栃木県総合文化センター メインホール
● 29日は総合文化センターのメインホールで宇都宮ジュニア合奏団の演奏会があった。今年で31回目になるのだが(昨年は東日本大震災のために開催中止になっている),ぼくはこの合奏団の存在をずっと知らないでいた。
今年も栃響の定期演奏会のチケットを買うために総文センターのプレイガイドに行ったときに,並んでいるチラシを丹念に見てて,たまたま見つけたものだ。
● 入場料は500円。当日券を買った。メインホールの入りは4割程度。おそらく,子供たちの保護者が多いのだろう。当然にして,団員の弟や妹たちを連れてくることになる。中には乳幼児もいる。
したがって,演奏中に泣き声が聞こえたりもするんだけれども,これは致し方ないものだろう。演奏中にデジカメのフラッシュがたかれることもあったんだけど,これも受忍限度の範囲内ということになるだろう。
● この合奏団は「スズキ・メソードの子供たちによるストリングオーケストラ」と紹介されている。スズキ・メソードなるものがぼくにはよくわからない。Webで調べると,鈴木鎮一氏が創設したもので,小さい子供が母語を覚えるのと同じように,小さい頃からよい演奏を聴かせ,生活の中に音楽が溢れる環境を作ることが大事だということらしい。独特な練習法があるのかと思ったんだけど,そういうものではないようだ。
つまるところ,よくわからない。ま,わからなくても,鑑賞の妨げにはならないでしょ。
● この合奏団は,中2~高3のAオーケストラと小5~中1のBオーケストラからなる。
まず,Aオケがヴィヴァルディの「四季」を演奏。指揮者が指揮棒を振りおろした瞬間に,濁りのない弦の響きがホールいっぱいに広がった。オォッと思った。いい時間を過ごせることを確信させるに充分な音色だった。
「四季」の最初の旋律は中学校の音楽の授業で聞いている。ほとんどの人が知っているはずだ。その馴染みの旋律が心地よく展開する。中学生と高校生が巧みに弓を操る。
生で「四季」の全部を通して聴ける機会が,これから先もそんなにあるとは思えない。いいものを聴かせてもらった。
● 15分間の休憩後,今度はBオケがモーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」を演奏。これまた誰でも知っている旋律を,小学生が自分の体に合わせた小さなヴァイオリンで演奏している様は可愛らしくもあるけれど,ステージ上の彼らは小なりといえども紳士淑女の佇まいを感じさせた。
普段はごく普通の小学生に違いない。けれども,演奏会用の制服をまとい,ネクタイを締めてステージに立てば,いうなら結界の中にいるようなものだもんね。
小さなミスはあったものの,まずは立派な演奏。
● 次はAB合同でバルトークの「ルーマニア民族舞曲」と林光の「弦楽のためのアレグロ」を演奏。子供たちのほかに指導者やエキストラが加わっているから,弦だけなのにフルオーケストラほどの人数になった。なるほど,これでは観客の多寡に関わらず,メインホールでなければならないわけだ。
これもね,充分に素晴らしいものだった。特に林光「弦楽のためのアレグロ」はCDで聴きなおしてみたいと思った。入手できるのだろうか。
● というわけで,満足して帰途につけた。今までこの合奏団の演奏を聴きのがしていたことが残念でもあり,今回気づいてラッキーでもあった。
今までもゴールデンウィーク中の演奏だったのだろうから,この時期,ぼくは家族とディズニーランドなんぞへ遊びに行っていたに違いない。でも,この演奏会を聴いてしまった以上は,来年も聴きに来ることになるんでしょうね。
約2時間のコンサートが終了した直後の満足感は,他のものでは代替できません。この世に音楽というものが存在すること。演奏の才に恵まれた人たちが,時間と費用を惜しまずに技を磨いていること。その鍛錬の成果をぼくたちの前で惜しみなく披露してくれること。そうしたことが重なって,ぼくの2時間が存在します。ありがたい世の中に生きていると痛感します。 主には,ぼくの地元である栃木県で開催される,クラシック音楽コンサートの記録になります。
