2018年7月10日火曜日

2018.07.01 さくらウインドアンサンブル 第2回定期演奏会

さくら市氏家公民館 ホール

● 開演は午後2時。入場無料。

● 曲目は次のとおり。指揮は村上陽一さん。地元出身でこの楽団の音楽監督。
 郷間幹男 虹色の未来へ
 バーンズ アパラチアン序曲
 久石譲/森田一浩 もののけ姫セレクション

 本田拓滉 ある森の一日(クラリネット5重奏)
 坂井貴祐 さくらの主題によるラプソディ(金管5重奏)

 ピアソラ 「タンゴの歴史」より Ⅲナイトクラブ
 シュライナー/ハワード インマー・クライナー

 鈴木英史 ディズニー・プリンセス・メドレー
 プリマ/宮川成治 シング・シング・シング

● 吹奏楽の原型はおそらく軍隊の軍楽隊,鼓笛隊だろう。聴き手を鼓舞するためのもの。あわよくば,聴き手の神経を麻痺させて,戦場に飛びこませるためのもの。
 今の吹奏楽はずいぶん洗練されたというか,そういうものとは別のものになっているが,マーチが多いのはそうした沿革によるものだと,勝手に思っている。

● 軍隊ではなくても,人が人生を生きて行くうえでは,鼓舞されることが必要なのだろう。場合によっては神経を麻痺させてでも,そこに飛びこんでいかなければならないことがある。
 “そこ”とは職場であったり,学校であったり,配偶者の実家であったり,様々であろうけれど,会いたくもない人に会わなければならないことがあり,やりたくもないことをやらなければならないことがあるのが,つまり人生というものだ。いやいや,そういうもので満ちているのが人生というものだろう。

● それゆえ,軍隊の軍楽隊に相当するものを,ぼくらは必要とするのだ。鼓舞するものがなければ,生きるのがシンドくなるのだ。
 吹奏楽が一定の人気を保って存続しているのも,畢竟,このあたりの事情からではないか。

● ピアソラの“ナイトクラブ”は海老澤栄美さんのクラリネット。ピアノ伴奏は渡部沙織さん。ヴァイオリンでも良し,フルートでも良し,というわけなのだろうが,クラリネットでももちろん良し。
 ピアソラといえば「リベルタンゴ」。ピアソラはわりと好きで,1曲残らずというわけではないけれど,かなりの曲を聴いている(つもり)。その中で「リベルタンゴ」は別格だと思える。この曲はクラシックなんだろかとも思うんだけど,そんなことはどうでもいい話で,この曲だけでアルゼンチンが好きになれそうだ。
 というわけで,次は「リベルタンゴ」を聴かせていただきたいな,と。

● 「インマー・クライナー」では海老澤さんはソリストの役がら。遊びを仕込んだ曲で,吹奏楽ではこの種の遊びはさほど珍しくないような気がしている。
 芸術性(訳のわからない言葉だが)よりもエンタテインメント性を指向しているようだ。少なくとも管弦楽よりは大衆性を獲得できているのは,それが理由のひとつでしょう。

● 昨年もそうだったので覚悟はしていたんだけども,客席に問題が多い。乳幼児を連れてきちゃう母親がいるんだな。しかも,けっこうな数。
 指で耳を塞いでいる女の子がいた。小さい子をここまでの音圧に晒すのは拷問に近い。都会の雑踏とはわけが違う。そういうことが気になってしまって,演奏を聴くことに集中できなくなる。

● 親が聴くのを我慢すればいいだけのことだ。我慢できない理由が何かあるのか。知り合いが出演しているという程度のことは,我慢できない理由にはならんぞ。
 親同士の交友や旧交を温めるといったことは,別の場所でやったらよろしい。そもそも,旧交など温めても仕方があるまいと思うんだが,女の人にはそうもいかない事情があるんだろうか。

● しかし,そういうことを呑みこんでお釣りが来るほどに,ステージは工夫をこらした楽しいもの。和気藹々としているが,それだけではステージは成り立たないだろう。切磋琢磨といえばきれいな言葉になるが,いろんな軋轢があるだろうことは想像に難くない。
 まとめる立場の人は大変だろうけど,それあればこそ,ここまでのステージがあるわけで,どうか倒れない程度に眠れない夜を過ごしてもらいたいものだ。

● ただし,工夫の数々を外してしまって,直球で勝負してもいいような気もした。つまり,演奏がすべてを語るという行き方でもいいんじゃないか。ことさらにエンタテインメント性を演出しなくても,ステージは充分に成立する。
 が,ここはそういう行き方を採らないらしい。

● 司会進行にプロのアナウンサー(須賀由美子さん)を起用。起用する以上は活かさなければいけない。活かそうとしなくても,彼女が自ら動いてくれるだろうが。
 ときに彼女が演奏を喰うというか,ステージで主役を張る瞬間があった。それはおそらく彼女の本意ではないと思うが,やむを得ない。ときに,女性のルックスは演奏を喰ってしまうのだ。

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