2020年11月10日火曜日

2020.11.03 作新学院高等学校吹奏楽部 第55回定期演奏会

栃木県総合文化センター メインホール

● 超絶久しぶりの栃木県総合文化センター。
改修工事成った総文センターのホールの客席に座るのは,今日が初。改修工事は3月には終了していたはずだが,そこから先はコロナが開演を塞いできた。
 8月から生演奏に接することができるようになっている。が,これは首都圏での話だ。地方は方向転換が中央より遅れる。これはもう,そういうものだと考えておくより仕方がないだろう。

● 開催されるとなると,しかし,さっそく宇都宮市文化会館と重なってしまうんだな。東京フィルハーモニー交響楽団演奏会「ブラームスはお好き?」Vol.4が市文化会館であったんですよね。時間帯もほぼ重なる。
 大井剛史さんが指揮するこの演奏会,チャイコフスキーから数えると7回目になるんだけれど,過去6回はすべて聴いている。数ある演奏会の中でもこれは聴き逃してはいけないというものがある。この演奏会はそれに属するものなのだ。もちろん,自分的にはということだが。
 加えて,今回はチェロの宮田大さんがソリストで登場する。いよいよ聴き逃してはいけない演奏会になるわけだ。

● が,そちらではなく,作新学院吹奏楽部の定演に来た。検討の結果,作新を選んだ,のではじつはない。
 東フィルのチケットを取りそびれてしまった。どうして取りそびれたのかといえば,延期か中止に違いないと思いこんでしまったからだ。

● 作新のチケットを取るのもバタバタしてしまった。開催されることもネットで知ったんだけど,これが躓きの元だった。
 ちなみに,演奏会情報を何で得るかというと,ぼくの場合はなのだが,チラシだ。楽団やホールのサイトに情報を取りに行くことは,まずやらない。
 原始的というかアナログというか,ホールに置いてあるチラシや演奏会のときにドッサリもらうチラシをチェックする。
 チラシが一番情報量が豊富だし,パソコンやスマホの画面で見るより一覧性が高い。チケットの入手方法もパッとわかる。

栃木県総合文化センター
● ところが,地元のホールへは行ってなかったんだよね。だって,用がなかったから。中止か延期が続いていたので。ホール側も “用がないなら来るなオーラ” を出していたしね(今も出している)。結果,チラシという情報収集の最良の手段を放棄することになってしまっていた。
 ま,今回はネットで知りましたよ,と。そのときにチケットの入手方法も出ていて,ネットで申し込む,と。代金は郵便振替で払え,と。郵便振替かぁ,昭和チックだなぁ,と思ったのだが,それで申し込んだ。2,000円のチケットに対して発送手数料が300円。振込料が203円。
 ここでミス。手数料を失念して代金の2,000円だけを振り込んでしまったわけですよ。後から300円を振り込んだんだけども,300円でも振込料が203円かかるのね。

● というわけで,二度も郵便局に行くことになった。まずこの時間と手間が呪いたくなるほどに面倒。しかも,2,000円のチケットを買うのに,購入費用が706円。いずれも自分のミスが絡んでいるんだけどさ。
 というわけで,けっこうモヤモヤ感を抱えて,当日,会場に向かったわけ。当日券もあったけど,これは結果論ね。こういう時期だから,事前に手当しておいた方がいいでしょう。

● 前ふりが長くなりすぎた。開演は午後3時。座席はSとAの2種で,Sは2,000円。全席指定。
 指定なんだけれども,ひとつ空けて指定するというわけでもなく,ベタに指定していったようだ。ずらっとお客さんが並んでいるところもあれば,まとまって空いているところもある。
 座席使用の50%制限はすでに撤廃されている。撤廃されていなくても,ベタに使ったところで何の問題もないと思う。が,思い切ったものだなとは思った。

● いつもながらの開演前のプレ演奏もあり。このプレ演奏を聴くだけで,モヤモヤ感などポンと消える。何度も聴いているのだから,そのあたりは予めわかっている。
 そうして定刻に開演。以下に曲目を列挙しておく。プログラム冊子からの書き写し。
 ジェイムズ・スウェアリンジェン 喜びの音楽を奏でて!
 ジョン・ウィリアムズ ニューイングランド讃歌
 宮下秀樹 吹奏楽のための「エール・マーチ」
 真島俊夫 三つのジャポニズム