2012年4月29日日曜日
2012年4月23日月曜日
2012.04.22 第6回ミュージカル・フェスティバルin芳賀
芳賀町民会館
● 22日は芳賀町民会館へ。県内のミュージカル・フェスティバル。とちぎミュージカル協会というのがあるようで,そのミュージカル協会の主催。年に1回の催し。
6団体が登場。チケットは1,999円。午後2時に始まって終了が6時。
● ミュージカル☆キッズ&鹿沼ミュージカル
演しものは「ハッピーフェスティバル」。口うるさい母親を嫌う子が多いのを機に,ロボット母を普及させて社会を乗っ取ろうとする女性に対して,それを阻止する子供たちの活躍。勧善懲悪のドラマっていうか。
● 劇団三十六計附属幸せキャンドル♪夢組
作品は「ヨン様の赤い糸」。赤いランドセルを背負っている中年男(ヨン様)の結婚話。観客を笑わせるエンタテインメントに徹した作品。浅薄な教訓がないので,すっきり楽しめた。
● ラッシュMusical
「キールウッドの杖」という作品。プリンセスが持つべき杖を悪者に奪われたプリンセスと家来たちがその杖を取り返しに行くという物語。その過程で,プリンセスが持たなければならない大切なもの(国民への愛)に気づくという筋立て。
● 潮あかり ミュージカルアカデミー
「夢は叶う」。タイトルからは,強く念じれば夢は叶う的な陳腐さを感じるかもしれないけれども,この作品はそういうものではない。っていうか,タイトルはどうでもいいので,ダンスのすばらしさ,発声の確かさ,演技の切れ,そういったものを堪能できる。
他の5団体は子供たちを中心にした同好会的な風情があるのだが,ここだけはそうじゃなかった。水準が違い過ぎるというより,目指している方向が違う。宝塚的エンタテインメントの提供を指向しているように思われた。
ほのかなお色気も含めて,女性だけの演技を繰り広げる。
● こどもミュージカルどりーみんぐ
「ソング&ダンス」。その名のとおり,子供たちの歌と踊り。
● 真岡ミュージカル
最後に地元のこのブループが登場。「WILD CAT'S」という演しもの。呪いを解いたネズミが猫に逆襲を企てる。それを阻止する猫たちが,飼い主の人間にあんたも強く生きなよと教えていくという筋立て。
● 本格的なミュージカルをぼくは見たことがない。ディズニーランドでやっている「ワンマンズドリームⅡ」をミュージカルといっていいなら,何回も見ているけれど。
ミュージカルが歌,台詞・演技,ダンスがすべて詰まった総合芸術であることは,誰でも知っている。ぼくも知っているけれど,これでお金を取るのは大変だろうなぁという印象。
ルックスや身長,手足の長さ,運動神経。そういうものがすべて要求されるわけで。歌も巧くて,演技もできて,踊れる人って,そんなにいるわけないものなぁ。っていうか,9割の人はそのいずれもできないものね。
でも,それを同好会的に楽しんでいる人がたくさんいるんだなぁ(ひょっとしたら苦しんでいるのかもしれないけど)。就学前の小さな子もいるんだけど,うまく楽しめるといいねぇ。
● 圧倒的に女の子が多い。指導する側もすべて女性。ミュージカルに限らず,日本では歌舞音曲は女のものっていうのがまだまだ行き渡っている。
が,それだけではなくて,こういうのって女性が主導しないと成立しないものなんでしょうね。たぶん,日本に限らず,世界中どこでも女性が主体をなしているに違いない。
なんかねぇ,この世界を支えているのは男じゃないよ。女ですよ。女はいなきゃ困るけど,男っていてもいなくてもいいんじゃないかなぁ,と考えさせられたのが,今回の収穫でした。
参政権なんて男には与えなくてもいいんじゃないかなぁ。企業でも役所でも,課長以上は女性に限ることにしてしまう。男には社会の片隅でひっそりと生きてもらえばいい。そうした方が今よりずっと良くなるんじゃないか。どう思います?
