2013年2月16日土曜日

2013.02.16 陸上自衛隊中央音楽隊 SPRING CONCERT


宇都宮市文化会館 大ホール

● この演奏会は,自衛隊のPRというか,自衛隊と駐屯地の住民との距離を縮めたいという趣旨からの開催かと思う。が,今さらPRなどしなくても,自衛隊の存在意義は日本人が等しく認識しているところだろう。
 あの東日本大震災。被災地における自衛隊の貢献に対しては,被災者のみならず日本人の誰もが賞賛を惜しまないだろうし,自衛隊がいてくれてよかったと感謝しているだろう。

● あれほどの災害になれば,警察と消防だけで対応できるはずもない。自衛隊でなければできなかったことがいくつもある。
 たとえば,被災者が避難所で風呂に入れたのは自衛隊のおかげだ。風呂に入るという些細なことが,どれほど渦中の人たちを癒し,励ましたことか(想像するしかないことだけれど)。それは自衛隊にしかできなかったことだ。

● 全国からボランティアの人たちが続々と被災地を訪れ,それぞれ医療であるとか,瓦礫の撤去とか,炊きだしとか,多くの人が尽力した。
 でも,自衛隊が任務として遂行したことは,それらボランティアの活動が活動として成立する基盤を整備したということを含めて,その数十倍に匹敵するものだろう。
 決して自らの活動を吹聴することなく,黙々とやるべきことをやる自衛隊がこの国にあったことのありがたさ。

● さて,今回の陸上自衛隊中央音楽隊のコンサート。開演は午後2時。入場無料。客席は3階席まで含めてほぼ満席状態。
 ただ,招待客がけっこういたようで,その招待客っていうのは,おそらく割当動員だろうから(違う?),そこは割り引かなくてはいけないけれども,それにしても盛況ではあった。

● 要するにプロの吹奏楽団。吹奏楽でこれ以上の演奏は,そうそうは望めないものだろう。
 粒が揃っているという点においては,さすがという感じ。意地悪爺さんになって,どこかに破綻はないかと探しながら聴いたりもしたんだけども,そんなものはないのだった。

● 客席へのサービスに徹している感じ。エンタテインメントに徹しているっていうね。それが心地いい。
 やろうと思えばクラシックだってお茶のこさいさいなんだろうけど,お客さんにどう楽しんでもらうかを第一に考えている。それが俺たちの任務なんだっていう潔さを感じた。
 でも,ひょっとすると,ぼくの勘違いかもしれない。今回の自衛隊音楽隊に限らず,どこでもそうなのかもね。一緒に楽しみましょうよってのは,吹奏楽にもともと内在しているものなのか。

● 隊員の平均年齢がだいぶ若い。若い隊員が多い。早くに辞めて,プロオケとかに移る人がけっこういるんですかねぇ。待遇は自衛隊の方がいいんじゃないかと思うんだけど。
 自衛隊音楽隊ではベートーヴェンやブラームスを演奏する機会はあまりないだろうから,クラシック音楽の追究にこだわるのであれば,それもあり得べし。

● 演奏は2部構成。曲目はつぎのとおり。
 第1部
  栃木県民の歌
  ヴェルディ サンバ・デ・アイーダ
  ジャッチーノ Mr.インクレディブル
  アーレン 虹の彼方に
  マッコイ アフリカン・シンフォニー
 第2部
  リード カーテン・アップ!
  内藤順一 行進曲「夢と,勇気と,憧れ,希望」
  小長谷宗一 フォー・クラリネッターズ
  ウィーラン&ストロメン リバー・ダンス

● 第1部で印象に残ったのは「アフリカン・シンフォニー」。「ヴァン・マッコイがアフリカの自然を幻想的に描写した曲」とのこと。色彩が豊かだし,脳内にいろんなシーンを浮かべることを許す自由さがありますな。
 これはCDで何度か聞きたいものだと思ったら,すでにぼくの手元にあったんでした。「シエナ・ウインド・オーケストラ」が演奏してるやつ。今まで見過ごしていただけだった。
 第2部では,4人のクラリネットが前に出て,モーツァルトのクラリネット協奏曲とか,いくつかの曲の旋律をつないで演奏したのが,最も記憶に残った。

● アンコールはベートーヴェンの「第九」第4楽章の例の旋律をアレンジしたもの。「ベートーヴェン「第九」のテーマによる自衛隊変奏曲 コーラス付き あなたが笑顔でありますように」というのは,ぼくが勝手に付けた曲名だけれど。

● 司会を務めた女性隊員が隠れたファインプレイヤー。声質が司会向きというかね。客席を上手にまとめていたと思う。
 それと,指揮者(樋口孝博さん)の礼の仕方。型が決まっているんだろうか。それとも独自のもの? かっこよかったなぁ。客席のおばさま方の中に,相当数の樋口ファンが誕生したに違いないぞ。

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