栃木市栃木文化会館小ホール
● 4月21日。自治医大管弦楽団の定期演奏会を聴きに行ってきた。栃木市文化会館の小ホール。開演は18時。入場は無料。
● 2年前に獨協医大管弦楽団の定期演奏会をこの大ホールで聴いた。それ以来,二度目の栃木行きとなる。
われら県北人にとっては,小山は近くても栃木は遠い。もちろん,心理的にはということなんだけどね。だいたい,栃木市にわざわざ行く用事ってないしさ。
JRでも行けるんだけど,宇都宮から東武電車にした方が運賃が安くなる。その代わり,時間はかかる。JR駅から東武駅までの移動が増えるからね。もちろん歩くわけで,往復で小1時間。
でも,まぁ,歩くのは体にいいから。普段はあまり歩いていないからちょうどいいと思えばいいや。しかも,イヤホンを耳に突っこんで好きな音楽を聴きながら歩けるんだからね。
というわけで,波濤千里を超えて栃木市にやってきた。
● 栃木駅に降りてみると,いにしえの時代,ここが下野国の中心地だったことは何となく伝わってくる。農民と職人と商人しかいなくて,移動の手段は徒歩か馬しかなくて,日本の中心が関西にあった時代だね。
ちょうどいい広さの平地があって,小高い山波で守られた地形。巴波川の水運。往事の殷賑を偲ばせる遺構も残っている。
● さて,自治医大管弦楽団。
まず,アレっと思ったのは駒の少なさ。学生だけですべての楽器をまかなうことができていない。学生の定員は医学部が100名,看護学部が105名だから,学部生だけで千人はいる計算になる。それでここまで団員が少ないというのもちょっと珍しいかも(プログラムに掲載されている団長挨拶にも,部員の減少に悩まされ,定期演奏会を開催できるかどうか危ぶんだ,とあった)。
お客さんも少なかった。小ホールでもけっこうな空席があった。入場料を無料にしてこの人数というのは何とも少ない。
もっとも,大ホールでは「よしもと」の興業が行われていたから,お客さんの多くはそちらに流れてしまったのかもしれない。
● 医学系の大学だから,学生たちは毎日忙しく過ごしているのだろう。実験とか実習とかね。部活をやるにも時間のやりくりがいるのかもしれないねぇ。
文系学部だったぼくには,大学って何もやることがない暇なところだったけれども,自治医大の学生も同じだと思っちゃいけないね。
● したがって,雰囲気はコンサートというよりは学芸会。その分,ステージと客席の距離は近くなった。学生たちもリラックスしているようで,ときどき笑みを浮かべながら演奏している子もいた。悪くない感じ。
● 曲目は次のとおり。
レスピーギ
リュートのための古風な舞曲とアリア-第1組曲より第1曲
リュートのための古風な舞曲とアリア-第3組曲
モーツアルト
管楽器による交響曲第25番ト短調より 第1楽章
ホルン協奏曲第1番ニ長調より 第1楽章
クラリネット協奏曲イ長調より 第2楽章
フルート協奏曲第1番ト長調より 第3楽章
J.S.バッハ
オーボエとヴァイオリンのための協奏曲
● コンサートミストレスは看護学部2年の女の子。先輩方を差し置いて堂々のコンミスぶり。
まずはオールキャストでレスピーギの第1組曲を演奏。次に弦だけ残って第3組曲を演奏。
ヴァイオリンに触り始めたばかりというたどたどしさが見える学生もいた。大学オケだから,これは普通にあるのかも。そういう子でも定演に出られるのは,駒の少なさゆえだろう。本番に勝る練習はないわけだから,これってラッキーだよね。
一所懸命にやっていたから,あとはどれだけ時間をかけられるかでしょうね 。プロになるわけじゃないんだから。可能であれば,毎日少しずつじゃなくて,一気にガーッとやる時期を持った方がいいんだろうけど。
● 第3楽章の出だしでコンミスがフライング。でも,すぐに立て直して,以後は萎縮することもなく自分の演奏を持続した。
それ以前にも管のミスがあったし,以後にもいくつかのミスは出るんだけれども,この楽団はミスを咎めない感じがあって,そこがとてもよかった。音楽好きが集まって演奏するってそういうことで,ミスした奏者にダメージを与えていいことなんて何もないもんね。ミスったことは本人が一番よくわかってるんだから。
● モーツァルトの協奏曲はソリストも団員。それゆえ,ソリストがほれぼれと聴かせるというわけには参らない。
けれども,このあたりから管弦楽の調子が乗ってきた。のびのびと演奏するようになった。協奏曲の主役はバックの管弦楽だと思っているので(曲にもよるけどさ),いいぞいいぞと声援を送りながら聴いていた。
● 締めはバッハの「オーボエとヴァイオリンのための協奏曲」。管トレーナー(兼指揮者)の神永秀明氏と弦トレーナーの大久保修氏のセッション。これは圧倒的で,有無を言わせなかった。
バックで学生たち(弦のみ)も演奏しているのだが,音においても出ているオーラにおいても,学生たちの存在は吹っ飛んでしまった。仕方がないでしょうね。
● アンコールが3つあった。ひとつめは神永氏と大久保氏の再演奏。ふたつめは,管弦楽によるヒット曲メドレー。このあたり,管弦楽はノリノリで,ひょっとして本番の曲目よりもアンコールの方により多くの練習時間を割いたのではないのかと訊きたくなったくらい。難易度が違うでしょ,って? まぁね,それはそうなんだけどさ。
みっつめは,弦奏者を残して他は舞台を去ったあと,緞帳が降り始めてこれで終わりかと思ったところで,再び緞帳を上げて,弦だけで「マル・マル・モリ・モリ!」を演奏。客席は大いに盛りあがった。
● コンミスはこの楽団のムードメーカーでもあるらしい。明るい性格で,楽団を引っぱっている印象。社会に出てみれば,勉強頭がいいなんてことより,性格が明るい方がはるかに大切だということがわかるはずだ。彼女はどこに行っても,コンミスでいられるに違いない。
それともうひとり。大久保氏。彼は真剣に演奏してても笑っているように見える。類まれなる人徳というべきである。ぼくもそうなりたいと思いながら,1ミリも近づけないでいる。憧れる。
● というわけで,楽しい演奏会だった。1年後に彼ら彼女らがどれだけうまくなっているか確かめたいと思った。なので,来年も聴きに行きたいと思う。
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