東京芸術劇場 コンサートホール
● 音大オーケストラ・フェスティバル2日目。上野学園と桐朋。開演は午後3時。
今回の席は少し前すぎ。管の奏者は見えない。その代わり,ヴァイオリン奏者を間近で見ることになる。上腕筋の動きまでわかる。今,息を吐いたとか吸ったとか,呼吸の具合までわかる。
● 上野学園はレスピーギ「交響詩 ローマの噴水」とプロコフィエフ「〈3つのオレンジへの恋〉による組曲」。指揮は清水醍輝さん。
清水さん,ヴァイオリンでその名のとおり輝かしい実績を残しているのだけど,最近は指揮活動に力を入れているんだろうか。
● 上野学園って,他の音大に比べると馴染みが薄い。この音大フェスに参加するようになったのも,2年前からだった。
経営問題が取りざたされることも,イメージを悪くしている。が,そういうことはそういうこと。一般報道だけでイメージを作ってしまうと,たぶん実態から離れることになるだろうし。
ステージ上の学生は,当然ながら,そういったこととは無縁でいるように思われた。
● 「3つのオレンジへの恋」を生で聴くのは初めて。CDはぼくの手元にもあったはずだが,そのCDを聴いたこともない。こういう機会に蒙を啓いてもらえるのだが,では今後,この曲を聴くことがあるかといえば,あるかもしれないし,ないかもしれない。
やっぱ,オーケストラだよなと思った。室内楽も独奏もいいんだけれども,オーケストラの華って動かしがたいよね。
● 桐朋はホルスト「惑星」。指揮は沼尻竜典さん。これだけの大編成を組みながら,一切,水準を落とさないでやりきるのは,さすが横綱の貫禄ということか。
この曲もまるごと生で聴くのは初めて。「木星」を単独で取りあげているのは何度か聴いているのだけど。
● ホルストは「占星学で説かれている惑星のイメージを音で再現してみようと考えた」とはよく言われることで,実際,そうなのだろう。
で,ナントカ占いで使われるアレでいうと,ぼくは八白土星なんですよ。土星は老年の神。ありゃりゃ。火星(戦争の神)や金星(平和の神),海王星(神秘の神)の方がよかったなぁ。
しかも,土星って「人に対して冷徹で,陰気な性格を持つとされる」らしいんですよ。当たっていないとは言わないけれど,何だかなぁ。
● ところが,実際に桐朋の演奏で土星を聴いてみると,“老年の神”っていうイメージではぜんぜんない。「惑星」全体で最も高揚するのが土星じゃないか。何だかホッとしたというか,嬉しくなったというか。
最後の海王星では,舞台の袖から女声合唱がかすかに聞こえてくる。これ,効果的ですなぁ。神秘の神という感じがする。
終演後,彼女たちがステージに登場した。この合唱団も当然自前なのだろう。何かさ,ぼくらの若い頃とは日本人の体型って様変わりしてるよね。身体が細いのに胸が大きいって,昔はなかったよ。オヤジ丸出しの言い草で申しわけないけれど。
● 桐朋の演奏は,プロオケと比しても何ら遜色ないように思われた。が,桐朋の学生といえどもプロとして立っていくのは少数なのだろう。
若い人は割を喰っているなぁと思う。なにせ空きが出ないのだ。若い才能の行き場がないのだ。
入替戦を作ったらどうかね。あるいは,プロオケには40歳定年制を義務付けるとか。そんなことは無理だから,割りを喰うことになるんだが。
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