約2時間のコンサートが終了した直後の満足感は,他のものでは代替できません。この世に音楽というものが存在すること。演奏の才に恵まれた人たちが,時間と費用を惜しまずに技を磨いていること。その鍛錬の成果をぼくたちの前で惜しみなく披露してくれること。そうしたことが重なって,ぼくの2時間が存在します。ありがたい世の中に生きていると痛感します。 主には,ぼくの地元である栃木県で開催される,クラシック音楽コンサートの記録になります。
2010年8月31日火曜日
2010.08.15 Seven☆Star Orchestra第2回演奏会
ティアラこうとう大ホール
● 15日(日)「ティアラこうとう」でSeven Star Orchestraの第2回演奏会があったので,聴きに行った。
昨年もちょうどこの日に,第1回目の演奏会を聴いた。偶然だったんですけどね。それでこのアマチュアオーケストラが好きになってしまった。そのときはベートーヴェンの第7番を演奏したんだけれども,その演奏に魅せられたわけです。
● もうひとつ,女子団員のステージ衣装のカラフルさ。それまではステージ衣装とは黒いものだと思っていた。そこへこのカラフルさは斬新だった。華やかだったしきれいだった。
ステージに出る以上,演奏のみで勝負するなんて言っていてはいけない。ビジュアルを軽んずべからず。
● 今回はドヴォルザークの第7番とスメタナの交響詩「わが祖国」より「モルダウ」「シャールカ」「ボヘミアの森と草原から」の3曲。
コンミスの高田さん,ダイナミックにヴァイオリンを弾く。
● 女子団員のカラフルは今回も健在で,これだけでもわざわざ栃木から足を運んだ甲斐があったというものだ。
指揮者の河上隆介さんのパフォーマンスが団員と客席の笑いを誘っていた。団員をリラックスさせようとしてやっているわけではなく,天然なのだと思える。前回に比して,存在感を増していたのは慶賀の至りだ。
● 外は猛暑。なのにホールの中は冷房が効いてて涼しいこと。この環境でオーケストラの生演奏を聴けるんだからねぇ。贅沢だぁ。ぼくは王侯貴族かぁ。
これをひとりで独占できれば,まこと王侯貴族なのだろうが,独占しちゃったんじゃつまらないでしょうね。
● チケットはなし。無料だ。これだけの演奏会を無料で開催するとは太っ腹である。座席の8割は埋まっていた。
ホールに涼みにきてる人もいたけどね。隣席のオバチャンは,最初から最後まで気持ちよさそうに寝てました。
● 作曲家の「7」に注目するというわかったようなわからないような趣旨で結成された楽団だから,7ある限りそれらを選曲し続けるのだろう。マーラーやブルックナーもいるから,当分ネタには困らないだろうけれど(マーラーの7番をどうやって舞台にかけるのかってのは,別の問題としてね)。
● ちなみに,次回はチャイコフスキーなのだが,チャイコフスキーに第7番なんてあったけ。6番の「悲愴」で終わっていたのじゃなかったっけ。
プログラムの予告編にはマンフレッド交響曲と記されているんだけど,これは7番と称されているものとは違うよね。
「第5交響曲を完成させた後、第1楽章の228小節まで作ったところで中断した作品」で「書きかけの第1楽章だけでピアノ協奏曲第3番として完成させた」ものがあるらしい。あとで,ボガティレフが復元したものらしいんだけど。でも,この「交響曲変ホ長調」はマンフレッド交響曲とは別物だよなぁ。
2010.08.29 東京交響楽団特別演奏会
那須野が原ハーモニーホール大ホール
● 29日(日)は夕方6時から那須野が原ハーモニーホールで東京交響楽団の演奏会があった。電車で出かけて聴いてきました。曲目は
芥川也寸志 交響管弦楽のための音楽
ラフマニノフ ピアノ協奏曲 第3番
ブラームス 交響曲 第4番
指揮は同楽団正指揮者の飯森範親,ピアノは小山実稚恵。チケットは買っておいた。B席で3千円。7日のプレイベントを含めてこの料金だから格安といっていいと思う。
