那須野が原ハーモニーホール 交流ホール
● 過去には山下洋輔さんや小林研一郎さんを迎えて,華やかにやっていた。前回から自分たちだけの演奏会になった。今回もそうだ。
開演は午後2時。入場無料。
● 場所は交流ホール。パイプ椅子を並べて席を作る。こぢんまりとした感じ。ということはつまり,奏者と聴き手との間の距離が短くなる。
一体感が生まれやすい。聴き手が自分も参加しているという実感を得やすくなる。
● プログラムは次のとおり。
テレマン リラ組曲
ヴィヴァルディ 合奏協奏曲「四季」より「春」
ヘンデル 合奏協奏曲集6の7
モーツァルト 交響曲第25番より第1楽章
ピアソラ エスクアロ(鮫) オブリビオン(忘却) リベルタンゴ
前半はバロックで,後半はモーツァルトをはさんでピアソラというくっきりした対比。
● 音楽監督を務めている白井英治さんの解説によれば,テレマンは3,000ほどの曲を作ったらしい。この時期の作曲家はみな多作だ。
その代わり,現在まで残っている曲は多くはない。価値がないから残らなかったというのではなく,散逸しやすかったのだろう。バッハのマタイ受難曲だって,初演のあと,メンデルスゾーンが再発見するまでは埋もれてしまっていたわけだから。
● ともかく。リラ組曲を聴きましたよ,と。バロックを本腰入れて聴かないといけないなぁと思うことになる。ライヴを聴くたびに思うことだ。
が,おそらく,バロックだけをずっと聴き続けるのは,ちょっとした苦行になってしまいそうだ。バロックも聴くというふうでいい。ポートフォリオの中にバロックも組み込むように。
● リラ組曲はCDを持っていたかどうか。以前はCDを持っていない曲をライヴで聴くと,すぐさまCDを探して手に入れてきたものだが(そうでもなかったか),最近はどうも弛んでいる。
CDを聴く時間も以前よりだいぶ減ってしまっているし。
● 奏者との距離がこれくらい近いと,そうしたことも含めて,いろんなことを次から次へと考える。刺激が大きくなるからだろう。
これくらいの演奏会っていいなぁ。大ホールで聴くのもそれはそれでいいんだけど。
● ピアソラから感じるものは,生きることの哀しみのようなもの。
タンゴの踊りは相当にセクシーで,けっこう際どい動きもあるよね。それも生きるって哀しいねっていうのがあって,束の間,それを下敷きにしてカーニバルに興じるっていう,そういう機序なのかなと思ってみたりする(たぶん,違うと思うんだけどね)。
● ただ,その哀しみを強調するんじゃなくて,いったんぐっと抑えて,さらっと差しだしたという感じ。抑制を利かせているのがピアソラの身上のように思う。
であるから,長く残るのだろう。ピアソラも本腰入れて聴かなきゃなと思って,会場を後にした。
● ところで,白井さんの解説によると,譜面を見るとウワッと思うほど難しいのに,聴いているとそうは聞こえないのが「エスクアロ(鮫)」だ。
なるほど,そういうことはしばしばあるに違いない。要するに,ファインプレーはわかりにくい。ファインプレーをファインプレーとわかる人は,聴き手として相当なレベルのはずだ。
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