 宮川成治編 ファンタズミック!
 鈴木英史編 コンパス・オブ・ユア・ハート
 三浦秀秋編 ジャパニーズ・グラフィティⅩⅣ
 佐橋俊彦編 ディープ・パープル・メドレー
 和泉宏隆(真島俊夫編) 宝島

 ステージドリル:ミュージカル「CATS」より

● 出来はいかにといえば,盤石の作新クォリティー。高校生たちの一途さ,一所懸命さが何の衒いもなく,ビンビンに伝わってきた。
 ぼくごときがああだこうだとあげつらう話でもあるまいと思う。彼ら,彼女らのこれからに,幸多かれと祈るだけだ。

● と言いながら,ひとつだけ申しあげると,第3部のドリルが例年以上の圧巻の出来。
 石川県の珠州実業高校からユニフォームを譲り受けた感動のストーリーもあるけれども,圧巻と感じさせた第一の理由は,ダンスにある。
 ダンスのレベルが例年以上に高かった感じ。身体能力がどうのこうのではなく(それもあるのかもしれないが),ダンスを添えものとしていなかったことだ。今までだってダンスの手を抜いてるなんて感じたことは一度もなかったけれど,今回は,指先のさらにその50cm先まで神経を通わせて踊っていると思える子がいて,ちょっと感動してしまった。

● アンコールは桑田佳祐(三宅祐人編)「みんなのうた」。「栄冠は君に輝く」など野球応援関連も。例年だと第2部の終わりにやっていたのだったか。
 初めてこれを見たときは(2012年の第47回定演だったが),有料で一般公開している演奏会にここまで校内行事的なものを持ち込むのはどうなのだろう,と思ったものだった。
 浅はかでありましたね。理由は2つあって,ひとつはこれが高い水準でエンタテイメントとして成立していること。もうひとつは,この作新応援歌はひとり作新学院のものというにとどまらず,栃木県内に浸透しているように思われることだ。栃木県の無形文化財的なものになっていると見ていいのかもしれない。

● コロナの影響は高校生にも大きく作用した。何せ,学校が閉鎖されて登校できなかったわけだから。その間,作新吹奏楽部では「コーチが部員たちに課題を出し,その出来映えをコーチに動画で送り返し,さらにコーチがそれにアドバイスを与えるというスタイルで活動を」継続したらしい。
 県内高校の吹奏楽部でそんなことをやったのは(できたのは),おそらく作新学院だけではないか。

● プログラム冊子に記載されている部員名簿には出身中学校名が記載されているのだが,矢板東高校付属中から来ている子がいる。大学進学を考えて中高一貫校に入学したに違いない。ならば,そのまま矢板東高校に進学するのが大学進学には便宜が多いとしたものだろう。
 にもかかわらず,作新に入学したのは,作新で吹奏楽をやりたかったからに決まっている。その子以外にも同じ理由で作新に来ている生徒が多いだろう。それだけの吸引力を持っている。

● 優秀な生徒を集めて,しかも他校よりも濃密な練習を重ねるのだから,吹奏楽においては作新一極集中が進行あるいは定着するのが必然。
 一極集中が悪いことだとはまったく思わない(そもそも,いい悪いを問題にしても仕方がない)。日本が衰えたりといえども経済大国の一角にとどまっているのは,東京一極集中があればこそだ。ここがおかしくなったら,日本の屋台骨が揺らぐ。実現しなくて幸いだったが,首都機能移転など愚策中の愚策であった(あれはバブル期の発想で,金があり余るとロクなことを考えないという例証になるだろう)。
 しかし,かりに作新吹奏楽部がコケるようなことがあると,作新一校の問題にとどまらなくなることもまた,事の必然となる。責任も大きくなる。

● そんなことは百も承知二百も合点のうえで,その責任を担っていくのだろう。その覚悟は関係者に共有されているのではあるまいか。
 というわけなので,吹奏楽はこれを聴いておけばいいという,“これ” にあたるのが作新学院高等学校吹奏楽部の定期演奏会とグリーンコンサートということになる。

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