2018年3月27日火曜日

2018.03.24 石橋高等学校吹奏楽部 第13回定期演奏会

宇都宮市文化会館 大ホール

● この高校の演奏会を聴くのは今回が初めて。13回を数えるのに初めてとは,これいかに。
 今までは小山市立文化センターでやっていたらしい。今回,初の宇都宮開催になったようだ。

● 高校の吹奏楽や管弦楽の演奏会情報は,意外にネットに出てこない。部員たちがTwitterでつぶやいてはいるんだと思う。が,彼らのツイートは部員間でグルグル回っているんじゃないかと思うくらい,こちらに引っかかってこない。
 今回はたまたま18日に矢板市文化会館で聴いた「百花繚乱春爛漫コンサート」で受け取ったチラシの中に,この演奏会のチラシも入っていた。それで,では行ってみようか,と。
 開演は午後2時。入場無料。

● プログラムは次のとおり。3部構成。
 ビルグッド 行進曲「勇者の末裔」
 郷間幹男 コンサート・マーチ「虹色の未来へ」(2018年全日本吹奏楽コンクール課題曲Ⅳ)
 鈴木英史 鳳凰-仁愛鳥譜
 ラヴェル バレエ音楽「ダフニスとクロエ」第2組曲より“夜明け” “全員の踊り”

 ジェルヴェーズ アテニャン 金管八重奏「フランス・ルネサンス舞曲集」
 楽器紹介
 アンジェラ・アキ 手紙-拝啓十五の君へ
 真島俊夫 クラリネット八重奏「ラ・セーヌ」より“ポンヌフ” “アレクサンドル三世橋”
 プリマ シング シング シング
 メンケン リトルマーメイド メドレー
 ダンシングヒーロー石高ver.

 J.シュトラウスⅡ エジプト行進曲
 チャイコフスキー 交響曲第4番(第4楽章のみ)
 パディーラ エル レリカリオ
 和泉宏隆 オーメンズ・オブ・ラブ

● どういう基準で3つに分けたのかは判然としない。判然としないことに何の問題もないのだが。
 強いて言葉をあてはめれば,1部がコンクール・ステージ,2部はドリルを含む客席サービス・ステージ,3部はクラシック・ステージ,とでもなるか。
 が,この枠には収まらない。収まる必要もない。というより,収まらないところに面白みがある。

● 最初の「勇者の末裔」を聴いて,驚いた。というか,襟を正す気分になった。
 県内高校の吹奏楽といえば,まず作新があり,宇都宮北がある。あと,“それ以外”の全部で3つがあると思っていた。無知というのは,とんでもなく素っ頓狂な認識に導くことがある。困ったものだ。
 つまり,石橋高校の吹奏楽の水準はかなり高い。第一の特徴は粒が揃っていること。同一パート内の奏者の水準が揃っている。パート間の水準も揃っている。したがって,守備に穴がない。三遊間も一二塁間も守りは堅い。外野に球が飛んでも心配ない。

● 2部では「楽器紹介」が面白かった。単純に楽器を紹介していくのかと思っていたんだけども,さすがにそんなことではなくて,エンタテインメント仕立てになっていたのだった。それぞれのパートがいろんな曲を繰り出してくる。
 「手紙」は部員による合唱がメインというかね。いい歌だからね,若い彼らが歌うとそれだけで説得力を持ってくる。にしても,だ,吹奏楽部員はいろんなことをしなければいけないんだな。

● 「ダンシングヒーロー」はね,やりたかったんでしょうね,部員たちがね。大阪府立登美丘高校ダンス部の「バブリーダンス」は驚愕だったもんね。
 こういうものもネットで見られる時代に生きていることをありがたいと思いましたよ。ほんとに驚いた。あのダンサーたちの切れ味の凄さといったら。ハイヒールで踊っている映像もあったような。
 石高ver.はさすがに登美丘高校と比べてはいけないものだけど,これをやれば必ず客席は盛りあがる。ただし,そろそろ賞味期限は切れつつある。

● 最も印象に残ったのは,チャイコフスキーの交響曲第4番(第4楽章)だ。こちら側の曲に対する好みが大きく作用した結果だとは思うんだけども,この楽団の実力のほどを細部にわたるまで引きだす曲のように思えた。
 見事な演奏だった。チャイコフスキーの運命の動機(苦悩を通して歓喜に至れ)を堪能できた。注文をつけたくなるところは,ひとつもなかった。
 チャイコフスキーの交響曲は,やはり後期の3つが面白い。聴いていて幸せを感じる度合いが高い。

● プログラム冊子の「石高吹部の仲間たち」によると,ぼくの地元にある阿久津中からも何人か入っている。それぞれ,活躍中だ(と思う)。
 高根沢から石橋まで通うっていうのは,昔はあまりなかった気がする。県北に住んでいるぼくらにとっては,宇都宮の南側は栃木県ではない的なところがあった。
 南側に住んでいる人にとっては,宇都宮より北はパラパラと人が住んでいる開拓部落に映っていたかもしれない。ま,当たらずとも遠からずではあるのだが。

● でも考えてみれば(考えてみなくても),宇都宮で降りずにあと2駅電車に乗れば,そこは石橋なのだ。
 しかも,石橋高校は石橋駅から徒歩圏内ではなかったか。宇都宮で降りてバスを乗り継ぐより,近いかもしれない。

● 演奏会には演奏以外のものはない方がいいと,ぼくは思っている。高校吹奏楽部の場合,ありがちなのが開演前の校長あいさつだ。
 とおり一遍のあいさつを聞かされても仕方がないし,演奏がすべてを語るのだから言葉による説明など要らないのだ。そういうものはプログラム冊子に載せておけば足りる。さほど立派でもない顔を見せられても,まったく嬉しくないしね。

● なので,校長あいさつなどというものは,それじたいが公共の福祉に反するものだと,ぼくは思っているんだけど,なかなかそうもいかない事情があるらしくて,わりとこれに出くわすんだよね。
 石橋高校の演奏会にはそれがなかった。おしなべて言うと,演奏水準の高いところはステージに演奏以外のものを載せない。この高校ほどの水準ならば,それがふさわしい。

● 昨年は東関東に進んだようだ。が,東関東で認知されるのはなかなか大変だろう。東関東で上位に行くには,表現力に磨きをかけなければならないということか。あるいは,個々のプレイヤーにさらに高い技量が求められるのだろうか。
 だとしても,この演奏のどこをどういじればいいのか,ぼくには皆目見当がつかない。

● が,部員たちにはわかっているだろう。平日は生徒だけで練習しているということだ。自主練が成立するのは何をやればいいか自分たちがわかっているからでもあるわけだが,東関東に進めるほどの技術の持ち主たちだからこそ,何をやればいいかがわかるのでもあるだろう。
 ある程度の高みに登らないと,その辺は見えて来ないものではないか。

● 東関東ではどうやら千葉県が圧倒的に強いらしいのだが(習志野とか柏とか),いったいどんな演奏をしているのか。一度は実演に接してみたいものだ。

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