東京芸術劇場 コンサートホール
● 一昨年,昨年に続いて,3回目の拝聴になる。
上野学園大学,国立音楽大学,昭和音楽大学,洗足学園音楽大学,東京音楽大学,東京藝術大学,東邦音楽大学,桐朋学園大学,武蔵野音楽大学。首都圏の9つの音大がひとつのオーケストラを組んでの演奏会。
● 開演は午後3時。チケットはS席でも2,000円。おそらく,各大学間で熱の入れようには差があるだろう。が,この料金でこれだけの演奏が聴けるとなれば,行かないと損をした気分になる。
今回のプログラムは次のとおり。指揮はユベール・スダーン氏。
グリンカ 歌劇「ルスランとリュドミラ」序曲
レスピーギ 交響詩「ローマの松」
ムソルグスキー(ラヴェル編) 組曲「展覧会の絵」
● ぼくの席は前から5列目。いくら何でも前すぎる。弦の奏者で視界が埋まってしまう。管や打楽器奏者がまるで見えない。
この席しか残っていなかったということではない。チケットはだいぶ前に買ったので,席なんか選び放題だった。にもかかわらず,この席を選んだわけだ。何を考えていたんだ,あのときのオレよ。
● でも,前のほうだといいこともある。まず,奏者(弦)の表情や身のこなしがよく見える。
昔,奏者は楽譜しか見てないんだから,指揮者なんて誰だって同じじゃないかと思ったこともあるんだけど,指揮者を見ているものだということも,前のほうにいるとよくわかる。
● で,登場した奏者たちは,20歳をいくらか出たか出ないかの坊ちゃん嬢ちゃんたちなわけですよ。そういう顔をしている。
が,演奏が始まったその刹那,坊ちゃん嬢ちゃんが消えるんですね。これは感動的といってもいい変化で,れっきとした奏者の顔になる。で,いったんそうなると,坊ちゃん嬢ちゃんが浮かんでくることは二度とない。
● 彼ら彼女らを見ながら思うんですね。自分にこういう変化を人に見せる機会があっただろうか。即行で答えはでる。なかった。
まったく,見事に,一度も,なかった。自分の人生は何だったんだろうと,黄昏にたたずむ時期になって思うわけですねぇ。
● この演奏会には「ローマの松」のような大編隊の楽曲が登場する。できるだけ多くのパート,多くの学生に出場機会を与えたいということなんでしょうね。
逆にいうと,こうした大編隊の演奏を聴こうと思う人にとっては,ここは狙い目だと思う。演奏水準は文句ないわけだから。
● 「展覧会の絵」にはアラビアンナイトを思わせるエキゾチシズムがあるように思う。中東のお伽噺を聞いているような気分になる。こちらの勝手な受け取り方ですけどね。
あるいは,こちらがアラビア的なものと受けとめているものが,じつは,スラヴの味が入ったものだとか,そうしたことがあるのかもしれない。
● 演奏中に奏者にしばしば笑顔が現れていたのも印象的。どうやら,指揮者のユベール・スダーン氏と顔が合うとそうなるようだった。
しかめっ面でオーケストラに緊張を強いるタイプからは遠い位置にいるんでしょうね,スダーン氏が。学生が相手だから最初から多くを求めなかった,というわけではないだろう。リラックスさせて力を引きだそうとする指揮者なんですかねぇ。それができるのは,力のある指揮者だからなんだろうねぇ。
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