● 開演は午後2時。チケットは1,000円。曲目は,ブラームスの「大学祝典序曲」,ドヴォルザークの「ピアノ協奏曲」,シューマンの「交響曲第4番」。
客席は前方に空席があったものの,大ホールがほぼ埋まった。皆さん,いい席がどこかはご存知だから,いい席からどんどん埋まっていった。
● 今回は大井剛史さんではなく,海老原光さんの指揮。こういうことをやっているのは(できるのは),栃木県内のアマオケでは栃響と宇都宮大学管弦楽団とこの那須フィルだけ。
ほかは,常任指揮者制。毎回,同じ指揮者が指揮をする。それはそれで多くのメリットがあるに違いないにしても,その都度,違う指揮者とやれるのもまた,団員にとっては大きな刺激だろう。
アマオケとしてはかなり恵まれた環境にあるといっていいのではあるまいか。他の楽団から見れば,相当に羨ましいのではないか。
● そのことは団員も百も承知。プログラムの「団員あいさつ」にも「私たちは,那須フィルの団員であると同時に,那須野が原ハーモニーホールのオーケストラ養成講座受講生でもあることから,理想的な音響設備を備えるハーモニーホールの大ホールを合奏練習に使わせていただいています。また,音楽監督の大井先生,そして今回指揮者としてお迎えした海老原先生をはじめ,日本音楽界の第一線でご活躍中の先生方から直接ご指導いただけるという大変恵まれた環境にあります」とある。
それが客席にも明確に伝わってくる。素性のいい練習をしてきたんだろうなと思わせる。
● いいオーケストラとは何か。あるいは,いいオーケストラかどうかを判別するメルクマールは何か。
それは聴き手の水準によって異なる。しからば,ぼく程度のヘボ聴き手にとって,いいオーケストラとは何か。
演奏中のオーケストラが絵として成立しているかどうかだというのが,答えのひとつになると思っている。絵として成立せしめる要因は何かってのは,どうもうまく説明できないんですけどね。美男美女が多いか少ないかは関係ないし,スタイルがいいかどうかなんてことでもない。
絵として見てもちょっと崩れていると感じるオーケストラに遭遇することも,ないわけではないんですよ。で,この那須フィルは絵として成立している,と。
● これねぇ,コンマスの執行さんの存在が大きいと思いますね。絵の構成要素のかなりの部分を彼が占めている。前列中央にいるわけだしね。コンマスの所作ってやっぱり大きいですよ(もちろん,指揮者もなんですけどね)。
中央の空気がピッと奏者全員に伝わる。そうすると,一幅の絵として鑑賞するに足るものとなる。
彼は決して行儀のいい人ではなさそうだけどね。行儀がいい=絵になる,ではないからね。
小柄な人。和製グレン・グールドと呼びたくなったぞ。たまげた腕前の持ち主だ。
もし,演奏会終了後,打ち上げがあって,その席に彼も参加したのなら,お姉さま団員に愛玩されたことだろう。ご愁傷様といえばいいのか,何といえばいいのか。難しいところだな,これ。
● シューマンの4番は初めて聴く。もし初体験がCDだったら,途中でやめてしまったかもしれない。ライヴだからいやおうなしに最後まで聴ける。
終曲まで集中を切らさず,エンディングの着地も成功。いったんライヴで聴いておくと,錯覚ながら勝手知ったる曲になる。CDで聴くときにも勝手がわかっていれば聴きやすい。
● この大ホールは4月から使用不可になる。といっても,正面にパイプオルガンを設置する工事が始まるからで,それが終わるまでの間だ。
パイプオルガンのあるホールは,只今現在,栃木県には皆無。それで何か困ることがあるのかといえば,たぶんないんだろうけど,ともあれ栃木にもパイプオルガンのあるホールができる,と。
それが宇都宮じゃなくて,那須にできるってのが,なかなかに気分がいい。そうじゃなきゃいけない。
音楽の殿堂は那須。何でもかんでも宇都宮ってのは,便利っちゃ便利なんだけど,何がなし面白くないからね。
● この日は宇都宮市文化会館で,「宇都宮市民合唱祭」があった。この分野,ぼくはまったく疎い。
昨年12月に宇高・宇女高合同演奏会で男声の「秋のピエロ」を聴いて,かなりいいじゃんと思った。高田三郎さんの「水のいのち」をつい最近聴いた。へぇぇと思った(ちなみに,YouTubeで聴いたんだけど,複数アップされている中で,岩手大学合唱団のものが秀逸。画像がないのがちと残念だけど)。
その「水のいのち」全曲を歌うグループが「宇都宮市民合唱祭」に登場するってのを新聞で見た。ので。こちらにもかなり食指が動いた。先決優先の原則にしたがって,那須フィルの定演を聴くことにしたんだけどね。
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