2009年10月31日土曜日

2009.10.25 第14回コンセール・マロニエ21 本選

栃木県総合文化センター メインホール

● 総文センターで開催された「第14回コンセール・マロニエ21 本選」を聴いてきました。約6時間に及ぶ長丁場。今回はピアノと木管。来年は弦と声楽。毎年,全部門について実施するんじゃないんですね。
 ここのところ,宇大教員による演奏会と「響」の定期演奏会で,ピアノに食傷気味だった。
 ピアノは飽きる。途中でお腹がいっぱいになってしまう。で,今回も覚悟はしていたんですよ。自分的に聴きたいのは木管で,ピアノは忍耐で乗り切ろうと。

● ところが。そんなことにはならなかった。ピアノ部門が6人。木管も6人で,そのすべてにピアノの伴奏がつく。6時間もの間(途中,3回の休憩はあったけれど),ずっとピアノを聴き続けたわけだけれども(しかも,木管は曲目が指定されていたので,同じ曲を二度聴くことも),飽きはこなかった。
 これはどういうわけか。このコンクールにかける奏者たちの緊張感と真剣さが伝わってくるからか。

● ともあれ,聴くに値する内容だったと思う。もちろん無料だ。メインホールを使わせているのは,主催者の出演者に対する敬意かもしれないが,客席ははまばらだった。2階席は進入禁止になっており,1階のいい席で聴くことになる(2階席には審査員が陣取っていたようだ)。
 ぼくが言うのも変なものだが,もっと多くの人が聴きに来てくれればと思いますね。しかし,6時間はさすがに長いね。普通のコンサートって2時間だものね。

● ピアノ部門。トップは榊原涼子さん。芸大院の2年。ピアノ部門は何を演奏するかはきめられていない。自分で選べる。彼女が演奏したのはシューマンの「謝肉祭」。
 次は石井絵里奈さん。同じく芸大院2年。プロコフィエフの「ロメオとジュリエット」からいくつかを抜粋して演奏。
 棟方真央さん。芸大4年。ベートーヴェンの「ピアノソナタ第31番」とラモーの「アルマンド(新クラウザン曲集より)」。彼女の演奏がラモーの聴き初めとなった。

● 片野和紀さん。東京音大を卒業してハンガリー国立リスト音楽院で修行した。リストの「婚礼(巡礼の年第2年より)」とヴァインの「ピアノソナタ第1番」を演奏。
 ヴァインの曲は1990年に作られた。もちろん,ぼくは聴いたことはないし,ヴァインという名前も初めて聞いた。ピアノの端から端まで使って演奏する。いろんな弾き方があるものなんだな。
 ぼくはこの人が1位を取るのではないかと思ったのだが,結果は2位なしの3位だった。

● 小瀧俊治さん。東京音大の院生。ラフマニノフの「前奏曲」と「ピアノソナタ第2番」。ラフマニノフはピアノ協奏曲第2番が突出して有名で,それ以外はあまり聴く機会がない(ぼくだけか)。おとなしい弾き方だと思って聴いていたんだけど,彼が第1位を取った。

● 見崎清水さん。桐朋学園大学3年。ラヴェルの「夜のガスパール」を演奏。
 音楽では芸大が図抜けて実績をあげているって感じでもないですね。他学部における東大ほどには突出していない印象がある。私立の音楽大学が健闘しているともいえるわけで,その代表が桐朋。
 私立の音大は医学部に次いで学費が高い。マンツーマンのレッスンがあるのだから当然だけど,いいところのお坊ちゃんやお嬢ちゃんじゃないと入学できない。本格的に音楽をやれるのはもともとそうした階層の子弟だけ?

● さて,木管。ピアノに飽きなかったとはいえ,6人のピアノが終わって木管に移ったときには,なにやらホッとした気分にはなりましたね。
 本選に残ったのはクラリネットが2人,フルートが3人,ファゴットが1人。
 堀菜々子さん。クラリネット。今回唯一の地元出身者。現在は芸大の3年。木管部門は曲目が指定されており,クラリネットはモーツァルト「クラリネット協奏曲 イ長調 K.622」。管弦楽の代わりをピアノが務める。

● 続いて,同じクラリネットの椏木亜裕美さん。桐朋学園大学4年。今年の東京音楽コンクールで第1位を取っている。曲目は堀さんと同じなわけで,こちらとしては同じ曲を二回続けて聴くことになるわけだ。ま,ぼくらはいいけれど,本選に至るまで審査を続けてきた先生方は大変だったろうねぇ。
 ところで,椏木さんのバック演奏を務めたの方は松山玲奈さんと申しあげる。彼女のピアノに感動。ひょっとして,今回のすべての演奏の中で最も良かったのは,松山さんのピアノではあるまいか。もちろん,彼女は出場者ではないんだけど。

● 濱﨑麻里子さん。フルート。芸大院の1年。曲目はモーツァルトの「フルート協奏曲第2番 ニ長調 K.314」が指定されている。東京音楽コンクールでは椏木さんの後塵を拝して3位だった。
 ぼくだったら彼女を1位に推すなと思った。で,結果も彼女が1位。自分の予想が当たるって嬉しいね。って,たんなる偶然にすぎないことはわかっているよ。

● 寺本純子さん。フルート。京都市立芸大から東京芸大に転じて,ヨーロッパで修行。たぶん,今回の出場者の中では最年長だと思う。その美貌と相まって大人の女性の色気を発散していた(そんなことを感じていたのはぼくだけかも)。曲目は濱崎さんと同じ。ここでも二度続けて同じ曲を聴くことになった。

● 蛯澤亮さん。木管部門で唯一の男性出場者。国立音大を卒業。ウィーン音楽院修士課程2年。曲目はモーツァルト「ファゴット協奏曲 変ロ長調 K.191」。

● 井坂実樹さん。フルート。芸大2年。曲目はモーツァルト「フルート協奏曲第1番 ト長調 K.313」。第2番と比べて,フルートの独奏時間が長い。彼女はよく弾きこなしていて,これも上位入賞だと思われた。結果,彼女が2位。

● これほどモーツァルトを続けて聴いたことはない。飽きなかった。どころか,帰宅後,CDで聴き直したくらい。
 コンクールとはいえ,これだけのレベルの演奏をこれだけまとめて聴けるのは,そうそうあることじゃありません。来年は声楽と弦。行きますよ。これ,行かなきゃ損。

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