● 主催者は「音楽の街 宇都宮をつくる会」。地元出身者や地元で活動している演奏家に依頼して,毎年1回,演奏会を開催してきたようだ。
今回が13回目で,かつ最終回。13年も継続してきたのだから,敬意を払われるべきだろう。資金や手間。なかなか容易ならざるところがあるだろう。
● その13回の演奏会で,邦楽ゾリスデンの登場は3回に及ぶとのこと。任せて安心というところがあるんでしょうね。
ともかく。3月22日に続いて,また邦楽ゾリスデンの演奏を聴く機会を得ましたよ,と。
● スタートは3月にも聴いた「モザイクの鳥」(名倉明子)。
曲の聴き方は聴き手の数だけあってしかるべきだと思うけど,ぼく程度の聴き手は,音から情景を描きだそうとする。浮かんでくる情景と勝手に遊ぶ。
純粋に音の変化や重なりを音として楽しむのは,かなり難しい。ぼくの場合は。
● 情景を描きだそうとすることが作曲者の意図を追体験することになるとは,もちろん限らない。作曲者の意図は意図として,聴き手がそれに縛られることはないと思って,そうしているけど。
プログラムノートに作曲者の意図は明確に述べられている。それを踏まえても,この曲の音から情景を描くのは,ぼくにとっては難解な作業だ。
● 2曲目は箏の独奏で,「翔き」(沢井忠夫)。3曲目は十七絃の二重奏で,「めぐりめぐる」(沢井忠夫)。
このあたりは,黙って聴きやがれという曲。黙らせるだけの内実があるというか。しみじみと,あるいはしんみりと。
● 休憩をはさんで,「笹の露」(菊岡検校)。古典ということになる。箏,三絃,尺八というオーソドックス(かどうかは,じつはわからないんだけど)な構成。
長く残ってきたのは,どこかで人の内面の琴線にふれるからに違いない。目を眩ませるとか,パンチを見舞うとか,そういった鋭角的なガツンとしたショックはないけれども,どっしりとした安定感がある。
● 次は,尺八と三味線の「枯山水」(山本邦山)。
今回の演奏会で最も印象に残ったのがこの曲。ピンと張った一本の糸のような緊張感。緊張感は観客をして曲に集中させる。
それが長く続くと疲れてしまうんだけど,長い曲ではないからちょうどほどよい疲れを覚えて,いい曲を聴いたという充実感が残る。
● 曲の前の本條さん(三味線)と福田さん(尺八)の掛けあいトークの効果もあったかもしれない。
ふたりともトークの専門家ではないわけだけど,けっこうこういうステージで場数を踏んでいるんだろう,タイミングといい,切り返しといい,上手なんですな。
本條さんが,実家は会場から歩いて2,3分のところで,実家から一番近い高校は宇都宮高校なんだけれども,片道1時間,自転車をこいで○○高校に通ったとか,宇都宮エスペール賞をもらえたのは市長が高校の先輩だったからだね,というような話は客席をホッとさせる。
その直後の「枯山水」だったわけでね。
● 最後はTVテーマ曲メドレー。昨年の定期演奏会でも披露された。これは,客席へのサービス。邦楽を身近に感じてもらおうという趣旨に出るものだろう。
もちろん,大いに盛りあがって,さらにアンコールは水戸黄門のテーマ。サービスにだめ押しをして幕。
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