● 大ホールがほぼ満席の状態だった。こんな田舎の不便なところにあるホールを満員にするのは,飯森さん,小山さんのネームバリューだろうか。はるかな昔,宮城県の片田舎のバッハホールが注目を集めたことがあったが,わが那須野が原ハーモニーホールもホールじたいの良さが,知る人ぞ知るの域に達したのかもしれない。
ほとんどの人は車で来ていた(西那須野駅からホールまで歩いてくるのはぼくひとりだと断言できる。演奏会終了後,駅方面に歩いている人はぼく以外にいなかったから)。県内各地あるいは県外から車を走らせている人もいると思うが,それにしたって車で来られる距離にはおのずと限度がある。近場の人が多いはずで,田舎の人たちもきちんとした音楽を聴きたいと思っているんですよ。ですよね。
● 街興しのためにコンサートホールがあるわけではないとしても,このホールがなにがしか地元を活性化していることは間違いない。館長に丹羽さんという専門家を得ているのも大きいだろう。
● 演奏に先だって,飯森氏が曲の解説をする。サービス精神の発露なのだろうが,これはなくてもいいかも。前知識なしでとにかく曲を聴きたいとぼくは思うし,同じように思う人は多いのではあるまいか。解説はプログラムに語らせて,指揮者や演奏者は寡黙でいいとぼくは思う。
とはいえ,国内のプロ楽団はどこも経営が厳しい。生き残りをかけていろんな試みを行っていると聞く。飯森氏は自身が音楽監督を務める山形交響楽団で「音楽家はサービス業」を標榜して,次々に新機軸を打ちだしてきたらしいのだが,この「コンサートトーク」もそのひとつ。
● 東京交響楽団,女性奏者が過半を占める。ヴァイオリンとヴィオラはほとんどが女性だ。金管に中年男性がいたけれど,平均年齢もだいぶ若そうだ。茶髪の男性奏者もチラホラいる。
けっこう,人の出入りが激しいのだろう。ぼくらから見ると,プロ楽団の団員ってのは,好きで好きで仕方がないことを仕事にできているのだから,たとえ給料が安くても満足度は高いのじゃないかと思いがちだ。
が,内実はそんな単純なものではないのかもしれない。何か,つまらなそうに演奏している人もいたし。
でも,さすがはプロで,こういうと不遜な言い方になるけれど,管は笛もラッパも安心して聴いていられた。
● ブラームスの第4番は3回目になるが,他のふたつは初めて聴く。「交響管弦楽のための音楽」は芥川也寸志の若いときの出世作とのこと。聴きやすいというか腑に落ちやすい曲だと思った。自宅でCDを聞きなおす機会は当然ある。
● 飯森さんによれば,ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番は弾きこなすのがとても難しい曲なのだが,小山さんが弾くと難しそうに思えない,と。難しい曲を軽々と弾いてみせるのがプロということ。
ぼくは高いところの席だったので,彼女の指の動きがよく見えた。凄いものだと感じ入るしかない。長時間練習すると指から血が噴きだすというけれど,彼女の動きを見ていると,なるほどそういうこともあるのだろうなと思わされる。
● 日本人のピアニストで誰かひとりだけ挙げてみろと言われると,多くの人が内田光子さんの名を挙げるのではないかと思うが,その次はとなると,誰だろう。
内田さんにしろ小山さんにしろ,圧倒的な技術で自分を認めさせてきた実力派だ。で,実力派の演奏ってのは美しいものなのだ。
● 29日(日)は夕方6時から那須野が原ハーモニーホールで東京交響楽団の演奏会があった。電車で出かけて聴いてきました。曲目は
芥川也寸志 交響管弦楽のための音楽
ラフマニノフ ピアノ協奏曲 第3番
ブラームス 交響曲 第4番
指揮は同楽団正指揮者の飯森範親,ピアノは小山実稚恵。チケットは買っておいた。B席で3千円。7日のプレイベントを含めてこの料金だから格安といっていいと思う。
● 大ホールがほぼ満席の状態だった。こんな田舎の不便なところにあるホールを満員にするのは,飯森さん,小山さんのネームバリューだろうか。はるかな昔,宮城県の片田舎のバッハホールが注目を集めたことがあったが,わが那須野が原ハーモニーホールもホールじたいの良さが,知る人ぞ知るの域に達したのかもしれない。
