那須野が原ハーモニーホール 大ホール
● 5日に上野行きをやめた理由はもうひとつあって,この日は那須野が原ハーモニーホールで那須フィルハーモニー管弦楽団の「名曲コンサート」があった。チケットを買っていたのだ。
といっても,わずか5百円のチケットだから,捨ててしまっても惜しくはない。事実,昨日までは捨てて,藝祭を択るつもりでいたんだから。
でも,前に書いたような次第で,5日の午後は北に向かった。開演は午後5時。
● で,那須フィルハーモニー管弦楽団の「名曲コンサート」なんだけど,演奏したのは,前日も聴いたエルガーの行進曲「威風堂々」第1番。モーツァルトの交響曲第29番。サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」。
休憩を挟んで,ヴェルディ「歌劇ナブッコ」とマスカーニ「歌劇カヴァレリア・ルスティカーナ」から,合唱部分を含む一節を。最後はチャイコフスキーの「荘厳序曲1812年」。
● 那須フィルは,この4月から音楽監督兼指揮者に大井剛史氏を,コンサートマスター兼弦楽器トレーナーに執行恒宏氏を招聘している。大井さんは芳賀町出身の36歳。芸大院から海外で修行。現在は山形交響楽団指揮者,聖徳大学音楽部の講師も務める。
執行さんも芸大の出身で,山形交響楽団のコンサートマスターを務めた。現在はフリー奏者で37歳。
今回も指揮者が演奏の前に曲解説をするという親切さ。モーツァルトの29番では楽章ごとに演奏をとめて,解説をはさんだ。こういうやり方は親切なのかお節介なのか微妙なところがあるが,大井さんの話しぶりは活きが良くてポンポン飛ぶような感じ。決して邪魔にはならなかった。
● まずはエルガーの「威風堂々」。前日聴いたばかりの芸大生の演奏と比べてどうか。って,比べるものじゃないんでしょうね。
モーツァルトの29番はもう何十回も聴いているので,すっかり馴染んでいる。モーツァルトが18歳のときに作曲したことは今日まで知らないできたけれど。
サラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」は執行さんがソリストを務めた。ヴァイオリンの名手でもあったサラサーテが自分の腕を見せびらかすためにこの曲を作ったとは,大井さんの解説。
● 那須フィルは週に一度,このホールで練習しているのだが,執行さんによれば,こういう音響のいいホールで練習できるなんてかなり恵まれている,プロオケでもなかなかないんじゃないか,と。たしかにねぇ。しかも,大井さんや執行さんを招聘できちゃうのも,県内ではたぶん那須フィルだけだろう。
これにはカラクリがあって,那須フィルの団員は,ホールを運営する那須野が原文化振興財団が主宰している「那須野が原ハーモニーホールオーケストラ養成講座」の受講生でもあるのだ。
つまり,週1回の練習は財団が実施している「オーケストラ養成講座」というわけだ。
● この「名曲コンサート」じたい,那須フィルではなく財団主催の行事になっている。チケット販売やら当日のモギリやらも財団のスタッフがやってくれる。真岡市民交響楽団や鹿沼フィルに比べたら,どれだけ恵まれているか。
財政状況によってはそろそろ独り立ちしてよってことになる可能性もあるんだろうけど,今のところはとても良い環境を与えられているのだ,那須フィルは。
● 執行さんはまた,那須の空気のうまさについて語った。それ以外にほめるところがないってことかもしれないんだけどね。
けれども,那須という言葉のイメージが昔と比べるとだいぶ良くなっているのかもしれないと思いながら,彼の話を聞いた。空気のうまい田園地帯にとてもいいホールがあって,活発に音楽活動が行われている。そんなイメージができつつある?
● 後半は助っ人が2つ入った。那須野が原ハーモニーホール合唱団と大田原中学校吹奏楽部だ。合唱団のメンバーの平均年齢はかなり高い。女子には若い子もいたが,男子は年寄りばかりだ。求む若者ってところでしょうね。
しかし,彼らの合唱が加わったお陰で,後半の2曲はかなりツヤがでた。合唱のみでは敬遠したくなるが,器楽に声楽が加わるのはとてもいい。
大田原中吹奏楽部からはラッパ担当の女子生徒が数人。「1812年」の最後に彼女たちの出番があった。
● 大ホールが満席になった。演奏する方も気持ちよかったに違いない。しかも,県北の人たちは礼に厚い。客席のマナーは一にも二にも拍手を惜しまないことだ。巧かったから拍手する,そうでもなかったから拍手しないっていうんではなく,とにかく拍手を惜しまないことだ。そのマナーを忠実に守るのだ,このホールの観客は。
特に,大田原中吹奏楽部の生徒たちは,これほどの拍手を受けるのは初めてのはずで(いや,毎年経験しているのかも),晴れがましい体験になったのではあるまいか。拍手を受けることの誇らしさや気持ち良さを味わえたに違いない。
合唱団も同じだ。合唱団は合唱団でコンサートも開いているのだが,たぶん,これだけの集客力はない。したがってこれだけの拍手を浴びる機会も滅多にはない。彼ら,彼女らがこれからも活動を継続する動機付けになるのじゃないかと思う。
● 那須フィルのメンバーに高校生がいた。パーカッションとフルート。3人はいたと思う。年齢に関係なく色んな人がいるっていいね。演奏技術にあまり差があってはまずいだろうけど,メンバーの属性(年齢,職業,収入,性別,音楽以外の趣味など)はバラエティに富んでいるべきだ。
高校生団員はいい経験をしている。しかも,大井,執行という一流のプロの指導を月に一度は受けることができるんだから。高校での生活と那須フィルでの活動の落差が,彼らを賢くしてくれるといい。
● 次は定期演奏会。3月13日だ。昨年は「那須野が原ハーモニーホール開館15周年記念事業」と称して歌劇「カルメン」を演奏会形式で上演した。豪華なソリストを揃えて,チケットは千円。あっという間に完売となって,ぼくは聴くことができなかったんだけど。
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