2011年2月28日月曜日

2011.02.27 花王ファミリーコンサートin栃木

益子町民会館

● 益子町民会館で「花王ファミリーコンサートin栃木」というのがあった。クラリネットの赤坂達三さんとピアノの三舩優子さんのデュオで,クラシックやら映画音楽やらジャズを演奏する。
 こういう田舎のコンサートっていうのは,コンサート慣れしていない人が多い。その分,とりすましたところがないというか,批評家然とした人が少ない。初老の夫婦や50過ぎのおばさんたちのグループが,初めて遠足に出かける子供のような,素朴なワクワクドキドキを現している。

● 最初に花王の取締役執行役員の挨拶があった。ことしで5回目になるらしい。計画から準備,運営まで花王の社員が行っているんだそうだ。チケットは千円なんだけど,そのチケット収入の全額を益子町と市貝町(花王栃木工場の所在地です)の文化教育事業に寄付するというから,運営費はすべて花王が負担しているわけだ。

● 出演者の赤坂さんと三舩さんは,けっこう前からコンビを組んで演奏活動をやっているらしい。冒頭にひとつだけ文句をいうとすれば,チラシやプログラムに載っている写真がだいぶ昔のものだったこと。たいていそうなんだけどね。
 三舩さんなんか,写真ではほっそりしたイメージの美女なんだけど,まぁ,実物も美人でありました(中学生か高校生の娘がいるらしい)。

● 演奏の合間に彼らのトークがあって,これがけっこう楽しめた。トークに関しては素人だから,流れるようなってわけにはいかないんだけど,たとえば,三舩さんが赤坂さんのクラリネットを「遠くから聞こえてくるようなあるいは遠くに消えていくような」と評するのを聞くと,この表現を知っただけでも来た甲斐があったと思った。

● 赤坂さんはパリに長く住んでいた。三舩さんは小さい頃はアメリカにいた帰国子女で,留学先もアメリカだった。
 三舩さんの解説によれば,クラリネットはフランス生まれの楽器。普通はオーケストラのパートのひとつとして聴くくらいなのだけれども,フランスではわりとソロ演奏が成立しているらしい。知識がひとつ増えた。
 ガーシュウィンがユダヤ系ロシア人であることも知った。彼の「ラプソディ・イン・ブルー」がジャズの影響を受けていることはぼくにもわかるのだが,作曲したガーシュウィンはとりあえずアフリカとは縁もゆかりもない人だったんですな。

● 会場はほぼ満席状態。左右の端の方は空席があったが,ギッシリ埋まった。
 ぼくの右隣には小学生の男の子を連れた母親が座ったのだが,その男の子がイヤイヤ連れてこられたことを態度に出してくれた。演奏中に居眠りのポーズを入れたり,母親に文句を言ったり。隣でこれをやられるとけっこう堪えるのだった。これがひとつだけ残念だったことだ。

2011.02.12 モーツァルト合奏団第12回定期演奏会

那須野が原ハーモニーホール大ホール

●  12日は久しぶりに那須野が原ハーモニーホールに行ってきた。立春を過ぎてちょっと寒さが緩んだかと思ったら,9日は雪が積もった。11日から再び降りだした雪がこの日も続いていた。
 西那須野駅からホールまでは,雪の中を30分ほど歩いた。ほかに歩いている人はいませんでした。

● この日何があったのかといえば,モーツァルト合奏団の定期演奏会ですね。ホームページの紹介によれば「那須町・那須塩原市・大田原市など,県北地域で演奏活動している弦楽合奏団」で,ぼくも名前だけは知っていたのだが,聴きに行くのは今回が初めてだ。
 情報がなかったんですね。ホームページを見れば日時や曲目は載っている。が,入場は無料だけど整理券が必要となっていて,その整理券の入手方法がわからなかった。

● 今回はたまたま宇都宮の総合文化センターでこの演奏会のチラシを見つけた。なんとこのチラシがそのまま整理券になるのだった。しかも,このチラシは会場入口にも置いてあると書いてあった。
 だったら,整理券が必要だなんて言わないで欲しいぞ(すでに改善されているが)。

● 曲目は次の5つ。
 A.コレルリ 合奏協奏曲 ヘ長調 作品6-6
 W.A.モーツァルト アダージョとフーガ ハ短調 K.546
 G.F.ヘンデル 合奏協奏曲 イ長調 作品6-11
 C.ニールセン 小組曲 イ短調 Op.1
 M.P.ムソルグスキー 「展覧会の絵」より抜粋(弦楽合奏による)
 ヘンデルまで演奏したあとに休憩。計1時間半のコンサート。

● オーケストラで交響曲を聴くのもいいけれど,弦だけのこぢんまりとしたアンサンブルも悪くない。
 惜しかったのは大ホールを使っていたこと。奏者の数からしても客席の入り具合からしても,小ホールの方がいいんだけどね。
 那須野が原ハーモニーホールの小ホールは,今のところ,ぼくが最も気に入っているホールで,できればここでやって欲しかった。いっそうの味わいが出たんじゃないかと思う。

