栃木県総合文化センター メインホール
● 5月にフレッシュグリーンコンサートがあり,7月に東京農大二高とのジョイントコンサートがあった。わが家にも諸般の事情ってやつがあって,いずれも聴きに行くことができなかった。
三度目の正直,定期演奏会だけは聴きに行かないと。作新学院吹奏楽部,栃木県吹奏楽界(社会人も含めて)の,おそらく最高峰だろう。
● 開演は午後6時。チケットは800円(当日券は1,000円)。前売券を買っていた。
そうしておいた方が,間違いなく,会場に自分の身体を運んでいくことになるから。800円がもったいないっていうセコい発想でね。
● 第1部。コンクール・ステージとでも言えばいいのか。吹奏楽のコンクールでよく取りあげられる楽曲を演奏。
結論を先に書いておく。どのパートにも穴はない。パート間の連携にも綻びはない。鉄壁の守備を誇る。
吹奏楽の何たるかを知りたかったら(感じたかったら),作新学院吹奏楽部の定期演奏会の第1部を聴けばよい。
● 曲目は次のとおりだった。真島さんの曲が多いのは,4月に亡くなった真島さんへの作新吹奏楽部のオマージュであろうか。
真島俊夫 ナヴァル・ブルー
R.ミッチェル 大草原の歌
ヤン・ヴァン・デル・ロースト カンタベリーコラール
森田一浩編 ミュージカル「レ・ミゼラブル」より
真島俊夫 吹奏楽のための交響詩 波の見える風景
真島俊夫 富士山
● どれか1曲だけもう一度聴かせてやると言われれば,「波の見える風景」かなぁ。
基本的には風景を描写した曲と考えていいんだろうけど,“折りたたみ”が凄いんですよね。重層的というのか。右から描いていたかと思うと左からの描写になり,また右に戻り,という。
それでいて,華やかで聴衆にアピールする。つまり,大衆性も併せ持っている。小説にたとえれば,芥川賞と直木賞のどちらにもノミネートされそうな曲だ。
● 第2部はポップス・ステージ。というより,お楽しみステージ。演奏した曲目は次のとおり。
真島俊夫 スウィングしなけりゃ意味がない
鈴木英史編 糸
真島俊夫 スペイン
三宅裕人編 栄冠は君に輝く
星出尚志編 モヒート
真島俊夫 夢-岩井直溥先生の思い出に
星出尚志編 ジャパニーズ・グラフィティⅩⅩ
星出尚志編 塔の上のラプンツェル・メドレー
● ここでも真島さんの曲が3つ入っている。「夢-岩井直溥先生の思い出に」は第1部の方が場としては相応しいかもしれない。が,そういう細かいことはどうでもいいね。
ここでも,この生徒さんたちの技術に舌を巻くことになった。どんな曲でも弾きこなすし,ノリもいい。
● 「スペイン」で初めてダンスが入った。当然,部員たちによるダンス。なかなか演奏ほどの切れ味というわけにはいかないんだけれども,客席から見て左端に登場した“男装の麗人”が一番目立ったね。美味しい立ち位置だよね。客席の視線を独り占めできるはずだ。
ここは男になりきって踊るのが吉。それでも現れてしまう女の部分が,客席にアピールするわけだから。宝塚の男役も同じだろうね。
まだ男になりきっていないところがあったから,そこが少し残念。って,そこまで気を入れないといけない場面ではないのかもしれないけれど。
● ここからしばらくは甲子園の話題。応援の様子を再現。もちろん,ミニチュア版での再現になる。
作新野球部は甲子園の常連だ(今年で6回連続か)。初めてこの演奏会を聴いたときにも,これがあった。あ,この演奏会は校内行事なんだなと思った。
ところが,今年は優勝しちゃったからね。そうなるとひとり作新学院にとどまらず,栃木県全体のビッグイッシューになる。今回に限っては校内行事的色彩は払拭されることになった。
● 「ジャパニーズ・グラフィティⅩⅩ」は小林亜星作品集。小林亜星といえば,はるかな昔のテレビドラマ「寺内貫太郎一家」に主演して,息子役の西城秀樹と劇中でしょっちゅう喧嘩をしていたのが記憶に残っているんだけども,本職はそちらではなくて,作曲家。
魔法使いサリーとか,ひみつのアッコちゃん,「まんが日本昔ばなし」の主題歌「にんげんっていいな」も彼の作だったのか。一方で,都はるみが歌った「北の宿から」も。大変な才能だったんだねぇ。
● 第3部はドリル。ライオン・キング・メドレー。このステージは作新学院吹奏楽部の独壇場でしょうね。追随できるところはないのじゃないかと思う。
この演出とラインの取り方は誰が考えるんだろう。イチから設計していたのではとても間に合わないだろう。基本的なパターンがいくつかあって,あとはその組み合わせってことになるんだろうか。
● 小道具や衣装は「保護者の方々の手作り」ということなんだけど,衣装なんかかなり本格的で驚く。
凧鳥(と,勝手に命名)もよくできていた。こういう方法もあったのかと,見せられて初めて気がつく。
● あとは,パーカッションのレベルの高さ。これなくしてドリルはありえない。
最後まで手抜きはなかった。当たり前と言えば当たり前なんだけれど,この当たり前を当たり前のようにできるところが,作新学院吹奏楽部の凄さであるわけだ。
● 以上でプログラムは終了。が,その後もお楽しみが続くのが,この演奏会の恒例だ。
まず,部長挨拶。毎年そうなのだが,この挨拶には感心させられる。ひとつには,自分の言葉で語っていること。それから,気持ちが乗っていることだ。
今回の挨拶は,苦労話はミニマムにして(これだけの演奏会を現出するんだから,キャプテンに苦労がなかったはずはないのだ),顧問の先生をはじめ,関係者と観客に感謝申しあげます,というのをメインにした。抑制の効いた立派な挨拶だったと思う。
● さて,今回の演奏会で最も印象に残ったのは何かというと,じつは開演前のプレ演奏だった。ステージの左側(客席から見て)でサックス部隊が「情熱大陸」を演奏したんだけれども,そのサックスが素晴らしかった。
これだけで,チケット代の元は取ったぞと思った。
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