すみだトリフォニーホール大ホール
● 27日は東京に行ってきた。東京大学フォイヤーヴェルク管弦楽団の定期演奏会。場所は錦糸町の「すみだトリフォニーホール」。
いきなり結論から書くけれども,これはわざわざ電車賃を払って東京まで聴きに行く価値があるものだった。巧い。楽器が完全に体の一部になっている。手練れという言葉が浮かんできた。
一昨年のコンセール・マロニエ21の弦楽器部門で第1位になったのはヴィオラの金孝珍さんという,韓国籍の女性だったのだが,その金さんが奏者に名を連ねていた。賛助出演ということになっていたが,彼女が一メンバーとして演奏しているのだから,レベルの高さが知れるのではあるまいか。
● 女性奏者の衣装がカラフルで目を奪われた。コンサートドレスというんでしょうね。プロであれアマであれ,たいていの楽団は黒ばかりで,烏の群れになる。それはそれでいいんだけれども,フォイヤーヴェルクはピンクやらブルーやらグリーンやら。深紅もあれば,赤紫も青紫もある。白で裾の長い,まるでウェディングドレスのようなのもあった。
オーケストラは目をも楽しませるものであるべし,と,ぼくは思っているから,こういうのは大歓迎だ。何といっても,女性奏者はステージ上の花なんですよ。花は花らしくあった方がいいんですよ。
● 指揮者は原田幸一郎氏。プログラムに掲載されたプロフィールによれば,元々は天才ヴァイオリニスト。海外で活躍し,現在は桐朋学園大学教授を務める。
● 曲目はロッシーニ の歌劇「アルジェのイタリア女」序曲,ベートーヴェンの「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」,メンデルスゾーン「交響曲第4番イタリア」。曲毎にコンマスが交替する。奏者も入れ替わる(全員ではないけど)。
最初の「アルジェのイタリア女」序曲で彼らの凄さがわかった。ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲のソリストは荒井英治さん。現在は東京フィルハーモニー交響楽団のソロ・コンサートマスターとのことだ。
しかし,そのソリストが邪魔とまでは言わないけれど,君の演奏よりバックのオーケストラを聴いていたいんだけど,っていう感じでしたね。
● メンデルスゾーンの第4番は何度も聴いている。ヴァイオリン協奏曲ホ短調の印象はあまりにも強烈だけど,交響曲の4番もいい。この曲からぼくが感じるのは「誠実」。メンデルスゾーンは誠実の人だったに違いないと勝手に思っている。
もっとも,作品と作者の人柄とは全くの別物だと思った方がいいのだろうから(その典型例がモーツァルト),メンデルスゾーンが本当にそうだったのかどうかは,もちろんぼくの知るところではない。
● フォイヤーヴェルク管弦楽団の演奏は最後まで集中が切れることがなかった。たいしたものだ。ひとつの楽章の演奏が終わって次の楽章に移るまでの間が短いのも好印象。プロっぽいっていうか。いや,本当に,セミプロ級だと思った。
この楽団は東京大学の名を冠してはいるけれども,学生の出自は東大だけではなく,多岐に亘っている(コンマスを務めた3人のうち,東大生は一人だけ。楽員代表も東大生ではない)。音楽大学に在籍している人も多い。
大学生に限ったわけでもない。院生も社会人もいるようだ。あちこちから上質な上澄みを集めている感じだ。
● プログラムにもオチャラケは一切ない。大学オケの演奏会のプログラムってのは,客席にいるのも大学生だけっていう前提にたっているんじゃないかと思いたくなるものが多い。パートごとにオフザケ感いっぱいにメンバーを紹介していたりね。学生どおしのノリで終始している。それはそれでいいんだけどね。
が,この楽団ではそれはなし(5月に聴いた東大音楽部管弦楽団のプログラムもシックなもので,オチャラケはなかった)。気分はプロ。