● 22日は芳賀町民会館へ。県内のミュージカル・フェスティバル。とちぎミュージカル協会というのがあるようで,そのミュージカル協会の主催。年に1回の催し。
6団体が登場。チケットは1,999円。午後2時に始まって終了が6時。
● ミュージカル☆キッズ&鹿沼ミュージカル
演しものは「ハッピーフェスティバル」。口うるさい母親を嫌う子が多いのを機に,ロボット母を普及させて社会を乗っ取ろうとする女性に対して,それを阻止する子供たちの活躍。勧善懲悪のドラマっていうか。
● 劇団三十六計附属幸せキャンドル♪夢組
作品は「ヨン様の赤い糸」。赤いランドセルを背負っている中年男(ヨン様)の結婚話。観客を笑わせるエンタテインメントに徹した作品。浅薄な教訓がないので,すっきり楽しめた。
● ラッシュMusical
「キールウッドの杖」という作品。プリンセスが持つべき杖を悪者に奪われたプリンセスと家来たちがその杖を取り返しに行くという物語。その過程で,プリンセスが持たなければならない大切なもの(国民への愛)に気づくという筋立て。
● 潮あかり ミュージカルアカデミー
「夢は叶う」。タイトルからは,強く念じれば夢は叶う的な陳腐さを感じるかもしれないけれども,この作品はそういうものではない。っていうか,タイトルはどうでもいいので,ダンスのすばらしさ,発声の確かさ,演技の切れ,そういったものを堪能できる。
他の5団体は子供たちを中心にした同好会的な風情があるのだが,ここだけはそうじゃなかった。水準が違い過ぎるというより,目指している方向が違う。宝塚的エンタテインメントの提供を指向しているように思われた。
ほのかなお色気も含めて,女性だけの演技を繰り広げる。
● こどもミュージカルどりーみんぐ
「ソング&ダンス」。その名のとおり,子供たちの歌と踊り。
● 真岡ミュージカル
最後に地元のこのブループが登場。「WILD CAT'S」という演しもの。呪いを解いたネズミが猫に逆襲を企てる。それを阻止する猫たちが,飼い主の人間にあんたも強く生きなよと教えていくという筋立て。
● 本格的なミュージカルをぼくは見たことがない。ディズニーランドでやっている「ワンマンズドリームⅡ」をミュージカルといっていいなら,何回も見ているけれど。
ミュージカルが歌,台詞・演技,ダンスがすべて詰まった総合芸術であることは,誰でも知っている。ぼくも知っているけれど,これでお金を取るのは大変だろうなぁという印象。
ルックスや身長,手足の長さ,運動神経。そういうものがすべて要求されるわけで。歌も巧くて,演技もできて,踊れる人って,そんなにいるわけないものなぁ。っていうか,9割の人はそのいずれもできないものね。
でも,それを同好会的に楽しんでいる人がたくさんいるんだなぁ(ひょっとしたら苦しんでいるのかもしれないけど)。就学前の小さな子もいるんだけど,うまく楽しめるといいねぇ。
● 圧倒的に女の子が多い。指導する側もすべて女性。ミュージカルに限らず,日本では歌舞音曲は女のものっていうのがまだまだ行き渡っている。
が,それだけではなくて,こういうのって女性が主導しないと成立しないものなんでしょうね。たぶん,日本に限らず,世界中どこでも女性が主体をなしているに違いない。
なんかねぇ,この世界を支えているのは男じゃないよ。女ですよ。女はいなきゃ困るけど,男っていてもいなくてもいいんじゃないかなぁ,と考えさせられたのが,今回の収穫でした。
参政権なんて男には与えなくてもいいんじゃないかなぁ。企業でも役所でも,課長以上は女性に限ることにしてしまう。男には社会の片隅でひっそりと生きてもらえばいい。そうした方が今よりずっと良くなるんじゃないか。どう思います?