● 那須で活動している楽団だから,ローカル色も濃くて,団員のほとんどが地元在住者だと思ってしまいがちなのだが,これもホームページによれば,県外者の方が多いらしい。
 茨城県からの参加者が数人いるというのだが,久慈川沿線の人たちなのかなぁ。週1の練習日には車で来るんだろうなぁ。
 ぼくは車の長距離運転を億劫に感じてしまう方なので,そこまでして音楽をやりたい人には尊敬の念をまず持ちますね。そういう人の演奏を聴けるのは幸せだと思う。

● この合奏団の指導者は芸大研究員でヴィオラ奏者の中川さん。演奏にも参加している。ステージ上でも垢抜けているからすぐにわかる。
 にしても。自分たちで会費を分担して,彼女に指導に来てもらう。そうして練習した成果を無料で披露する。そのうえ,チラシ配りなど集客活動もやっている。
 そうまでするだけの達成感が演奏会にはあるのだろうが,彼ら彼女らのそうした負担があって,ぼく(ら)は安逸に演奏を楽しむことができるわけだ。

● しかし,彼らは途方もなく贅沢な生き方をしているとも思う。やりたいこと,好きなことに思いっきり時間とお金をかけて,溜めたものをステージで発散する。
 高級ホテルに泊まったり大きな旅行に出かけたりといった,レジャーにお金と時間を費やすよりは,ずっと高級で難易度の高い生き方のような気がする。ゆえに,誰もができるわけじゃないはずだ。

2011.02.06 栃木県交響楽団第90回定期演奏会

宇都宮市文化会館大ホール

● 栃響の第90回定期演奏会。設立40周年でもあるらしく,プログラムには何人かが手記(思い出話)を寄せていた。開演までに時間があったので(例によって,余裕を見過ぎたため)ホールの席で読んでみた。
 指揮者の荻町さんが指揮者の苦労を書いている。しみじみと納得できた。彼は県立高校の音楽教師でもあるのだが,自宅のCD棚がお店か図書館のようになってきたとも書いている。激しく勉強もしているのだろう。
 栃響発足時のエピソードなどもいくつか紹介されていて,それぞれ興味深い。発足当時のメンバーが何人かまだ現役でいるようだ。

● 指揮者は井崎正浩さん。何度も栃響を指揮している人で,団員も馴染んでいるようだ。曲目は,次の3曲。
 スメタナ 高い城(ビシェフラド)「わが祖国」より 
 チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 
 バルトーク オーケストラのための協奏曲 

● ソリスト(ヴァイオリン)は奥村愛さん。美形の奏者。実力が同じならば,美形にしくはない。彼女のヴァイオリンが聴けるからという理由でこの演奏会に来ている人もいるかもしれない。しかも,チャイコフスキーだ。「のだめ」で何度も登場している曲だし,そうでなくても広く膾炙している曲だろう。それを奥村さんの演奏で聴けるとあれば,1,200円は安い,と。
 ぼくもまた名花を充分に愛でることができて満足した。言うも愚かながら,奥村さん,実力もすごい。第1楽章が終わった時点でブラボーの声が飛んだ。もちろん拍手も。でも,協奏曲はバックの管弦楽で決まるのかもしれませんね。チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲は特にそうなんじゃないか。

● 40周年記念の演奏会であることは客席もわかっていて,一緒に盛りあげようという機運があったのだろうか,相当に盛りあがった演奏会になった。アンコールも2曲。満足して帰途につくことができた。
 ぼくにとっていいライブというのは,他のお客さんの存在が消えることだ。ステージを見ているのは自分ひとりだと感じる時間がある。自分ひとりがステージに対している。今回もそう感じる数分間があった。もっとも,そのためには座席を選ぶことが必要なんですけどね。ぼくが座ったのは2階の右翼席の前から数列目の一番中央よりの席。

2011.02.05 狂言(大蔵流山本会)公演


さくら市氏家公民館

● 狂言の公演に行ってきた。さくら市の事業で無料。氏家のスーパーにチラシが貼ってあって,それでぼくは知ったんだけど,どんなものなのか一度見てみようと思った。
 大蔵流狂言山本会の公演。公民館のホールがだいぶ埋まっていた。けっこうな人気のようだ。もちろん,オバチャマ・オバアチャマが多いのだが,タダだから来たってだけでもないようだ。ぼくが思っている以上に,能や狂言を鑑賞することを楽しみにしている人が多いのかもしれない。

● 演しものは「二人袴」と「蟹山伏」。まったく予備知識なしに見たのだが,素直に面白かったですよ。何度も笑わせてもらった。声の出し方や所作はきっちり鍛えられていることは素人目にもわかった。
 これだけのものをタダで見せてもらえるとはありがたい。そのうえでちょっと不満だったのは,プログラムの類が一切何も用意されていなかったこと。演しものの解説と演者のプロフィールを載せた簡単なリーフレットは作ってもよかったのではないか。

● 終演後に山本会の総帥,山本東次郎が狂言について解説した。狂言というものがよくわかったような気がした。もちろん,錯覚に違いないのだが,演者しか語り得ぬこともあるに違いない。