● で,ぼく,この楽団の賛助会員になっている。年会費6千円を払っている。その見返りは何かといえば,VIP待遇だ。年2回の定期演奏会のチケットは指定席で送ってくれる。
この楽団の実力を知っている人はたくさんいるようで,演奏会当日は一般客で混み合うのだが,ぼくら賛助会員はその混雑をよそに別口から入場できる。入場すれば特等席が指定されている。この日のぼくの席は2階席の一番前の真ん中。ステージまで距離はあるけれども,何物にも遮られることなく,ステージが一望できた。
演奏会の録音CDも送ってくれる。この演奏をCDで聴き直せるとは楽しみなことだ。ライブなしでいきなりCDだと,ぼくの耳では何も感じないと思うけれど,生の演奏を聴いていれば,CDからぼくの頭脳が再生できる事柄はグンと多くなるだろう。
約2時間のコンサートが終了した直後の満足感は,他のものでは代替できません。この世に音楽というものが存在すること。演奏の才に恵まれた人たちが,時間と費用を惜しまずに技を磨いていること。その鍛錬の成果をぼくたちの前で惜しみなく披露してくれること。そうしたことが重なって,ぼくの2時間が存在します。ありがたい世の中に生きていると痛感します。 主には,ぼくの地元である栃木県で開催される,クラシック音楽コンサートの記録になります。
2010年6月30日水曜日
2010.06.10 チャリティーコンサート2010in栃木
栃木県総合文化センター メインホール
● 10日は総合文化センターで「チャリティーコンサート2010in栃木」というのがあった。県とAflacの共催(実質負担はAflacだろう)。コンサートを無料で開催して,会場内で募金を募る。あるいは出演者のサイン入りCDを販売し,その一部を小児ガン患者のために寄付する。
併せて,がん検診についての啓発を図る。趣旨はそいういうこと。事前に知らされていたので,ぼくも募金に応じた。千円以上募金すると,アフラックダックがもらえる。テレビCMでアフラックと発するアヒルが登場するが,その人形で,頭を叩いてやると同じようにアフラックと言う。
● 出演者はまず宇都宮北高校の吹奏楽部。「星条旗よ永遠なれ」「ウェストサイドストーリー」「聖者の行進」の3曲を披露した。5月に定期演奏会があった。チケットも買っていたのだけれど,結局行けなかった。そのことがあらためて残念に思われた。
つまり,聴くに耐える演奏,あるいは見るに耐える演奏を披露してくれた。かなりのできばえだった。
「ウェストサイドストーリー」はダンスも付いた。ミュージカル仕立てというわけだ。さすがにダンスは素人の域を出ていなかったけれども,意気込みは伝わってくる。惜しむらくは,男女比のアンバランスが極端だったこと。男役と女役で5人ずつ登場したのだけれど,男子生徒は一人しかいなかった。悪役警官も女子生徒で,これはちょっと厳しい。部員は81名を数えるが(在校生の1割は吹奏楽部の部員ってことだ),女子が71名だそうだ。
● 指導者は菊川祐一さんで,昨年12月の宇高・宇女高合同の第九でテノールのソリストを務めた人だ。熱心な指導者がいると,若い高校生はグングン伸びていくのだろうが,普通科の県立の高校でもここまで行けるのか。たぶん,吹奏楽をやりたいから宇北に入学したっていう生徒もいるんだろうな。
平日は毎日3時間,休日は終日,練習しているそうだ。高校の部活だとこれくらいはあたりまえなのかもしれないが,演奏が好きで,負けず嫌いじゃないと,なかなか続かないだろう。となると,女子生徒が多いのもむべなるかなってことですかね。
● 次は「より子」さん。宇都宮で生まれたそうだが,宇都宮には1年しかいなかった。2歳から6歳まで小児ガンを患った経験がある。卵巣腫瘍だったらしい。22歳で再び卵巣に腫瘍が見つかったが,これは良性だったという。子供の頃はディズニーの歌を聴きながら育ったそうだ。