2012年4月22日日曜日
2012.04.21 自治医科大学管弦楽団第37回定期演奏会
栃木市栃木文化会館小ホール
● 4月21日。自治医大管弦楽団の定期演奏会を聴きに行ってきた。栃木市文化会館の小ホール。開演は18時。入場は無料。
● 2年前に獨協医大管弦楽団の定期演奏会をこの大ホールで聴いた。それ以来,二度目の栃木行きとなる。
われら県北人にとっては,小山は近くても栃木は遠い。もちろん,心理的にはということなんだけどね。だいたい,栃木市にわざわざ行く用事ってないしさ。
JRでも行けるんだけど,宇都宮から東武電車にした方が運賃が安くなる。その代わり,時間はかかる。JR駅から東武駅までの移動が増えるからね。もちろん歩くわけで,往復で小1時間。
でも,まぁ,歩くのは体にいいから。普段はあまり歩いていないからちょうどいいと思えばいいや。しかも,イヤホンを耳に突っこんで好きな音楽を聴きながら歩けるんだからね。
というわけで,波濤千里を超えて栃木市にやってきた。
● 栃木駅に降りてみると,いにしえの時代,ここが下野国の中心地だったことは何となく伝わってくる。農民と職人と商人しかいなくて,移動の手段は徒歩か馬しかなくて,日本の中心が関西にあった時代だね。
ちょうどいい広さの平地があって,小高い山波で守られた地形。巴波川の水運。往事の殷賑を偲ばせる遺構も残っている。
● さて,自治医大管弦楽団。
まず,アレっと思ったのは駒の少なさ。学生だけですべての楽器をまかなうことができていない。学生の定員は医学部が100名,看護学部が105名だから,学部生だけで千人はいる計算になる。それでここまで団員が少ないというのもちょっと珍しいかも(プログラムに掲載されている団長挨拶にも,部員の減少に悩まされ,定期演奏会を開催できるかどうか危ぶんだ,とあった)。
お客さんも少なかった。小ホールでもけっこうな空席があった。入場料を無料にしてこの人数というのは何とも少ない。
もっとも,大ホールでは「よしもと」の興業が行われていたから,お客さんの多くはそちらに流れてしまったのかもしれない。
● 医学系の大学だから,学生たちは毎日忙しく過ごしているのだろう。実験とか実習とかね。部活をやるにも時間のやりくりがいるのかもしれないねぇ。
文系学部だったぼくには,大学って何もやることがない暇なところだったけれども,自治医大の学生も同じだと思っちゃいけないね。
● したがって,雰囲気はコンサートというよりは学芸会。その分,ステージと客席の距離は近くなった。学生たちもリラックスしているようで,ときどき笑みを浮かべながら演奏している子もいた。悪くない感じ。
● 曲目は次のとおり。
レスピーギ
リュートのための古風な舞曲とアリア-第1組曲より第1曲
リュートのための古風な舞曲とアリア-第3組曲
モーツアルト
管楽器による交響曲第25番ト短調より 第1楽章
ホルン協奏曲第1番ニ長調より 第1楽章
クラリネット協奏曲イ長調より 第2楽章
フルート協奏曲第1番ト長調より 第3楽章
J.S.バッハ
オーボエとヴァイオリンのための協奏曲
● コンサートミストレスは看護学部2年の女の子。先輩方を差し置いて堂々のコンミスぶり。
まずはオールキャストでレスピーギの第1組曲を演奏。次に弦だけ残って第3組曲を演奏。
ヴァイオリンに触り始めたばかりというたどたどしさが見える学生もいた。大学オケだから,これは普通にあるのかも。そういう子でも定演に出られるのは,駒の少なさゆえだろう。本番に勝る練習はないわけだから,これってラッキーだよね。
一所懸命にやっていたから,あとはどれだけ時間をかけられるかでしょうね 。プロになるわけじゃないんだから。可能であれば,毎日少しずつじゃなくて,一気にガーッとやる時期を持った方がいいんだろうけど。
● 第3楽章の出だしでコンミスがフライング。でも,すぐに立て直して,以後は萎縮することもなく自分の演奏を持続した。
それ以前にも管のミスがあったし,以後にもいくつかのミスは出るんだけれども,この楽団はミスを咎めない感じがあって,そこがとてもよかった。音楽好きが集まって演奏するってそういうことで,ミスした奏者にダメージを与えていいことなんて何もないもんね。ミスったことは本人が一番よくわかってるんだから。
● モーツァルトの協奏曲はソリストも団員。それゆえ,ソリストがほれぼれと聴かせるというわけには参らない。
