販機でコーヒーを買えば,スタバの代わりにもなるかも。
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