シンガソングライターで,ピアノの弾き語りが彼女のスタイル。声や曲はともかく,問題は詩。シンガソングライターに共通の難点。ZARDの坂井泉水なんかもそうだったのだけど,詩が良くないと繰り返して聴く気にはならないものだ。
たんに気持ちを浮かんだ言葉に置き換えるんじゃなくて,そこからどこまで磨くかってのが問題。この辺が課題なんでしょうね。
さだまさしや尾崎豊のような例外はいるんだけれどもね。って,おまえに言う資格があるのかってことだよね。
● でも,彼女が上に書いたような自分の生い立ちを自分の言葉で語るところは,説得力がありましたよ。
母親がどんな気持ちだったかと今にして思うとか,今日できることは全部今日のうちにやってしまいたい,できれば明日のことも今日やっておきたいと思っていた,生き急いできた,けれども22歳で二度目の腫瘍が見つかったときに,自分が多くの人に支えられていたことに気づいて気持ちが楽になったとか,病気は時に悪さもするけれど,自分の一部で愛しい存在だ,いろんなことを私に教えてくれた,病気を自分の敵だと思ったことはない,とか。
● 15分の休憩の後,第2部。この時点で8時になっていた。第2部は早見優とタイムファイブの歌。
早見優は言うまでもない売れ子歌手・タレントだった人。今でも芸能界のフロントに生き残っているのはたいしたものだ。しかも,結婚して二児の母になっている。帰国子女のバイリンガル。芸能界には珍しい普通の家庭の出っていう印象。
テレビで見る彼女の歌は音程が不安定だったり,声量が足りなかったり,あまり上手とはいえないなと思わせるものだが,舞台の彼女はプロだったんだと思わせる歌いぶりだった。
ぼくは左袖に近いところに座っていたのだが,彼女がこちらに近づいてくるとドキドキした。芸能人オーラが出ていて。先日,東大で矢沢永吉を見たときにも感じたことだけれど,多くのファンが芸能歌手のライブで恍惚となっている理由がわかったように思った。
ありがたいことに,ちょっと出て消えるのではなく,衣装を替えてずっとステージにいてくれた。往年のヒット曲もメドレーで歌ってくれた。ぼくのアイドルは一にも二にも山口百恵で,早見優が売れていたときは,ぼくの青春時代は終わっていたのだけれども。
● タイムファイブは5人組のジャズボーカル。今のメンバーで42年も活動しているという。CMソングでいくつもヒット曲を持っている。それらを披露してくれた。
● 彼らのステージ上にはMacBookProがあった。東大の五月祭でも野外ステージの隣に設えられた本部テントにMacBookProが置かれていたのを思いだした。こういうところではリンゴ印のパソコンが活躍してますね。
● クラシック以外の要素が入った音楽のステージはこれが3度目になる。
クラシックでは基本的にステージは無言だ。曲の紹介はプログラムに語らせる。指揮者も奏者も何も語らない。しかし,クラシック以外のステージは賑やかだ。客席に手拍子を要求したり,レッツ・ジョイン・アスを何度も仕掛けてくる。この仕掛けには乗るのが吉ですね。
が,ひとりで行っていると乗りにくい。クラシックのコンサートはひとりで行くに限ると思っているけれど,こういうのは隣に誰かいてくれた方が乗りやすいなぁと思った。聴きにいくスタイルはコンサートのジャンルによって変えるべし。
● 10日は総合文化センターで「チャリティーコンサート2010in栃木」というのがあった。県とAflacの共催(実質負担はAflacだろう)。コンサートを無料で開催して,会場内で募金を募る。あるいは出演者のサイン入りCDを販売し,その一部を小児ガン患者のために寄付する。
併せて,がん検診についての啓発を図る。趣旨はそいういうこと。事前に知らされていたので,ぼくも募金に応じた。千円以上募金すると,アフラックダックがもらえる。テレビCMでアフラックと発するアヒルが登場するが,その人形で,頭を叩いてやると同じようにアフラックと言う。