けれども,このあたりから管弦楽の調子が乗ってきた。のびのびと演奏するようになった。協奏曲の主役はバックの管弦楽だと思っているので(曲にもよるけどさ),いいぞいいぞと声援を送りながら聴いていた。
● 締めはバッハの「オーボエとヴァイオリンのための協奏曲」。管トレーナー(兼指揮者)の神永秀明氏と弦トレーナーの大久保修氏のセッション。これは圧倒的で,有無を言わせなかった。
バックで学生たち(弦のみ)も演奏しているのだが,音においても出ているオーラにおいても,学生たちの存在は吹っ飛んでしまった。仕方がないでしょうね。
● アンコールが3つあった。ひとつめは神永氏と大久保氏の再演奏。ふたつめは,管弦楽によるヒット曲メドレー。このあたり,管弦楽はノリノリで,ひょっとして本番の曲目よりもアンコールの方により多くの練習時間を割いたのではないのかと訊きたくなったくらい。難易度が違うでしょ,って? まぁね,それはそうなんだけどさ。
みっつめは,弦奏者を残して他は舞台を去ったあと,緞帳が降り始めてこれで終わりかと思ったところで,再び緞帳を上げて,弦だけで「マル・マル・モリ・モリ!」を演奏。客席は大いに盛りあがった。
● コンミスはこの楽団のムードメーカーでもあるらしい。明るい性格で,楽団を引っぱっている印象。社会に出てみれば,勉強頭がいいなんてことより,性格が明るい方がはるかに大切だということがわかるはずだ。彼女はどこに行っても,コンミスでいられるに違いない。
それともうひとり。大久保氏。彼は真剣に演奏してても笑っているように見える。類まれなる人徳というべきである。ぼくもそうなりたいと思いながら,1ミリも近づけないでいる。憧れる。
● というわけで,楽しい演奏会だった。1年後に彼ら彼女らがどれだけうまくなっているか確かめたいと思った。なので,来年も聴きに行きたいと思う。
● 4月21日。自治医大管弦楽団の定期演奏会を聴きに行ってきた。栃木市文化会館の小ホール。開演は18時。入場は無料。
● 2年前に獨協医大管弦楽団の定期演奏会をこの大ホールで聴いた。それ以来,二度目の栃木行きとなる。
われら県北人にとっては,小山は近くても栃木は遠い。もちろん,心理的にはということなんだけどね。だいたい,栃木市にわざわざ行く用事ってないしさ。
JRでも行けるんだけど,宇都宮から東武電車にした方が運賃が安くなる。その代わり,時間はかかる。JR駅から東武駅までの移動が増えるからね。もちろん歩くわけで,往復で小1時間。
でも,まぁ,歩くのは体にいいから。普段はあまり歩いていないからちょうどいいと思えばいいや。しかも,イヤホンを耳に突っこんで好きな音楽を聴きながら歩けるんだからね。
というわけで,波濤千里を超えて栃木市にやってきた。
● 栃木駅に降りてみると,いにしえの時代,ここが下野国の中心地だったことは何となく伝わってくる。農民と職人と商人しかいなくて,移動の手段は徒歩か馬しかなくて,日本の中心が関西にあった時代だね。
ちょうどいい広さの平地があって,小高い山波で守られた地形。巴波川の水運。往事の殷賑を偲ばせる遺構も残っている。
● さて,自治医大管弦楽団。
まず,アレっと思ったのは駒の少なさ。学生だけですべての楽器をまかなうことができていない。学生の定員は医学部が100名,看護学部が105名だから,学部生だけで千人はいる計算になる。それでここまで団員が少ないというのもちょっと珍しいかも(プログラムに掲載されている団長挨拶にも,部員の減少に悩まされ,定期演奏会を開催できるかどうか危ぶんだ,とあった)。
お客さんも少なかった。小ホールでもけっこうな空席があった。入場料を無料にしてこの人数というのは何とも少ない。
もっとも,大ホールでは「よしもと」の興業が行われていたから,お客さんの多くはそちらに流れてしまったのかもしれない。
● 医学系の大学だから,学生たちは毎日忙しく過ごしているのだろう。実験とか実習とかね。部活をやるにも時間のやりくりがいるのかもしれないねぇ。
文系学部だったぼくには,大学って何もやることがない暇なところだったけれども,自治医大の学生も同じだと思っちゃいけないね。
● したがって,雰囲気はコンサートというよりは学芸会。その分,ステージと客席の距離は近くなった。学生たちもリラックスしているようで,ときどき笑みを浮かべながら演奏している子もいた。悪くない感じ。
● 曲目は次のとおり。
レスピーギ
リュートのための古風な舞曲とアリア-第1組曲より第1曲
リュートのための古風な舞曲とアリア-第3組曲
