● 代々木にあるカポラレ&オチャンド弦楽器専門店が主催する「イタリアン・ヴァイオリン展」が,三井住友銀行東館のアース・ガーデンで開催されている(11/21~23)。ストラディバリをはじめ,ガルネリやガダニーニなどがガラスケースに入って並べられている。
それに合わせて成田達輝さんの演奏会が組み込まれた。当初は21日だけの予定だったらしいのだが,22日も追加公演が行われることになった。その追加公演の方に行ってみることにした。
● このコンサートはTwitterで知った。東京大学フォイヤーヴェルク管弦楽団のツイートで。成田さんは,この楽団のトレーナーを務めているらしい。
ともあれ。そのツイートからリンクを辿って,予約申込みをしたというわけだった。
● 開演は午後6時半。入場無料。
会場は大手町の中心部にある。永代通りと日比谷通りが交差する角。その繁華な道路とはガラス(かなり分厚いガラスだが)で仕切られているだけだ。出入口からはコンサートを聴きに来たのではない人も出入りする。時間が時間ゆえ,あまり多くはないのだが。
要するに,ロビーコンサート的なものだ。っていうか,ロビーコンサートそのものだ。
● 演奏したのはヴィヴァルディ「四季」。奏者と客席の距離が近い。加えて,今回はすごい。何がすごいかというと,楽器がすごい。
主催者によると,成田さんと成田さん率いる合奏団が使用した楽器は次のようなもの。
Antonio Stradivari 1711 “Tartini”
Antonio Stradivari 1716 “Nachez”
Antonio Stradivari 1667 “Jenkins”
Guarneri del Gesu c.1730
Andrea Guarneri 1638
Antonio Stradivari 1699(Cello)
総額で65億円になるらしい。何だ,ハシタ金じゃん,と思いたいわけなのだが,思えるわけもない。65億円という金額には,1万円の札束が6,500束集まった額という以上のイメージは持ちにくい。
三井住友銀行東館 |
名器は名手が奏でてこそ。問題はここからだ。名手が奏でるのであれば,特段ここまでの名器である必要もない。必要ないというのは,ぼくにとっては,ということね。ヤマハのYVN500S,いやもっと安い20万円か30万円の楽器であっても,ぼくの耳で音色の違いを聴き分けることはできない。
● おそらく,ぼくだけではないと思うんだよねぇ。名手の演奏で,その名手が使っている楽器が何かを目隠しして当てるなんてことは,当の名手でも無理なんじゃないか(いや,本人ならさすがに気がつくか)。
では,名器とは何かという話になる。ひとつだけハッキリしていることは,時の流れという篩にかけられて,ずっと生き残ってきた楽器だということだ。しかし,これでは何も言っていないに等しい。
● ヴィヴァルディ「四季」は大人しい曲だと思っていた。メロディーもたおやかだし,どちらかといえば女性的な曲だな,と。
成田さんが演奏する「四季」はそうじゃなかった。グングン踏み込んでいく。ヴィヴァルディがロックになることを知った。いやはやすごいものだと思って,CD(イ・ムジチ)を聴き直してみたら,CDもロックだった。
そっか,ヴィヴァルディはロックだったんだ。長らく気づかずに来た。今回のコンサートの収穫はこれ。
● 終演後,成田さんがあらためていくつかの楽器で同じ旋律を演奏してみせた。やはり,違いはわからない。記憶の保持時間が短くて,4つめの楽器で聴くときには1つめの音色を忘れているということもある。
言葉でも説明するんだけれども,まったく知らないものについては,どう説明されてもわからない。わかったふりをして聞いていたけどね。
● ガラス越しにこれらの名器を美術品,工芸品として鑑賞できる。さすがに時間が心配でゆっくりはできなかったけれども,たとえゆっくり見たにしても,ぼくには豚に真珠であったに違いない。
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