● 出演者はまず宇都宮北高校の吹奏楽部。「星条旗よ永遠なれ」「ウェストサイドストーリー」「聖者の行進」の3曲を披露した。5月に定期演奏会があった。チケットも買っていたのだけれど,結局行けなかった。そのことがあらためて残念に思われた。
つまり,聴くに耐える演奏,あるいは見るに耐える演奏を披露してくれた。かなりのできばえだった。
「ウェストサイドストーリー」はダンスも付いた。ミュージカル仕立てというわけだ。さすがにダンスは素人の域を出ていなかったけれども,意気込みは伝わってくる。惜しむらくは,男女比のアンバランスが極端だったこと。男役と女役で5人ずつ登場したのだけれど,男子生徒は一人しかいなかった。悪役警官も女子生徒で,これはちょっと厳しい。部員は81名を数えるが(在校生の1割は吹奏楽部の部員ってことだ),女子が71名だそうだ。
● 指導者は菊川祐一さんで,昨年12月の宇高・宇女高合同の第九でテノールのソリストを務めた人だ。熱心な指導者がいると,若い高校生はグングン伸びていくのだろうが,普通科の県立の高校でもここまで行けるのか。たぶん,吹奏楽をやりたいから宇北に入学したっていう生徒もいるんだろうな。
平日は毎日3時間,休日は終日,練習しているそうだ。高校の部活だとこれくらいはあたりまえなのかもしれないが,演奏が好きで,負けず嫌いじゃないと,なかなか続かないだろう。となると,女子生徒が多いのもむべなるかなってことですかね。
● 次は「より子」さん。宇都宮で生まれたそうだが,宇都宮には1年しかいなかった。2歳から6歳まで小児ガンを患った経験がある。卵巣腫瘍だったらしい。22歳で再び卵巣に腫瘍が見つかったが,これは良性だったという。子供の頃はディズニーの歌を聴きながら育ったそうだ。
シンガソングライターで,ピアノの弾き語りが彼女のスタイル。声や曲はともかく,問題は詩。シンガソングライターに共通の難点。ZARDの坂井泉水なんかもそうだったのだけど,詩が良くないと繰り返して聴く気にはならないものだ。
たんに気持ちを浮かんだ言葉に置き換えるんじゃなくて,そこからどこまで磨くかってのが問題。この辺が課題なんでしょうね。
さだまさしや尾崎豊のような例外はいるんだけれどもね。って,おまえに言う資格があるのかってことだよね。
● でも,彼女が上に書いたような自分の生い立ちを自分の言葉で語るところは,説得力がありましたよ。
母親がどんな気持ちだったかと今にして思うとか,今日できることは全部今日のうちにやってしまいたい,できれば明日のことも今日やっておきたいと思っていた,生き急いできた,けれども22歳で二度目の腫瘍が見つかったときに,自分が多くの人に支えられていたことに気づいて気持ちが楽になったとか,病気は時に悪さもするけれど,自分の一部で愛しい存在だ,いろんなことを私に教えてくれた,病気を自分の敵だと思ったことはない,とか。
● 15分の休憩の後,第2部。この時点で8時になっていた。第2部は早見優とタイムファイブの歌。
早見優は言うまでもない売れ子歌手・タレントだった人。今でも芸能界のフロントに生き残っているのはたいしたものだ。しかも,結婚して二児の母になっている。帰国子女のバイリンガル。芸能界には珍しい普通の家庭の出っていう印象。
テレビで見る彼女の歌は音程が不安定だったり,声量が足りなかったり,あまり上手とはいえないなと思わせるものだが,舞台の彼女はプロだったんだと思わせる歌いぶりだった。
ぼくは左袖に近いところに座っていたのだが,彼女がこちらに近づいてくるとドキドキした。芸能人オーラが出ていて。先日,東大で矢沢永吉を見たときにも感じたことだけれど,多くのファンが芸能歌手のライブで恍惚となっている理由がわかったように思った。
ありがたいことに,ちょっと出て消えるのではなく,衣装を替えてずっとステージにいてくれた。往年のヒット曲もメドレーで歌ってくれた。ぼくのアイドルは一にも二にも山口百恵で,早見優が売れていたときは,ぼくの青春時代は終わっていたのだけれども。