モーツアルト
管楽器による交響曲第25番ト短調より 第1楽章
ホルン協奏曲第1番ニ長調より 第1楽章
クラリネット協奏曲イ長調より 第2楽章
フルート協奏曲第1番ト長調より 第3楽章
J.S.バッハ
オーボエとヴァイオリンのための協奏曲
● コンサートミストレスは看護学部2年の女の子。先輩方を差し置いて堂々のコンミスぶり。
まずはオールキャストでレスピーギの第1組曲を演奏。次に弦だけ残って第3組曲を演奏。
ヴァイオリンに触り始めたばかりというたどたどしさが見える学生もいた。大学オケだから,これは普通にあるのかも。そういう子でも定演に出られるのは,駒の少なさゆえだろう。本番に勝る練習はないわけだから,これってラッキーだよね。
一所懸命にやっていたから,あとはどれだけ時間をかけられるかでしょうね 。プロになるわけじゃないんだから。可能であれば,毎日少しずつじゃなくて,一気にガーッとやる時期を持った方がいいんだろうけど。
● 第3楽章の出だしでコンミスがフライング。でも,すぐに立て直して,以後は萎縮することもなく自分の演奏を持続した。
それ以前にも管のミスがあったし,以後にもいくつかのミスは出るんだけれども,この楽団はミスを咎めない感じがあって,そこがとてもよかった。音楽好きが集まって演奏するってそういうことで,ミスした奏者にダメージを与えていいことなんて何もないもんね。ミスったことは本人が一番よくわかってるんだから。
● モーツァルトの協奏曲はソリストも団員。それゆえ,ソリストがほれぼれと聴かせるというわけには参らない。
けれども,このあたりから管弦楽の調子が乗ってきた。のびのびと演奏するようになった。協奏曲の主役はバックの管弦楽だと思っているので(曲にもよるけどさ),いいぞいいぞと声援を送りながら聴いていた。
● 締めはバッハの「オーボエとヴァイオリンのための協奏曲」。管トレーナー(兼指揮者)の神永秀明氏と弦トレーナーの大久保修氏のセッション。これは圧倒的で,有無を言わせなかった。
バックで学生たち(弦のみ)も演奏しているのだが,音においても出ているオーラにおいても,学生たちの存在は吹っ飛んでしまった。仕方がないでしょうね。
● アンコールが3つあった。ひとつめは神永氏と大久保氏の再演奏。ふたつめは,管弦楽によるヒット曲メドレー。このあたり,管弦楽はノリノリで,ひょっとして本番の曲目よりもアンコールの方により多くの練習時間を割いたのではないのかと訊きたくなったくらい。難易度が違うでしょ,って? まぁね,それはそうなんだけどさ。
みっつめは,弦奏者を残して他は舞台を去ったあと,緞帳が降り始めてこれで終わりかと思ったところで,再び緞帳を上げて,弦だけで「マル・マル・モリ・モリ!」を演奏。客席は大いに盛りあがった。
● コンミスはこの楽団のムードメーカーでもあるらしい。明るい性格で,楽団を引っぱっている印象。社会に出てみれば,勉強頭がいいなんてことより,性格が明るい方がはるかに大切だということがわかるはずだ。彼女はどこに行っても,コンミスでいられるに違いない。
それともうひとり。大久保氏。彼は真剣に演奏してても笑っているように見える。類まれなる人徳というべきである。ぼくもそうなりたいと思いながら,1ミリも近づけないでいる。憧れる。
● というわけで,楽しい演奏会だった。1年後に彼ら彼女らがどれだけうまくなっているか確かめたいと思った。なので,来年も聴きに行きたいと思う。
2012年4月13日金曜日
2012.04.12 ポーランド・シレジア・フィルハーモニー管弦楽団
栃木県総合文化センター メインホール
● 総合文化センターに今年は3つの海外オケが来る。ポーランド・シレジア・フィルハーモニー管弦楽団(4月),ベルリン交響楽団(6月),ウクライナ国立交響楽団(11月)。料金は高くても5千円。もちろん,3つとも行くつもりでいる。
● で,初っ端。12日にポーランド・シレジア・フィルハーモニー管弦楽団の演奏を聴いてきた。18時30分の開演。料金は一律3千円。座席は指定。ぼくは早めに買っておいたので,前の方のいい席を確保している。
とにかく初めての外国オケなので,どんなやつらが出てくるのだろうと思ったら。
● まず背が高い。平均年齢が高い(正確にいうと,年齢のばらつきが大きい)。愛想がいい。客席に笑顔を振りまきながら入ってくる人が目立つ。リラックスしてる感じ。まなじりを決してイザ,という雰囲気はない。独特の型を持った人が多い。楽器の構え方とか体の振り方が多彩なんだね。
