那須野が原ハーモニーホール 大ホール
● 開演は午後2時。全席指定で料金は2,000円(昨年より1,000円安い)。終演は午後5時だったから,二度の休憩をはさんで3時間の公演。
第1部は「第82回日本音楽コンクール優勝者コンサート」。ただし,登場したのはヴァイオリンの大江薫さんとフルートの松木さやさんのお二人にとどまった。
● 大江さん,まだお若い。演奏したのは,ヴィターリ「シャコンヌ」とヴィエニャフスキ「華麗なるポロネーズ第2番」。味わいのまったく違う2曲。ピアノ伴奏は梅村祐子さん。
素人の耳にもそれとわかる圧倒的な実力。ポカンと口をあけて聴いた(実際には口はあけてなかったと思うけど,気分としてはそういうこと)。
桐朋のソリスト・ディプロマコースのかたわら,慶応法学部の学生でもある。
● 慢心するとか練習の手を抜くとか,そういうことは想像しにくいタイプとお見受けしたけれども,これから今以上にうまくなるということは,つまりどういう状態になることなんだろうか。こちらには想像できない。
● 松木さんは芸大院に在籍。大江さんに比べるとわかりやすいですな。タファネルの「ミニヨンの主題によるグランド・ファンタジー」。ピアノ伴奏は與口理恵さん。
大江さんもそうなんだけど,生まれたときからこういうふうに演奏できてたような感じなんですね。そんなはずがあるわけもなく,人に言ってもわかってもらえないような練習をしてきているに違いないんだけど,その長い練習時間を感じさせない。
軽々と飄々と演奏していると思わせる。裏を想像させない。
● 第2部は「那須野が原の夏に歌う」と題して,伊藤和子さん(ソプラノ),藤田和恵さん(ソプラノ),女声合唱団コール・クランツェの皆さんが登場。
● 第3部は,まず金子鈴太郎さんのチェロ。バッハの「無伴奏チェロ組曲」の1番と5番。昨年は4番と3番だった。
昨年は,この楽曲を味わえるようになるには,自分はまだまだだなと思ったものだった。が,今回は多少,ひっかき傷くらいはつけられるようになってるかもしれないなと思えた。この1年間で多少は進歩した? っていうか,去年は何を聴いていたんだろう。
● ここのところ,バッハを聴く機会が多い。体系的にバッハを聴いたことのあるはずもなくて,一度はちゃんと聴かなきゃとは思っている。
あの膨大な作品群を体系的に聴く? 考えただけで臆してしまうんだけど,今回のような演奏を聴かせてもらうと,背中を押される思いがする。背中を押されてどうするか。あとは,百パーセント,自分の問題ってことになる。
● 最後は,御邊典一さんと岩本健吾さんのピアノ,岩下美香さんのパーカッションで,リストの交響詩「前奏曲」とピアソラの「リベルタンゴ」。
華やかでショーとしての魅力がたっぷりあった。こういう形の「前奏曲」や「リベルタンゴ」を聴けるのは,これが最初で最後になるかもしれない。
● 開演後に入ってくるお客さんがいる。これは仕方がないのかもしれないけれど,なまじ指定席にしてあるものだから,演奏中に自分の席を探してウロウロと歩き回ることになってしまう。とりあえずは空いている席に座ってもらって,しかるべきタイミングで自席に移ればいい。
そのように伝えないといけないのじゃないか。このあたり,若干,運営上の課題を残したかも。
● あと,ずっとお喋りをやめない婆さんの二人組がいたな。頭に浮かんだことは洗いざらい口から吐きださないといられない人って,いるね。選別しない。待てしばしもない。
浄化槽もなければ,一時溜めておく集水枡もない。即時に全部,口から垂れ流してしまう。したがって,ある種の汚穢感がただよう。
● もっと言ってしまと,昨今の(一部の)高齢者の傍若無人ぶりは目にあまる。未就学児の入場はお断りいたします,というのがたいていのコンサートに付きものだけれども,未就学児と70歳以上の高齢者の入場はお断りいたします,とやれば,鑑賞マナーは格段に向上するだろう。
70歳以上の高齢者と並べてしまっては,未就学児に失礼かもしれぬが。
● ただ,この種の年寄りっていうのは,品性の持ち合わせはないにしても,お金は持ち合わせているからね。彼らを除いてしまうと,コンサート自体が成立しなくなる可能性がひじょうに高い。
加えて,彼らは人口ピラミッドのマスゾーンを占めている。当分は厄介な状況が続くことを覚悟しなければなるまい。
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