● タイムファイブは5人組のジャズボーカル。今のメンバーで42年も活動しているという。CMソングでいくつもヒット曲を持っている。それらを披露してくれた。
● 彼らのステージ上にはMacBookProがあった。東大の五月祭でも野外ステージの隣に設えられた本部テントにMacBookProが置かれていたのを思いだした。こういうところではリンゴ印のパソコンが活躍してますね。
● クラシック以外の要素が入った音楽のステージはこれが3度目になる。
クラシックでは基本的にステージは無言だ。曲の紹介はプログラムに語らせる。指揮者も奏者も何も語らない。しかし,クラシック以外のステージは賑やかだ。客席に手拍子を要求したり,レッツ・ジョイン・アスを何度も仕掛けてくる。この仕掛けには乗るのが吉ですね。
が,ひとりで行っていると乗りにくい。クラシックのコンサートはひとりで行くに限ると思っているけれど,こういうのは隣に誰かいてくれた方が乗りやすいなぁと思った。聴きにいくスタイルはコンサートのジャンルによって変えるべし。
2010.06.06 栃木県交響楽団第89回定期演奏会
宇都宮市文化会館大ホール
● 6月6日(日)は2時から栃響の定期演奏会。場所は宇都宮市文化会館大ホール。
曲目はオールブラームス。「大学祝典序曲」「ピアノ協奏曲第2番」「交響曲第1番」。指揮は末廣誠さんで,ソリスト(ピアノ)は鈴木慎崇さん。
● 「悲劇的序曲」は去年二度聴いているんだけど,「大学祝典序曲」は今回が初めて。「ピアノ協奏曲第2番」も初めて。たぶんCDを聴いたこともないと思う。「交響曲第1番」は三度目になる。
● ここのところマメに聴いているから,ひょっとしてコンサート馴れしちゃってて,こちらの態度が緊張感を欠いていたかもしれない。
コンサートは耳だけではなくて,目でも味わうものだ。自分の目の前で音が紡がれる。紡ぎ手の表情や動作がそのままそっくり自分の網膜に入ってくる。それがライブの醍醐味だろう。
わずか映画1本分の料金でそれを味わうことができる。ありがたいなという思いに変わりはない。
● ところで,ぼくは毎回ひとりで出かけている。隣に知り合いがいるという状況は好ましいものではないと思っているので,ひとりで行くのは苦にならないどころか,ひとりに勝るものはないと思っている。
で,自分と同じようにひとりで来ている人には親近感を抱いてしまう。それが若くてキレイめな女性だったりすると尚更ね(昔のようにきれいな女性を見てもときめかなくなっているのは自覚してて,そんなことではいかんと思っている)。
● 6月6日(日)は2時から栃響の定期演奏会。場所は宇都宮市文化会館大ホール。
曲目はオールブラームス。「大学祝典序曲」「ピアノ協奏曲第2番」「交響曲第1番」。指揮は末廣誠さんで,ソリスト(ピアノ)は鈴木慎崇さん。
● 「悲劇的序曲」は去年二度聴いているんだけど,「大学祝典序曲」は今回が初めて。「ピアノ協奏曲第2番」も初めて。たぶんCDを聴いたこともないと思う。「交響曲第1番」は三度目になる。
● ここのところマメに聴いているから,ひょっとしてコンサート馴れしちゃってて,こちらの態度が緊張感を欠いていたかもしれない。
コンサートは耳だけではなくて,目でも味わうものだ。自分の目の前で音が紡がれる。紡ぎ手の表情や動作がそのままそっくり自分の網膜に入ってくる。それがライブの醍醐味だろう。
わずか映画1本分の料金でそれを味わうことができる。ありがたいなという思いに変わりはない。
● ところで,ぼくは毎回ひとりで出かけている。隣に知り合いがいるという状況は好ましいものではないと思っているので,ひとりで行くのは苦にならないどころか,ひとりに勝るものはないと思っている。
で,自分と同じようにひとりで来ている人には親近感を抱いてしまう。それが若くてキレイめな女性だったりすると尚更ね(昔のようにきれいな女性を見てもときめかなくなっているのは自覚してて,そんなことではいかんと思っている)。