ほとんどの人は車で来ていた(西那須野駅からホールまで歩いてくるのはぼくひとりだと断言できる。演奏会終了後,駅方面に歩いている人はぼく以外にいなかったから)。県内各地あるいは県外から車を走らせている人もいると思うが,それにしたって車で来られる距離にはおのずと限度がある。近場の人が多いはずで,田舎の人たちもきちんとした音楽を聴きたいと思っているんですよ。ですよね。
● 街興しのためにコンサートホールがあるわけではないとしても,このホールがなにがしか地元を活性化していることは間違いない。館長に丹羽さんという専門家を得ているのも大きいだろう。
● 演奏に先だって,飯森氏が曲の解説をする。サービス精神の発露なのだろうが,これはなくてもいいかも。前知識なしでとにかく曲を聴きたいとぼくは思うし,同じように思う人は多いのではあるまいか。解説はプログラムに語らせて,指揮者や演奏者は寡黙でいいとぼくは思う。
とはいえ,国内のプロ楽団はどこも経営が厳しい。生き残りをかけていろんな試みを行っていると聞く。飯森氏は自身が音楽監督を務める山形交響楽団で「音楽家はサービス業」を標榜して,次々に新機軸を打ちだしてきたらしいのだが,この「コンサートトーク」もそのひとつ。
● 東京交響楽団,女性奏者が過半を占める。ヴァイオリンとヴィオラはほとんどが女性だ。金管に中年男性がいたけれど,平均年齢もだいぶ若そうだ。茶髪の男性奏者もチラホラいる。
けっこう,人の出入りが激しいのだろう。ぼくらから見ると,プロ楽団の団員ってのは,好きで好きで仕方がないことを仕事にできているのだから,たとえ給料が安くても満足度は高いのじゃないかと思いがちだ。
が,内実はそんな単純なものではないのかもしれない。何か,つまらなそうに演奏している人もいたし。
でも,さすがはプロで,こういうと不遜な言い方になるけれど,管は笛もラッパも安心して聴いていられた。
● ブラームスの第4番は3回目になるが,他のふたつは初めて聴く。「交響管弦楽のための音楽」は芥川也寸志の若いときの出世作とのこと。聴きやすいというか腑に落ちやすい曲だと思った。自宅でCDを聞きなおす機会は当然ある。
● 飯森さんによれば,ラフマニノフのピアノ協奏曲第3番は弾きこなすのがとても難しい曲なのだが,小山さんが弾くと難しそうに思えない,と。難しい曲を軽々と弾いてみせるのがプロということ。
ぼくは高いところの席だったので,彼女の指の動きがよく見えた。凄いものだと感じ入るしかない。長時間練習すると指から血が噴きだすというけれど,彼女の動きを見ていると,なるほどそういうこともあるのだろうなと思わされる。
● 日本人のピアニストで誰かひとりだけ挙げてみろと言われると,多くの人が内田光子さんの名を挙げるのではないかと思うが,その次はとなると,誰だろう。
内田さんにしろ小山さんにしろ,圧倒的な技術で自分を認めさせてきた実力派だ。で,実力派の演奏ってのは美しいものなのだ。
2010.08.25 間奏15:残暑見舞い
● 音楽のコンサート熱は冷めていない。今年は大小とりまぜて,すでに32回のコンサートに出かけている。メインはオーケストラだ。去年1年間で自分が聴きたいのはやはりオーケストラなのだとわかった。
見事に溶けあった管弦楽の音の連続は,他にたとえようがないほどに美しい。ぼくは絵画や陶芸や彫刻や書の美というものを未だに解くことができないでいるけれど,音楽の美しさというのは,そんなぼくの中にも向こうから入りこんできてくれる。
その演奏会から自分が何を受け取れるかあるいは受け取れないか,それを事前に予測することはできない。だからこそワクワクもするのだし,出かける甲斐もあるのだ。
● 東京に出かける回数も増えた。コンサートもだけど,5月には東大の五月祭に行ってきた。9月には3~5日に芸大の藝祭がある。昨年は行けなかったけど,今年は3日間とも日参するつもりでいる。オーケストラや室内楽はもちろん,邦楽と日本舞踊が楽しみ。若い女性の舞踊,しかも高水準の,を見られるのは,この藝祭くらいかもしれないからねぇ。
● というような状況です。けっこう元気にやってますよ。
