2018年11月19日月曜日

2018.11.18 第20回 鹿沼市民歌の集い

鹿沼市民文化センター 大ホール

● この催事を知ったのは9月16日の鹿沼フィルハーモニー管弦楽団の定演を聴きに行ったとき。「第九」の全楽章を演奏するらしい。ソプラノは鹿沼出身の大貫裕子さん。
 入場無料だが整理券が必要。ということは,かなりの聴衆が集まるのだろう。鹿沼市民の鹿沼市民による鹿沼市民のための催事なのだろう。
 となれば,部外者は遠慮しておくのが吉だろう。整理券を取るために鹿沼まで往復するのも億劫だ。

● と思って静観するつもりだったんだけど,惹かれるものがあった。惹かれるものがあるのであれば,そこに素直になった方がいいだろう。
 というわけで,某日,整理券を取りに鹿沼に行ってきた。鹿沼市立図書館でもらってきましたよ。もちろん,1枚だけね。

● わざわざ取りに行かなくても,当日も整理券を配布しているのではないかとも思った。のだけど,これは事前に取っておいて正解だった。
 当日,整理券を配布している様子はなかったし,会場はほぼ満席だった。空いている席もなくはなかったけれども,整理券は取ったものの都合で来れなくなった人がいるのだなと思う程度の空席しかなかった。

● 開演は午後1時半。内容は2部構成で,「第九」は第2部。大貫裕子さんのソプラノで「第九」を聴けますよ,と。しかも,無料でね。鹿沼市民でもないのに申しわけない。
 聴衆のごく一部に,どうしようもないのがいた。が,部外者の自分がそれに対してどうこう言う筋合いはない。筋合いがないというか,その資格がない。そのまま受けとめておく。

● 管弦楽のメンバーの多くはジュニアオケの団員かと思われる。鹿沼西中と東中に管弦楽部があることの効用は絶大で,それなしにこの「第九」は成立しない。
 加えて,高校生や中学生が「第九」を演奏することにも少し驚く。少ししか驚かないのは,ジュニアの定演でこれまで演奏してきた曲目を知っているからだ。マーラーやブルックナーをやってのけるのだから,「第九」をやっても不思議はない。

 緊張感がピンと張りつめた見事な「第九」だった。中でも第2楽章の木管(特にフルート)の歯切れの良さと,緩徐楽章のヴィオラの艶っぽさ。 
 第4楽章の,あの有名な旋律をチェロ・コントラバス→ヴィオラ→ヴァイオリンと受け渡し,最後は管弦楽全体で歌いあげるところが,この曲の第一のハイライトかと思うんだけど,そこもスムーズ。
 中小の事故はあった。が,それなしに「第九」を渡りきったアマチュアオーケストラの演奏をまだ聴いたことがない。仕方がない。いや,本当にこれは仕方がないのだと思う。

● 指揮者からすると,「第九」で最も表現に気を遣うのは緩徐楽章ではないかと思っている。ちょっと気を抜くと散らかりやすい。散漫になる。
 木管が歌わなければ話にならないのだが,かといって響かせすぎは致命傷だ。どこまでの音量にとどめおくか。あまたの先例が録音されてはいるものの,現場では悩むことになるのではないか。
 奏者も何度も「第九」を経験しているわけではない。初めての人もいるだろう。加減の仕方を経験的にわかっているわけではないだろう。
 
● つまり,ですね。ん???と思ったところもあって,それは緩徐楽章に集中していた。聞こえすぎもあったし,逆にちょっと萎縮しちゃったかなと思うところもあって。
 “緩徐”の演奏はそもそもが難しいのだろうけど。ぼくには聞こえすぎでも,いやあれくらいがちょうどいいと思う人もいるだろうし。考えだすとキリがない。

● その指揮は益子和巳さん。東中オーケストラ部の顧問の先生。最も異論の出ない人選だと思うのだが,この人,教師としての仕事の他に,ジュニアオケの指導やこうした催事にもかりだされて,尋常ならざる活躍ぶり。
 たぶん,大学で指揮法を習ったわけではないと思う。自己流で身につけたものだろう。暗譜で振っていた。ぼく一個は暗譜がいいとも思わないのだが,うぅん,尋常ならざる精進ぶりだな。おろらく,本人はそうは思っていないと思うんだが。

● ソリストと合唱団は第4楽章の前に登壇。最初からいるのが一番いい。のだが,それはなかなか。第3楽章の前に入るパターンが多いんだろうか。
 第3楽章から第4楽章へは間をおかず,アタッカ気味に入ってもらうのが,自分としては好みだ。対照の妙というか,唐突な変化というか,何が起きたのだという驚きというか,そういうものを味わいたい。だから,第3楽章の前には登壇していてもらいたいのだけど。

● ともあれ,第4楽章。管弦楽の舞踊を経て,バリトンが一段落してから,ソリスト4人が立って,“さて,アテナイ人諸君,君たちが私の告発者たちによって・・・・・・”と語りかけるところ(→ 嘘)で,少し涙腺が緩む。
 「第九」が日本において年末の風物詩になった由縁はぼくの知るところではないし,「第九」も数ある管弦楽曲のひとつに過ぎないと思おうとするんだけど,やはり「第九」は特別なのかもしれない。どんな由縁であるにせよ,毎年,年末になると日本のソチコチで演奏されるのは,「第九」だからこそ,か。

● ソリスト陣は大貫さんのほか,城守香(アルト),安藤純(テノール),坂寄和臣(バリトン)の4人。今回のこの催しは市制70周年記念という冠がつく。それゆえの豪華布陣だったかもしれない。
 その豪華布陣で客席も盛りあがった。半日つぶして整理券を取りに行ってよかった。

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