● お披露目はモーツァルトの交響曲第40番。今まで聴いたオーケストラと比べて巧いのか下手なのかは,ぼくの耳ではわからない。
しかし,楽しそうに弾いていたのが印象的。18世紀の音楽が,今もこうしてまったく古いという印象なしに,ぼくらの耳に届くってのはどういうことなんだろうなぁと思いながら聴いていた。
● 次は,同じモーツァルトのピアノ協奏曲第17番。メインはショパンのピアノ協奏曲第2番。ピアノ協奏曲が2つ続くというのは,めったにない構成だろうけど,ソリストは須藤梨菜。地元在住の若き実力者ってことになる。地元の奏者にチャンスを与えたいというわけなのだろうね。
● 彼女のピアノは1月の那須野が原ハーモニーホールのNew Year Concertでも聴いている。若いといっても,経験は積んでいる。であっても,この楽団をバックに演奏するのは緊張するんだろうなぁ。
けれども,彼女は臆することなく,自分の腕前を披露。
気が強いんだろうねぇ。もっとも,気が弱い女なんて睾丸のない男のようなもので,つまり,まずはいないものなんだけどね。
● 指揮者はミロスウァフ・ブウァシュチック。1998年5月からシレジア・フィルの芸術監督を務めているらしい。この人に似た指揮ぶりの人を日本人から探すとすると誰だろうかと考えたが,ぼくの少ないストックの中には見あたらなかった。
● 平日夜の演奏だったからか,客席にはパラパラと空席があった。チケットを買っても来れなかった人もいたに違いない。
ぼくはおかげさまで幸せな木曜の夜を過ごすことができた。栃木にいながら外国の楽団の演奏を聴くことができるんだからねぇ。ありがたいよねぇ。
● 総合文化センターに今年は3つの海外オケが来る。ポーランド・シレジア・フィルハーモニー管弦楽団(4月),ベルリン交響楽団(6月),ウクライナ国立交響楽団(11月)。料金は高くても5千円。もちろん,3つとも行くつもりでいる。
● で,初っ端。12日にポーランド・シレジア・フィルハーモニー管弦楽団の演奏を聴いてきた。18時30分の開演。料金は一律3千円。座席は指定。ぼくは早めに買っておいたので,前の方のいい席を確保している。
とにかく初めての外国オケなので,どんなやつらが出てくるのだろうと思ったら。
● まず背が高い。平均年齢が高い(正確にいうと,年齢のばらつきが大きい)。愛想がいい。客席に笑顔を振りまきながら入ってくる人が目立つ。リラックスしてる感じ。まなじりを決してイザ,という雰囲気はない。独特の型を持った人が多い。楽器の構え方とか体の振り方が多彩なんだね。
● お披露目はモーツァルトの交響曲第40番。今まで聴いたオーケストラと比べて巧いのか下手なのかは,ぼくの耳ではわからない。
しかし,楽しそうに弾いていたのが印象的。18世紀の音楽が,今もこうしてまったく古いという印象なしに,ぼくらの耳に届くってのはどういうことなんだろうなぁと思いながら聴いていた。
● 次は,同じモーツァルトのピアノ協奏曲第17番。メインはショパンのピアノ協奏曲第2番。ピアノ協奏曲が2つ続くというのは,めったにない構成だろうけど,ソリストは須藤梨菜。地元在住の若き実力者ってことになる。地元の奏者にチャンスを与えたいというわけなのだろうね。
● 彼女のピアノは1月の那須野が原ハーモニーホールのNew Year Concertでも聴いている。若いといっても,経験は積んでいる。であっても,この楽団をバックに演奏するのは緊張するんだろうなぁ。
けれども,彼女は臆することなく,自分の腕前を披露。
気が強いんだろうねぇ。もっとも,気が弱い女なんて睾丸のない男のようなもので,つまり,まずはいないものなんだけどね。
● 指揮者はミロスウァフ・ブウァシュチック。1998年5月からシレジア・フィルの芸術監督を務めているらしい。この人に似た指揮ぶりの人を日本人から探すとすると誰だろうかと考えたが,ぼくの少ないストックの中には見あたらなかった。
● 平日夜の演奏だったからか,客席にはパラパラと空席があった。チケットを買っても来れなかった人もいたに違いない。
ぼくはおかげさまで幸せな木曜の夜を過ごすことができた。栃木にいながら外国の楽団の演奏を聴くことができるんだからねぇ。ありがたいよねぇ。
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