2020年2月12日水曜日

2020.02.08 オーケストラ・ノット 第9回演奏会

豊洲シビックセンター ホール

● 初めての拝聴。オーケストラ・ノットとはそも何者?
 この楽団のサイトはある。が,FBなので,FBをやっていない人には見づらくてしょうがないだろう。ちなみに,ぼくはFBを2年あまり捏ねくって,今はやめている。
 ので,設立の動機が書かれているこちらをあげておく。

● 今回が9回目なんだから,できてから9年になるのかと思いきや,そうではない。だいぶマメに演奏会を開催しているのだ。
 今月2日には旧東京音楽学校奏楽堂で特別演奏会,1月31日にはやはり旧奏楽堂でMatthias Glander氏還暦誕生日祝賀音楽会,昨年11月12日に杉並公会堂で第8回演奏会,7月20日に豊洲シビックセンターで第7回演奏会,という具合。
 普通のアマチュアオーケストラではないようなのだ。どういう人たちが集まっているのかというのもよくわからない。

● ともあれ。開演は13:30。入場無料。
 「これまでオーケストラ・ノットの演奏会で一緒に演奏した大学生さんがご卒業になられます。それを記念して特別プログラムでの演奏会をお送りします。卒業後,様々な道に進まれることになりますが,卒業前の皆さんの素晴らしい演奏をお楽しみください」とある。
 卒業する人たちが個々に紹介されている。上野萌華(ヴァイオリン 藝大),村田詩織(コントラバス 藝大),吉本萌慧(ヴァイオリン 藝大),森下邑里杏(チェロ 藝大),山上紘生(指揮 藝大),石井希(作曲 中央大学),の諸氏諸嬢。
 あらかた藝大生なのだが,藝大生の有志が結成したオーケストラというわけでもないようだ。社会人もいるからだ。その社会人も藝大OBかもしれないのだけど。

● 次回(4月5日なのだが)がファイナル演奏会となっている。なくなってしまうのかというと,そうではなくて,秋には「法人化記念第1回演奏会」が予定されている。「アマチュア奏者・学生奏者・プロ奏者の音楽交流による人材育成とクラシック音楽の普及を目的とした法人化を目指します」とのこと。

● プログラムは次のとおり。“交響的断章ハ短調”のみ作曲者が指揮したが,他は山上紘生さん。
 石井希 交響的断章 ハ短調
 サラサーテ ツイゴイネルワイゼン
 ボッテジーニ パッシオーネ・アモローサ
 ブラームス ヴァイオリンとチェロのための2重協奏曲
 ブラームス 交響曲第1番

● 石井さんの「交響的断章 ハ短調」。「プロであれアマチュアであれ,本気で音楽に取り組むならば,必ず既存の作品だけでは飽き足らなくなるはずです」と書いているんだけど,そういうものなのか。
 飽き足らなさを感じる人と感じない人がいて,前者から作曲家が生まれる。そういうことなんでしょうね。感じるか感じないかは,たぶん,そういうものを持って生まれてくるかそうでないかによるのだろう。

● 悪くないと思った。知的だ。冷静だ。作っているときに,作っている自分が曲に飲まれることがあるかと想像するんだけど(それは望ましいことかもしれないとも思ってみるのだが),作者が作品を適度に突き放せているという印象。
 これ以上の駄弁は自分の足元を掬ってしまうから,弄すべきではないでしょうね。

● ブラームスの1番,素晴らしかった。目隠しして聴いたなら,プロの演奏だと思ったに違いない。特にオーボエが手練。これを無料で聴いていいのか。
 っていうか,藝大生がメインで演奏しているのだとすれば,それとプロのオーケストラを目隠しで聴いて,両者を分別できる自信はまったくない。
 1番でのブラームスはけっこう以上に無理をしているのではないかと思っているのだけれども,ひょっとしたら違うのかもしれない。これはこれで,ブラームスの本領なのかもねぇ。演奏もだけど,曲も素晴らしいのだ。

● 終演は16時を回っていた。3時間近いボリュームの演奏会になった。
 募金を募っていた。これだけの演奏を聴かせてもらったのだから,素通りするのはルール違反ということでしょうねぇ。些少ながら募金箱に投入したけれども,申しわけないくらいの額でしかない。

● こうしてまた聴くべき楽団を知ってしまった。知ってしまえば,演奏会に行きたくなる。
 とはいっても,ぼくが住んでいるところは栃木の在なのだから,百発百中などということはあり得ない。行けないことの方が多い。行けなければいけないで,あれこれ考える。良いオーケストラを知ることは,したがって,煩悩を増やすことでもある。

● 今回,藝大を卒業する人たちは,2人が大学院に進むほかは,フリーの演奏家になると紹介された。
 経済的にはなかなか厳しそうだ。暮らしていけるんだろうかと思ってしまうんだが。
 よしんばプロになったとしても,オーケストラの給料だけでは食べていけない(N響以外は)。

● が,そんなことは折込済みか。それをわかったうえで,音楽を選んだ人たちだ。藝大に入学した時点で退路を絶っている。
 というほどの悲壮感はないかと思うんだけど,踏み込みがいいというか,思い切りがいいというか,清々しさを感じさせる人生行路だと思う。なかなかできないわけでね,これが。

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