まだ熱中症で亡くなる人がいる。水分をこまめに補給しろとか,外に出るときは帽子をかぶれとか,色々言われるけれども,ぼくは,体力維持のためと称して食べたくもないのに無理に食べるのが一番身体に良くないような気がしている。暑いときは暑いなりの過ごし方がある。つまらない無理をしないことだと思う。
今年の夏はたしかに異常だけれど,この異常がこれからは普通になるのかもしれないという気もするね。ヒートアイランド現象と言われるけれど,日本列島は北海道を除いて亜熱帯になったと思えば,今起きている事象のかなりの部分が腑に落ちるのではないかと思っている。
2010.08.07 東京交響楽団特別演奏会プレ・イベント
那須野が原ハーモニーホール大ホール
● 7日(土)は那須野が原ハーモニーホールに出かけた。午後6時から小さいコンサートがあった(場所は大ホール)。29日に同ホールで東京交響楽団の演奏会があるのだけれども,その演奏会のプレ・イベントが行われたのだ。
出演者は東京交響楽団の団員たち。田尻順(第1ヴァイオリン),福留史紘(第2ヴァイオリン),西村眞紀(ヴィオラ),西谷牧人(チェロ),近藤千花子(クラリネット)の5人。ほかに,団員ではないけれど,ピアノの渚智佳。
● 曲目はブラームスの「クラリネット五重奏曲 ロ短調」とシューマンの「ピアノ五重奏曲 変ホ長調」の2曲。合間にホール館長の解説が入る。
ある人がブログに「休憩前に館長による楽曲の解説が…それも,長い…長い…。内容も初心者には分からないし,クラシックファンなら誰でも知っている内容…。演奏は良かっただけに、少し残念」と書いていた。
ウゥン,このへんの塩梅は難しいかもね。ぼくも,この解説は長すぎたのじゃないかという意見。まず,聴きたい。理屈で聴くわけじゃないから。解説はあとでいい。
● けれども,おまけでこれだけの演奏を聴けるとは幸せだ。何せ,プロの演奏家たちだから,安心して聴いていられる。
が,今回は(今回も?)雑念との戦いが大変だった。というのも,休憩時間に昔の上司と鉢合わせをしてしまって。もう80歳になるのだろうが,矍鑠としたもんだ。ぼくはこいつが大嫌いで,こいつもぼくを大嫌いで,だからこの日もツンとしたままですれ違ったのだ。大人げないですけどね。
ということで,後半はこいつが脳内を占拠したままで,追いだすのに手間取ったという次第だった。
● 7日(土)は那須野が原ハーモニーホールに出かけた。午後6時から小さいコンサートがあった(場所は大ホール)。29日に同ホールで東京交響楽団の演奏会があるのだけれども,その演奏会のプレ・イベントが行われたのだ。
出演者は東京交響楽団の団員たち。田尻順(第1ヴァイオリン),福留史紘(第2ヴァイオリン),西村眞紀(ヴィオラ),西谷牧人(チェロ),近藤千花子(クラリネット)の5人。ほかに,団員ではないけれど,ピアノの渚智佳。
● 曲目はブラームスの「クラリネット五重奏曲 ロ短調」とシューマンの「ピアノ五重奏曲 変ホ長調」の2曲。合間にホール館長の解説が入る。
ある人がブログに「休憩前に館長による楽曲の解説が…それも,長い…長い…。内容も初心者には分からないし,クラシックファンなら誰でも知っている内容…。演奏は良かっただけに、少し残念」と書いていた。
ウゥン,このへんの塩梅は難しいかもね。ぼくも,この解説は長すぎたのじゃないかという意見。まず,聴きたい。理屈で聴くわけじゃないから。解説はあとでいい。
● けれども,おまけでこれだけの演奏を聴けるとは幸せだ。何せ,プロの演奏家たちだから,安心して聴いていられる。
が,今回は(今回も?)雑念との戦いが大変だった。というのも,休憩時間に昔の上司と鉢合わせをしてしまって。もう80歳になるのだろうが,矍鑠としたもんだ。ぼくはこいつが大嫌いで,こいつもぼくを大嫌いで,だからこの日もツンとしたままですれ違ったのだ。大人げないですけどね。
ということで,後半はこいつが脳内を占拠したままで,追いだすのに手間取ったという次第だった。
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