2010.06.01 FMシンフォニーコンサート(東京フィルハーモニー交響楽団)
宇都宮市文化会館大ホール
● 次は6月1日。宇都宮市文化会館大ホールで「FMシンフォニーコンサート」があった。NHK-FMの公開録音ですね。開演は6時半。
● 久しぶりに東武電車で乗ってみる気になった。ひと駅乗って,南宇都宮で下車。小さな旅をしているという思いがあった。お金をかけなてくも,遠くへ行かなくても,旅ってできる。
● 5時半に文化会館に到着。正面入口の前から長い行列ができていた。ぼくも最後尾に並んだ。今回の演奏会は無料。整理券が必要だが,それは事前にNHKに申し込んで応募者多数の場合は抽選ということだった。ぼくも申し込んでめでたく整理券が返送されてきたというわけだ。往復ハガキをここまで有効に使えたことはなかったかもしれない。
● 演奏するのは東京フィルハーモニー交響楽団。プロのオーケストラの演奏をタダで聴けるわけだから,この行列にも納得がいく。
大ホールの座席はほぼ満席。ところどころに空きはあるが(ぼくの右隣も空いていた),ギッシリと人で埋まった。
とはいっても,クラシック音楽のコンサートなんかタダでも願い下げっていう人が多いだろうから,やはり貴重な人たちといっていいのかも。以前のぼくも,縁なき衆生のひとりだったわけだけど。
● 曲目はオールベートーヴェン。エグモント序曲にピアノ協奏曲第3番,交響曲第6番「田園」。指揮者は曽我大介氏の予定が急病のため渡邊一正氏に変更。ソリスト(ピアノ)は若林顕氏。輝かしい受賞歴を持ち,現在は桐朋の教授も務めている。
この楽団はNHK交響楽団と違って,女性奏者が多かった。コンサートマスターは外国人男性。
さすがはプロの安定感。細かいところまで神経が行き届いている。届かそうとしないでも届く感じっていうか。こういうのを達者というのだろう。何せ,これがNHK-FMで放送されるのだしね。
● 個性的な弾き方をする奏者もいた。コントラバスの男性はあの大きな楽器をスイングさせながら,体を大きく振りながら演奏する。プロレスをしているのか,おまえは,と突っこみたくなった。こういうのを見て真似するアマチュアが出るだろうな。
クラリネットの女性奏者の髪型が,中学生のときに憧れていた女子のそれと同じで,懐かしかった。どうでもいいでしょうけど,ぼく,ショートヘアが好きなんですよね。彼女をじっと見てましたね。オペラグラスを持ってくればよかったと思った。
● 次々に紡ぎだされる音楽を聴きながら,とても贅沢な時間を過ごしているなと自覚した。これが東京なら帰りの電車を気にしなければならないところだ。宇都宮だからそんな無粋なことをしなくてすむ。
「田園」を聴いているとヨーロッパの田舎の風景が浮かんでくる。しばし,その風景の中で遊んでみる。こういう時間が持てる自分の境遇を自分で言祝ぎたくなる。何者かに感謝したくなる。
ぼくだけのことではない。客席も大いに盛りあがった。盛大な拍手で奏者を乗せた。客席のマナーは拍手を惜しまないことだとあらためて教えてもらった。
● どの曲目でもそうだけれど,弦は最初から最後まで出ずっぱりだ。一方,管は控えている時間が長い。出ずっぱりだったら,血圧が上がって死んでしまう(んなこたぁないか)。
● 東京フィルハーモニー交響楽団,プロだけど気さくな感じですな。団員が160人いるので,演奏メンバーはその都度違うだろう。いつも今回のメンバーで演奏するわけではないのだろう。にしても,この楽団の演奏を聴く次の機会があれば。
今回に関していえば,NHKさん,ありがとう,ということです。これだけの演奏をタダで聴ける機会を与えてもらったわけだから。
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